Monster Hunter Delusion【更新停止】   作:ヤトラ

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今回のテーマは「アカムとウカムの生息地が逆だったら」です。
これもにじファン期のです、すみません(汗)唐突に頭の中で妄想が渦巻いたので……。
次回こそは、次回こそはハーメルン期のリクエストを消化します!

4/28:後書きにて防具スキル追加


part20:「破る竜と砲なる竜」

 古龍級生物、という物をご存知だろうか?

 モンスターが跋扈するこの世界には、それらの中で頂点に君臨する古龍種と呼ばれるモンスターが存在している。

 そんな古龍種に匹敵する力を持ちながら、古龍種に属せずハッキリと種族が判明しているモンスターを指すのが、古龍級生物だ。

 

 その代表格ともいえる存在が、覇たる竜アカムトルムと崩す竜ウカムルバスの二頭。

 これらは双璧を成す神々として、黒き神アカムトルム、白き神ウカムルバスという異名古くから人々に伝えられている。

 もちろん、神の異名を持つ二頭もモンスターであることには違いなく、彼らを討ち取ったハンターも多数いるが……絶滅したという報告は噂ですらない。

 むしろ討ち取ったハンターの人数の数十倍もの人数が戦死や行方不明になっており、恐怖のあまり断念・脱走した数は数百倍にも上る。

 

 この二頭は古龍級生物として、大自然の権化とも思わせるほどの災害級パワーを秘めている。

 黒き神は咆哮一つで大地を揺るがし溶岩を逆流させ、白き神はあらゆる物を粉砕し叩き潰す。

 その力強さ故に、環境が彼らを変えたのか、彼らが環境を変えたのか、という二つの一説が学者達を騒がす程だ。

 

―――最も、この二頭ですら霞む存在などそこらじゅうにいるのだが……それは置いておこう。

 

 これから記すのは、その双璧の神々の新たな姿だ。

 環境説に乗っ取って進化した存在……亜種または希少種、もしくは変異種と呼ばれる別の姿。

 

 ここから記すのは、今までの常識を打ち破る力だ。

 同じ存在故に似通った点は多数あるが、それ以上に多いのは原種には無い性質や習慣、そして力。

 

 黒き神と白き神の別の姿……アカムトルムとウカムルバスの亜種を、これから記そう。

 

 

―――

 

 

 アカムトルムといえば灼熱の地・溶岩を思い浮かべる。

 

 しかし舞台は北の最果て……北の極地と云われている【氷山】。

 絶対零度のブリザードが吹き荒れる極寒の伊吹は海域を海深くにまで凍らせ、文字通り「氷山の一角」としてその地が作られた。

 天空は濃厚な灰色の雪雲に覆われ、見渡す限りの白い大地は全て氷で出来ており、到底生き物が住めそうにない。

 氷の塊を貫けば深い海中に住む水棲生物が居るだろうが、何百年もの月日によって凝縮された氷の大地は鉄に匹敵する硬さを誇る。

 

 そんな極寒の地に生息するアカムトルムは……白かった。

 

 まるで凍て付いたかのような、しかし白い雪と氷の世界に溶け込む事のない、僅かな光ですら反射する硬質的な白。

 鋼の如き硬度を物語る金属質な甲殻は鋭く尖り、まるで全身から氷柱を伸ばしているかのような鋭い印象を与える。

 四肢は強硬な氷の大地を踏み締めるどころか易々と表層を踏み抜き、新雪かのようにハッキリと爪跡を残す。

 鋭い眼光はブリザードを物ともせずに前を見つめ続け、巨大な尻尾は歩く度に大地を叩き付け、大地にひび割れを作る。

 

 攻撃という文字を具現化したかのような鋭い外見と、歩くだけで発揮する身に余った破壊力。

 寒冷地帯に適応するだけでなく、氷の山を容易く粉砕する為、原種の姿を保ったまま進化した結果だ。

 

―そんな白いアカムトルムの前に、挑戦者が現れた。

 

 凍海獣(トウカイジュウ)ポカラドン。『G級の世界』の一つ【極海】にも生息する大型の海竜種。

 極寒の海域に生息する、身体を覆う体毛と鋭く尖った牙が特徴的な厳つい面をしたモンスターだ。

 単体でも充分な戦闘力を持ちながら、彼よりも小柄なポカラと呼ばれる雌達を率いて活動しており、群で狩りを行う。

 

 ポカラドンを筆頭とした総勢21匹の凍海獣達は、自身よりも巨大な白いアカムトルムを前に威嚇の声を上げていた。

 狩りの為に遠征しに来た彼らは若干の空腹もあって腹立っている。ポカラドンはともかくポカラですら猛然と睨みつけている。

 悠々と餌に在りつき、この地域を己の縄張りとすべく、この白いアカムトルムを追い払う結論に至ったようだ。

 

―そんな挑戦者を前に、アカムトルムは排除に掛かる。

 

 四肢……特に両前脚に力を込め、脚そのものがアンカーであるかのように氷の大地に鋭い爪が突き刺さる。

 がっちりと身体を固定したアカムトルムは通常種よりも長い牙を生やす口を大きく開き、息を吸う。

 

 ポカラドン達は動き出した。筆頭が身を屈めて氷上を滑り、その後ろにポカラ達が続く。

 重い身体だが摩擦力の少ない氷上を滑ることで高速移動を可能とし、その身体だけで武器となる。

 さらに大柄のポカラドンが先頭に出ることでポカラ達の盾となり、後続の攻撃としても生き残りとしても選択できる。

 

 巨大な敵に挑むなど無謀かもしれない。しかし彼らもまた『Gの世界』の猛者なのだ。

 

 それでもアカムトルムは息を吸う―――吸う。吸う。吸う。吸う。吸う。吸う。吸う。吸う。吸う。

 

 

 

 少し息を止めてから――――全てを破る咆哮が轟く。

 

 

 

 轟音が直線状に放たれ、余波で地に積もった新雪が派手に散り、衝撃波に揺られ氷の大地を抉る。

 ポカラドンもその後ろを滑走するポカラ達も、まるで重さなど無かったかのように容易く吹き飛ばし、遠い彼方へと押しやる。

 吸った分だけ吐き出される空気は音速を持って衝撃波を生み出し、その振動で音の道を作るかのように地中から氷柱が突き出る。

 

 ありったけの空気を咆哮という形で吐き出したアカムトルムは、冷気が漏れる口を閉じ、眼前を眺める。

 咆哮の道を現すかのように地面は抉れ、谷間を造るように抉れた氷の分だけ氷柱が突き出ていた。

 ポカラドンとその軍勢は遥か彼方に聳える氷山の壁に埋まり、命こそあれどめり込んだまま動く気配が無い。

 

 そんな光景を前に、アカムトルムは後ろ両足に力を込めて両前脚を持ち上げ―――大地に叩きつける。

 それだけで氷柱の道が大地ごと粉砕され、彼方の氷壁にめり込んだポカラドン達が氷山と共に崩れ落ちた。

 

 

―そして白きアカムトルムは吼える。敗者に捧げる激励の如く。

 

 

 この白いアカムトルムの別名は「破竜(ハリュウ)」。すなわち「(やぶ)る竜」。

 あらゆる点において型破りな覇者。あらゆる物を破壊しかねない破壊者。

 

 

 

―かの竜は、絶対零度の地にて強者を待つ。

 

 

 

 

―――

 

 

 ウカムルバスといえば極寒の地・凍土を思い浮かべる。

 

 しかし舞台は南の最果て……火山活動が頻発に起こる【大火山】。

 その名の通り巨大な活火山が聳え、巨大な噴火口からは信じられない量の噴煙とマグマを噴出し、今もなお火山活動が続いている。

 噴煙は雲のように天を黒く覆い、溶岩は滝のように流れ大地をマグマという名の赤い海に変える。地獄絵図とはまさにこのことだろう。

 赤き大地が太陽となって周囲を照らし、灼熱に適応できない生物を業火に包み込み、より強き者のみが生き残れる過酷な地となった。

 

 そんな灼熱の地に生息するウカムルバスは……黒かった。

 

 太陽に浮かぶ黒点のような漆黒の身体は、あらゆる光を吸収するかのような不気味さをも持つ甲殻で覆われている。

 原種同様に目立った突起は無いが、逆に前進を分厚い装甲で固め、あらゆる物を踏み潰すかのような重厚さを醸し出す。

 ただ厚いだけではない。溶岩の海を難なく泳ぐ耐熱性、溶けきれず流されてきた岩を次々と弾く硬度と重量。それだけの強度があった。

 そんな甲殻で覆われながら重さを全く感じていないかのように悠々と泳いでおり、甲殻では隠しきれないほどの筋力と威圧感が全身から溢れ出ている。

 

 防御性と攻撃性を遺憾なく見せ付ける重装甲戦車。この世界を照らす太陽に浮かぶ黒点の如き存在。

 この極熱の世界に適応しあらゆる物を弾く強度を得る為、防御性に優れる原種の姿を保った結果だ。

 

―そんなウカムルバスの前に、侵入者が現れた。

 

 爆狼(バクロウ)ミドガロン。『G級の世界』の一つ【火山】にも生息する牙獣種。

 本来なら夫婦で狩りを行う雄の響狼が伴侶を失った事で変異し、真紅に染まった亜種とされている。

 その強さは原種以上とされており、より大きく、より強く、より早く進化した高い戦闘能力を誇る。

 

 溶岩の海に漂う岩盤の上で周囲を見渡すミドガロン。どうやら彼は知らぬ内にこの地へ迷い込んだようだ。

 こんな餌らしき餌が見当たらない『だけ』の地など、ミドガロンにとってはどうでもよかったのだが……事情が変わった。

 獰猛な彼は、眼前に写る敵を排除すべく、俊足を生み出す四肢に力を込めて身構える。その後で悠々とココを出ればいいのだ。

 

―そんな侵入者を前に、ウカムルバスは破滅を与える。

 

 ゆっくりと溶岩の海から身を乗り出し、その漆黒に染まる全身を残り僅かな大地に上がらせる。

 溶岩に浸っていた箇所が真っ赤に染まるが気に留めず、ドリルのように尖る下顎を開き、より赤く熱する口内を晒す。

 

 ミドガロンは動き出した。敵の斜線上に入らないよう、溶岩の濁流に流れる岩々をジグザグに跳んで渡る。

 その脚力から放たれる跳躍は渡りに使った岩を粉砕し、勢いを殺すことなく徐々にウカムルバスに近づいて行く。

 これだけで素早ければ、見るからに鈍重そうな相手の懐に跳び込めば勝機は自ずと見えてくるだろう。

 

 『Gの世界』で生きる一匹狼にとって、巨大な敵に立ち向かうなど日常茶飯事なのだ。

 

 それでもウカムルバスは熱を込める―――込める。込める。込める。込める。込める。込める。込める。込める。込める。込める。

 

 

 

 蓄積した熱を解き放ち―――全てを払う熱線が放たれる。

 

 

 

 溜めに溜めた膨大な熱量が口という一点から抜け出そうと、水鉄砲の原理の如く高圧力の熱線となって射出される。

 その熱量たるや、解放された熱波が溶岩の海を割り、熱線の中心は溶岩ですら吹き飛ばし、速度は音速に匹敵する。

 直撃こそせずとも、ミドガロンは熱波だけでも吹き跳び、熱線が届く遥か彼方では爆発が起こる。

 

 濛々と黒煙と残り火が漏れる口を閉じ、ウカムルバスは反動で崩れた岩場から降り、溶岩の水面から眼前を眺める。

 その熱量がいかに膨大であったかを物語らせるかのように、彼方では轟音の余韻が響き、キノコ雲が浮かぶ。

 ミドガロンの姿は無い。恐らくは熱線の余波という名の衝撃波で吹き飛び、溶岩に沈んだのだろう。

 

 それを確かめるべく、溶岩から身を乗り出し、両前脚を振り上げ―――水面に叩きつける。

 その衝撃は溶岩の海に波を作らせ、大津波となってウカムルバスを中心に波紋を広げる。

 

 

―そして黒きウカムルバスは吼える。亡者に捧げる鎮魂歌の如く。

 

 

 この黒いウカムルバスの別名は「砲竜(ホウリュウ)」。すなわち「(つつ)なる竜」。

 体内に蓄積された膨大な熱量を熱線として吐き出すその姿は、まさに生きた巨砲。

 

 

 

―かの竜は、灼熱地獄の地にて強者を待つ。

 

 

 

 

―完―

 




別名:アカムタンク&ウカムタンク。どちらも巨砲をイメージしました。
この2匹の素材なら、きっと最強のガンランスができると思うんだ!そんな感じです。

追記でアカム変異種とウカム変異種の防具を紹介します。

●アカムIシリーズのスキル一覧
・攻撃力UP【超】
・破壊神(弱点特攻・破壊王の複合スキル)
・見切り-2

●ウカムFシリーズのスキル一覧
・攻撃力UP【超】
・砲撃神(砲術マスター・破壊王の複合スキル)
・見切り-2

狩猟できたかどうかは秘密ですが。

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