Monster Hunter Delusion【更新停止】   作:ヤトラ

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今回のテーマは「凍土に適応したモノブロス」です。実際は氷海なんですがね(汗)
今回もモンハン4Gの設定をお借りしています。現在は調査段階、といった設定です。

それと、今回は密漁者のようなものが登場します。これも読者様のアイディアです。ありがとうございます。


part27:「凍角竜の生態」

 ハンターズギルド―――それはモンスターから人類への被害を最小限に抑え、かつモンスターの絶滅を回避する為に設けられた組織である。

 時に災害クラスの脅威が襲い掛かる弱肉強食の世界ではあるが、それら全てが合わさってこそ自然が成り立つ。

 そんな世界に上手く適応し生き残る為、人は知恵と力を用いて中立を保とうとする。故にモンスターの殲滅は在りえないし、人類が頂点に立つ事も在りえない。

 その為にはハンターのようなモンスターと戦える人材を集め、時には支援し、時には罰して自然界のバランスと人類を守るのだ。

 

 しかし悲しき事かな。ルールを遵守する者あればルールに違反する者あり。

 世の中には、ハンターでありながらハンターズギルドの決まりを尽く破り、裏で暗躍する密漁ハンターも存在しているのである。

 

 密漁ハンターとはその名の通り、密にモンスターを漁り、本来自然に帰すべきモンスターの肉片を根こそぎ奪う連中の事である。

 ルール無用の極悪装備や異常な量のアイテムはもちろん、クエストなど関係ないとばかりにモンスターを大量に殺し、膨大な量の素材を闇市場で売りさばく。

 ハンターズギルドが派遣したギルドナイトの暗躍により駆逐されているものの、莫大な利益に目が眩み堕落したハンターは増加の傾向にある。

 

 そんな密漁ハンターの新しいビジネスが、近年発見例が増えているという「変異種」だ。

 変異種とは成り立ての亜種や希少種のようなもので、言い換えれば極僅かな個体数でしか確認されていない、下手をすれば希少種以上にレアな存在である。

 特に近年は「自分だけの防具が欲しい」と変異種の素材で作られた特別な防具を求め、禁止されている闇市場に赴く若きハンターが急増し需要が高まっている。

 一攫千金を狙うなら変異種狩り。それが密漁ハンター達の話題である。

 

 

―――もっとも、それは成功すればの話だが。

 

 

 

―――

 

 近年、ハンターズギルドの拠点が1つ・バルバレは新たな管轄地域を定め出した。それが砂漠地域である。

 ハンター達にはまだ知れ渡っていないし立ち入りを禁止している中、ハンターズギルドはギルドナイトや最新装備を持つ調査団を派遣して探索を続けている。

 現在確認されているのはガレオスやダイミョウザザミ、そしてディアブロスとモノブロスが確認され、徐々にデータが集まりつつあるとか。

 

 そんな中、ハンターズギルドは意外な地域で変異種を目撃することになった―――青白いモノブロスが氷海に現れたのである。

 

 発見したのはフルフルを討伐しに訪れたハンター4人組。彼らの報告を元に調査団を派遣し、その全貌が明らかになった。

 どうやら砂漠地域でディアブロスとの縄張り争いに敗北したモノブロスが氷海に逃げ込み、そのまま環境に適応してしまったらしい。

 雪と氷に溶け込むような青白い甲殻に真っ青な角を生やしたモノブロス変異種を、ギルドは「凍角竜(トウカクリュウ)」と命名した。

 この凍角竜はHR10以上のハンター4人を撃退するほどの実力者であることがわかり、現在の氷海の支配者として君臨。一時氷海への立ち入りを禁止した。

 

 

 

 しかし、ハンターズギルドが議論を重ねる最中、密猟者ハンターが目を付けたのである。

 

 

 

―――

 

 密漁ハンターのベベッサは、氷海へと向かう船の上でケラケラと笑う。

 

「おいおいベベッサ、これから狩りだっつーのに笑っているんじゃねーよ」

 

 そんなベベッサに寄り添い、隙あらばその乳房を揉んでやろうと肩に腕を回す男・ロイネイは忠告する。もっとも、彼も笑っていたが。

 ベベッサはそれでも笑いを止めず、女体だからとセクハラしようとするロイネイを止めることもしなかった。

 

「だってよ、久々の変異種狩りなんだ。それにあのガキンチョの顔を思い出しただけで……ブハハハ!何が『俺は特別なハンターなんだ』よ!」

 

 せっかくの美人面が台無しになるほどの大爆笑。それに釣られて三人の仲間がゲラゲラと笑い出した。

 思い返すのは少年の情けない面。変異種に遭遇したと自慢する奴を色香で路地裏に誘い込み、男達の凶悪面で脅した時のあの顔は彼らにとって笑いものだった。

 そしてベベッサ・ロイネイ・ゴロ・ワンラダンの4人が率いる密漁団「闇烏(ヤミガラス)」の準備は万全。古龍種はともかく大抵のモンスターを狩れる自信がある。

 

 これで笑わない方が可笑しい。やっと転がり込んできた大金が目の前にあると思うと、4人はゲラゲラと笑い出す。

 

 

 

 彼女らの目標は凍角竜(とうかくりゅう)モノブロス変異種。

 ハンターズギルドが仕掛けた網を潜り抜けるだけの技量は当然持ち合わせていた。

 

 

 

―――

 

 かつて、ディアブロスに敗北し砂漠地域から追い出されたモノブロスが居た。

 夜間になると寒冷地帯になる地域に適応する彼にとって、氷海への適応は割とすんなりしたものであった。

 弱点である雷攻撃を放つフルフルや強大な龍属性を持つジンオウガ亜種などが生息する激戦区故に生存競争への適応は厳しいものではあるが……モノブロスはそれらを駆逐するほどの強さを持っていた。

 

 そして彼は、青白い甲殻と蒼い角を持つ変異種へと進化を遂げたのである。

 

 ここでモノブロス変異種の特徴を述べるとすれば……はっきり言えば身体能力の強化である。

氷や雪は砂とは違い、時には岩の如く固く、時には水となって滑りやすくなると、下手をすれば砂地よりも不安定な足場となる。

 モノブロス変異種はそれを克服する為、足腰を鍛える事から始まった。自慢の突進も足を滑らせて転んでしまい、かなりの痛手を負ったからだ。

 

 そして雪や氷を活用するという事。これは原種にもある「突進後の尻尾薙ぎ払い」やバインドボイスを活用したものだ。

 薙ぎ払い攻撃は地味に厄介なスクアギル対策として、バインドボイスによる氷柱攻撃も洞窟内での戦いで便利だと理解した。

 

 ちなみに甲殻が青白くなったのは保護色によるものだが、角が蒼い理由は不明。食性が変ったからだと思われる。

 

 

 

 そんなモノブロス変異種に、密漁ハンターの魔の手が迫ろうとしていた。

 

 

 

―――

 

 ベベッサ達の武器は、全て闇市場の鍛冶屋で作られた違法武器となっている。防具はカモフラージュも兼ねて表でも作られるようなものだ。

 特徴はなんと言っても、武器から滲み出る高濃度の毒物。毒、麻痺毒、睡眠毒の濃度は定められている濃度の数倍を越える。

 一滴でアプトノスを黙らせるほどの毒を供えたこの武装と、大量の罠で確実に仕留めるのが彼女らのスタンスだ。リーダー格のベベッサが毒の弓、ロイネイが麻痺の双剣、ゴロが麻痺毒の狩猟笛、ワンラダンが睡眠毒のハンマー。

 

 

 一撃でも食らえば悶絶するこの状態異常を持って戦えば勝機は高い……そう思われていた。

 

 

 4人はモノブロス変異種に圧倒されていた。

 

「ロイネイがやられたでぇ!」

 

「ほっときな!ワンラダン、早く罠を……そっちっ!」

 

「うごばっ!?」

 

 モノブロスだと事前に聞いていたから、バインドボイスによる氷柱よりも突進からの激突を期待して洞窟へ誘い込んだのだが……その予想は無駄に終わった。

 

 ディアブロスにもいえることなのだが、角竜は勢い余ってブレーキが利きにくいという特性もある。

 しかしモノブロス変異種はそれがない。発達した足腰と氷雪の大地に適応した鋭い爪は雪原だろうが氷上だろうがピタリと止まれるのだ。

 さらにガリガリと氷を削りながら強引にUターンし、隙を見せることなく再度突進するという荒業も披露。突進後のブレーキと薙ぎ払いを狙って側面へ回りこもうとしたロイネイの期待を裏切り、吹き飛ばす結果となった。

 

 一回でもベベッサ達の攻撃が通ればいいのだが、それを許さないほどにモノブロス変異種の猛攻は激しい。

 バインドボイスは黒轟竜のように衝撃波を帯びてハンター達を吹き飛ばし、尾を薙ぎ払って雪玉を三方向に飛ばし、角を突き刺して巨大な氷をぶつけるなど多彩な攻撃を見せ付ける。

 しかも元々の身体能力が高いからか動きの1つ1つが早く、隙も少ない。下手に剣士が近づけばロイネイのようにやられてしまう。

 近づくことすら難しく、オマケに甲殻が硬い為にベベッサの毒矢が貫けないという最悪の事態にまで陥っている。

 

 罠を張ろうものなら突進の餌食となり、閃光玉を使えば地面に潜ってエリア移動。

 大型モンスターにある隙がほとんどなく、当らなければ状態異常攻撃も通用しない。素のステータスが並のモンスターを上回っている。

 

「まさかG級だったなんてね……!」

 

 仕方ないとロイネイを置き去りにして逃げようとするベベッサは、残る手下2人を連れて愚痴る。

 密漁ハンターはその所業故にG級ハンターとなりえる逸材はいない。道具に頼り切った彼らは技と身体を鍛えようとする努力が無いからだ。

 G級となれば幾ら違法武具を持ったとしても相手にするのは厳しい。懸念していたとはいえ、そうと解ればずらかるのが一番。

 幸いな事にペイントの臭気からしてモノブロス変異種は追って来ないと解り、ベベッサは安堵の息を零す。

 

 

―そう思ったのも束の間。

 

 

「が」

 

「ぺ」

 

 後ろで手下2人の声がした。悲鳴とも叫びとも言えない声が。

 そして仮にもハンターであるベベッサは、その僅かな間に感じ取っていた。自分達以外の人物の存在に。

 彼女が振り向いた直後に見えたのは4人の人物と、それぞれの防具につけられたエンブレム。

 

 

 

―ギルドナイトと呼ばれる一団の紋章だと気づいた時、彼女の意識は途絶えた。

 

 

 

―――

 

「ち、ちくしょうあいつら、俺を置き去りにしやがって……!」

 

 ずり、ずりと無残な足を引きずってロイネイは物陰に隠れながら歩く。

 スクアギルに感づかれないようしっかりと止血したとはいえ、いつモンスターが襲ってこないかと考えると、怒りよりも恐怖が勝ってしまう。

 

 実力ではベベッサに劣るとはいえ、豊富な経験を持つロイネイは薄々気づいていた。変異種狩りは一攫千金でしかないと。

 その実は成功例が極端に少なく、変異種狩りを行おうとして失敗し、命を落とした密猟ハンターが大半を占めている。いわば博打のようなものだ。

 密漁が上手くいっているからといって調子に乗っていたツケだとロイネイは思った。ベベッサは理論より感情で行動するタイプだからいつも引っ張られるんだと愚痴を零して。

 

「と、とにかく逃げ……っ!?」

 

 

 さて、ここで問うとしよう。

 

 

 逃げ出した直後にギルドナイトと遭遇したベベッサが不運なのか。

 

 

―ギオオォォォォォォォォォ!!!!

 

 

 それとも怪我を負って逃げている所へ凍角竜と遭遇したロイネイが不運なのか。

 

 

 

 少なくとも、法を犯した者が露見すれば碌な事にならないのは、どの世界でも言えることだろう。

 

 

 

―完―




脅されたハンターが誰かって?誰でしょうねぇ(コラ)

今回の変異種は久々のモノブロスです。ディアより好きなんですが、2Gでどれだけ苦戦したことか(涙)
純粋な身体能力の高さに加え、このモノブロスは隙が少ないのが特徴です。ブレーキが凄いです。
オマケに雪玉も飛ばせる優れもの。そんなモノブロスでしたが、いかがだったでしょうか。

今回もアッサリしてしまいましたが、また次回を楽しみにしてくれたら幸いです!

○本日の防具と素材一覧

●モノブロFシリーズのスキル一覧(共通)
・回避性能+2
・スタミナ急速回復
・ランナー
・なまくら
・見切り-1

●主に剝ぎ取れる素材一覧
・凍角竜の硬甲殻
 凍角竜の青白い甲殻。表面は鑢のようにザラザラとしており、これで分厚い氷を削る。
・蒼穹の角
 モノブロス変異種の角。恐ろしいまでに青いそれは別名「蒼の力」とも呼ばれているとか。

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