Monster Hunter Delusion【更新停止】 作:ヤトラ
活動報告に記載されていた読者アイディアを参考にさせていただきました。ありがとうございます!
―お願い―
どうか6/19にあった記載ミスについて触れないでください(土下座)
今、世間ではある絵師が名を馳せている。とはいっても著名というわけではなく、静かなブームという程度だが。
その絵師は若き頃にハンターを務めていたが、あるクエストで大怪我を負った日を境目に絵を描き始めたという。脚が悪くなっただけなので生活に支障は無い。
絵師の名はクーカ。今年で齢60歳を迎えるご老公で、彼が20年間書き続けた絵画は素晴らしい出来栄えとなっている。
例えば、草原の中1匹だけ佇んでいるケルビの絵。
例えば、崖から飛び降りるリオレウスとリオレイアの絵。
例えば、溶岩から這い出るグラビモスの絵。
アイルー達がワイワイと踊っているイラストは子供達に大人気で、「踊る獣人」というシリーズが流行しているほどである。
そんな絵画の中でクーカがもっとも力を込めたのがユクモ風に描かれた「風と雷のベリオロス」だった。
風のベリオロスは亜種である風牙竜を指すから解るが、この雷のベリオロスを知る者は居ない。知るのは、偶然この雷のベリオロスに遭遇し、致命傷を負わされたというクーカのみ。
かつてクーカが大怪我を負って療養中に描いたというこの絵には独特の作風と力強い印象が秘められており、クーカは芸術家達の間で名の知れた絵師となったのだ。
そしてある日、クーカにとって転機が訪れた―――雷を放つベリオロスがユクモ地域の砂漠で目撃されたというのだ。
―――
「爺さん、本気で付いていくつもりか?」
「当たり前じゃ。
確かに雷を操るベリオロスなら「雷牙竜」の二つ名があっても可笑しくないが、グラビSシリーズにガンランスを持つハンター・ライーザは困ったように頭を掻く。
依頼主であるこの老人が噂のクーカであることに驚いたが、「疾風迅雷」と名づけられたクエストは高い難易度を誇る。
何せベリオロスの亜種とその変異種らしきモンスター2匹が同時に出現したというのだ。放っておいたら近隣の村に被害が及ぶこともあり、ギルドは精鋭のハンターを呼び集めた。
それがライーザを含めた4人のハンターがメンバーを務める、ロックラックが本拠地のギルド「砂漠の鮫」である。
砂原といった狩猟フィールドでの活動を得意とする彼らは特性のキャラバンに乗って各地を移動しているという。
ロックラックのギルドからの評価も高く、彼らにベリオロス2匹の狩猟を依頼したのだ……依頼主であるクーカをオマケにして。
始めはメンバーも含めて足手まといになると渋っていたが、元ハンターに加え日頃から筋肉トレーニングを怠らないという彼は、歳に似合わぬ強さを持っていた。
護身用に持ってきた片手剣も上等なもので、ジャギィぐらいなら簡単に撃退できる力もある。力自慢のメンバーに腕相撲で勝てたこともあり、付いて来るだけの資格はある。
とにかく目標であるベリオロスを探すべく、灼熱の日差しの中歩き出す。ちなみにクーカはオトモアイルー4匹が担ぐ輿に腰掛けていた。
目的は討伐または捕獲と条件は緩いものの、果たして無事に達成し帰還できるのか、そもそも雷牙竜を発見できるのか。それが気がかりな4人であった。
――
雷牙竜ベリオロス変異種。その名の通り、雷を操るベリオロスの変異種である。
とはいっても原種の氷牙竜からの派生ではなく、その亜種である風牙竜から派生したものなのだという。ややこしい。
何故風牙竜が雷属性を纏うようになったかといえば、甲殻に変異を生じたことから始まる。
帯電しやすい性質となった青白い甲殻は、砂漠地帯特有の乾燥した空気と摩擦によって静電気を蓄積し、一定の電力が蓄電されると放電する性質を持つようになったのだ。
これにより風牙竜にはない雷撃を繰り出すようになったものの、電力を消費すると疲労するという致命的な弱点も持ち合わせる、いわば諸刃の剣。ジンオウガのようにシビレ罠の電力を吸収できないし。
そんな雷牙竜はどういうわけか風牙竜をライバル視し、風牙竜もまた自身の派生種である雷牙竜をライバル視している。
お互いに別種ではなく同種だと捉えているのか、雄同士だと激しい縄張り争いを引き起こし、竜巻と雷が入り乱れる大決戦と化するのだ。
竜巻が舞い雷が入り乱れ、2匹の牙竜(正しく飛竜種だが)は牙を剥き出しにし取っ組み合って戦う。
―――
凄い光景だった。そうライーザは目の前の光景を目の当たりにして思った。
砂原の砂を巻き込む竜巻が塔のように聳え、そこからバリバリと電撃が流れている。
竜巻と雷撃が消えたと思ったらそこにはライーザ達が知る風牙竜と取っ組み合っている青白いベリオロスが目に入る。激しい戦いには違いなかった。
恐らくあの青白いベリオロスこそが、クーカ老人が言っていたベリオロスの変異種「雷牙竜」だろう。全身から雷光を走らせる姿はまるでジンオウガのようだった。
「おおぉぉぉ……数十年ぶりじゃ……っ!」
後ろの岩陰では双眼鏡を持って観戦しているクーカ老人とビビって輿の後ろに隠れるアイルー達。まぁあの場所なら見つかりにくいだろうと、ライーザは放っておくことにした。
ここで仲間と相談したのだが、縄張り争いをしているし放っておけばいいのでは?という意見が挙がったが、それは脚下となった。
何せあの2匹の争いは広範囲に竜巻と雷撃が入り乱れる為、もし人の住んでいる場所に近づいたらとんでもないことになる。
せめて片方だけでも討伐すべきではないかと提案したライーザに他3名が同意し、では狩猟しなれている風牙竜に3人が集中攻撃、ライーザが雷牙竜の気をひきつけることで意見を纏めた。
―では、狩猟開始!
―――
風牙竜と雷牙竜。この2匹の争いには執着に似たようなものがあった。
排他というよりは決着を求めているかのようなガチンコ勝負。時には牙を見せあい、時には身体をぶつけ合うなど、時間が経つにつれて激しさを増していく。
だからだろうか。こやし玉などで隔離し囮で気を牽き付けようとハンター達が奮闘するも、それらは殆ど無駄に終わっていた。
何せ片方が悪臭でエリアを移動すればそれを追いかけ、背を向けようものならハンターごとまとめて襲いかかる。けむり玉で視界を隠しても、第六感でもあるかのように的確に攻撃してくる。
分離しても再び合流し、ハンターというよりはベリオロス同士の戦いに発展させ、その二次災害としてハンター達に被害が及ぶのだ。
しかも近づいて解ったのだが、この2匹の攻撃範囲は広く、そして意外な事に連携攻撃にも発展しやすい。
風牙竜が砂塵竜巻を起こせばそれに合わせて雷牙竜が電撃ブレスを発射し、雷を入り混ぜた竜巻となって周囲に襲いかかり。
剣で争う騎士のように尾を右へ左へと振ってぶつけあい、それが風圧と電撃を生じ周囲を荒す。
間に割り込もうものなら両者がタックルを繰り出して押し潰し、閃光玉で目くらまし状態になれば竜巻と電撃を生じ、それに乗って飛び上から雷と砂塵を降り注ぐ。
なんていうか、まるで災害のような連中だった。古龍種に劣るだろうが、広範囲の巻き添えは面倒の一言に尽きる。
そんな2匹と4人の乱戦(?)を双眼鏡越しで見て「あの時と同じじゃ……」と感涙の涙を浮かべて観戦するクーカ老人は暢気で羨ましい限りだろう。
これ以上は詳しく語らないが、とりあえず風牙竜の討伐には成功した。
雷牙竜は風牙竜が倒れるのを見た後、どこかへ飛んで行ったという。追うにもハンター達は気力を使い果たしてしまい、とても走れるようには見えなかった。
依頼主であるクーカ老は満足したようだし、撃退したという証拠でもある雷牙竜の爪も採取済みな為、ギルドも了承はするだろう。納得はできないだろうが。
クーカ絵師の新作「疾風迅雷」と共に世間に広まった「雷牙竜」なるベリオロス変異種の噂。
風牙竜が現れし所に雷牙竜ありきと伝えられたその存在は、ごく僅かなハンターの目に留まっていると聞く。
―完―
中途半端になってしまい申し訳ありません。たまにはサッパリさせようと思ったのですが(汗)
2匹揃った姿はまさに「風神雷神」!それに痺れて今回の変異種を書かせていただきました。
それでは皆さん、変異種紹介とスキル・素材一覧を記しますが、また次回にお会いしましょう。
●変異種紹介
雷牙竜ベリオロス変異種
甲殻が変異し、乾燥した空気と摩擦により静電気を発生できるようになったベリオロス亜種の変異種。
行動の度に電気が蓄積され、ある一定の蓄電により雷を纏うようになる。また雷攻撃を受けるとダメージは受けるものの微量だが給電される。
一番空気が乾燥する砂漠の日中などに行動する他、風牙竜を積極的に攻撃する。
○本日の防具と素材一覧
●ベリオDシリーズのスキル一覧(共通)
・雷属性攻撃強化+2
・逆境
・スタミナ回復遅延
●主に剝ぎ取れる素材一覧
・雷牙竜の重殻
雷牙竜の背面を覆う外殻。強度が高く蓄電機能も高いが、同時に発電量も多い。
・翡翠色の重牙
雷牙竜の美しい翡翠色の牙。これで作られた片手剣は上質な雷属性を宿すという。