Monster Hunter Delusion【更新停止】   作:ヤトラ

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最初に言っておく!別に最終回って訳じゃないんです!

というわけで今回のテーマは「モンスターハンターの未来という名の妄想」です。
本編「ヤオザミ成長記」の一種のパラレル未来でもあります。
作者が目指す蟹の進化の最終地点です。そしてその道筋を記すのが成長記です。
……まぁその道筋自体曖昧なもので、モンハンが増える度に追加してしまうのですが(汗)

急ぎすぎたとは思いますし楽しみが減るかもしれませんが、作者は満足してます。
今回もハンターが中心になりますが、ご容赦ください。

2014/11/20:誤字修正


Extra?:「遠い未来の一部」

 人間にとって、100年という月日は長い。

 人の寿命がどれほどか明確に解っていないにしろ、100年もあれば子が生まれ、子から孫が生まれる事もあるだろう。

 変わるのは人だけではない。次第によっては人が関わる生活の場も大きく変わる。建物、道具、習慣など、様々な進化が人類の歴史に刻まれていく。

 

 ではモンスターはどうだと言われたら、それこそ多種多様な進化が予想される。

 寿命が長いもの、短いもの、生き延びたもの、食われたもの、滅んだもの……弱肉強食の世界は短時間でも大きく変化していく。

 中には一匹のモンスターが生態を大いに狂わし、多くの生命を危機に追い詰めた事実もあるのだから、自然界の変化の広さを物語らせる。

 仮にモンスターが100年生き延びる事ができたのなら、それは驚異の存在へと変貌する。

 

 

 その存在は―――人々から『伝説』として称えられるのだから。

 

 

 

―――

 

 

 

「ついにこの日がやって来たわ!」

 

 一人の小さな女性(ロリにあらず)が身を乗り出し、地面に両足を乗せて目の前の気色を眺めていた。

 金色のストレートの長髪を持つ女性は、広いデコを光らせながら広大な山脈を見下ろし、頂きから出る太陽の光を受けて輝く高山を見上げている。

 自分の背丈よりも大きな鉄の筒を背負っているものの、山を見上げる彼女の顔には疲労の「ひ」の字も見当たらない。

 

「お、お嬢様、気持ちは解りますが、急いてはなりません」

 

 やけに言葉が途切れている声が後ろから響く。

 女性が後ろを振り向けば、そこには少女より背丈が高い、グレーの髪をした青年が肩で息をしていた。

 「お嬢様」と呼ばれた女性は女子としては小さい方に分類されるが、この青年は中々の高身長らしい。

 しかし女性は疲れのあまり深呼吸している青年を不満げに見上げ、とすとすと人差し指で青年の胸板を突く。

 

「こんな事でへばるなんて情けないわよニコル。後ろのお二人を見習いなさいな」

 

 冷静そうに見えて実は困っている青年・ニコルを睨みながら、「お嬢様」はニコルの後ろを指差す。

 指先には二人の男と4匹のアプトノスがおり、二人はモンスターの世話をしているようだ。

 どちらも初老の男性ではあるが、白い地毛以外は老いを感じさせない、逞しい身体を持っていた。それでいて目つきも若々しくて力強い。

 そんな彼らも少女同様に疲労を見せておらず、荷物持ち兼移動手段であるアプトノスを手馴れた様子で世話をしている。

 

「いえ、彼ら二人は顔に出さないだけで」

 

「ならあなたも顔に出さなければいいじゃないの」

 

 「お嬢さま」の無茶言いには馴れてはいるが、ニコルは苦笑いするしかなかった。

 彼ら二人はプロだからこそ、無闇に疲れを助長するようなことをしないだけだ。経験が為す習慣という奴である。

 その点、40代の彼ら二人と同じ境遇を持つとはいえ、30代になったばかりの自分達は経験が浅い。

 元気が売りのお嬢様とは違い、彼女に無理やり連れてこられた自分は肉体的にも精神的にもキツいものがあるのだ。

 

 精神的な疲れを吐き出す為に溜息を零した後、ニコルは顔を上げて「お嬢様」の顔を見る。

 遠く彼方を見つめている蒼い瞳はキラキラと輝いており、純粋な熱意を物語っていた。

 

「この先にいるのね―――『奴』は」

 

 そう「お嬢様」が紡ぐと、ニコルは彼女の隣に立ち、共に景色を眺めながら頷いた。

 

「昔から居着いているという特殊なチャチャブーの集落も確認できましたし、間違いありません」

 

 ニコルは思い出す。これまでの道中、「チャチャブー」と呼ばれる危険な獣人族との戦闘を。

 奇面族としては異常と言える程の大規模な群れを成す、甲殻種の殻で出来た硬い仮面を被ったチャチャブー。

 それを指揮するのは、選ばれたチャチャブーのみが被るという、祖先より伝わる鳥兜のような高硬度の仮面をつけたキングチャチャブー。

 この特徴的なチャチャブーの群れは、彼女ら四人がいる「この地域」にしか存在しない―――いわば証拠のようなものだ。

 

 彼女達はとある王家の専属ハンター……それもかなりの信頼を得ている精鋭部隊として名高い地位を得ている。

 100年ほど前から存在しているという伝統的な職業―――「狩人(ハンター)」。その人気は今でも変わってはいない。

 モンスターは世界中に蔓延っており、100年成長した技術力をもってしても、様々な形で人間に影響を与えている。

 それらを狩猟するのがハンターであり、多くの国家が生まれ文明が栄えた現代において、ハンターは必要な存在として認められている。

 

 そんな昔から存在しているハンターも大きく進化してきた。

 100年の間に多くのモンスターが発見されてきた事を除いたとしても、武器と防具の技術力は郡を抜いている。

 しかし昔のように様々な武器を作れる工房は少なくなり、防具専門、武器専門、中にはガンランス開発に金と技術と浪漫を注いでいる大企業などもある。

 その他にも、同じ素材でも国家や企業のイメージによっては見た目が大きく変わる、安物から高級品までと幅が広い、獣人族専門店までもある。

 

 そんな数多の工房の中で生み出された技術の一つが……「お嬢様」が背負っている鉄の筒「バズーカ」である。

 この100年間の中で作られた新たな武器の一つであり、大きさと重さもある為に近接武器としても使える変わった物だ。

 これは弾にロケット爆弾を使うもので、遠くの敵に大ダメージを与えられるというものだ。爆発範囲も広く、一発の威力は竜撃砲に匹敵する。

 しかし、装填数が2~3発と少ない、連射できない、重くて移動に不便、弾薬費も掛かると欠点も多い。

 何よりも重大な欠点として、爆発範囲の広さ故にフレンドリーファイアの確率が非常に高い。故に使いづらさは武器で一番だ。

 

 それでも「お嬢様」は、若くして見習いハンターとなった頃からこの武器を愛用してきた。

 かつてハンターをしていたという彼女の祖母が使いこなし、バズーカを愛していたのが起因だ。

 祖母の本来の職業柄、短期間でしかハンターになれなかったが、それでもこの武器を乱射し多くのモンスターを撃退した記録を持つ。

 そしてその孫たる彼女は祖父によく似ていると言われていることもあり、祖母のようになりたいと言い出し実現した豪の者だ。

 

 全ては、祖母が叶えられなかった―――否、「倒せなかった」アイツを倒す為に。

 

 休憩を終えて歩き出す彼女達四人のハンターが向かっている先には強大なモンスターが居る。

 過去100年もの間に生き延びている長生きモンスターで、今では世界中に仰々しい伝説が記されているほどだ。

 しかも多くのハンターが挑んだが、誰一人としてそのモンスターの息の根を止めた者は居ない。

 

 そもそもそのモンスターを狩る理由が出来たのは、この山脈の先に行く為である。

 その先には巨大な山に続くがあり、霧のおかげで微かにしか見えない頂上には雲を貫く謎の塔が聳えている。

 飛行技術が発達してやっと目撃された山頂の塔は、大昔に記された伝承によれば天空へ続く道だという。

 

 現代では、技術の発展に伴い、様々な移動手段が開発された。

 頑丈で巨大な飛行船、帆が無くても進める外輪船、紅蓮石を燃料にした蒸気機関車など等。

 これらによって大陸の殆ど―凶悪な古龍種の縄張りや超大型モンスターの縄張りを除く―を網羅することに成功した。

 そんな人々が新たに目指している場所は二つある。その内の一つは海底。潜水技術が発達すればいずれ行けるだろう。

 

 

 そしてもう一つが……気球や飛行船を持ってしてもなお辿り着けない領域【天空】へ誘うとされる「空の柱」だ。

 

 

 その塔に辿り着く為の道を切り開いた者は、人類の進化に携わる偉業を成し遂げた者として歴史に記される事になる。

 数多くの考古学者やハンター達が目指そうとした。しかし発見から50年もの間、誰一人として辿り着くことはなかった。

 50年前に山頂へと続く道を塞いだ存在……それが100年生きているというモンスターにして、お嬢様の言う「奴」である。

 

 そして進むこと数刻……彼女らはそこに辿り着いた。

 

 そこには、天に向けて一対の牙を伸ばすジエン・モーランの頭蓋骨が山頂へ続く道を防ぐようにして立っていた。

 まるで門番のように聳えるその頭蓋骨は、今現代でも生存している既存の峯山龍と比べ物にならない程に大きい。

 天空へと飛ばんとする峯山龍……そう思わせる程に神秘的かつ壮大な光景が、彼女らの目の前にあった。

 

 彼女らは武器を持って身構える。それと同時に地面が……否、山脈そのものが揺れ動く。

 地震の中心かのように峯山龍の頭蓋骨が大きく揺れ……やがてゆっくりと動き出す。

 

 

 

(曾お祖母様……ニコルは今、感動しております)

 

 揺れる大地の上で、カラクリが仕組まれたハンマーを両手に握りながらニコルは思う。

 ハンターとなり「お嬢様」に付き従い、彼女が持つ幸運の加護を得た事により、ようやくめぐり合えた伝説。

 「お嬢様」がこの瞬間を待っていたように、ニコルもこの瞬間を待ちわびていた。故に感動している。

 

 ニコルの家系は、国家の資産の一端を支える大貴族でありながら、先祖代々よりハンターを稼業としている。

 そんな歴代の中でも出世頭として成長し、今のニコルの家系を大貴族として栄えさせたのが、彼の曾祖母と曾祖父である。

 曾祖母と曾祖父を敬愛していたニコルは、幼馴染のように仲良くなった「お嬢様」同様、二人の冒険談を楽しみにしていた。

 

 そんな冒険談の中でも、曾祖母と曾祖父が未練だと思っているのが……「世界最硬」のモンスターを討伐できなかったこと。

 このモンスターは「お嬢様」の祖母からも聞いている。ニコルの曾祖母と「お嬢様」の祖母とは友人で、二人もその縁で知り合った。

 そしてニコルと「お嬢様」は、様々な困難を乗り越え、ハンターとなった。

 

 

 

―全ては、子孫を残しつつも100年間生き延びているという、伝説級のモンスターに出会う為に、

 

 

 

 かつて、死す直前まで挑み続けた、ユクモ国を中心に伝説となったハンター夫婦が居た。

 

 かつて、一国の姫でありながらハンターを務め、『狩人姫』の二つ名を得た我侭な王女が居た。

 

 かつて、世界最硬と名高い防具を、長年の苦労と努力を重ね編み出した元ハンターの鍛冶師が居た。

 

 全ては100年ほど前、このモンスターと出会った事で始まった……偉業のキッカケとなった原因にして原点。

 

 

 

―――天守蟹(テンシュカニ)テンノウザザミ。

 

 

 

 天へと続く「空の柱」を守るようにして阻み続けた、大巌龍の頭部並の巨体を持つ、世界最大の甲殻種。

 峯山龍の頭蓋骨を背負い、月日を物語る赤銅色の甲殻を纏い、重さを無視する筋力を持って鋏を打ち鳴らす怪物。

 50年以上前より誰からも討ち取られること無くこの場に聳え立つ、文字通り「天」を「守」る「蟹」。

 このモンスターを討ち取った時、人々は新天地への足がかりを掴めるとされ、後の世に英雄として崇められる。

 

 しかし、二人の若者には関係なかった。全ては天を守る蟹に挑む為にある。

 未だ誰も討ち取れなかった者達には二種類ある。大怪我を負って帰還できた者と、死して帰還できなかった者だ。

 それでも二人は挑む。挑まずにはいられない。幼い頃からの夢でもあり、ハンターとしての矜持だ。

 巨大な鋏を打ち鳴らして鈍い金属音を響かせるテンノウザザミを前に、四人は走り出す。

 

 

 

―ハンターよ、永遠なれ!

 

 

 

―完―




ニコル「まぁ、負けたんですけどね。おかげで入院中です」

お嬢様「くやし~!いつかまたリベンジいたしますわ!」

初老ズ「「あれ?俺らの名前は?」」

というわけで、作者の書きたい書きたいと念じてきた妄想を具現化したパラレル未来です。

まとめると

1:新武器「バズーカ」。破壊力と爆発力はあっても誤爆と鈍重さで使用度ワースト1位確定な武器。

2:「企業」。某装甲核の如く鍛冶屋によって取り扱う武器や防具が違ってくる。ガンランスは浪漫!

3:「テンノウザザミ」。大名、将軍、大君、武者、辻斬ときたら皇としか浮かばなくなりまして……。

4:「ヤドはジエン」。ダレンがいいかなーと思ったんですが、やはりジエンにしました。ラヴィは流石にデカすぎかなーと。

5:「それぞれの未来」。モンスターハンターとはモンスターと人間がなす物語です。この作品はモンスター主体にしたいのですが(苦笑)

そんな当作品における未来IFでした。拝読ありがとうございました。

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