Monster Hunter Delusion【更新停止】 作:ヤトラ
イメージBGM「燃ゆる溟海(グラン・ミラオス)」
お山の怒りは島の始まり
お山の赤き血が地を流れ、新たな大地となる
お山の赤い涙は天を昇り、黒き雲より降り注ぐ
お山が泣き止めば新たな島が生まれ、また眠る
お山が起きれば島が生まれ、お山は新たな居場所を探す
お山の眠りは火山の始まり
元始の使者はお山の……お、やっと寝たかへぐなちゃごめ
にしても……可愛いじゃねぇかぁ……娘よ……娘よぉぉぉぉ!
~とある土竜族に伝わる唄(一部感涙有)~
―――
かつてその地には人が栄えていた。
大きく聳える山からの恵みは命の営みを築き、それを分けてもらいながら慎ましく暮らす街だった。
しかし今はそうでない。山で暮らしていた人々の繁栄はおろか、その山の自然ですら大昔に滅んでいるからだ。
―あるのは、人と自然を滅ぼした大地震と共に変わり果てた活火山だけだ。
かつては山全てが緑に覆われ、多種多様な生物が暮らす大自然の地でもあった。
活火山となった今では常に噴火と噴煙が絶えず、地表の土色と火山から流れる溶岩の赤、そして空を覆う噴煙による黒の三色でしかない。
幸いなのは海が近い為に僅かながらの自然が残されており、火山帯のような自然系を築いているということか。
しかし火山に近づけば近づくほど、生物を寄せ付けない高温と熱気で満ち溢れていく。
そもそもここは活火山である故、火山の中腹からは常に溶岩が流れている。淵からではなく各所に空いた穴からドロドロと。
中腹付近から溶岩が溢れ出ているからか山そのものは空洞が多く、丁度地底火山のような地形を築いていると考えてもよい。
ただ水などは一切なく、排煙筒の如く高温の空気が渦巻くので生物は滅多に存在しない。しているのは鎧竜・岩竜ぐらいか。
だがそんな火口の最深部……太陽の如く輝く溶岩の海が広がる【火口深奥】には猛者がいた。
溶岩竜ヴォルガノス……生物の常識を投げ捨てた、溶岩の中を平然と泳ぐ大型の魚竜種。
この溶岩の海は相当深い上、巨大な活火山故にマグマの温度が尋常ではない。鎧竜なら間違いなく溺れるだろう。
しかしヴォルガノスはこの灼熱の海を平然と泳いでいる。溶岩竜の2つ名は伊達ではない、ということか。
それでも溶岩しかないココでは餌となるものはない。ヴォルガノスは肉食性故、この溶岩の海から這い上がり、獲物を探す必要がある。
なのでヴォルガノスは上へと続く岸へ行こうと、勢い良く跳びあがった。
―その瞬間、ヴォルガノスは腹からガブリと行かれた。
溶岩を泳ぐのはヴォルガノスの特権ではない。そしてヴォルガノスが食物連鎖の頂点ではない。
飛び出たヴォルガノスを腹から噛み付いたのは……覇竜アカムトルム。それもヴォルガノスの倍はあろう大きさを持っていた。
鋭い牙が参列と並ぶアカムトルムに腹から噛み付かれてはヴォルガノスもたまない。飛び出たアカムトルムと共に再び溶岩の海へと落ちる前に絶命―――
―――したのは、さらにアカムトルムが巨大な口に噛み付かれた後であった。
誰もこのアカムトルムが火口深奥における食物連鎖の頂点だとは言っていない。
ヴォルガノスの倍はあるアカムトルムを腹から銜えたモンスターの正体は……巨大な古龍種であった。
後ろ向きに生えた巨大な角を携える、全長70mを越す巨体は大海龍ナバルデウスに酷似し。
覇竜をも銜えこむことのできる巨大な嘴は、炎戈竜アグナコトルのように鋭く堅く。
その嘴の両脇には太く長い牙が、まるで峯山龍ジエン・モーランの如く伸びており。
全身と前脚らしき鰭を包む鱗は、老山龍ラオシャンロンが持つ厚く鋭い鱗のよう。
それらはマグマの熱で燦々と、赤を越えて黄色く輝いており、まるでマグマの化身にも思えられる。
そんな巨大な古龍種の嘴に潰され、鋭い牙に指されたアカムトルムであったが、なお抵抗の意を示さんともがき苦しむ。
だがその巨重……それに2匹の大型モンスターを加えたことにより、もがく暇もなく3匹まとめて溶岩に落下。
マグマの海で巨大な水柱が立ち、溶岩が大きく波打つ。巨大な古龍種が溶岩の水面で暴れている為、その波はなおも衰えない。
……とはいえ、既にアカムトルムの息も絶えた為、短い時間ではあったが。
巨大な嘴から繰り出す顎の力は凄まじく、両端から伸びる牙は鋭く太い。かの覇竜もひとたまりもないだろう。
穴が空いた箇所から溶岩により焦げ臭さが漂う中、古龍種は溶岩の海の岸へ向けてアカムトルムを放り投げ、咆哮を轟かせる。
そして悠々と、周りのヴォルガノス達が逃げ惑う中で覇竜と溶岩竜を食すのだった。
溶岩の海を泳ぐ古龍種。その2つ名は「ヨウガンリュウ」と呼ばれるようになる。
ただし「溶岩」ではなく「熔原」……つまり溶岩の源から現れし古龍種、故に「
この熔原龍は自身の住処を火山とするのだが、その住処とする為の過程が、大規模な大災害を引き起こすものとなる。
熔原龍は地下深くの熔岩流を伝って泳ぎ別の火山へ移動し、移動する際に大規模な地震を引き起こす。
そして餌を探しに海へ出て、休眠する為に別の火山へ移動し、その火山を活性化させ大噴火を起こす。
そう、この
しかしアルファヴァルグに悪気はなく、一種の生態として熔岩流を伝って移動し、活性化した火山を住処にしているだけに過ぎない。
悪意なく、移動の為に大地震を、住処作りの為に大噴火を起こす。これもまた強大な古龍種ならではの無自覚な大災害。
アルファヴァルグが次の餌場を求めて移動するがいつなのか……それは誰にも解らない。
―完―
というわけで「熔源龍」でした。いかがでしたか?
一応は他のモンスターを用いることでその脅威を伝えられたかと思われます(汗)
このモンスターは「元始の使者」と言われておりますが、生態を見て納得しました。
島の始まりは海底火山から始まり、噴火により発生した熔岩が冷えて地形を作る。
休眠する為に火山を活性化し、移動の際に地震を起こす。誕生と破壊の繰り返し。破壊と創造は表裏一体。
故に「元始の使者」なのだろうと。そんな深い意味合いを物語らせてくれた古龍種です。
ナバルデウスといったモンスターの祖先のイメージもつきやすく、とても魅力的でした。
残り2体ですが、既に決まったので、後は書くだけです!間に合うかな(汗
ではでは!