Monster Hunter Delusion【更新停止】 作:ヤトラ
これはにじファン時代、とある感想のアイディアを元に作成した小説です。いわばもしもシリーズモノです。浮かんだら止まらなくなってしまって(笑)
―もしもガミザミがユクモに流れ着いたら?
モンスターが自分で新たな道を見出し、進化していく「変異種」。その始まりはアラムシャザザミであり、この遠くから流れてきたガミザミだったのです。
では、楽しんでいただければ幸いです。
ポッケ地域の火山付近に嵐が襲った。
その嵐はとても強く、小型モンスターならいとも簡単に吹き飛ばしてしまうほどだ。イーオスが空を無様に舞い、ガミザミがごろごろと地を転がっていく。
不幸なことに、あるガミザミがゴロゴロと転がっていき、海へと向かっていった。
そしてガミザミは海を越え、荒波に流され、ユクモ地域にやってきた。
旧大陸から広大な海の先にある新大陸へ何故渡れたのか。それは解かってはいない。偶然と奇跡の重なりだろうか。
これだけ不幸な目に合ってなお生きている上に、新たに辿り着いた地が火山なのだから驚きだ。
ともあれ、生き残ったからには生き抜かねばならない。ガミザミは新たな地だと気づいておきながら、以前と変わらず、しかしより用心してその地を進むのであった。
まず水分の確保。
いくら元の生息地が火山とはいえ、ある程度の水が無ければ生き残ることができない。
しかし、火山の麓にある海辺があったので解消できた。近縁種であるザザミが海水・淡水どちらにも適応できる為、ガミザミも問題なく活動可能だ。
次に食料の確保。
ガミザミは雑食性なので、これもある程度なら問題は無い。
むしろ厳しい環境なだけあって貴重な昆虫や鉱石が多く、ズワロポスという草食種が狩りやすい。
地方が違うので以前の暮らしに比べて食生活に差が出るだろうが、適応性の高さ故に問題は無いだろう。
最後に己の天敵の確認。
これは困難を極めた。何せ大陸が違うのだから、地理も生態系も解らなかった。
ふと陰から見ただけでも、まったく知らないモンスターばかりが蔓延っているのが解る。
さらに、ここは以前暮らしていた地よりも熱い。噴火口に近い上、洞窟の中に溶岩が流れているため、熱を外へ逃がしにくい構造となっている。
それらを踏まえると、やはり危険性が高いことには違い無い。
ガミザミの高い防御本能が自然に働き、岩場に隠れるなどして慎重に観察を開始する。
全ては、この新たな地で生き残る為だ。野生の本能が注意深く慎重になるのも、仕方のない事だろう。
物陰に隠れながらこの地域を観察して解ったことがある。それは、ここに住まう殆どのモンスターが頑丈な甲殻を持つことだ。
グラビモスやバサルモスという近しいモンスターも居るが、彼らとは大きな違いがある。
―突進力を誇る草食種リノプロス。
―強靭な足腰と転がり攻撃が得意な獣竜種ウラガンキン。
―泳ぐように地中や溶岩を移動し、冷えると硬くなる殻を持つ海竜種アグナコトル。
いずれも頑丈な甲殻を持ち、かつ中々のスピードを誇るモンスターばかりだ。ガミザミも硬い甲殻類とはいえ、彼らと比べたら柔らかい分類に入ってしまう。
また、ガミザミがこの地で生き残るには、その装甲を貫けるだけの刃と、その機動性を出し抜く為の何かが必要だ。
それらを、この火山で生き延びつつどう手に入れていくのか。それが問題だ。
時に、生き物は天敵から身を守る為、その天敵に対抗できるよう進化する種もある。
今まさにガミザミは、己が生き残る為の力を手に入れるべく、急激な進化への道を切り開いたのだった。
こうして、ガミザミが火山に棲みついてから長き月日が流れていく。
自然界に生き残り、火山における食物連鎖の上を目指すべく、ガミザミは変異を遂げる。
――――――
今、一匹のアグナコトルがリノプロスの肉に食らい付いていた。
自身よりも小さなそれを、本来なら抉る為の嘴を使わず、ただ噛み付いて肉を毟り取っていた。
周囲には誰も居ない。ウラガンキンは居ない上に、餌の違い故に襲い掛かってくることはない。今ここにいる食物連鎖の頂点は、このアグナコトルということになるだろう。
―だがしかし、自然界は時が流れるに連れて、新たな捕食者を生み出していく。
どろり、とアグナコトルの身体に何かが垂れてきた。
上から流れるようにして落ちてくるそれは、アグナコトルの身体を包み込んでいく。
アグナコトル自身、この液体が何であるかわからず、周囲を見渡すしかなかった。
しかしこの液体、ぬるぬるとしていて、這いずって移動しようにも滑ってしまいまともに動けなくなる。
―ガチン、と甲高い音を立てた直後、アグナコトルは炎上した。
アグナコトルに降りかかった液体……油に火が引火したのだ。
冷えて硬くなったマグマがたちどころに紅くなり、熱を帯びて硬度を弱めていく。
もちろん溶岩の中を平気で泳ぐアグナコトルにとって、身体に火が付いたぐらいどうってことはない。多少怯みはしたものの、身体が燃えていようが、構わずに周囲を見渡す。
―熱を帯びて柔らかくなったところを、
突如として
背中を貫通し、胸や腹部といった急所を貫かれたアグナコトルは驚愕したように叫ぶ。
だが
するとどうだ、まるでチーズのようにアグナコトルの身体が輪切りになってしまったではないか。
身体を三等分にされたアグナコトルは、抵抗するも虚しく、カタカタと嘴を鳴らした後に絶命した。
アグナコトルを貫き切り裂いた、二振りの得物を振り回す
ぱっと見れば、それはショウグンギザミと呼ばれる甲殻種のモンスターなのだが……よく見て欲しい。
その身体は冷えて固まった溶岩を纏っており、時節、彼の甲殻である黒い殻を除かせている。
ウロコトルやアグナコトルを主食として育った結果だ。彼の背負うヤドも、彼らの甲殻を剥がし、溶岩で固めた物だ。
そして最大の特徴は、鎌蟹の由来たる、長く鋭い鎌のような鋏なのだが……長い。
通常のショウグンギザミよりも長く、鋭く、そして真っ直ぐと伸びて光沢を放っていた。
希少な鉱石を食らってきた事によって得られたこの金属の刃は、もはや鎌というよりは刀。アグナコトルが容易く輪切りにされてしまう理由も頷ける。
二振りの刀で敵を斬り殺す、二刀流の侍。問答無用で斬りかかるユクモの辻斬り。だからこそ、この甲殻種は辻斬りの名を得た。
―ツジギリギザミ。別名「
ツジギリギザミは獲物の返り血を舐め取るかのように、口で己の鋏を綺麗に磨く。
砥石の成分が含まれた口で刃のような鋏を磨く様は、まるで刀を研いでいるかのよう。
手入れが終われば鋏を紅蓮石で熱し、鋼鉄の四肢でそれを何度も踏み付け、刃を鍛える。
そして口から油―ズワロポスを食らってきた事によって蓄えられた物―を吐いて急激に冷やし、また口で鋏を研ぐ。熱した刀を鍛え、冷やし、研ぐ。刀鍛冶が刀を鍛えるのと同様の工程だ。
こうしてツジギリギザミの刀は、より硬く、より切れ味を増していく。次なる得物、そして己に立ちはだかる敵を斬殺する為に。
カシャン、カシャンと二本の刀を交差させて音を鳴らし、ツジギリギザミは両手を広げる。
彼は新たな獲物を見つけた。だからこそ威嚇の姿勢を示した。
それがモンスターなのか、ハンターなのかは解らない。だが辻斬りの前には意味を為さない。
喰える・喰えない・強い・弱い……そんなことは、ツジギリギザミには無意味だ。
―敵は斬り殺す。それがツジギリギザミの……遠い大陸からやってきたガミザミの選んだ進化なのだから。
これも一つの進化。ありえるかもしれない、モンスターの突然変異。
暢気な鋼鉄の蟹が誕生すれば、容赦なく敵を切り捨てる凶悪な蟹が誕生していたのかもしれない。
蟹だけではない。鳥竜も、飛竜も、牙獣も、もしかしたら古龍種や草食種ですら、急激な進化を遂げるかもしれない。
覚えていて欲しい。モンスターは常に進化する。過去も、現在も、そしてこれからも変わらず。
我々が見知っているモンスターでも、少しすれば新たな力を得ているかもしれない。少なくとも、それが我らにとって未知の脅威になることには違い無い。
―どんなに進化していても、我々を害するとなれば、それは敵でしかないのだから。
―完―
○本日の防具と素材一覧
●ツジギリシリーズのスキル一覧 (剣士)
・業物
・斬れ味ゲージ+1
・砥石高速化
・防御DOWN【大】
・悪霊の加護
●ツジギリシリーズのスキル一覧 (ガンナー)
・貫通弾追加
・貫通弾強化
・装填速度UP
・防御DOWN【大】
・悪霊の加護
●主に剥ぎ取れる素材一覧
・刀蟹の爪刀
まるで刀のように鋭いツジギリギザミの爪。加工せずとも武器として使用可能だとか。
・刀蟹の甲殻
ツジギリギザミの黒い甲殻。溶岩を塗り固められるように細かい棘が大量に生えている。
そんなわけで、ショウグンギザミの突然変異種です。アラムシャザザミに比べて攻撃性に特化し、また攻撃的な性格です。
変異種シリーズは他にも多く存在しており、今後も続きます。お楽しみに。
では失礼いたしました。