Monster Hunter Delusion【更新停止】 作:ヤトラ
年が明ける前に投稿できたのが幸いです。
今回はエキストラということで、ピクシブで応募した読者オリジナルモンスターが登場します。
テーマは「高低差の激しい樹海」です。オリジナルモンスターの数は3体。
読者様のアイディア溢れるモンスターを見て、モンハン世界の妄想が広がってくれたらなと思います。
人々が足を踏み入れる事のできる世界は、世界から見ればとても小さいものだ。誰かがそんなことを呟いたが、それは紛れもない事実でしかない。
人の目では届かず、人の足では辿り着けず、人の技術を持ってしても容易に見つかることのない領域は多々ある。
例えば、危険渦巻く大海のど真ん中。例えば、地下深くに眠る暗闇の地底洞窟。
例えば―――高山に取り囲まれた大地。
古龍観測隊の熱気球ですら、山頂どころか山腹にも届かない高大な雪山。
旧大陸に聳える山脈地帯「フラヒヤ山脈」よりも高い白の山々は、猛烈な吹雪に覆われている為に人の手が届かない。
年中吹雪に覆われたこの山脈は、飛竜種ですら飛び越えることは不可能だと考えられている。
そんな壁のように聳え立つ白銀の山脈の先には、未知なる世界の一部が広がっている。
雪山からの雪解け水は大地を潤し、木々が芽生え、自然の恵みを育んでいく。
白い世界を抜けた先には、雪解け水と太陽によって育てられた高大な緑が聳え立っているのだ。
仮に、この山々に囲まれた大地を「秘境」と名づけるとして、紹介していこう。
まるで外の世界から守っているかのように山脈が囲んでいるが、その中央の天候は驚くほどに穏やかだった。
雪解け水が集った巨大な湖が広がり、その水を吸収して育ったかのような大樹が何本も聳えている。
豊富な栄養が含まれた雪解け水は植物を育てるのにうってつけで、長年の月日をかけて育てられてきた。
背丈を競うかのように伸びる大樹が集い、太く長い枝と根を交差させた複雑な地形を生み出していく。
高所は太い枝が並ぶジャングルジムとなり、地面は湖から流れる河を縫うようにして太い根っこが建物のように絡み合う。
まさに木と自然が生み出した構築物といっても過言でない、複雑かつ高大な緑の世界。
大樹から生える枝や根が縦横無尽に駆け巡り、植物による多種多様な地形が日々新たに生まれていく。
バテュバトム樹海に生える大樹に劣るものの、こういった地形は逆に広い範囲の足場となる為、樹海とは違った生態系が見られる。
ここからは、人の手が伸びていない「秘境」の生態系の一部をご覧に入れよう。
――――
秘境の主な構築物は三つある。湖から流れる河、その河を水源に育つ大樹、そしてその大樹を中心に育つ枝や根・木の実や葉だ。
これだけ巨大にも関わらず……いや、巨大だからこそ、大樹から落ちる種子の量は半端無い。
元々この地に生える大樹は繁殖性の高い植物だったらしく、枝には若い木の実が生り、大地には至る所に若い木々が芽吹いている。
枝に生える大量の葉はやがて地へと落ちて腐葉土となり、河から漏れる水が別の植物や菌類を育てる。
そんな菌類や草木を食料または寝床とする為に昆虫が集い、それらの死骸も植物の栄養となる。
雪山と大樹が育ててきた膨大かつ無駄の無い恵みは、数多くの草食性モンスターの虜にしてきた。
絡み合う根っこは、小柄なケルビやブルファンゴにとって絶好の隠れ家となるだけでない。
太く伸びて湾曲した根が河を跨ぐことでオルタロスにとっての橋となり、朽ちてボロボロになった根元はランゴスタの巣になる。
若木や落ちてきた木の実はアプトノスの栄養源として食べられ、喉の潤いは河から得られると、食料にも問題は無い。
唯一この地形を良しとしないのはドスファンゴ。猪突猛進な彼らは大樹の根にぶつかる事が多いからだ。
また、そういった草食性モンスターが豊富になれば、必然的に肉食性モンスターも多くなる。
しかしこの根っこは数多くの大型モンスターの行く手を阻み、彼らの追跡から逃げ延びられた小型モンスターも多い。
鈍重な巨体を持つドボルベルグや地上では走るだけのリオレウスには適さない地形であろう。
こういった地上で必要なのは、単なるゴリ押しなだけの力や追い抜く為の走力ではない。
地形を瞬時に判断する機敏性と根を潜り抜けることのできる小回りの良さ……そして一撃で仕留める確実な一手だ。
ランポスを率いるドスランポスは複雑に絡む根を逆に利用し、群による統率力と機動性で獲物を多方面から追い詰める。
元々から俊敏性の高いナルガクルガは、地形の影に隠れ、得意の奇襲で一気に獲物を仕留める。
複雑な地形だからこそ安全でもあり、危険でもある。それは地上だけでなく、高所でも同じ事だ。
大樹はとにかく高く、細身でありながらまるで塔のように聳え、視界を木と葉で埋め尽くす。
枝と葉が密集する為か、まるで階層のように幾つもの足場が広がっており、その上をオルタロスが歩き回っている。
葉と葉の間から僅かに漏れる太陽が周囲を照らす為に暗くはないが、それでも油断はできない。
何しろ太く長い枝や密集した葉が互いに絡み合うことで地形となるとはいえ、所詮は草木。重いモンスターは葉が密集した地点で間違いなく足を踏み抜き、落ちる可能性が高い。
もしハンターがこの地へ運んだのなら枝を歩くことをオススメする。葉の足場は天然の落とし穴になるからだ。
このような高所にもモンスターは生息する。ただしここでは、空を飛べるモンスターが主導権を握ることができる。
太い枝に足を乗せ、その辺に生えていた木の実を啄ばんでゆっくりと食すイャンクック。
木陰に身を隠すようにして枝を掴んで眠りにヒプノック、枝の上で求愛のダンスを踊る二匹のクルペッコ。
そして縄張りを追い出され移動するランポスの群。彼らは身軽な為、枝と枝を飛び越えることなど大差ない。
まるで鳥の楽園のように見えるが……ここでも一悶着ありそうだ。
枝を縫うようにして飛ぶ一つの影を前に、身を隠しているヒプノック以外の全員が其の場を飛び立つ。
飛んできたのは、空の王者リオレウス。このような地形であろうとも優雅に飛ぶ姿は圧巻ともいえよう。
どうやら地上へと降りて行く最中のようだ。このような高所だと主な獲物は居ないため、仕方ないだろう。
高低差が激しいにも関わらず獲物を狩りに出かけるのは、空を縄張りにできるリオレウスにとって大した問題ではないからだ。
地上と高所によって分かれる自然の姿。
両者の共通点はといえば、自然の豊かさと、機動力が物を言う油断なら無い地形だということ。
そして外の世界とは違う、この大地独自の生態を持つモンスターもここには生息している。
―そのモンスター達の生態を、一部ご紹介しよう。
今、地上では面倒な奴が姿を現していた。ケルビやアノトプスだけでなく、ランポスやナルガクルガまで逃げ出す始末。
それらを追いかけるようにして走る一匹の姿があった……乱暴者で知られる黒狼鳥イャンガルルガである。
体の至る所に火傷がある所を見ると、どうやらリオレウスと争って敗北し、地上へ降りる他なかったようだ。
傷だらけの彼は非常に苛立っており、所構わず攻撃を加える迷惑極まりない行動を取っている。
狩猟など関係ないとばかりに派手に暴れまわる彼を前に、面倒事を避けようとほぼ全てのモンスターが背を向けて走っていた。
それを良い事にイャンガルルガは咆哮を上げる。ここは俺の縄張りだと、調子に乗って名乗りを上げているかのように。
―その行いが、後に自らの命を絶つ自殺行為だと知らずに。
今、イャンガルルガが吹っ飛んで倒れこんだ。
何かにぶつかったようだが、彼自身、どうして唐突に衝撃を受けたのかはわからない。
何者かの攻撃には違い無いがどこから?その正体を探るべく、周囲を取り囲む根を見渡す。二度三度振り向いて見て……その姿を目撃した。
自身よりも高い位置にある大樹の幹に、こちらを睨む、ワイバーンレックスの骨格を持つモンスターの姿があった。
前脚だけでなく後ろ脚までもが発達した強靭な四肢で幹にしがみ付くことで、垂直でありながら安定した姿勢を見せている。
この環境に適応した木の皮のような堅殻で全身を覆った身体は、ティガレックスに比べると少し小柄だった。
特徴的なのは、周囲を聞き分けることができる長い耳と、充血して真っ赤に染まった凶悪な目である。
『
しかしそれが災いして、騒ぐイャンガルルガの咆哮で浅い眠りから目覚めてしまったのだ。
その為、今のカナルディアは極度の怒り状態。彼の眠りを妨げた代償はあまりにも大きい。
降りてこいと騒ぐイャンガルルガを前に、すうっと深く空気を吸い込み、大咆哮を上げる。
その咆哮は凄まじく、衝撃波となって遥か下にいるイャンガルルガの身体を押し倒すほど。
そしてすかさず、先ほどとは比べ物にならないほどの空気を内部に吸収していく。
イャンガルルガは高い所に居る彼を攻撃しようと、この土地だからこそ発達した大き目の翼で空を飛ぼうとする。
だがカナルディアは逃さない。大量の空気を口内で圧縮、高気圧の空気を砲弾状にして一気に吐き出す。
これが先ほどと今回イャンガルルガを吹っ飛ばしたものの正体……クシャルダオラも放つ風ブレスである。
これを受けてたまらんとばかりにイャンガルルガは尻尾を巻いて逃げ出す羽目に。
本来なら逃さずしつこく攻撃するカナルディアであろうが、さすがに眠気が勝り、さっさと眠るべく巣へ戻るのだった。
敏狙竜は高感度の聴覚と神経を持ち、強靭な四肢による脚力を生かした跳躍力で跳びまわり、風ブレスで仕留める。
根が絡み合い複雑な迷路となっているこの地形では、その跳躍力と遠距離攻撃は脅威となりうる。
木の皮のような殻により多少のカモフラージュもできるため、縦横無尽の攻撃を可能としている。
風ブレスの衝撃で弱った身体に鞭をいれ、ゆっくりと歩くイャンガルルガ。だが無情にもその時を逃さぬと別のモンスターが狙いを定めていた。
若木の木陰をイャンガルルガが通り過ぎた後、密かにその陰が動き、後をつける。
連なった葉による光と影により黒と緑の二色に分かれたその風景に、そいつは溶け込んでいた。
景色に溶け込み、静かに足音を殺し、ゆっくりと、それでいて確実にイャンガルルガの背後をつける影。
その影の気配に気づいてイャンガルルガが振り向くも、既に遅かった。
鋭い刃がイャンガルルガを貫かんと振り下ろされ、ガルルガは咄嗟に右へと倒れこむ。
刃は腐葉土の地面に突き刺さるも、もう一つの刃が倒れこんだガルルガに向けられる。
それを尾で振り払おうとすると、攻撃を加えたものは刺さった刃を視点に飛び退き、抜き取ってさらに後方へと跳んだ。
ガルルガは立ち上がり、弱々しく威嚇をしつつ敵を見据える。
黒い斑点が浮かぶ緑色の滑らかな鱗を持った、全身が棘と刃で包まれたような獣竜種だった。
丸みを帯びた顔には鋭い犬歯が一対並び、発達した細身の前脚には鋭く長い爪がずらりと並んでいる。
前脚だけでなく後脚にも鋭い爪が生えていた。そして両肘と両膝には、皮膚を貫くようにして骨の棘が生えている。
そして先端に骨の棘を生やした尻尾を振り回しながら、獣竜種は咆哮を挙げ威嚇する。
砕竜を髣髴とさせるも細身の身体を持つこのモンスターの名は、『
保護色で姿を隠し獲物の死角から襲い掛かる、奇襲に特化した狡猾な獣竜種である。
奇襲が失敗するとわかるや否や、ロドムラプタはアッサリと手を引き、背を向けた。
彼は賢く、手負いとはいえ強力とされる黒狼鳥を正面から相手にするのは無謀だと考えた結果である。
その鋭い爪と至る所に生えた棘を使って幹に食い込ませ、そのまま素早く上へと登っていく。
脚力に優れている獣竜種が木登りまで得意と知れば、ハンターは驚くことであろう。
とにかく脅威が去った事を喜ぶべきであろうが、このイャンガルルガはそうではない。
背を向けて逃げた事をいい事に、牙爪竜に向けてギャアギャアと吼えるばかり。
手負いの獣はよく吼えるというが、鳥竜種でも同じ事かもしれない。
だがしかし、彼に襲い掛かる敵は彼らだけではない。
腐葉土の地面が膨れ上がり、それが蛇行しながら大樹の幹に向けて延びていく。
その長さは凄まじく、15mに届くような細長い黒光りする姿が腐葉土から出てきた。
ガチガチと打ち鳴らすギロチンのような大顎。ヌルリと光沢を帯びた油が塗られた光沢ある甲殻を持つ長い身体。
その長い身体の至る所に、三つの関節を持った長い脚がズラリと並んでいる。
薄暗い幹の洞窟や腐葉土に姿を現す長大な甲虫種……『
恐らくこの広い世界の中でも最大級ともいえる甲虫種が、この大樹の世界に潜んでいたのだ。
先ほどの奇襲もあってか、イャンガルルガは周囲を見渡している。
だが大樹の陰に隠れ上へと登っていくギガンティピードには気づいてはいなかった。
やっと警戒を諦めたのか、ほっとしているかのように伸ばしていた首を下ろす。いくら暴君のような彼とはいえ、立て続けに襲われるようではたまらないからだ。
さて翼を広げて空を飛ぼうとした―――その時。
上からギガンティピードの大顎が、イャンガルルガにむけて落ちてきた。
後に彼は絶命するのだが……彼がどんな姿で息絶えたのかはご想像にお任せしよう。
少なくとも言えることは、ギガンティピードは獲物を仕留め、食事にありつけたということだ。
大樹の枝からギガンティピードが落ちてくることは、彼の最大の攻撃手段としてよくあること。
彼は遠い未来にやってくるハンター達から「密林の処刑台」と呼ばれるようになるのだが……これで納得できるだろうか。
とにもかくにも、暴れん坊のイャンガルルガは息絶えた。
攻撃的な彼が一向に戦いを挑むことができないのは、相手が悪かったとしかいえない。
優れた神経と強靭な四肢を持つ、多方面からの風ブレス攻撃を得意とするカナルディア。
保護色で身を隠しながら奇襲を放つ、木登りもできる狡猾な狩人ロドムラプタ。
甲虫種最大の身体と大顎だけでなく、毒も放つ悪夢のようなモンスター・ギガンティピード。
地上でも高所でも生き延びられるようなモンスターは、ただ力があればいいというわけではない。
彼らのような、高所を登ることができ、独自の能力で木々を利用し、そして一撃でしとめられる術を持つようなモンスターだ。
いつどこで命が奪われるか解からない。それがここ「秘境」の全てである。
―完―
●名称:カナルディア
●別名:敏狙竜(ビンソリュウ)
●種族:飛竜種
●名称:ロドムラプタ
●別名:牙爪竜(ガソウリュウ)
●種族:獣竜種
●名称:ギガンティピード
●別名:長伸虫(チョウシンチュウ)
●種族:甲虫種
本来はもっと詳しい情報があるのですが、多すぎるので省略させていただきますスミマセン(汗)
希望などありましたら後日追記する予定ではあります。
とにもかくにも、モンハンデルシオンのエキストラ、楽しんでいただけましたか?
来年もどうかよろしくお願いします!