空の碧は全てを呑みこみ、それでも運命の歯車は止まらない   作:白山羊クーエン

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確かな成長、その対価

 

 

 

 レジェネンコフの疾走、それはまるで導力車が突っ込んでくるかのようで迫力満点だ。一気に怖気を吐き出させるような暴力だが、この場にいる全員が既にそんなものを経験している。故にその突撃に対し即座に回避、更には手に持つ刀の範囲をも脱出する。

「新型か――!」

 左に避けたダドリーは一回転して膝を着き、銃を放つ。

 軍用拳銃は連射には不向きだが、それを補う威力がある。その銃撃は赤い装甲に着弾、しかしわずかに抉れるだけだった。

 舌打ちを一つし、攻撃してきた対象を最優先したのか向かってくる武者に対しバックステップで距離を取る。それは右に避けたその他に対して背中を向けさせる行為だ。

 案の定彼に相対したレジェネンコフは特務支援課に背を向ける。ランディが跳躍、ハルバードを振り上げた。

「うらァッ!」

 背面から刀を持つ右肩を強襲する。赤の装甲を繋ぐ黒い間接部、それを正確に打ち据えた彼は存外に固い感触に眉を潜めた。

 瞬間、背中のミサイルポッドが作動する。

 

「ランディ!」

 ロイドが左足を襲撃、その体勢をわずかに変え、ランディが右腕を蹴り上げたと同時。作動したドンキーミサイルが弧を描いて撃ち上げられた。

「馬鹿なっ――!」

 ダドリーが驚愕する。室内、それも地下通路という空間において破壊力の大きいミサイルを撃つという暴挙を彼は予想していなかった。

 二つのドンキーミサイルは天井スレスレで反転、それぞれダドリーとランディに迫り来る。ダドリーは驚きを殺して横っ飛び、直撃を免れるが、ランディは空中だ、回避運動は取れない。

「ランディ!」

 しかし彼に着弾する直前、エリィの弾丸がミサイルを迎撃する。二つのミサイルはほぼ同時に爆発、その振動だけで世界を大きく揺るがせた。

 

「何を考えているんだ、マルコーニはッ!」

 ダドリーが吼える。そしてその彼にスラスターを目一杯にしたレジェネンコフが迫った。

 ――ホシナガレ――

 機械音が命令を復唱、その最高速度から刀を斜めに振り下ろす。ダドリーは回避を諦め銃で対応し、そして後方に吹き飛んだ。

「ダドリーさん!」

 ロイドがその隙を狙って動作を終えた刀にアクセルラッシュを放つ。金属音が響き刀の耐久力にダメージを与えたが、それでもこの武者に合わせて作られた一品だ、それだけでは破損しない。

 レジェネンコフは更にホシナガレを繰り出そうと反転、ロイドに向かう。

「あああああああああああ!」

 ロイドは咆哮、ホシナガレの一瞬の隙である振り上げた後の一瞬の硬直を見逃さずに懐に飛び込む。カメラアイとロイドの視線がぶつかるが、レジェネンコフに意思の光はない。

 

 ロイドはそのままトンファーを叩きつけカメラを破壊しようとする。

「く……ッ」

 しかしそれも響く音が示すとおり兜のような装甲が寄せ付けない。そのまま彼は振り下ろされた刀を足場にして跳躍、武者を飛び越えた。

 ――スミホムラ――

「ちィ――!」

 再びの機械音、ロイドは顔だけ振り向いてレジェネンコフを見る。すると背中から別のミサイルが発射され、ロイドは迎撃――した瞬間、周囲に煙幕が散布した。

「しま――」

 密閉空間を黒のカーテンが取り囲む。全員が危機を察知し距離をとろうと飛び退った。

 

 しかし武者は彼らを逃す気はないのか、新たな一手でステージに引き摺り込む。

 ――ハレルヤハリケーン――

 そんな音とともにレジェネンコフは回転、煙幕を通路全体に広げる。

「うあッ!?」

 ロイドは至近距離でその回転を受け吹き飛ばされる。それなりの距離を舞った彼だが、それでも着地点は黒の世界だ。鎧武者は闇のような世界を消し去る気はないらしい。

 だが、そんな世界は御免だと既に詠唱を始めていた存在がいた。

「シルフィード!」

 ロイドを除く四人を包む風、エリィは既に煙幕への対策を取っていた。更に分析を終えたティオがアーツを解き放つ。

「ブルードロップ!」

 視界が塞がれようとも魔導杖と感応力を持つ少女に死角はない。正確にレジェネンコフを狙った水の衝撃は武者の全体を浸食した。

 更に――

「ダイアモンドダスト、いきます――!」

「ランディ、炎!」

 エリィが指示し、ティオが連続詠唱に入る。詠唱時間を短くするために外界へのリンクを遮断、自身の保持は仲間に任せた。

 

「出るぞオルランド!」

「うっしゃあ!」

 ダドリーとランディが飛び込む。ホシナガレを受けた拳銃は断たれた、故に彼はその肉体で以って制圧にかかる。むしろ似合ってんじゃねぇかとランディはその背中を見ながら楽しそうに笑い、ダドリーの後ろでサポートに入る。

「おおおおおおおおおおおおお!」

 レジェネンコフの上段からの一撃、それを上着を犠牲にして避けたダドリーは屈みながら右拳に力を込める。

「覚悟ぉぉおおお!」

 振りぬかれた拳は武者の中心を捉え、その巨体を空に浮かせた。

「マジかよ!? っておらぁ!」

 そのあまりの鉄拳に度肝を抜かれたランディだが、ダドリーの頭を飛び越した彼はエニグマを起動、ハルバードに炎を纏う。レジェネンコフの頭部目掛けてサラマンダーを敢行、その体躯を高熱で包んだ。

 そして二人は瞬時に武者を蹴り上げ距離を離す。

 

 同時、二人の声が響いた。

「ダイアモンドダスト――!」

 エリィとティオの同時アーツ、それは氷の息吹をレジェネンコフに集中させる。その冷気にレジェネンコフの肢体が徐々に固まりだし、二つのダイアモンドダストは武者の上下に氷柱を作った。

 しかしそれは降下しない、あくまでレジェネンコフを固定するためのものだった。

「ロイド――!」

「はああああああ!」

 冷気の集中によって取り払われた煙幕、その向こうには体勢を整えていたロイドが待っていた。

 腰だめに構えた両の得物を携え赤い闘気を滲ませた彼は、そうして氷と一体化した鎧武者を破壊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 扉を開ける。そこには小さな、しかし豪奢な部屋が佇んでいた。

「マルコーニの私室か、やつの好みを思わせるな」

 毒づくダドリー、それぞれが内部を見回した。調度品の全てが高級感を匂わせる一品で、マルコーニの姿を思い浮かべると実にイメージ通りである。

「ん……?」

 ふと、ロイドは目眩を覚えて目頭を押さえた。頭の中を虫が這うような不快な感覚、それとともにだんだんと熱を帯びてくるような気さえする。

「ロイド?」

 エリィが一声かけると、なんでもない、と頭を振って気を引き締めた。

 

 探すぞというダドリーの言葉に従い、全員が捜査にかかる。別々の場所を調べる中、ロイドは部屋奥にあった金庫の鍵を探す。鍵は自慢のワインコレクションの下に隠されており、それは見事にその金庫にあった。

 まさかキーアが入っていないだろうな、などと不謹慎なことを考えた彼だが、そこにあったのは数種の書類。読んでみるとそれはグノーシスの散布場所と服用者の名簿であった。

「ビンゴだ、ダドリーさん!」

「見つけたか!」

 全員が駆け寄り、書類を眺める。そこにはグノーシスに関わった全ての人物の名前が記載されており、中にはハルトマン議長の名前もあった。服用こそしていないが、この薬がばら撒かれることに関与していることは明らかだった。

 ダドリーは歯噛みする。捜査令状がない以上証拠になりえないことは既に重々承知していたが、ここまで腐った事実がわかるものを見るとは思っていなかった。

 

「――私は本部に戻る。お前たちももう戻れ、成分調査を依頼しているのだろう?」

「あ、はい………ダドリーさん、ありがとうございました」

「礼などいらん、これは私の捜査だ」

 支援課の独断に巻き込んだ形になったが、結果的にはこの捜査はダドリーの判断ということになっている。万が一責任を取ることになったらそれはダドリーになるのだ。

 それをわかっていて許してくれたのだ、ロイドも頭を下げる必要があった。尤もダドリーにとっては余計な礼だったが……

「あれ?」

 ふと、書類の下に異なる感触があった。書類の中身に興奮していて気づかなかったが、どうやらそれは別のものらしい。

 そうしてそれを見つめたロイド・バニングスは――

 

 

「――――――は」

 

 

 歪な笑みを湛え、雰囲気を一変させた。

 

 

「ろ、ロイド……?」

 エリィが異常を察知して詰め寄る。ダドリーも傍により、彼が持つそれに目を見開いた。

「警察徽章、だと……バニングス、それはまさか――」

「ええ、兄貴の――ガイ・バニングスのものだ。この傷は前に見たことがあります」

 それはかつて、ティオを救出した時についた傷跡、彼はこれを勲章だと言って誇っていた。代わりのものを用意するという提案を跳ね除けるほどに、それを誇っていたのだ。それがまさか、ルバーチェの下で見つかるなんて――

「――兄貴の不意を突いたってところか…………そんな奴らに、今まで……っ!」

 締め付けすぎた拳と口元から血が零れる。計り知れない怒りが体の内からこみ上げてきて我を忘れそうになる。

 捜査が難航しこれまで真実が明るみに出なかったことの一因としてルバーチェによる上層部への圧力すら考えられた。仮にそうなら、クロスベルの平和を守っていた仲間の死ですら警察にとって瑣末ごとに過ぎなかったということに他ならない。

 兄の死すら言葉を飲み込む組織に組している自分がいる事実が笑えて仕方なかった。今すぐにでも暴れだしたい衝動が身体を迸る。

 事実、おそらく彼がこの場に一人ならそうなっていただろう。しかし、この場には他の者がいたのである。

 

「ロイド――」

 エリィが優しく話しかけ、瞬間、手を振りぬいた。乾いた音が響きロイドの顔がぶれる。その行動に本人以外の全員が驚いて声も出なかった。

「今は個人の事情を優先する時じゃない、そんなこともわからない貴方じゃないでしょう」

「エリィ……」

「今はこの資料によって得られた情報からグノーシスの被害を最小限にすること、それが私たちの、特務支援課の使命なのよ」

「………………そう、だな。ごめんエリィ――――それと、ありがとう」

 ロイドは今度は自分で両の頬を叩く。忘我状態では仲間すら失ってしまう、自分で自分に喝を入れた。

 それでも、一度産声を上げた疑念は消えてくれなかった。

「…………」

「ん? どしたティオすけ」

「……いえ、なんでもありません」

 ランディがふとティオに違和感を覚えるも、当の本人はそれを肯定しなかった。しかし僅かな間はそれが正しいことを示していた。

 

「俺たちも一度支援課に戻ろう。課長に報告しないと」

「じゃあ私はエステルさんと連絡を取るわ。キーアちゃんがどうしているか気になるし」

「頼む。俺はギルドに連絡するよ」

 二人は瞬時に対応を決め行動する。それをティオとランディ、そしてダドリーが呆然と見つめていた。真っ先に覚醒したのはダドリー、遊撃士という存在を認めていない彼は食って掛かった。

「おい待てっ、遊撃士に協力を打診するということは警察内部の汚点を話すということだぞ!」

「警察の恥と一般市民の安全、どちらを優先するべきかなんてダドリーさんもわかっているでしょう? もう俺たちだけではクロスベルを守れない。警察のほとんどが圧力で動けないんですから」

「ぐ……っ」

 ダドリーが呻いた。特務支援課絡みで彼が苦汁を飲んだのはこれで何度目なのだろうか。

 しかし彼もわかっている。わかっているからこそ、もう口を開かなかった。

 

 連絡を終えるとロイドはほうと大きく息を吐いた。ガイのバッジを眺める。

 もうすぐだ……

 セシルに対して誓った目標、それにたどり着ける機会をやっと得ることができた。この警察徽章こそがルバーチェがガイ殺害の犯人であるという証拠なのだから。

 しかし今は、そう今は、本当にそうなのかという疑念も生まれていた。

 ガイ・バニングス殺害の現場から見つからなかったのは二つある。一つはこの警察徽章。そしてもう一つは彼のトンファーである。

 今回見つけたのはバッジだけ、トンファーはなかった。別な場所に保管しているという可能性は高くない。故にトンファーはここにはないのだろう。

 ならばそれはどこにあるのだろう。それを所有している者は殺害事件とどう関係があるのだろう――

 

「ロイド、その、痛くない?」

「え? ああ……」

 不意にエリィに頬を擦られ呆とする。張られた頬は赤くなり若干の熱を帯びていたのか、彼女の体温が冷たく気持ちいい。

 正面から見つめる瞳は申し訳なさそうに不安げで、何故かずっと見ていたいと思ってしまった。

 自分が高ぶったのは事実で、エリィの判断は強引だがロイドのためだったのは確かだ。それ故にロイドは恨む気持ちなど欠片もなかったのだが、彼女は思わず、という風に動いてしまったのだろう。自分の判断がベストでないように思えてしまったのだ。

「大丈夫、ありがとうエリィ」

 宛がわれた手に自分の手を重ね、もう一度そう言う。エリィも一瞬呆け、そして安心したように頷いた。

「……お前たち、何をやっている」

「へ?」

「え?」

「すんません、いつものことッス」

「でも場を弁えてほしいです……」

 最年長からの一言に二人は素っ頓狂な声を上げ、ランディとティオが二人の代わりに弁明を始めた。ダドリーは呆れたように息を吐き、

「私は内密に動ける人員をかき集める。お前たちは調査の結果が来たらすぐに報告しろ、いいな?」

「りょ、了解です!」

「よし、行け!」

 結成したばかりのダドリー班は解散、それぞれに行動を開始した。

 

 

 

 

 遊撃士協会に連絡を取ると、ちょうどエステル・ヨシュアがシズクとキーアを連れて戻ってきていた。

 今後の対策を練ると遊撃士協会は手薄になってしまうのでシズクは特務支援課が預かることになった。キーアは大喜びである。

 もうすぐアリオスも戻ってくるそうなのでそこまで何事もなければ磐石だ。支援課は改めて遊撃士たちと結束し、ヨアヒムの結果報告を待った。

 

 次第に太陽が沈み始める頃、いつになってもヨアヒムから連絡が来ない。病院に問い合わせたところ研究室に篭もって出てこないらしい。薬の解析が難航しているのか、それとも別な何かを行っているのか。

 業を煮やした彼らはウルスラに直接出向くことにした。キーアとシズクはセルゲイとツァイトに任せてあるが、一応四人は離れる旨をミシェルに報告しておいた。駅前通りを抜けバス停でバスを待つ。

 時刻表に記載されている時間は疾うに過ぎていたが、それでもバスは現れなかった。それは以前と同じような光景である。

「また魔獣にでも襲われてるのか?」

「不謹慎なこと言わない。でも少し心配ね」

「センサーには反応ありません。少なくとも近くにはないみたいですね」

「心配だな……あの時と同じトラブルかもしれない、行こう」

 そして四人は走り出す。

 夕焼けに輝くクロスベル、彼らの影が低く深く伸びていく。

 

 

 ちょうど中間地点である浅瀬付近の場にてもぬけの殻になったバスが発見されたのは、それから10分後のことだった。

 車内には見舞いの品と思しきものが残っている、乗客がいたことは確かだ。エンジントラブルのようなものも見受けられず、歩いて市に戻るなら途中ですれ違ったはずだ。

 ならば乗客はウルスラ病院にそのまま向かったのか。しかしそれなら見舞い品も持って行くはず。

 つまり、そんな余裕もないほどの状況だったということだ。

 

「ルバーチェ・グノーシス服用者の失踪、空港の爆破予告、誰もいないバス。この三つが関係ないなんて言われても信じられないな……」

「答えはウルスラ病院にあるわ。行きましょう!」

「一応センサーを最大にしておきます。なんだか嫌な予感がします……」

「……杞憂になりゃいいけどな」

 ――そして、陽が沈んだ世界で彼らは真実に直面する。その舞台は果たして、血の匂いのする白の巨大建造物だった。

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 アリオス・マクレインがギルドに戻ってきたのは、ちょうどロイドからの通信が切れた時だった。

「お父さん」

「シズク。すまないな、今日は」

「ううん。それよりお父さん……」

「ああ、わかっている」

 アリオスは微笑を湛えた顔を引き締め口を開く。

「エステル、ヨシュア、感謝する」

「どういたしまして。それでアリオスさん、シズクちゃんは支援課で預かってもらうことにしたけどいいかな? ギルドは失踪者の捜索で空になっちゃうから」

 

「ああ、賢明な判断だな――――ヨシュア、どう見る」

「D∴G教団の関与が今確定しました。とすると街に広がった薬は間違いなくグノーシスでしょう。ルバーチェが街に広げた理由はおそらく金銭目的。そのルバーチェも消えてしまっている現状、彼らはその教団関係者に匿われていると思います」

「おそらくな。そして教団ならロッジがあるはずだ。二人にはそこに行ってもらいたい」

「目星がついているんですね? ……いや、そうか。太陽の砦ですね」

 ヨシュアは確信したように言い、アリオスは頷いた。エステルは突如現れた名詞に疑問符が浮かんでいたが、その場所に関する報告を思い出して得心する。

「ブレードファング! そっか、昔の魔獣が教団のせいかもってことね!」

「うん、教団は魔獣に関しても実験をしていたからおそらく何かの痕跡から復元したんだろう。その試運転か事故か、彼らは古戦場に出てきた」

「そうだ。万が一を考えると俺はそう遠くまで出られない。その点お前たちならこういった経験も多く積んでいるし連携も容易い、俺よりも適材なはずだ。そうだな?」

 その問いに二人はそれぞれ答えを返す。アリオスは頷き、ミシェルを見た。

 

「俺は星見の塔に向かう。市に一番近い遺跡はそこだからな」

「ええ、そう思ってリンたちには他の場所に行ってもらっているわ」

「流石だな」

 アリオスはそして膝を着き、シズクを抱える。そしてようやく、キーアに顔を向けた。いつかの日に病院で会って以来である。

「キーア、行くぞ」

「その…………うん」

 暫しの間を置いてキーアは頷く。少女は何か言いたそうにエステルとヨシュアを見たが、結局何も言わずにギルドを去った。

 それに気づいていたシズクは、その躊躇が何を意味していたのかわからなかった。

「…………」

 アリオスは消えていく夕日を見つめながら思う。

 今日はクロスベルのターニングポイントになる。これを無事に乗り切ることができるのかどうか、それが彼にはわからなかった。

 

 全ては空の女神にしかわからない。

 

 

 


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