Monster Hunter Delusion【更新停止】   作:ヤトラ

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エキストラステージ:ボスモードがついに始まりました。
さぁ読者の皆様、投稿者によって生み出された、妄想モンハンのラスボス達を見よ!

第一弾はこちら!

イメージBGM(作者独断):錆びたクシャルダオラ(MH4G)

12/1:誤字修正


ExtraBoss-1:「命吹き消す者」

 息吹よ、世界に季節を巡らせよ

 

 息吹よ、世界に命を巡らせよ

 

 されど、息吹は禍を呼び起こさん

 

 されど、息吹は命を消し去らん

 

 息吹に意思は無く

 

 息吹に智慧は無い

 

 ただただ世界を巡り

 

 ただただ世界を包み

 

 風よ、息吹け。嵐よ、息吹け

 

 命よ、息吹に吹かれよ。禍よ、息吹に吹かれよ

 

 世界は、息吹によりて動かんとす。

 

 

~とある遺跡の石碑に記されていた文章より~

 

 

 

―――

 

 その地域は、常に豪雨と台風によって支配されていた。

 海から来る季節風が山脈を登るようにして吹くことで積乱雲を所持させ、それが山を包む嵐となっているのだと考えられる。

 しかし、人が立つことですら困難なほどに強い風は、未だかつて誰も足を運んだことが無い秘境とされている。

 また、その風はまるで生きているかのように、弱くなったり強くなったりを繰り返している。弱でも台風並み、強なら人を容易く吹き飛ばすほどの豪風には違いないが。

 かろうじてその山が霞んで見える場所ですら、人が暮らすに適しないほどに風が吹き、人どころかロクなモンスターが生息しない荒野と化しているのだ。

 

 かつて冒険家がその先にある山を見るために荒野へ訪れた事があり、その冒険家の書にはこう記してある。

 

「あれは山であって山ではない。まるで天が、嵐で山を崩して遊んでいるかのような凄まじい場所だ。私は不躾にも、あの神の遊び場を【荒天山】と名づけよう」

 

 人が行くには余りにも危険な、暴風と豪雨で包まれし危険区域―――荒天山(コウテンザン)

 遠く離れた場所で一目見るだけでも解る程の大災害が留まり続けるその山に、果たして生物が存在するのだろうか?

 

 

 

―誰も思うまい。その山に生息する生物は、クシャルダオラですら起こせないような嵐を引き起こし続けた張本人だということを。

 

 

 

―――

 

 その山の頂上で眠っているモンスターは、穏やかな眠りについているのか、ゆっくりとした呼吸を繰り返している。

 大昔のこの山には人が暮らしていたのか、今は風と雨によってボロボロに朽ち果てた祭壇のような遺跡を陣取り眠っていた。

 息を吸って、吐く。生物が当たり前のように行っている生理現象を「呼吸」または「息吹」と言う。

 

 空気中の酸素を取り込んで二酸化炭素を吐き出すだけの行為だけで嵐を起こす事など普通はできない―――普通なら、だ。

 

 そのモンスターが息を吸えば、驚くほどの量の空気が周囲から根こそぎ奪っていき、岩ですら岩肌を削られるほどの風を生じる。

 そのモンスターが息を吐けば、溜め込んだ膨大な量の空気が一点の穴から抜け出そうとし、まるで嵐のように周囲を駆け巡っていく。

 

 この世界には、驚異的な肺活量を持って周囲を揺るがす大咆哮を放つ黒轟竜、その上を行く大轟竜という飛竜種が存在している。

 その2匹ですら小さく思えるような規模を睡眠時の呼吸だけで行っているのだ、このモンスターは。いや、無意識故にその恐ろしさは計り知れない。

 今でこそ山に包まれた暗雲は海から来る気流によって渦を巻いているものの、このモンスターの寝息への影響を受けている。

 

 そのモンスターは黒い鱗を全身に纏い、額に小さな角を生やし、逆に後頭部には太く長い角が4本ほど生えている。

体は蛇竜種のように太く長いが、体を支える為か、後ろ脚は大きく発達している。背中 には翼らしいものがあるが退化しており、飾りにしか見えない。

 全体的に見れば蛇竜種というよりは……ユクモに伝わる伝説「嵐龍」に酷似している。最も、飛べないし鰭のようなものも無いが。

 

―モンスターの瞼が開いた。

 

 天空を渦巻く暗雲によって周囲は夜のように暗くなってはいるが、一応は朝を迎えたらしい。

 豪雨に打たれて濡れた長い身体体を起こし、太く発達した後ろ脚で踏ん張って上半身を持ち上げ、太く長い尾を支えに立ち上がる。

 

 降り止む気配の無い雨脚と吹き荒れる風―気流によって生じた天然の嵐だ―を受けておきながら、そのモンスターは立ち上がってから微動ですらしていない。

 雨も風も軽んじて受け止める中、そのモンスターは大きく口を開き、ゆっくりと息を吸う。

 

 

 吸っているだけで―――周囲の空気が渦を描くようにそのモンスターの口に収束していく。

 

 

 まるで渦潮のように収束していく空気は全てモンスターの肺と腹の中へ溜め込まれていくが……腹と喉が膨れている様子は無い。

 いや微妙に膨らみつつあるものの、まるでこの山全ての大気を吸い込むかのような勢いからすると比例には満たないはず。

 

 

 やがて息を吸うのを止め――吐き出す。

 

 

 唐突ではあるが、覇竜アカムトルムという飛竜種をご存知だろうか?

 彼は強靭な肺活量を持ってして物凄い咆哮を放つことが出来、「ソニックブラスト」と呼ばれる荒業を使うことだって出来る。

 

 

 

 このモンスター……未だなお確認されていない古龍種は、その上を行く。

 

 

 

 体内で圧縮し吐き出した空気は、淡く輝く後頭部の角から供給された余剰エネルギーを得て物凄い風圧となって周囲を乱す。

 それはアカムトルムの放つものとは比べ物にならない程に太く、そして天に渦巻く暗雲を乱すほどの射程を誇っていた。

 最初は天に向けて放っていたが、頭をぐるりと薙ぎ払うように振り、自身の周囲を口から放つ風によって粉々にしていく。

 人によって作られた過去の遺産は尽く崩れ落ち、ようやく自然に打ち勝ち芽吹いた木々を尽く薙ぎ倒す。

 

 その息吹が周囲の全てを吹き消したのは10分後……その時間は、吹き始めてから吹き終えるまでの時間と同じ。

 つまりは10分間もあの強烈な風ブレスを放ち続けた、ということ。たかが10分でこのような惨事になると誰が思うだろうか?

 

 

 

 そして―――「息吹龍(イブキリュウ)」ブレアルスの深呼吸(・・・)は、まだまだ続く。

 そう……これはただの(・・・)深呼吸。ブレアルスの寝起きは決まってこの深呼吸を行う。ただそれだけの習慣。

 その習慣によって、この山が「天荒れる山」と由来される原因になっていることを、この古龍種は知らない。

 

 

 

―――

 

 息吹龍ブレアルス。息を吹けば天地が荒れると言われている伝説の古龍種。

 唯一にして最大の救いは、縄張り意識が非常に強く、己が定めた縄張りから動こうとしないことか。

 されど、この世に絶対など存在しない。もし奴が縄張りを拡大しようと動き出そうものなら……。

 

 

 

 彼の息吹は、いつしか今いる(・・・)人々へ届くかもしれない。

 かつて彼の息吹の餌食になった先人達は、僅かな生き残りを残し、殆どの命が吹き消した。

 

 

 

 息吹龍。(いき)()く龍。

 

 

 

 かの龍の息吹は、容易く世界を廻り、容易く命を吹き消す。

 

 

 

―完―




というわけで「息吹龍」でした。いかがでしたか?
短い場面でスミマセン、ほかのもこんな感じにシンプルになる予定です(汗)

このモンスターの採用ポイントは、強靭な肺活量によるブレスとシンプルな設定です。

モンハンのような自然に近く、しかし角に溜め込んだ液体が関連しているのでは?という推測が逆に古龍種らしくて良い設定でした。
しかも角を破壊すれば一部ブレスが使えなくなる、という親切設定なのもらしくて良し!
このモンスターの設定を見ていると、神の息吹という名の自然の驚異を物語るようでした。
「ソニックブラスト」の王者に君臨できそうです(笑)

残るモンスターは12月中に投稿できるよう頑張ります。選出未だに悩んでますし(汗

ではでは。

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