Monster Hunter Delusion【更新停止】   作:ヤトラ

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今回のテーマは二つあります。「強いケルビ」と「ニトロダケに偏ったババコンガ」です。
ババコンガは活動報告のアイディアを採用させていただきました。ありがとうございます!

今回から転生者要素は極力話数を少なくします。感想板でのご指摘のおかげです。
今回は野性100%でお送りします。楽しんでもらえれば幸いです。


part24:「角獣と赤毛獣の生態」

 この世は弱肉強食。弱者は強者の血肉となるのが定め―――とは言うが、実はこの世界は驚くほどに効率的で、弱者と強者に差は無い。

 無尽蔵に蔓延る草木は弱者である草食動物の餌となり、草食動物が繁殖すれば肉食動物の餌になる。そして草食だろうが肉食だろうが朽ちれば草木の栄養となり、また草木が蔓延る。

 そして強者でも隙さえ突かれれば弱者に命を奪われる事など、広いこの世界ではしょっちゅうある出来事だ。追い詰められたケルビはリオレオスですら突き殺すのだ。

 

 

―そう……例えば鋭く立派な角が生えた角獣(かくじゅう)ドスケルビのように。

 

 

 ケルビといえば温暖な気候を好む草食種で、小柄な身体でありながら跳躍力があり、食べて良し薬にして良しの癒し系として有名な小型モンスターだ。

 雄雌とで違いがあるが、共通しているのは各地にその姿を確認できる程の繁殖性と大抵の肉食モンスターの餌食になるという所。

 しかしケルビは環境条件が恵まれていれば身体が大きく育ち、大きく立派な蒼い角を持つようになることもある。この蒼角はロックラックではインテリアとしても有名な為、高値で取引されるという。

 

 ケルビは長生きすればするほど大きく強く育ち、群のリーダーとして長年の経験を積んで強敵となる。それがギルド内で密かに呼ばれているドスケルビだ。

 草食モンスター、それも小柄なケルビがここまで成長することは滅多に無く希少価値が高い為、ギルドはこのモンスターを公表せず当然ながら狩猟を命じることもない。

 「角獣」の二つ名に相応しい剣のように鋭い角は脅威ではあるが、こちらから害を与えなければ攻撃することはないので危険度も低く、わざわざ狩るほどの相手ではないとギルドは考えているからだ。

 

 では今回は、地底洞窟のとある時期に出現した角獣に加え、「赤毛獣(せきげじゅう)」の生態を紹介しよう。

 

 

 

―――

 

 鬼蛙テツカブラ。両生種に区分されているこのモンスターは、動く物ならなんでも餌と見て食らう大食漢だ。

 そんなテツカブラは、今あちこちを跳びまわって逃げ惑うケルビ達を餌と定め、食らい付かんと追い掛け回していた。

 とはいえテツカブラの動きは直線的なものが多く、ジグザグに跳んで逃げるケルビ達を捉え切れずにいる。ちょこまかと数匹が逃げ惑っていることもあり、狙いが上手く定まって稲いようだ。

 

 そんな時、一匹の勇姿が現れた。地底洞窟のケルビ達を纏める群のリーダー・ドスケルビだ。長くて鋭い蒼い角は、まるで三つ叉の槍のようだ。

 逃げ惑うケルビ達が横切ってもドスケルビは雄雄しく立ち止まり、あっちへ跳びそっちへ跳んで捕まえようとするテツカブラを目の当たりにしていた。

 

 とはいえ、正面から挑むようなドスケルビではない。得意の後ろ脚キックも角による刺突も大柄なテツカブラを前にすれば効果が薄いということが解っているからだ。

 なのでドスケルビは周囲に群が居ないことを確認した後、テツカブラに背を向けてジグザグに跳ぶ。当然、テツカブラは獲物だと認識してドスケルビを追う。

 しかしドスケルビのステップは広く素早い為、体格差で勝っているはずのテツカブラですら追いつけずにいる。そもそも動きが単調な為、ドスケルビの動きについていけない。

 

 それでもドスケルビが一定の方角に向かっていることは確かなので、テツカブラはドスケルビを追いかけ続けている。

 しかしドスケルビの狙いはそれにあった。ドスケルビはこのテツカブラを誘導し、あるモンスターの元へ送らせようとしているのだ。

 その為にも、しっかりとジグザグに逃げなければ。後ろを振り向くという知恵が無い以上、鍛えた足腰で逃げるしかドスケルビにはない。

 

 

 光蟲や鉱石が乱反射を繰り返し淡い光を放つ、地底洞窟のエリア2。

 ゲネポスといった肉食の小型モンスターはおらず、クンチュウやオルトロスがウロウロしている程度だ。

 そんな洞窟エリアに、一匹の大型モンスターが仰向けになって寝転がっていた。

 

 鮮やかな赤い毛色。焦げたような黒い肌が目立つ腹。黒と赤のコントラストが光るババコンガ変異種・「赤毛獣」である。

 このババコンガは味に偏りを覚えたグルメであり、偏った食性に変化したことで変異種となったモンスターだ。亜種とも言えなくはないが、ここは変異種ということで通してもらいたい。

 ではこのババコンガの大好物が何になったのだろうか。それは赤い体毛を見れば解ると思うが、この後の戦闘を見て予測してもらうとしよう。

 

 そんなババコンガ変異種がグースカと眠っている中、洞窟の奥地から何かがやってくる。角獣ドスケルビだった。

 ドスケルビは一度立ち止まって周囲を確認し、仰向けで眠っている赤毛のモンスターを見た途端にそちらへと跳ぶ。どうやらドスケルビはこのババコンガ変異種を探していたようだ。

 

 そしてドスケルビはその分厚い皮で覆われたババコンガ変異種の腹を踏みつけ、トランポリンのように飛び跳ねて崖へと落ちる。

 ドスケルビは高い所から落ちても着地できるほどの技量を持っている為に平気だし、小柄なドスケルビに踏まれた程度ではババコンガ変異種は驚くことはない。

 

 しかし、遅れて登場したテツカブラに踏まれたのなら別だ。

 ぐぎゃーっと悲鳴を上げて起き上がったババコンガ変異種は、「どこへ行った?」と周囲を見渡すテツカブラの下で暴れ出した。

 テツカブラは遅れて足元に居るババコンガ変異種の存在に気づくが、それより先にババコンガ変異種の口から火炎ブレスが吐き出される。

 高温に驚いたテツカブラは後ろ脚に力を込めて跳びあがるが、余計にババコンガの腹に負担が掛かったらしく、ボッと赤い粉塵が屁と共に放たれた。

 

 着地して振り向くテツカブラを前に、態勢を立て直し起き上がったババコンガ変異種は怒りのあまり立ち上がり、威嚇。当然といえば当然か。

 テツカブラとしては動く物であれば餌に違いないので、今度はこのババコンガ変異種を獲物と定め狩りをすることに決めた。単純なものである。

 咆哮を上げるが、ババコンガ変異種は動じなかった上に大きく跳躍し、自慢のデカい腹を突き出してフライングボディプレスを繰り出す……が、テツカブラはひょいと跳躍して回避。

 そのまま地面に腹からダイブ。口と尻から赤いガスが漏れ、ババコンガ変異種の周りで爆発が起こったではないか。この爆発に流石のテツカブラも気づかず巻き込まれ、顔をやられてしまう。

 

 このババコンガ変異種が何を好んでいるかといえば、火炎草とニトロダケである。

 食べた物をガスとして放出する胃袋を持つババコンガだが、偏った食性により体内が変化、好物を食してさえ居れば体内から可燃ガスとして放出する特性を持つ。

 こうしてボディプレスが外れたとしてもガスが漏れ、それが即座に爆発するのだから油断は禁物だ。でないとテツカブラのようにやれてしまうぞ★

 

 まぁとにかく、顔をやられたことで不意討ちを食らい混乱していることを良い事にババコンガは大きく息を吸い、口から赤いガスを放つ。

 テオ・テスカトルのような、一定時間が経過すると爆破するガスはテツカブラの全身に満遍なく降り注がれ、加えて強烈な悪臭も混ざるのだから辛い。

 嗅覚が敏感でないのは幸いだが混乱しているところへさらに悪臭が混ざることで、今度は悶え苦しみ出したテツカブラ。その暴れ具合はババコンガ変異種を巻き込むほどだ。

 ドッカーンと突き飛ばされギャグ漫画のように壁に激突したババコンガ変異種だが、すぐさま復帰。タフな奴だ。

 

 正気に戻ったテツカブラは激おこぷんぷん状態に陥り、怒りのままにババコンガに向けて突進する。

 しかしババコンガ変異種はこれを跳躍して回避。今度はテツカブラが壁にぶつかるものの、すぐに復帰……するつもりだったが、牙が上手い具合に刺さって動けなくなってしまった。なんてこったい。

 幸運なババコンガ変異種はテツカブラが壁に刺さって動けない事を良い事に最後っ屁をお見舞いしてやろうと、尻を向けて力む。下品さは亜種並のようだ。

 

 しかし忘れているようだが、テツカブラの身体には先ほどの赤いガス……ニトロダケを分解して出来た爆破ガスが降りかかったまんまだ。

 今まさに爆発しようとしたところへ、ババコンガ変異種特有の着火放屁による爆発が加われば……。

 

 

―粉★塵★爆★発

 

 

 狭い洞窟で起こった爆発はその威力を押し潰すようにして圧迫し、ババコンガ変異種はその爆発の勢いでエリア8に続く崖へ一直線。

 まるで漫画のように飛んで行くババコンガ変異種は頭から地面に突っ込み、地面に上半身を埋めて気絶してしまった。

 ……まぁ、埋まらなかった下半身がピクついている所からして生きているようだが。やはりこのババコンガ変異種は幸運……なのだろうか?

 

 そして不運だったのはテツカブラだ。爆発に巻き込まれておきながら生き永らえているとはいえ、今もなお牙が壁から抜けないのだから。

 今の爆発の衝撃をマトモに受けたことで相当のダメージを負ったらしく、抜こうものならしばし休んで体力を回復させる必要がある。腹は減るだろうが。

 

 

―だがしかし、現実は非情である!

 

 

―そのタマ獲ったらぁぁ!

 

―ぐぎゃーっ!?

 

 なお、上記の台詞はイメージです。ドスケルビがテツカブラの弱点である白い尾を突き刺した時に浮かんだ雰囲気です。

 

 今の爆発で戻ってきたドスケルビはこのチャンスを逃しはしない。槍のような角でテツカブラの尾を突き刺した!

 肉質が柔らかくなったテツカブラの尾は大きな弱点であり、ここを突き刺されたテツカブラは強烈な痛覚を負い、そのまま気絶。

 刺された箇所からは止め処なく血が流れていき、このままでは失血量を超えて絶命するだろう。

 

―ドスケルビはその様子を見て、ドヤァ、と胸を張った……ように見える。

 

 小癪な手段だとお思いだろう。リーダーの身分でありながら逃げ惑い、別の大型モンスターに押し付けたのだから。

 しかしそんな知能があるからこそ生き延びたモンスターだっているのだ。ゲリョス然り、古狗竜トライジャギィ然り。

 逃げる事も、他に押し付ける事も、トドメはしっかり刺す事も、この角獣ドスケルビは長生きして学んだから知りえた事だ。

 

 

 

 こうしてドスケルビは、ケルビの群の平和を守ったのだった。

 しかし侮るなドスケルビ!敵はまだまだ沢山いるぞ!ネルスキュラとか、ネルスキュラとか、ネルスキュラとか!

 頑張れドスケルビ!負けるなドスケルビ!ケルビの明日は君に掛かっているのだ!

 

 

 ちゃんちゃん★

 

 

―完―




・赤毛獣ババコンガ
 鮮やかな赤い体毛が特徴のババコンガの希少種。火薬草やニトロダケばかり食したため体毛が赤く変色しており、皮膚は焦げたように黒い。
 炎ブレスや火薬ブレス(爆破やられ)など放ち、またフライングプレスやボディプレスをした際、爆風が体の周りから発生する。
 さらにフン投げのフンが爆弾となっており、また爆発せずそのまま燃え続けるフンも存在している。放屁をした際には尻に引火し、不規則に2足歩行で走り回る。

上記のデータは活動報告にあったものを転載したものです。アイディア提出ありがとうございました!

それにしても、今回もまた「粉★塵★爆★発」が出るとは思いませんでした(苦笑)
ドスケルビは活動報告では飛竜種並みに強いとありましたが、限度を考えてしまいこのような結果となりました(汗)

それではまた次回にお会いしましょう!

○本日のスキルと素材一覧

●コンガBシリーズのスキル一覧
・強運
・ボマー
・腹減り倍化【小】

●主に剝ぎ取れる素材一覧
・赤毛獣の剛毛
 ババコンガ変異種の毛。ニトロダケと火薬草の成分が滲み出ており、着火すると弾ける。
・赤毛獣の尖爪
 ババコンガ変異種の鋭い爪。この爪は火打ち石のように火を起こす性質を持つ。

なお、ドスケルビは通常のケルビと同じ素材しか剝ぎ取れません。強いて言えば「蒼角」ぐらい。

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