Monster Hunter Delusion【更新停止】 作:ヤトラ
ある意味超越していることを証明し、ある意味で内容が薄いです。ごめんなさい(汗
イメージBGM「光と闇の転生(シャガルマガラ)」
星よ降れ。天より降りて意を示せ。
願いを叶える希望であれ。凶報を告げる絶望であれ。
全てを破滅する災いであれ。天から齎す恵みであれ。
暗闇に輝く幾多の光よ、先導であれ。数多から堕ちし光よ、鉄槌であれ。
星よ降れ。迷える人に意を示す為に。
希望と絶望の流転であり。
災いと恵みの星であり。
先導と鉄槌の教えである。
星よ降れ。彗星と成りて世界へ降り注げ。
人よ。暗闇より来たりし光を見よ。
人よ。黒き天より舞い降りし星に導かれよ。
人よ――――
~大昔に滅んだ民族が残した唄(一部破損あり)~
―――
「やめておけ。俺達はこの世界と釣り合わない」
小さな田舎で雑貨屋を営んでいる12人目の
特典の1つである転生者レーダーに反応があったから態々出向いてやったというのに、これまでの
「阿呆が……これを見ろ」
そんな腑抜けだからこそ踏み外して負け犬人生を送ることになったんだ。俺は光り輝くギルドカードを腑抜けに見せ付ける。
「これが解るか?解らないだろうな……G級ハンターの証だ。俺は幾多ものモンスターを狩り続けたんだ。これを見ても、
居るんだよ。チート能力を持つ転生者だからと浮かれて、HR2ですら上れない下種が。
これまで俺が出会った11人の内8人がそうだった。2人は最初から腰抜け、もう1人は無能力者だったが。
まぁ生存者がいるだけありがたいか。腑抜けと無能を含めた12人以外の転生者は尽く死んでいる。過ぎた力に溺れて死んだか、油断して死んだかのどちらかだろう。
その点、俺は違う。思いつく限りのチートを転生ミスの代償として神に要求し、それを操る努力を怠らず、常に全力で挑んできた。
全ては俺が為すべき宿命―――神を気取るモンスターを尽く討ち取り、人類の栄光を勝ち取る為に。
「モンスターを倒すのはいつだって人間だ。モンスターが支配面しているこの世界を、俺達が救うべきだ。そして俺は英雄に……いや、英雄王になって見せる。人類の為に」
「……お前さ、本気で狩人になった気でいるの?」
俺は腑抜けを殴り飛ばした。周りの遠巻き共がどよめくが、所詮コイツらは田舎の世間知らず共。なんの痛みも無い。
腑抜けではなくて阿呆だったか、コイツは。吹っ飛んで棚に激突し、起き上がって反撃もしない弱虫を放って店を出て行こうとし―――行き先を竜人族の老婆が塞ぐ。
「そこどけ。俺は今機嫌が悪い」
「にょほほほ、血気盛んじゃのぉ。若くて結構、結構」
ダボダボの紫ローブの裾を口元に当てて隠しながら笑う。俺の腰より小さい癖に、妙に貫禄がある。この竜人族独特の見下した姿勢が俺は嫌いだ。
「そんなにモンスターが許せないのかぇ?」
「無論。悪意無く無力な人類を追い込んでいる事に変わりは無い」
「無力な人類……のぉ」
にょほほほ、と老婆は笑う。いっそ突き飛ばしたと見せかけて殺してやろうか?
「……【大雪山】」
「何?」
「わしゃあこう見えてもギルドに顔見知りが多くてのぉ。そこへお前さんを送る事ぐらいは出来るわい」
「そこに何があるというんだ」
「人類が恐れるべき凶暴なモンスターを隔離した狩猟地じゃ。解き放ってはならぬと禁じた程の猛者……いや『絶対覇者』じゃよ」
「ほぉ……なら案内しろ。俺がそいつを刈り取り、人類にささやかな安寧を届けてやろう」
解き放ってはいけない程に凶悪なモンスターか……殺すべきターゲットだな。
クシャル、テスカトル、アカムといった古龍級をも駆逐してきた俺に不可能などない。
数多ある脅威を1つ1つ確実に潰せば、いずれは人類が平和に暮らせる。俺達転生者にはそれが出来るはずだ。
そして俺はその為に戦い抜いてきた。英雄王に憧れた俺が、この異世界で英雄王となる為に。
「……アイツ
―――
その日の雪山は、様々な異常気象が起こっていた。
まず、空が快晴だった。猛吹雪を起こす暗雲は見事に晴れ渡り、澄み渡った星空が地平線にまで広がっている。
続いて、昼になっても太陽が昇らず、うっすらとした夜空のままだった。その日は太陽が沈んだ状態が続く現象【極夜】であった。
そして、夜空からは無数の流れ星が落ちていた。澄んだ空気によって綺麗に映え、まるで雨のように降り注ぐ流星群は「美しい」の一言に尽きる。
最も、その流れ星の大半は、この雪山に降り注いでいるなどと誰が思うだろうか。
黒い空から青白い炎に包まれた星―――所謂「隕石」が絶え間なく雪原へと落ちていき、轟音を鳴らし大地を揺るがしていた。
雪崩が起こらないのは雪山に降り積もった雪が厚く重過ぎるからなのだが、それでも白い大地を隕石が抉り、幾多ものクレーターを生じている。
この青白い隕石―かの千の剣の山に姿を現すという『蛇王龍』が降り注ぐ物と酷似している―を起こしているのは、一匹の古龍種である。
漆黒の鱗は巨体の全てを余すことなく包み込み。
漆黒の甲殻は頭角を筆頭に鎧の如く隆起して覆いつくし。
後頭部から伸びる1対の白い角は空から落ちる隕石に呼応するかのように淡く輝き。
背から伸びる翼は己の巨体を簡単に包め込めるほどに広大で。
漆黒の甲殻と漆黒の翼に混ざる白光の甲殻は、まるで夜空に浮かぶ星の如く美しい輝きを放っている。
その姿は、語るべきでない伝説に記されているという伝説の龍に酷似しているが……それを知る者は限りなく零に近いだろう。
―星空を具現化したかのような古龍種の前で逃げ惑っている男が、その1人だろう。
男はハンターだった。
灼熱を司る古龍種―炎王龍テオ・テスカトルの素材を大量に用いた「
手に持つチャージアックスは、チャージアックスの中でも上位に君臨する、G級の砕竜を討ち取った物が得られる「砕光の盾斧」であった。
男は奇怪な能力を持っていた。
雲が晴れて雪ですらないはずの空間が水面の如く揺れ動いたかと思えば、そこから多種多様……否、千差万別の武装が弓矢の如く射出していく。
質素から豪華絢爛、極小から極大まで様々な武具が高速で飛び交うも、それらの殆どは空から降る隕石によって遮られてしまう。
仮に古龍種に当ったとしても、漆黒の鱗の硬度と質量、そして己の速度に耐え切れず拉げる始末。1mもある捻れた槍ですら呆気なく潰れる程だ。
男は戸惑っていた。
先ほどから立ち止まっては隕石を避け、古龍種に近づいたり離れたりと奇妙な行動を繰り返している。
武器を射出する行為とは別の何かをしているらしいが、それは当人にしか解らないし、当人が何故戸惑っているのかなど他人が見ても解らないだろう。
当の古龍種といえば、角を光らせながら立ち往生しているだけで、特に何もしてはいない。
空間から射出される数多の武器を拉げ、角の光に呼応するかのように隕石を降らせ、そして目の前の男を見下ろしている。
―ふと、逃げ惑う男を見ていた古龍種の顔が別の方角を向いた。
ザクザクと雪を掻き分けながらこちらへ向かって走ってくる一匹の生物。
その生物から放つプレッシャーと殺意は、古龍種というカテゴリから見ても脅威と感じられるものだった。
モノクロの古龍種も、こちらへとやってくる生物の気配に気圧され、ゆっくりと背中の翼を広げる。
隕石郡を抜き出た僅かな武具達が刺し貫かんと縦横無尽から迫るも、薄いはずの翼膜を貫くことはなく、星空のように美しい黒い翼は健在だ。
黒い翼に混ざる白い鱗が、2本の角と同じような淡い光を輝かせ、古龍種は啼いた。
古龍種は、ハンターにすら向けなかった明らかな「敵意」を間近に迫ってきた生物―――大型モンスターに向けていた。
向けられた敵意は隕石郡という形となって、猛烈なスピードで迫るモンスターに向け、雨霰のように次々と降り注いでいく。
その隕石の雨を潜り抜け――――この【大雪山】の支配者たる「
その支配者に挑むは
2匹の『超越者』の縄張り争いが始まった。
―――
転生者アキラは、二次創作小説でありがちな「チート能力」の保持者だ。
漫画やアニメに出てくる強大な能力。それを持って転生し、今までを生きてきた。
彼が考えうる最強の能力。それを数多く所有し、それを使いこなしてきたという自負が彼にはあった。
例えば『
Fateシリーズで最も有名な、有象無象の伝説の宝具を自由自在に取り出せる最強の宝具。
神に頼んで思いつく限りの宝具や伝説上の武器を詰め込み、使用後は復活し元に戻るよう設定した。
例えば『
ジョジョの奇妙な物語に登場する能力「スタンド」の中でも最も有名なスタンド。
世界の時を止めるというシンプルかつ強力無比な、文字通り「世界を支配する能力」。
例えば『
これまた有名な能力の1つで、「とある魔術の禁書目録」に登場する超能力者が仕様する。
触れたものの
しかし考えてみて欲しい。
王の財宝は、世界中の武具を構成しているモンスターの防御を容易く貫けるか?
世界を支配する能力は、本当にあらゆる現象を支配することができるのだろうか?
あらゆる物の向きを変える能力は、モンスターが起こす現象の全てを計測し変えられるのか?
答えは―――否だ。
そのモンスターが成長すればするほど、王の財宝を防ぎ、世界を支配する能力に抗い、あらゆる物の向きを変える能力を無視できる。
有象無象関係なく、異世界の神が設定した「力の基準」を容易く飛び越せる。その世界の常識が異なる世界に通ずるわけがないのだ。
アキラがこれまで生き抜いてきたのは、彼が最も地味だと考えつつも保険として考慮した『幸運EX』が、手負い又は病弱な個体と鉢合わせしただけに過ぎない。
故にアキラは、目の前の事実に呆然としていた。
圧倒的なパワーを、前脚、後ろ脚、尻尾、牙とあらゆる身体機能を生かして戦う白いティガレックス。
その圧倒的なパワーを難なくいなし、翼を広げ滑空しながら飛び交い、青白い炎を吐きながら隕石を落とし続けるディザ・メテオラ。
低空を舞うように高速で飛び交い、ティガレックスの攻撃を避けながらもブレスと隕石で攻撃するディザ・メテオラ。
それを追いかけるように、しかし一歩違えれば容易く骨を圧し折れるほどの威力を持った爪と牙で襲い掛かるティガレックス。
いずれも、アキラの存在を無視していた。
王の財宝も、世界を支配する力も、ベクトルを操作する能力も……全ての『異世界の能力』を無視して争いあっている。
干渉はしている。しかしそれは打ち破られる。『
轟音が響く。隕石が降り注ぐ。それらですら優しさを感じるほどの殺意と敵意が2匹から漂ってくる。
アキラの体を震わせているものは―――怒りだった。
「……すんなよ……」
英雄王に憧れ、英雄王となるべく転生した自分を。
「無視すんなよ……」
役立たずだった前世の自分を捨て去り、過酷なこの世界にささやかな安寧を与える存在である自分を。
「俺を……!」
弱き人間を救う―――この世界で唯一の「オリ主」になるはずの自分を。
「無視してんじゃ―――
空より落ちてくるのは、今までの隕石とは比べ物にならない程に巨大な
今は危険を察知して離れて行った白轟竜にお見舞いしてやるはずのソレは。
この世界を弱いと
落ちた。
―――
彗星龍ディザ・メテオラ。災厄の流れ星。
漆黒の体に混ざる白い鱗がまるで星のようであり、空を飛ぶ姿が流星に見えることから名づけられた名前だ。
夜が明けない地に訪れる古龍種は転々と住処を変えている。今頃は白轟竜を
だが白轟竜は死んではいない。負傷こそしたが、生への執着が彼を生かしたのだ。これを境にさらなる成長を遂げる事になるが、それは別の話。
この世に、世界を超越した存在など幾らでもいる。
ディザ・メテオラは隕石を降り注がせる謎の力を秘めた、古龍種の中でも脅威に値する強力なモンスターだ。
彼も超越者であり―――白いティガレックスはさらに上を行く存在、ということなのだ。
生きれば生きるほど、そして育てば育つほど強くなる。それが生物の基本。モンスターの常識。
この世は弱肉強食。この世界はそれが全てであり、それ故に強い。
それは人も同じ事―――超越せしハンターが邁進し、世界を渡るのは、この世界の常なのだから。
―――
人よ、災厄を乗り越えよ。
人よ、導かれて強くなれ。
この世に絶対は無く。
この世に限界は無い。
無限の天の如く。無数の星の如く。
人よ―――生きてこの世界に挑み続けよ。
―完―
「彗星龍」。ダラ・アマデュラの親戚のようで全く違う恐ろしいモンスターです。
古龍種とは謎が多いです。そもそも嵐を纏うクシャルも、何も無い所から爆発オーラを放つテオも、狂竜ウィルスを持つマガラもデタラメなのです。
この彗星龍はそんな古龍種のデタラメ性能を「星」をテーマにして再現しているようなものでした。
流れ星をイメージしたが故の格好良さ、隕石を降らせるという超越した力。ラスボスらしい「摩訶不思議な力」に分類できます!
故にこのモンハンデルシオン内で古龍種を除く最強級モンスター「白いティガレックス」を返り討ちにし。
異世界の能力を携えた転生者を呆気なく倒す。そんな力を当たり前に秘めているんです、ラスボス達は。
まぁ、その上ですらモンハン世界……特に「
そんなわけで、読者の皆様が妄想したラスボス達の恐怖、堪能できましたか?
活動報告に記された強大なモンスター達も見て、様々な妄想を膨らませて楽しんでくれれば幸いです。
今回はデルシオンを優先に書きましたが、年末までに「ヤオザミ成長記」を更新する予定です。
ポケモンライフも本編、オマケともにアップさせる予定なのでちょっと粗いと思いますが、ご了承ください(汗)
ではでは!