Monster Hunter Delusion【更新停止】   作:ヤトラ

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今日のテーマは「火山地域に適応したザボアザギル」です。
モンハン4Gで砂漠に出現する亜種が出たので不安ですが……まぁ大丈夫だと思いたいです。
個人的にザボアザギル大好きですし!モンハン4Gで新種の両生種出して欲しいなぁ。

もう一つのテーマは「自然の猛威」です。
これを考えた後、クエストクリア後にドリンク効果が切れてもちゃんとドリンクを飲ませるようになりました。
そう考えるとナグリ村って凄いですよねー、溶鉄に溶岩を使うとはいえ、火山地帯に住んでいるんですから。暑さ対策とかしているんだろうか?

5/11:作者の活動報告内とんぷー様記載「化燃鮫」と被っていることが解りました。誠に申し訳ありません(汗)
   今後はリクエストに似たものがあった場合、活動報告内の製作者の許可を得て書いていきたいと思います。


part23:「熱鮫の生態」

 進化とは果ての無い競争だ。果てが無いと解っておきながら、それでも生きる為に長い年月を掛けて姿を変え、性質を変える。

 そんな進化の道を切り開くのは、いつだって祖先と言う名の(たね)からだ。その祖先も大昔の何かから派生したものだろうが、祖先には区切りというものがある。

 例えば、大昔に絶滅したという鳥竜種の祖先「イグルエイビス」。全ての鳥竜種はこのイグルエイビスの子孫だと言われているほどだ。

 例えば、ティガレックスを始めとした四足歩行型飛竜種の祖先である「ワイバーンレックス」。絶滅したこのモンスターは、後の強者達を生み出す結果となる。

 

 そう、モンスターにとっての「祖先」とは進化の分岐点に等しく、そこから原型を留めつつも様々な適応を可能とする。

 火山に生息するアグナコトル原種と凍土に生息するアグナコトル亜種が現れたのも、アグナコトルの祖先に関わりがあるのではと考えられるほどだ。

 最も、近年では突然変異や環境変化で原種から進化した変異種が注目されているが……急激な変化もまた進化の一つだろう。

 

 最も、そんな激しい形状変化や生態の変質を現すのは、多種多様な種族を持つモンスターぐらい。環境を自身に適した物に変化させ、同種同士でしか交じり合わないことで種を保ち続けた人間には不可能だろう。

 少なくとも、人間は薬に頼らなければ極端な寒冷地や熱帯地に足を運ぶことなど不可能なのだから。

 

 

 

―――

 

「熱い。熱すぎる。熱くて死にそう。ていうか本気で死ねる」

 

 それが、転生者サカモトが己のゲーム知識を呪いながら呟いた言葉だ。

 

 彼は地底火山にいる。活性化した火山は溶岩を遠慮なく流し、空気ではなく炎が充満しているかと錯覚するほどに待機を熱してくる。

 高温に晒されていながら溶ける気配の無いクモの巣の下ではイーオス達が元気いっぱいにサカモトを威嚇し続けている。暑さなど気にしていないように。

 サカモトはそれがムカついて仕方なかった。殺してやりたいぐらいにムカついたのだが、それ以上に暑さによる怠惰感が勝り、無視することにした。

 熱で真っ赤に染まったサカモトの身体は先ほどまでビッショリと汗で濡れていたのに、火山の奥地へ行くほどその汗が蒸発し、今では汗で濡れる暇も無い。

 

 バカだ。支給品のクーラードリンクを忘れてきた自分は大バカだ。初の火山入りだから採掘しまくろうと浮かれていた自分は超のつくバカだ。

 誰だチートな転生者だから暑さぐらいなんとかなるだろうと言った奴は……俺だ。甘くみていた。なんだこの暑さは。暑いどころか熱い。肌が焼けているかのようだ。サウナだってこんな熱くねーよ。

 こんなことなら転生特典を「グラグラの実(カナヅチ無し)」じゃなくて「マグマグの実(カナヅチ無し)」にすりゃよかった。咄嗟に浮かんで提案した俺が憎いぜ畜生。

 

 そんな事をブツブツと呟きながら、フラフラとした足取りで討伐対象のグラビモスを探そうとするが……その足取りは重い。

 ゲーム知識では、グラビモスは火山の池があるエリア2か、クンチュウやリノプロスが闊歩するエリア8、休眠場所としても有名なエリア9にいるはず。

 しかし彼は未だに地底火山の中腹であるエリア4に留まっている。いや、エリア2に通じる崖に行こうとしては戻り、行こうとして戻りを繰り返しており……行きたくないというオーラが全身から溢れ出ていた。

 

 何せマグマが流れていないエリア4だけでこの暑さだ。下へ行けばこれ以上の熱が待っていると思うと……地獄を味わうようで行く気になれないのだ。

 しかし自分は(自称)一流ハンター。これまで数多のクエストをこなしてきた自分が熱いから逃げたとなれば今までの名声に傷が付く。それは避けたい。

 今から支給品を取りにいくとなると体力が持つかどうか不安だ。傷の問題ではなく疲労的な意味で。熱さでダルくて取りに行く気にもなれないし。

 かといってグラグラの実の能力を広範囲に使おうものなら大噴火を引き起こす可能性も考えられる。今までは狭い範囲でしか使わなかった為、上手く発動できるかですら妖しい。

 

「……あー、チキショー!瞬殺すればいいんだ瞬殺してぇぇぇぇ!」

 

 悩みに悩んだサカモトは自棄になって決意を固め、エリア2へと続く崖から飛び降りる。

 いや、自棄になったというのは語弊があるかもしれない。彼はこれまで自身の能力を使って即座に狩りを決めれる為、今回もさっさと瞬殺して帰ればいいと思ったのだ。

 

 

―その先に地獄が待っているとも知らずに。

 

 

 

―――

 

 エリア2では、サカモトの予想通り、大型のグラビモスが闊歩していた。

 ギャアギャアと騒いで威嚇するイーオス達を余所に、グラビモスは散歩でもしているのか、ブラブラと尻尾を振りながらその辺を歩く。

 お目当ての鉱石が無い為に腹を空かせ苛立っていたグラビモスだが、ある気配を察知してそちらへと振り向く。

 

 そこに先にあったのは転生者サカモトの姿―――ではなく、マグマの池に立つ一枚の背鰭だった。

 

 すいすいとマグマを泳ぐそれはどう見ても魚類などが持つ背鰭でしかなく、しかしグラビモスは何なのかと首を傾げる。イーオス達もなんだなんだと騒ぎ出した。

 しかしすぐにどうでもよくなったグラビモスは、マグマの池に立つ背鰭に狙いを定め、溜まった苛立ちを吐き出すかのように熱線を発射。

 熱線が届くその前に、マグマの池に変化が現れた。背鰭の主がマグマの水面から大きく跳び上がりし、グラビームを回避したのである。

 

 

―マグマを泳いでいた背鰭の正体は……オレンジ色のザボアザギルだった。

 

 

 このオレンジ色のザボアザギルは、ザボアザギルの祖先(・・)が火山地帯に適応した熱鮫(ねつざめ)と呼ばれる変異種だ。

 このザボアザギル変異種の鮮やかなオレンジ色は溶岩に適応する為に皮膚が変化したものだと思われるが、形状そのものはザボアザギル原種と同じである。

 火山地域に適応した経緯は解っていない。アグナコトル原種が凍土に適応し進化したアグナコトル亜種のように、具体的な理由は解っていない。だからこそ可能性の一つとして、ザボアザギルの祖先が絡んでいるのではないかと考えらている。

 噂になっている新たなフィールドに目撃されたという砂色のザボアザギルもこの祖先が派生して進化したものだとも考えられているが、詳しい詳細は解っていない。あくまで噂なのだから。

 

 さて、マグマから跳躍した熱鮫はそのままグラビモスに向けて落下。硬く重いグラビモスとはいえ、同じぐらい大きな熱鮫が上から圧し掛かってきたら倒れざるを得ない。

 重心を崩し倒れたグラビモスの上でさらに跳躍して距離を取った熱鮫は、グラビモスが起き上がる前に挑発の意を込めて吼える。

 そして熱鮫は身体に力を込め、ある変化を生じさせる。

 

 両生類は変温動物に属しており、周囲の環境や季節によって温度が変わってくる。故に寒い季節になると体温が低下するので冬眠をするのだが……両生種はそんなことはしない。むしろ寒い地域だってへっちゃらなスーパーフロッグなのである。

 だがこの熱鮫は火山地帯に適応するに当って驚くことに、周囲の温度に関係なく、体内の血液や特殊な体液により、体温を変化させるといった独自の身体の作りを編み出したのだ。

 体内の温度を捕食によって保つ一方、熱を通しにくい内層の皮と熱を通しやすい表層の皮で身体を覆い、二層の間に熱を操作する体液を流し調節する仕組みとなっている。

 この皮の間に流れる体液を冷たい物に変換させることで、表面にこびりついたマグマや溶けた鉱石に込められていた熱が冷えて固まり、火山石の鎧へと変貌させるのだ。

 原種のザボアザギルのように尖ったフォルムではなく、どちらかといえば黒鎧竜グラビモス亜種のように黒く丸みのある甲冑のようなフォルムとなっている。

 殻というよりは蛇の鱗のように冷えて固まった溶岩がこびりついているだけな為にかなり歪だが……防御性があがったのには違い無い。

 

 やっと起き上がり、なにすんじゃわれー、と言わんばかりに咆哮するグラビモス。熱鮫よりも大きな音を出すため、熱鮫は怯んでしまう。

 グラビモスはそのまま腰を落とし、熱鮫に向かって突進。怒っているからか、その速度は通常よりも速めだ。

 しかし火山石の鎧を纏ったからといって大幅に機動力が落ちたわけではない熱鮫にとって問題は無い。縦へ跳べなくなった代わりに横へ跳ぶことで突進を回避、グラビモスはブレーキを掛けるも壁に激突。

 壁に激突したからといって気絶するグラビモスではなく、大きな尻尾を振って身を守りつつ後退。すぐさま振り向き、熱鮫の位置を確認する。

 その間に攻めようとする熱鮫は原種にもあるような構えでグラビモスを見据え、突進。強靭な後ろ脚はグラビモス以上の速度で襲い掛かってくる。

 そのままグラビモスの首根っこをガブリ。しかし鋭い歯がずらりと並ぶ大口とはいえ鉱石の甲殻を持つラビモスの首を圧し折ることはならず、噛み付く程度だ。

 

 大きな口で首を噛みつかれているにも関わらず、鬱陶しいとばかりに大きく体を揺らし、熱鮫を振り払おうとするグラビモス。

 大きさはほぼ互角とはいえ、パワーと重量はグラビモスが上。しっかり噛み付いている上に火山石の鎧で重さが増しているとはいえ、呆気なく振り回されてしまう。

 しかし食欲旺盛な両生種の血筋は伊達ではない。強靭な顎でしっかりとグラビモスの首に噛み付き、決して離そうとしない。未だに噛み切る気配が無いのが悲しい所か。

 

 逆に噛み切られる心配が無いと感じ取ったグラビモスはそのまま力の限りを尽くして暴れ、ザボアザギル変異種を振り払おうとする。

 やがて暴れるだけでは駄目だと悟ったグラビモスは、壁に向かって突進。壁に自身ごとぶち当たるもよし、諦めて首を離せば尚良し。

 

 そして壁に激突する直前―――風船のように膨れ上がったザボアザギル変異種がクッションとなり、グラビモス共々弾け飛んだ。

 あの重量級の、それも加速が掛かっていた身体が呆気なく跳ね返す事を可能としたのは、ザボアザギル特有の風船のように急激に膨らむ能力にある。

 この熱鮫は激突の直前に身体を膨らませ、風船の如き弾力で激突の衝撃を跳ね返した。マグマの高温にも耐えられる程の厚さを誇る皮は、グラビモスの巨体をも耐え切れる優れ物だ。

 吹き飛ぶ最中にザボアザギル変異種は首を放し、ゴロゴロと転がって倒れるグラビモスから離れ、ボヨンボヨンと跳ねて着地する。

 ちなみに熱鮫の身体を膨らませているのは、なんと高温の硫黄ガスであり、これをブレスとして放つこともできるという。たまったものではない。

 

 

 膨らんだままのザボアザギル変異種と起き上がったグラビモスが向きって睨み合う中、そいつ―転生者サカモトは落ちてきた。

 

 

 

―――

 

 エリア2に近づく度に肌に感じる温度が高まっていき、地面に身を転げ落ちた頃には全身に火傷という名の激痛に襲われ、苦しみ出した。

 

「熱い熱い熱い熱いぎぃぃぃぃあづいぃぃぃ!イデぇよぉ溶けちまうよぉぉぉっ!」

 

 彼の纏うガララシリーズは鉄製ではないが、堅い甲殻を素材に使われた防具ですら高温の大気と地面を通じて熱を帯びるようになり、それを伝って肌を焼く。

 暑さに慣れているわけではない人間であるサカモトの身体にとっては火傷となり、もはや立っていることですらままならぬほどの激痛に苦しむ。

 しかし熱せられた地を転がれば余計に熱が伝わり、それがさらなる激痛となって身を襲い、それから逃れようとして横転に勢いを増し、同時に熱も増す悪循環を繰り返す。

 

 そんな苦しんで転がっているだけの小物(・・)をチラリと見て、再びグラビモスとザボアザギル変異種は互いに向き合う。彼らは今、縄張り争いに勝つことに執着しているからだ。

 グラビモスは熱線を横薙ぎに放つが、そんなものは膨らんだザボアザギル変異種の跳躍によって難なく避けられる。

 

 

 この薙ぎ払い熱線を受けたのは一部のイーオスと、未だにその辺を転がって苦しんでいたサカモトぐらいだった。

 

 

 どんなハンターにも言えることだが、火山地域に関するクエストを受注できるようになるのはHR3以上というのが決まっている。これは何故だか考えたことはあるだろうか?

 同じ高温地帯である砂漠は水辺が幾つか存在している他、洞窟といった日陰が存在しており、熱を逃がす為の場所が点在している。また適度な水分補給と温度調整を行えば人体でも活動できない訳ではない。

 逆に凍土や氷海といった極寒の地域ではホットドリンクはもちろんの事、防具により若干の防寒も施せる。寒い地域に村を作る者もいる為、寒さならなんとか対処できる、ということだ

 

 しかし火山地帯は人間が一度も足を運んだ事の無い場所だ。何せあそこは岩をも溶かす高温のマグマが渦巻いている為、クーラードリンク無しで足を運べば命に関わりかねない。

 灼熱の地は時として人間を焼きかねない高温を宿し、常に湧き出なければ時間が経つほど水が蒸発していく。吹き出る溶岩や火山ガスに当ったりしたら火傷は必須だろう。

 そう、火山地帯とは行くだけでも危険な場所なのだ。そんな危険地域を住みかとするモンスターがいる為、彼らはここで食い止める必要が出てくる。

 よってハンター達は、火山地域はもちろんのこと、高温地帯に向かう際はクーラードリンクだけは決して忘れてはならないというジンクスがある。

 ゲーム知識で「体力が少しずつ減っていく」だけしか認識していない転生者にとって、「ドリンク必須ジンクス」は軽視されていたのだ。

 

 どんなに強い力があったとしても、所詮は人間だ。防具を纏っているからといって、自然の猛威に生身のままで勝てるはずがないのだ。

 

 

 

 余談だが、グラビモスVSザボアザギル変異種の縄張り争いはグラビモスが勝利して終わる。

 流石のザボアザギル変異種も堅牢なグラビモスを突破することは不可能だったようで、死にはしないものの背を向けて退散する結果となった。

 しかし跳躍による高機動とトリッキーな攻撃はグラビモスと相性が悪かっただけで、それ以外なら勝てる可能性は高かっただろう。古龍種相手は逃げるしかないが。

 

 とにかくザボアザギル変異種は、今日もマグマの海を泳ぎながら獲物を探すのだった。

 

 

―完―

 




ほとんどザボアザギルと一緒。しかし変温動物だからって温度を変えてマグマの鎧を纏うという設定は強引でした(汗)
こんなザボアザギルでしたが、いかがだったでしょうか?因みに悪臭はウラガンキンを参考にしてみました。火山ガスって大抵臭いはずなので。

今回の転生者は自然の猛威を思い知らしめてやりました。普通人間は火山に足を運べないっちゅーに。
それでも足を運ばなければならないハンターは鍛えているから……なのかは解りません。ナグリ村の皆(特に娘さん)を見習え!
皆もクーラードリンク、ホットドリンクの持参は忘れるなよ!妄想うp主のお約束だ!

それでは、防具スキルを公開して終わらせてもらいます。また次回をお楽しみに!

○本日の防具と素材一覧

●ザボアFシリーズのスキル一覧
・火耐性【大】
・暑さ無効
・回復速度+1
・氷耐性弱化

●主に剝ぎ取れる素材一覧
・熱鮫の上皮
 伸縮性だけでなく耐熱性にも優れた熱鮫の皮。熱を通しにくい為、加工次第で防寒具にもなる。
・熱鮫の刃尾
 熱鮫のノコギリのような尻尾。冷えた溶岩を纏う事もある為か、分厚くて重い肉質を持つ。

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