転生したけど普通に生きたい!!……え?ダメ?   作:紫蒼慧悟

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よし、できたぞ。
結構早めに出来上がった気がする。

これはアレか?
パソコンの壁紙を黄昏の女神にしたからか?

マリィ効果すげえ…


ロシアは寒すぎだから!!!

ミステリアス・レイディ開発から1月程たったある日、俺はロシアにいた。

いや、俺にもよくわかんないんだよ…

アリサちゃんがいきなり来たと思ったら、

「一週間程、預かりますね。ほら、四季行きますよ?」

とか言って問答無用でロシアに連れてこられた。

アリサちゃんのことは嫌いじゃないけど、こうゆうところは好きくない。

まあ、連れてこられた理由はなんとなくわかるんだけどね…

国賓で迎えられた時にはビビったけど…

思わずリーゼを起動しそうになったぐらいに…

まあ、連れてこられてきてから数日も経つと流石に慣れた。訳もなく…

3日程寝込んだ。熱が出たんだよ…

ほら、俺って病弱だからね!!仕方ないね。

熱が下がったらすることといったら、勿論観光だよ。

ただ寒かった記憶しかないけど…

覚えてるのはクレムリン広場に言って疲れたのと、ダイビングして響、じゃなくてデカブリストだったかあれを見に行ったぐらいか?

3日前には刀奈も来ていたし、今日明日あたりにやるんだろうな…

アリサちゃんの機体の血の復讐者(メスティーツェン・クローフィ)も万全状態らしいし…

まあいいや、今日はもう寝てしまおう。

国賓だからなのかこのベッド超フカフカなんだよな…

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の予想通り翌日に行われた。

現ロシアの国家代表《アリサ・イリニーチナ・アミエーラ》…

彼女は近々国家代表を辞めることを宣言しており挑戦者を募っていた。

既にロシアの代表候補生は全員が敗退。

後は数少ない自由国籍権を持つ者だけ…

これで居なければロシアの代表候補生でトーナメント戦を行うだけなのだが、どうもそれはやりたくないらしい。

まあ、考えてみればわかることだ。

現世界最強の我が姉、織斑千冬に一番近いのがアリサちゃんだ。

彼女に認められないということはモンドグロッソで優勝はできないということだ。

勝負は簡単なこと。

アリサちゃんとの真剣勝負に5分持てばいいだけ。

アリサちゃんは五分間本気の全力で攻めてくる。

ソレを防ぎ、躱し、逃げ切れば勝ち。

できなければ負け。

ただそれだけの簡単なこと…

なのに未だに誰もできていない。

代表候補生で一番の有望株だった者は開始直後に堕とされて戦意喪失。僅か6秒だったらしい。

一番持ったのは2分46秒。

回避に徹してこれだ。

だが、刀奈は一矢報いるつもりらしい。

だから俺は言ってやったんだ…

「遺書は書いたか?」

「私、死ぬの!?」

相変わらず認識不足だな…

姉さんと同等なんだぞ、あらゆる意味で…

生身でIS装備の相手に勝つんだぞ?

俺は悟ったね…

この人には一生勝てない…

まあ、結果は火を見るより明らかだが未来は誰にもわからない。

俺の眼前で繰り広げられる光景に期待しておこう。

これで刀奈が負けたら俺は何を言われるかたまったもんじゃない…

ロシアで一番の大きさのIS用演習場、この周囲には被害が出ることを予想して周囲十数kmには建物一つない。

その為、荒野にポツンと建つ風車小屋みたいなもんだ。

例えがわからない?

わからなくていいって…

要はアリサちゃんが規格外ってことだ。

ロシア語のアナウンスが流れてアリサちゃんがメスティーツェン・クローフィを、刀奈がミステリアス・レイディを展開してフィールドに出てくる。

メスティーツェン・クローフィ…

ロシアの第2世代型IS。赤と黒のツートンカラーで装備は2丁の銃剣(ガンブレード)

問題なのは大きさだ。2mを超える大型の銃剣。

その為、各関節部には新型アクチュエーターを通常の3倍使用されている。

まあ、新型アクチュエーターを作ったのは俺なんだが…

右の黒い銃剣がレイジングロア、左の赤い銃剣がアヴェンジャーという名だ。

両方に共通しているのはガトリングガンの下に片刃剣が付いているところだが、レイジングロアはガトリングが、アヴェンジャーは片刃剣が大型化されているところだろう。

更に、本体は装甲を最低限しか持っていなく、脚部、背部にスラスターがこれでもかと張り付いている。

要は低装甲・高機動・重武装というISだ。

因みに姉さんは、低装甲・高機動・刀オンリーだ。

ロシア語で再びアナウンスがされる。

10秒後にブザーが鳴り響き、戦闘が開始された。

 

 

 

 

 

 

ブザーがなった瞬間に両者が同時に動いた。

アリサはスラスターに火を吹かせて眼前の刀奈へと最高速で突っ込み、左手に握ったアヴェンジャーを遠心力を利用して振るう。

対する刀奈は全力で後ろに後退すると共に、アクア・クリスタルから水の防護膜を何重にも重ねて右から迫り来る赤い大剣から身を守る。

だが、いくらナノマシンを用いた水の膜であろうとアリサの振るうアヴェンジャーの前には紙に等しいかのごとく無残に切り裂かれる。

アリサは水の膜の向こうにいる刀奈に向けてアヴェンジャーの引き金を引く。

刀身の上に付いているガトリングガンから大量の弾丸が水の膜を越えて吐き出される。

水の膜が霧散した。

アリサの弾丸はアリサには当たらなかった。

避けたのか?否。

「ダミーですか…」

人型の水がアリサが放った弾丸を全て飲み込んだ状態で刀奈のいた場所に鎮座していた。

アリサは何かに気付いたように全力で後退した。

先程までアリサがいた場所が突然爆発したのだ。

アリサは爆風に煽られながらも上空に佇んでいる刀奈を睨む。

次にアリサがしたのは、睨むでもなく罵るでもなく、笑顔を向けることだった。

「っ!?」

刀奈はアリサの笑顔に恐怖し、体を震わせる。

その一瞬の隙をついてアリサの左手のレイジングロアから鉛玉が刀奈に向けて放たれる。

刀奈は余裕で回避できる攻撃に違和感を感じつつもスラスターに火を入れて後方に下がるように避ける。

その行動はアリサ相手には悪手だった。

刀奈は自分の後ろに何がいるかも知らずに後退し、一瞬遅れて全力で真下にブーストをかける。

一瞬後に先程まで刀奈の首があった場所を血のように赤い大剣が通り過ぎていった。

刀奈は冷や汗を流しつつ、アリサを探す。

見つけた。刀奈が先程アリサに笑顔を叩きつけられた場所にだ。

今度はアリサが笑顔で刀奈を見下ろしていた。

「一筋縄じゃ行かないわよね、やっぱり…」

刀奈は自分が挑んでいる相手の人外度を再認識しつつ呟く。

アリサから目を離したら次こそ終わる。

そう、頭の中に叩き込んでから蒼流旋を握り締め、攻勢に出る。

アリサは真下にいる挑戦者に残念に思いつつも期待していた。

機体の性能ではアリサが格段に不利だが、こちらには余りあるほどの経験がある。

逆に刀奈は機体性能が有利でも、圧倒的なまでの経験不足を感じていた。

蒼流旋に仕込まれた4門のガトリングガンがアリサを狙うもののアヴェンジャーを盾にするように防ぎ、レイジングロアを薙ぐように振るう。

ただそれだけの行動にアリサに対して恐怖を抱いてしまった刀奈はレイジングロアを避けるように動いてしまい、蒼流旋の射線からアリサが消えてしまう。

すかさずアリサは盾の役割を終えたアヴェンジャーを下から救うように薙ぐ。

刀奈はその場で宙返りをするように回転してアヴェンジャーを躱す。

だが、それはアリサに対して背中を向けるような行為だった。

その隙を逃すはずもなく刀に向けて斬撃を繰り出す。

「ちっ!!」

手応えがなかった。またダミーを攻撃したのだとアリサは悟った。

だが、いつ入れ替わったのか?そこがアリサにはわからなかった。

あり得るとすればアヴェンジャーを盾にして銃撃を防いだ時か?

それとも最初からダミーと戦っていたのか?

アリサが切り裂いた水分身は霧状に霧散し消える。

ふとアリサは最初の水分身を倒した位置を視界に収める。

自分が撃った銃弾しかなかった。

アリサは直ぐにその場を離れた。

地面に降り立つとその場で回るように銃撃を放つ。

アヴェンジャーを右に、レイジングロアを左に突き出し独楽のように回りだす。腕を徐々に上げて真上に上げた時、両手の銃剣を交差させた。

金属のぶつかり合う音が聞こえ、アリサが真上を見ると丁度刀奈が蒼流旋を振り下ろしてきた。

先程とは段違いのカナキリ音が演習場に響いた。

刀奈が振り下ろした蒼流旋はドリルのように水が動いていた。

四季の考案した特殊ナノマシンによって高周波振動しているからだ。

上の銃剣のレイジングロアの刀身には罅が入ってきていた。

メンテナンス不足というわけでも寿命が来ていたわけでもない。

第2世代型の装備は現在でも最強クラスだ。

だが、第3世代型の固有武装はその上を行く。ただ、それだけだった。

要は機体性能の差がここに来て現れただけなのだ。

アリサは表情一つ変えずにその場でスラスターを点火した。

「なっ!?」

通常の第2世代型なら抜け出すこともできなかっただろうが、アリサの機体は専用機だ。

無論、刀奈のミステリアス・レイディとて専用機だが、踏んできた場数、経験の差がここに出た。

刀奈は機体性能で、武装を破壊しての無力化を図り…

アリサは経験の差で叩き潰す。

両者は拮抗しているように見えるが、実際はアリサが有利だった。

レイジングロアの刀身には罅が入り、刀奈に翻弄されているように見えるが実は違う。

刀奈は内心いっぱいいっぱいだった。

それもそのはず、こないだ中学を卒業したばかりの少女が現役の国家代表に挑んでいるのだ。

緊張もすれば震えもする。

いくら、昔から実家の闇の部分を見てきたとは言っても少女であることに変わりはない。

刀奈は気付いていた。

アリサが未だ本気を出さずに様子見に徹していることに。

その事実が更に刀奈を焦らせる。

アリサにとっては手加減をしているつもりはなかった。

昔から本気で相手をすると簡単に勝ってしまう。

だから、必然と相手の力量に合わせて力をセーブしてしまうのだ。

今までに本気を出せたのは千冬と束だけだった。

だが、今回は少しばかり本気で言ってもいいのかもしれないとも思っていた。

そして、両者が共に負けられない理由もあった。

《"彼"が見ている前で無様な姿は見せられない。》

アリサの場合は刀奈に勝ってもらいたい気持ちと相反して少々複雑なのだが、それでも負けたくはない。

刀奈はISを改造してもらっている。きちんと対価は払っているものの負けるのは忍びない。

故に、アリサはスラスターを全開にして飛び上がる。

刀奈はそれに負けじと蒼流旋で押さえ込む。

アリサは一瞬だけレイジングロアを上にずらし、自由になったアヴェンジャーを真横に振るう。

刀奈は水の膜を何重にも張り巡らすがアヴェンジャーの斬撃はその速度を落とすことなく刀奈の脇腹に吸い込まれるように叩き込まれた。

アリサの斬撃で刀奈は壁際まで吹き飛ばされる。

刀奈の肺から空気がごっそりと出ていく。

絶対防御の御陰で死ぬことはないが、衝撃は搭乗者にそのままくる。

多少は緩和されているものの、先程の斬撃は刀奈の動きを縛るには十分すぎるほどだった。

刀奈は自分の体に動くように命令を出すもまるで他人の体のように動いてくれず、アリサの接近を許してしまう。

蒼流旋は奇跡的にも離さなかったので未だに右手で握りしめていた。

辛うじて動けるようになってきた体に無理を言わせてすぐ傍まで来ていたアリサに蒼流旋に鋒を向ける。

だが、アリサは既にアヴェンジャーを振りかぶっていた。

刀奈は蒼流旋で防ごうとするも体がゆうことを聞かず、水の膜を貼ろうにも遅かった。

刀奈に当たる直前でブザーがなった。

5分が経過した合図だ。

アリサは分かっていたのか、直ぐに両手の銃剣を量子化して刀奈を抱き抱える。

お姫様抱っこだ。

刀奈は限界が来ていたのか抱き抱えられてすぐに気を失ってしまっていた。

「お疲れ様です。更識刀奈さん」

アリサは穏やかな笑みで刀奈に微笑んでいた。




次回は鈴ちゃんの引越しシーンをキング・クリムゾンして一夏誘拐事件だと思う。

という訳で鈴ちゃんは四季くんのフラグを立ててしまいましたとさ…
鈴「ファッ!?」

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