Monster Hunter Delusion【更新停止】   作:ヤトラ

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久々に更新できましたが、内容が日記風なので短いですスミマセン(汗)

今回のテーマは活動報告より「氷属性のテオ=テスカトル」です。
ありそうでなかった、炎以外の帝王の姿。カッコイイのにカッコよくかけなくてすみません(汗

5/7:誤字修正。報告ありがとうございました!
×炎帝龍→○炎王龍


part32:「氷帝龍の生態」

・○月×日―調査隊結成当日

 

 私はルミス=ライナラン。ドンドルマの古龍観測隊の女性隊員だ。階級は割と上の方。

 この度、近日バルバレギルド管轄の氷海で起こっている異常気象の正体を探る調査隊の隊長を務めさせてもらうことになった。

 これまで幾度と補佐官を務めたことはあるが、隊長として指揮を執るのは今回が初めてだ。

 正直言って未だ若輩者だと自覚しているので恐縮なのだが、命を預かる立場になった以上、しっかりとせねば。

 なので、新しい日記を付けることにする。現在は信頼できる隊員達を選び終え、ギルドに正式に派遣調査を依頼された後だ。

 

 しかし面倒な事がある。大老殿が寄越した護衛ハンター・カツヤと呼ばれる男だ。

 G級ハンターの称号を持っている為に実力は確かだろうが、大長老や補佐官が言っていた通り、この男は癖が多すぎる。

 

 黒髪黒目の整った容姿はどこか作り物めいており、穏やかな口調や人当たりの良さも一方的な物としか感じられない。

 何よりも、私達観測隊のように目聡い者で無ければ解らないほどの、無意識に見下した視線や態度が一番苦手だ。

 まるで住む世界そのものが違っていると思い込んでいるかのような、そんな無自覚な感覚。それが不気味で仕方ない。

 

 まぁ、仮にもしもの事があったとしても、私達は死ぬ覚悟はできている。後世へ継ぐ記録さえ残っていれば。

 この日記も観測日記とは別にとってあるもので、いつ私が死んでも、この日記だけはどんな手を使ってでも守り抜くつもりだ。

 

 今回は長くなってしまったが、明日から忙しくなるので短くなるだろう。就寝するとする。

 

 

 

・○月▽日―探索前日

 

 早朝、私を含めた8名の観測隊と護衛ハンター殿を乗せた砕氷船が氷海に到着。

 話に聞いていた通り、恐ろしいまでに氷雪の多い吹雪が氷海と雪山を包み込んでいた。

 強い風と大量の降雪が視界を遮り、吹き抜ける風でそれ以外の音が聞こえづらい。

 

 しかし、寒いと騒ぐカツヤ殿の声が聞こえるのに、風を除けば氷海はとても静かである。

 生物の気配も感じられない以上、古龍種級モンスターが生息しているということに他ならない。

 我々観測隊は脅威に備えるべく、まずはベースキャンプを張る。カツヤ殿には待機をお願いしてもらう。

 

 

 

・○月■日―探索初日

 

 氷海周辺を一丸となって探索。山頂付近には上らず、遠回りするように洞窟から見て回る。

 

 そして初日でありながら最大の発見をした。氷の道が幾つも見つかったのだ。

 まるで生物が歩いた端から、道を開くようにして凍っていったかのような跡。まるで足跡のようだった。

 情報を聞いた当初はクシャルダオラだと思われていたが、氷の道の多さからすると、飛翔を主とする生態を考えれば断定するのは早い。

 

 ドンドルマですら噂でしか聞いたことのない幻獣の亜種か、或はそれ以外か。

 我々はこれまで以上の―かの『炎王龍』を超えるような―存在だと思い行動しなければならない。

 

 余談だが、カツヤ殿が寒いからさっさと鋼龍を討伐すれば良いと甘いことを言っている。

 我々古龍観測隊は古龍種に限らず、周辺の地形や生態系を調査する事も考慮している。長期的な滞在になるのは当たり前だ。なので諦めてもらう。

 陰ではフラグがどうのイベントがどうのと独り言をブツブツ言うし、面倒な男だ。

 

 

 

・○月▲日―探索3日目

 

 吹雪が一層強いエリア4・3・9を除くエリアを探索したが、クンチュウどころか獣人族ですら見当たらない。

 これは当たりと考えていいだろう。万が一を考え、逃走ルートの確保及び食料の調達に勤しむ。ハチミツは貴重なエネルギー源だ。

 

 それでも心の準備と遺書を残すよう指示したが、カツヤ殿は心配いらないと豪語し、我々を安心させようと一方的に話しかけてくる。

 鋼龍を討伐した時の事を、いかに自分が優勢であることを物語っていたが……所詮は1度きりの話だ。

 

 いかに千差万別の世界とはいえ、古龍種は生態系の頂点に君臨していることには違いなく、個数が少ないのは当然の話。

 遭遇し生き延びた経験談だけでも貴重な機会であり、いかような天才または熟練者でも、古龍種の討伐は1度きりというケースが大半だ。

 古龍種を3匹以上討ち取ったとされるハンターは伝説以前に流布を呼び、ギルドのお墨付きがあっても眉唾物でしか感じられない。

 

 故に、カツヤ殿の話す鋼龍との激戦は、まるでおとぎ話のようにしか感じられない。

 むしろ彼の精神的な弛みと危機感の無さが心配になってくる。無意識なのが余計に。

 

 ……これはあくまで日記ではあるが、つい愚痴を書き込んでしまったことが恥ずかしい。

 明日はいよいよ吹雪の中心であるエリアを探索する。私は船に遺書を置いておくが、この日記だけは持っていく。

 

 この猛吹雪の正体を後の者に託すことができるよう願いつつ、私は就寝する。

 

 

 

・○月■日―探索4日目

 

 エリア9でクシャルダオラの死骸を発見した。恐ろしくも素晴らしい発見である。

 

 カツヤ殿が死骸だからと剥ぎ取ろうとして触れた瞬間、籠手越しに凍傷を起こした。

 冷気に強いはずの鋼龍の死骸は霜が降りており、触れずともその異常なまでの冷気が伝わってくる。

 鋼龍を凍死させる程の実力者。各エリアに転々とある氷の道を作り上げたのなら納得できる。

 

 エリア3に突入。まるで我々を拒むかのように吹雪が荒れるが、覚悟を決めて突入する。

 

 

 (以後、走り書き)

 

 

 なんということだ。素晴らしい。恐ろしい。美しい。

 

 足を滑らせ怪我をして遅れて来た私を除く観察隊の皆は氷の塊となっていた。恐らく絶命しているだろう。

 仲間を分厚い氷に閉ざした張本人は、怒鳴り声をあげながらも雪で身動きが取れないカツヤを置いて、静かに歩んでいる。

 

 1歩踏み込んだだけで周囲が凍って小さな氷柱を幾本も伸ばす。あれが絶対零度というものか。

 その堂々たる歩みと全てを凍結させる姿を仮に名づけるとするなら「絶対零度の君主」が相応しいだろう。

 

 私が目の当たりにしているのは、白い体毛を持つテオ=テスカトルであった。

 幾度か炎王龍の姿を見たことがある為、この白いテオ=テスカトルは亜種か変異種なのだろう。素晴らしい発見だ。

 まるで冬の化身のように全身を白く染め、吹雪の中心であるかのように冷気と風が奴を包み込んでいる。

 

 私はこのテオ=テスカトルを「氷帝龍(ヒョウテイリュウ)」と記す。炎の王に対なる氷の帝の名が相応しいからだ。

 

 堂々と歩く中、体の雪を振り払ったカツヤが双剣を手に持って走った。俺はてんせいしゃなんだ、とほざきながら。

 カツヤの動きは確かに早い。走るというよりは跳ぶといった速度で氷帝龍に接近していった。

 

 氷帝龍が接近してくるカツヤに視線を映し、口から何かを吐き出してカツヤを氷漬けにした。

 一瞬だった。白く丸い何かがカツヤに着弾しただけでカツヤは氷塊に包まれ、雪が積もった地面に落ちた。双剣を振りかざし、怒りに歪んだ顔のままで。

 

 鋼龍を凍死させたぐらいだから納得は行く。しかしこの力は凄まじいものがあった。

 私はここで終わるだろう。だが後世に残す為に、この日記は隠しておく。

 もっと記したかったが、氷帝龍が私の存在に気づいた以上、情報を聞き出すのは厳しいだろう。

 

 

 

 願わくば、この氷の帝王の強さと脅威を託せるよう祈りつつ、ここで終える。

 

 

 

―著者:ルミス=ライナラン




●変異種紹介
氷帝龍テオ=テスカトル変異種
氷海に姿を現した白いテスカトル。絶対零度の冷気を纏い、歩くだけで周囲を凍らせるという。
現在はとある観測隊の日誌でしか情報源がなく、詳しい生態は謎に包まれている。

今回も出てきました転生者。確かに穏やかだけど神様に望んだ作り物の人格です。

今回の反省点:
1.日記風はせっかくのモンスターの風格があらわにできない
2.もっとコツコツと書いていればよかった。

お詫びも兼ねて、近いうちに皆さんお待ちかねの企画を立てようと思います。
ではでは。お粗末様でした。

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