空の碧は全てを呑みこみ、それでも運命の歯車は止まらない   作:白山羊クーエン

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過護

 

 

 

 

 ビルを出た特務支援課を出迎えたのは見知った女記者グレイス・リン。

 とは言っても彼女が東通りから出てきたところに遭遇しただけであるが、グレイスの方はご機嫌な様子で話しかけてきた。

「あ! ロイド君たち久しぶりねー」

「グレイスさん」

 四人は適当な挨拶を返した後、何事もなくウルスラ間道に行こうとしたがグレイスに呼び止められた。

「ちょっと冷たいわねー、私には優しくしといたほうがいいと思うんだけどなー」

「……脅しですか?」

 ペンは剣よりも強し、その剣がまだ完成していなければ尚更だ。

 ティオのジト目が更に細くなりグレイスは動揺したが、それもすぐに笑顔に消えた。本当に機嫌が良いようだ。

「いやよティオちゃんそんな脅しなんて。でもそうね、脅しじゃなくて忠告ならあるけど―――」

 聞きたい、と目で訴えるグレイス。全く以って先の発言とは関係のなさそうな予感がしたが、彼女に有力な情報をもらったこともあって頷いておいた。そうでしょうと腰に手を当て胸を張るグレイス。

「あ、すみません!」

 胸を張ったときに後ろの旅行者にぶつかった彼女。大慌てで向き直るが四人は苦笑しており少し頬を染める。

 咳払いをして真面目な、しかし嬉しそうな顔をして言う。

 

「実はね、遊撃士協会に新しい人員が入ったの。ちょうどあなた達と同じくらいのね!」

 ロイドとエリィを見てそういうグレイスに四人は目を丸くした。遊撃士に関する話題は正に先ほど話したからである。

「詳しいことは記事にするから言わないけど、あなた達にとっては大変な相手かもねー。何せあの二人は凄腕よ。あの年でBランク、貫禄というか余裕みたいなものも見受けられる。これは相当期待できるわよ、あなた達も頑張らないとねー。あ、これおすそ分けね」

 一方的に話したグレイスはロイドの手に何かを握らせ百貨店へと消えていく。その後姿を四人は黙って見つめていた。

 

「今は後回し、医科大学に行きましょう」

「……そうですね」

「どっちにしろ会うだろうしな」

 彼らは百貨店から目を切り、目的地へと向かった。

 駅前通りを抜け、ウルスラ間道へと進む。左手に見える空港からは飛行船が飛び立っていった。

「そういやロイド、さっき何貰ったんだ?」

「え? …………忘れてた。えっと……クオーツ?」

 金色に光るいつもの結晶。鷹目のクオーツだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 空の碧は全てを呑みこみ、それでも運命の歯車は止まらない

 

 

 

 

 

 

 

 

 鷹目。鷹のような視界を得ることができる感覚系クオーツ。その原理は未だ不明であるが、命中と同じく空間を把握する系統であることは空属性のクオーツであることからも窺える。

「こ、これは凄いな……」

 ロイドは自身の空属性スロットにセットした後の視界に素直に驚嘆の声を上げた。人間の視界ではない、上からの俯瞰風景、周囲一体を見ることができた。

 しかし、

「う……」

 歪む視界、ロイドは眩暈を覚えてすぐにスロットから外してしまった。

「大丈夫、ロイド」

「なんだ、どうした?」

 

 ロイドは目に手を当てて暫し固まった後、手を離してそれを見た。

「すごく周りが見えて、見えすぎるんだ。そうしたらちょっと……」

「視覚野の情報量が跳ね上がって処理系等が悲鳴を上げたんでしょう。いきなり外で使うのではなく屋内で慣らした方がいいと思います」

 ティオが理論的に解説すると、ロイドから鷹目を奪い取った。

「これはわたしがつけます。属性値も上がりますし」

「大丈夫なのか、ティオ? 目が回るぞ」

「問題ありません」

 ロイドはティオの目を見たが、やがて納得した。

 さて、と口を開き、改めて辺りを見回す。

 

 四人は聖ウルスラ医科大学行きの導力バスが時間になっても来ないという話をバス運行担当者から聞き、ならばと歩みを進めたところで、折角だから貰ったばかりの鷹目を使ってみようということだった。

 残念ながらロイドは扱えず代わりにティオがつけたが感知できる範囲には異常はないらしい。

「通信が途中で切れたんだよな、急いだほうがいいんじゃねぇか」

「そうね、こういう状況になると初めての道っていうのが不安だけれど、できる限り急いでいきましょう」

「わたしもセンサーを最大にします。これなら奇襲は防げるでしょう。鷹目も役に立ちそうです」

 四人はそれぞれ得物を持ち、フォーメーションを組んだ。前衛にランディ、遊撃にロイドとエリィ、後衛にティオという形だ。

 ティオを信用しているとはいえ、もしものことがあった場合を想定して近接のロイドは常より位置を後ろにとっていた。

「行こう!」

 適度に距離を取り、進む。

 

 ウルスラ間道はルピナス川に沿った形にある道で、草木が生い茂る自然のままの道だ。

 舗装がされているのは導力バスの運行の為であるが、それは本当に最低限であり、道幅は三アージュほどだ。それ以外は土がむき出しで、水が近くにあるために生物が広く繁殖していた。

 左手は運河で進むことはできないが、小島が数多く点在している。そのどれもが木々に溢れた緑一色のものだが、途中の展望台のように広がった場所から見えるそれは古代の遺跡だと言われている。

 道のロケーション的にはアルモリカ古道の田園風景とは異なるが、瑞々しい生物の営みを感じられる立派な景観に満ちていた。

 ちなみに先に見た遺跡は縁結びの場所として有名である。

 

「っ! 来ます!」

 突然ティオが叫び、全員が身構える。

 複雑に生い茂る木々は自然の死角を作りやすい。その一つから飛び出してきたのは小猿のような魔獣だった。

「ちっ」

 ランディは横手から来た魔獣に向き直るがその動きは素早く、ハルバードを使う余裕がない。

「はぁ!」

 ランディの懐に入った魔獣をロイドが横から防ぎ、弾く。魔獣はそれでも一回転して着地する余裕を見せた。

 黄色い毛並み、緑の眼を剥く魔獣。

「解析完了。ミミナガモンチ、火が弱点です!」

「火ぃ? ってことは俺とロイドかよ!?」

 モンチをあしらいながらランディが叫ぶ。火属性の値を持つのは攻撃のクオーツをつけているロイドとランディだけである。しかし彼らは近接の要、安易にアーツは使えない。

 

「ロイド、交代! 私が出るわ!」

「エリィ!?」

 銃を魔獣の足元に撃ちながらエリィが前に出る。ロイドも追撃をやめてエリィに並んだ。

「素早くても持久力はないわ、私が中距離で制圧する! その隙にアーツを!」

「了解!」

 エリィに頷きロイドはエニグマに指を滑らせる。青い光が全身を包み、詠唱にかかった。

 ロイドはエリィやティオに比べてアーツが不得意な分時間がかかる。しかしロイドに殺到せんとするミミナガモンチは狙い撃つエリィと隙を窺うランディがいるために攻撃ができない。

 ならば、ロイドのアーツが完了するのは時間の問題だった。

「ファイアボルトッ!」

 目の前に火球が収束され、曲線を描いて魔獣を狙う。ミミナガモンチはそれに気づいて回避運動をとろうとするが、エリィが初動を防ぐ。

「キィィィィ!」

 火球に包まれた魔獣は火の光と共に七耀の光を放出し、やがて燃え尽きた。

「ふぅ……」

 構えを解いて肺の中の空気を吐き出す。ティオが駆け寄ってきた。

 

「すみません、注意が遅れました」

「いいさ、あのすばしっこさは予想外だったからな」

「隣接する森に生息する魔獣みたいね」

「しかし攻撃的だったな、あんな荒いやつなのか?」

 ティオは魔導杖に得られた情報を見ると、首を振った。

「いえ、悪戯はしますがそこまで攻撃的ではないようです」

「そうなのか? するとどうして……」

「バスの異常と関係がある、と思うのは都合が良すぎるかしらね……」

 エリィが呟く。確かに得られた情報との齟齬は異常と言えるのかもしれないが、それは誤差の範囲内かもしれないのだ。

 

 とにかくバスの姿を発見するしかない。魔獣の急襲に気を割いて移動速度が多少落ちたが、それでもすぐにバスを見つけられたのは偏に距離の幸運だと言えよう。

「見つけましたっ! あ……」

 ティオの言葉で駆け出した三人が見つけたのは道を逸れ脇に止まっている導力バスと、それに向かっていく魔獣の姿だった。

「まずいっ!」

「はぁッ!」

 エリィが導力銃で魔獣の側面を狙う。大したダメージは与えられなかったが意識を逸らすことはできた。

「でけぇなおい!」

 魔獣の大きさは高さでは導力バスに匹敵し、横幅も人の三倍はある。

 山羊と言うより悪魔と言ったほうが適切な二本角にダークパープルの体毛の巨猿だった。

「さっきのの親玉か!」

 ランディが叫び構える先にはもう一体、二体の魔獣は理性のない眼で四人を見た。

「ティオ、バスの中に人はいるのかっ?」

「います! 引き離さないと……!」

「了解! 誘導、引き離すぞっ!」

 ロイドの掛け声に応じ、四人は戦闘を開始する。

 

 丸太のような腕は怪力を容易に想像させる。一撃が命取りになることもありそうだ。

 支援課一の体躯を持つランディでも力負けは必須、ならばロイドはフットワークを生かしたヒット&アウェイで攻めるしかない。そうして注意を引きつければバスからも距離をとれるし一石二鳥だ。

 問題は引き離した後の対処である。

「エリィはランディの援護を、ティオは情報頼むっ!」

 そう言って飛び退くロイドを襲う腕。大地を抉り土を撒き散らす一撃をすんでで避け、指示を出す。

 巨体ではあるが思ったよりも素早い。それは猿の類の魔獣であるからだろう。

「出ました! 『ゴーディアン』、体力と腕力は想定どおり、火属性が弱点です!」

 ミミナガモンチと同様の属性耐性だったが、こちらのほうが火に弱い傾向にあるようだ。クオーツを変えていなかったことに舌打ちするが、今はそうもしていられない。

 

 ランディはハルバードで攻撃を受け流しているが、一撃受けるたびに腕に衝撃が走る。

 一発の振りが大きいためにその後はエリィが複数発を浴びせるがまるで効果がない。

「く、神経が鈍いのかしらっ!」

 攻撃を意に介さないゴーディアンは手近な人物を狙っている傾向にある。故にランディとロイドは絶えず攻撃を受けているが、エリィとティオは一撃も浴びていなかった。

「水は効きませんがそうも言っていられませんっ」

 エニグマを起動し詠唱に入る。目立ったダメージを受けていない四人の回復ではない、攻撃用のアイシクルエッジである。

 水色の光がティオを包んだ瞬間、ティオは悪寒を覚えて前方を見上げた。

「ガァアアアアアアアア!」

「っ!?」

 ロイドに攻撃を振るったゴーディアンが一足跳びにこちらに向かってきた。離れた相手を狙うことはなく、その上その跳躍力も見せていなかった。ロイドも完全に裏を掻かれてしまった。

「ティオ!? くそっ!!」

 エニグマのCPを消費してクラフトを発動。光に包まれたロイドは倍速でゴーディアンに向かう。

「間に合えっ!」

 トンファーに導力を集め、電撃と成す。

 

 後はそれを当てるだけ、それなのに。

「ガァアアアアアアア!」

「ぅあっ!?」

 ロイドの一撃が当たる直前でゴーディアンは勢いそのままにティオに体当たりを仕掛けた。小柄なティオは大きく吹き飛ばされ地面を抉っていく。

 やがて木にぶつかる形で止まったティオからは魔導杖が離れ、四肢は弛緩していてピクリとも動かない。

「くそおおおおおおお!」

 エニグマに導かれてロイドがスタンブレイクを放ったのはゴーディアンが着地した後、吹き飛ばされるティオを助けることもできずにロイドは攻撃を放った。

「グウウァアアア!」

 肉の焦げる音とともに騒音を上げるゴーディアンはその元凶であるロイドに向かって腕を振り回す。

 クラフトの技後を狙われたロイドは回避できず、なんとかトンファーを交差させて受けるが、その怪力に吹き飛ばされた。

「ぐううううう!」

 衝撃にロイドは顔を歪めるが、自身の損傷を気にかける余裕は彼にはない。

「ティオッ!」

 呼びかけるがティオは反応しない。

 叫ぶロイドの横にランディが跳んできた。攻撃の瞬間に後方に跳んだことで勢いを殺したらしく、痺れなどはない。

「お嬢っ、ティオすけ頼むっ!!」

 ランディがこちらに跳んで来たのは二体のゴーディアンを一まとめにするためだ。

 ランディの呼びかけに頷いたエリィがティオの元に駆け寄っていく。これでティオの安全が得られる。

 

「グウゥゥ……」

「ガァァァ……」

 二体のゴーディアンに挟まれる形のロイドとランディは背中合わせになって互いの背後を守る。

 じりじりと近づくゴーディアンは幸いなことにこちらを先に仕留めるようだった。

「……ロイド、しっかりしろ。ティオすけは無事だ、だから戦いに集中しろ」

「―――わかってる! わかってるさっ!」

「バカ野郎ッ! わかってねぇから言ってんだ! ここで気張らなきゃ誰も守れねぇぞ!!」

「ぐ……!」

「誰の背中守ってると思ってんだ! 今はおまえ自身を守って俺を守ってみせろ!」

 ランディの怒声にロイドは思考を放棄して現状を把握する。ロイドの目が現状を見たことを確認してランディは内心で息を吐いた。

 

「ロイド、二体引きつけろ。まとめて俺が討つ」

「っ!? あぁ!!」

 二体の魔獣が飛び出すその一手前、二人は同時に一体に向けて走り出した。

 向かってくる二人に一瞬虚を突かれたゴーディアンは再びその巨腕を振りかぶる。

 瞬間、ランディは真横にスライドして間合いから外れた。一瞬の振り返りで後ろのもう一体が向かってくるのがわかる。

 そのまま突っ込んだロイドは大振り故にある僅かな間隙に身を屈めて飛び込んでいく。

 頭の上を高速で過ぎ去っていく腕に髪が数本飛び、逃げ切れなった左足に爪が奔る。

「ああああああああ!!」

 しかし肉体の痛みは精神に凌駕される。

 そのまま背後に潜り抜けたロイドはCPを発動、アクセルラッシュで足を狙う。

 連撃を足に受けたゴーディアンは体勢を崩し、故に向かってきたもう一体の進行を阻害した。そしてロイドの役目は終わった。

「ランディ!」

「上出来だロイドッ!」

 残るCPを全て導力に、赤い炎を纏ったランディは身体をねじりハルバードを掲げる。

 その射程内には二体のゴーディアン。状況は整った。

「クリムゾンゲイルッ!!」

 ロイドに放ったものとは違う、一回転多く付与された遠心の力は焔の牙となってゴーディアンの身体を刈り取る。

 体毛を焼き肉を焼き、内蔵にまで至った裂傷は身体の内側から死を放つ。それは激痛となって全身を駆け巡るが、幸いなことにゴーディアンがそれを感じることはなかった。

 

 音もなく崩れ落ち、光に還っていく。残ったのは生きたまま焼かれた魔獣の肉のみである。

 一撃の負荷が身体を走る中ゆっくりと姿勢を崩し、ランディは笑った。

「よくやった、ロイド。お嬢っ、ティオすけはどうだっ!」

 離れているエリィが手を上げ、無事なサインを送る。エリィの回復アーツが傷を癒し、直に動けるようになるだろう。

「ランディ、その……すまない」

「いいってことよ。ティオすけだって無事、なんの文句もねぇ」

 ランディはニヤリと笑ってロイドの肩を叩く。ロイドもランディの様子にやっと笑顔を見せた。

 しかしランディは内心で懸念を抱いていた。

 

 ロイド・バニングスは仲間を守ることに異常なまでの執着を見せている。

 それは時に捜査官としての本分を忘れたり、守りきれなかった場合の動揺に繋がったりするようだ。

 仲間を守ること自体は当たり前のことだが、特務支援課は結成して一月にも満たない部署である。時間の経過とともにその存在の重要性が上がり、その気持ちが強くなるなら文句はない。

 だがその短い期間の付き合いしかない彼らを守ろうとするロイドには正直に言って驚愕すら覚える。

 

 彼の過去に何かあるのか、ということにまで考えが及んだところでランディは思考を止めた。それは本人に話してもらうしかない。

 ただランディはロイドが仲間を守りきれなかった場面が早いうちに訪れてほっとしている。今回よりももっと危険な状況で遭遇するよりはマシだった。

 

 気がつくとエリィが手助けしながらティオを連れてきていた。服が土で汚れているが、傷は回復している。

「二人とも、無事?」

「…………すみません、油断、しました……」

「俺たちは大丈夫だ。それにティオのせいじゃない、俺の責任だ」

 再び顔を戻してしまうロイドにやれやれと頭を掻いてランディはわざと大声を出した。

「おうおうティオすけ、沈んでるな!? じゃあ見ろ、この俺の過去最高の笑顔をっ!」

 ビシッとポーズを決めて笑うランディに毒気を抜かれた感じになり固まる三人。しかし、

「……ふふっ」

「はは……」

「やれやれです……」

 堪えきれないように三人は笑い出し、ランディも釣られて笑った。

 沈痛な雰囲気が彼方に消え、戦闘後とは思えない和やかさが生まれた。

 

 

 ひとしきり笑った後、ロイドは言った。

「そうだ、バスのほうは―――」

 忘れていた導力バス。急いで歩み寄ると中から運転手と思しき男性が出てきた。

 男性に身分を話し事情を問うと、どうやらエンジンが故障してしまっていたらしい。エンジンからのエネルギーで通信のほうも賄っていたので通信も使えない状態になってしまったということだ。

 男性が急いでエンジンの点検に入るところをほっと息をついて見守る四人。

 ティオはエリィに寄りかかる形で目を閉じ、息を整えていた。苦痛も表情からは消えつつある。

 かなりの威力だったはずだが、改めてアーツの素晴らしさを思わせる光景だった。

 

 しかしエンジンのほうはそうもいかず、どうやら直せないようである。とにかく危機は去り安全が確認されたのだ、一度戻って報告するべきだろう。

 そう思って四人は踵を返すが、その判断は甘かった。

「ガァアアアアア!」

「何っ!?」

 唸り声に振り返ると、そこにはゴーディアンが四体。ゆっくりと距離を詰めていた。

「どうして……」

「壊れたクオーツに寄って来たっ!?」

「く、流石に守りきれねぇか!」

 ティオはまだ完全に回復しておらず、ランディはCPを使い尽くし、ロイドとともに二体を相手にしたばかりだ。

 エリィはEPこそ消費したものの健在だが、彼女の導力銃は決定打にはならない。

 

 苦労した倍の数を前にロイドらはゆっくりと後ずさった。バスを守るように前に固まり、せめて乗客だけでも逃がそうと試みる。

「乗客を連れて逃げてくださいっ!」

 運転手の男性にそう言うと男性がバス内部へと動き出す。

 しかしまずいことにそれを契機としてゴーディアンが動き出した。男性を狙う一体の前に飛び出したロイドは先ほど吹き飛ばされた一撃を受け止めようと防御体勢を固める。

「ロイドッ!」

「無理だ、よせっ!!」

「―――っ!!」

 ランディがハルバードを構え横からの迎撃を試みたが、別の一体の動き出しにそれを実行できない。

 過ぎる時間、ロイドは覚悟してそれを待ちうけ―――

 

 

 

 

 身体が宙を舞った。

 

 

 

 

 


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