IS〔インフィニット・ストラトス〕 〜復讐か叛逆を選択する少女〜   作:アリヤ

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最近、忙しくて執筆が出来ない……

なので次回の投稿も遅れるかもしれない…… 来週になったら一応時間があるのだけども


第五話

 クラス対抗戦は所属不明のISがアリーナに現れたことによって中止することとなった。

 その翌日、凰鈴音とセシリア・オルコットは所属不明のISと謎の少女の事についてで召集されることとなり、IS学園にある少人数用の会議室に集められた。鈴とセシリアは隣同士に座り、鈴の反対側に織斑千冬が座ってからすぐに話が始まった。

 

「わざわざ集まってすまないな。一応、事後処理として纏めないといけないのでな」

「大丈夫よ。むしろこっちが織斑先生に聞きたいことがあったし」

「わたくしも大丈夫ですわ。それで、一体どんなことを話せばよろしいのでしょうか?」

 

 鈴とセシリアはどうして呼ばれたかというのは何となく解っていた。ここに来るまで詳しいことを言われていなかったが、鈴とセシリアの二人だけが招集されるとしたら昨日の一件しか考えられなかった。

 千冬は話を長引かせるのも悪いと思い、本題の話を始めた。

 

「そうだな。とりあえず、これから話すことは全て口外無用だ。誰かに話すと問題になるから話さないように」

「えぇ、解ったわ」

「わたくしも解りました」

「さて、まずは所属不明のISについて解ったことがあるから先に告げておく。あのISには人間が乗っていなかった」

「え? ということはあのISは無人機だというのですか!?」

「……否定したいところだが、その通りだ」

 

 ISは本来、人間がいないと動かないはずだ。それなのにもかかわらず、あの所属不明のISには人間が乗っていないでISが動いていた。しかしそうなると、アリーナに現れた謎の少女は無人機だと知っていた可能性も考えられ、容赦なく攻撃を繰り広げていたのはそういうことではないかと、鈴とセシリアの二人は即座に思った。

 

「しかし、無人機のISを造れる人物なんて、誰だか相当絞られるようなものだと思いますが……」

「セシリアの言うとおりね。けどあたしが推測するに、あのISはどこかの国が動かしたものではないと思うわ」

「ほう。それはどういう根拠だ?」

 

 千冬は鈴がそのように推測した理由が気になった。無人機のISが襲撃してきたのは専用機同士の試合であるため、どこかの国がISの機体情報を集めるために襲撃したと考える方が普通な筈だ。しかし鈴はその考えを第一に否定し、一番ありえないことだと考えた。

 

「簡単な話よ。どこかの国が襲撃したものであったら、あたしたちに攻撃を仕掛けてくるはずよ。それなのにもかかわらず、あたしたちの前に現れた無人機のISは私たちの事なんかまるで興味がないかのようだった。そして、近くで見ていた謎の少女をすぐさま見つけ出し、その子に向けて攻撃を始めたのよ。まるで最初から、謎の少女が来ることが解っていたかのように――」

「言われてみれば、凰さんの言う通りですね。わたくしか凰さんの機体の情報が欲しいのであれば、わたくしたちに攻撃を一度もしてこない方がおかしいですわ」

「……なるほど。確かに一理あるな。ならば凰に問おう。誰があのISを使って襲撃してきたと考えている?」

「あたしの中では一人だけ思いつく人物がいるのだけど、どうして彼女がそんなことをしたのかという事が全く分からない。それに、わざわざIS学園で謎の少女を襲撃する必要性が全く分からないのよ」

「確かに凰さんの言う通りですわね…… もしIS学園で襲撃する必要があったとしても、わざわざクラス代表戦という沢山の人が集まっているところで襲撃する意味も解りませんわね……」

 

 無人機のISがIS学園でわざわざ襲撃を仕掛けた事に関して、余りにもおかしな点がありすぎた。クラス代表戦が行われる日を狙い、目的が謎の少女だというのにIS学園で襲撃する行為。そしてなにより、もし鈴が仮定する犯人だとするのであれば、無人機のISを使用することによって犯人が大きく絞られるのにもかかわらず、このような行為をしたのかという事も、鈴にとって気になるところだった。

 無人機のISを襲撃させた犯人の意図が全く以て解らない。謎な点が多すぎて理解不能だと言ってもよかった。おかげで考えても犯人の思惑が見えてこないし、解るところと言えば謎の少女を狙っているという事くらいだけだった。

 

「……それで、凰は一人だけ思いつく人物がいると言っていたが、それは誰だ?」

「篠ノ之束。無人機のISを作れそうな人物なんて、彼女しかいないでしょ? というか、千冬さんもなんとなく篠ノ之束だと解っていたのでは?」

「織斑先生だ。確かに、無人機のISを造れる人物なんてあいつ以外にありえないだろうな。とにかく、これ以上は推測したところでどうせ結論出ないだろう。もう一つの話に移ることにする」

 

 無人機のISを襲撃させたのが篠ノ之束だとしても、意図が読めないことには変わりがない。このまま話し続けても意味がないと思い、千冬は束の話を止めてもう一つ話しておきたい内容に、話題を変えることにした。

 鈴とセシリアもそれが何の内容なのか大体把握することができ、セシリアは確認を取るかのように、念のため千冬に質問する。

 

「……謎の少女のことですか?」

「そうだ。正直こちらから話すことも余りないけどな。彼女の情報はこちらでも解らないことだらけだ」

「……本当にそうなの?」

「凰、何が言いたい」

「さっきまで気にしていなかったけども、やっぱり聞いておきたいことがあるのだけど……」

 

 鈴は千冬に話したいことを言おうと思ったが、この場にはセシリアも居ることを忘れかけていて、途中で言葉が止まった。これから話したいことは、千冬と二人きりで話したいことであったので、この場でこの話をするのはよろしくなかった。どうにかしてセシリアをこの場から出てもらいたいところであるのだが、咄嗟に思いつかなかった

 しかし、千冬は鈴の様子が少し変わったことにすぐに気付いた。鈴が隣に居るセシリアに視線を何度も向けて居る事に気づき、鈴がこれから話そうとしていることは、セシリアが居ることで話せない内容であるのだとすぐに察した。千冬側から話すことは既に終えており、鈴とセシリアから話を聴くことだけであった為、千冬は先にセシリアから話を聴くことにして、セシリアを会議室から出る様にさせようと思った。

 

「オルコット。貴様は謎の少女を近くで見て何か気になったことがあるか?」

「え!? 先ほどから凰さんが何かを言おうとしていましたけど……」

「凰の内容については後で聞く。それでオルコット、何か気になったことはないか?」

「……一応一つだけありますけど、これに関しては織斑先生に話したところで、またしても推測する事しか出来ないようなお話ですから……」

「その内容については少し気になるところであるが、オルコットがそう考えたのならそれほど重要な内容ではないのだろう。ならオルコットは寮へと戻れ。凰と二人きりで話したいことがあるのでな」

「……なるほど、凰さんを後回しにしたのはそういう事ですか。それでは、わたくしは失礼します」

 

 セシリアは椅子から立ち上がり、会議室を後にする。セシリアが居なくなったことでこの場には千冬と鈴の二人だけとなり、鈴はわざわざ気を利かせてくれた千冬に一度感謝しておくことにした。

 

「あたしの為に気を遣わせてもらってありがとう」

「セシリアが居ると話しにくそうな顔をしていたからな。それで、聞きたいことはなんだ?」

 

 これから鈴が話そうとしていることは鈴の推測であるがセシリアには言えるような事ではなかった。公に言えるような内容ではなく、たとえ推測が事実だと確定した場合、大きな問題になる可能性が想定できるほどだったからだ。

 

「あの謎な少女のことだけど、正直言えば千冬さんの目付きを可愛くしたような顔立ちだと思ったわ」

「ほう、それは私の目つきが悪いと言っているのか?」

「そんなこと言ってないわよ。というか、今はそんなことどうでもいいわ。あたしが千冬さんに聞きたいことは一つだけ――あの少女のこと何か知ってるんじゃないの?」

「言っただろ。学校側としてもあの少女については何も――」

「あたしが聞きたいのはそういう事じゃない。学校側というくくりではなく、千冬さんがあの少女の事を知ってるんじゃないのかを聞いているのよ」

 

 そう――鈴が聞きたかったのはこのことだった。謎の少女の顔は目付き以外、あまりにも千冬似すぎていた。

 他人の空似という考え方もできるが、鈴はそうと考えなかった。決めつける理由などがあるわけではないが、謎の少女を見ているとどこか懐かしく、どこかで会ったことがあるような気がした。千冬に顔立ちが似ている人物が知り合いに居たとしたら絶対に忘れないはずであるし、思い出せないという事は誰かと似ていると鈴は考えた。

 

「……ほう、どうしてそう思った?」

「謎の少女の話に移った時、千冬さんは一瞬だけ表情が変わっていたことに気付いていなかったとでも?」

「……顔に出ていたか」

 

 謎の少女の話を始めた時に、千冬が一瞬だけ表情が変化したことに鈴は気付いていた。表情の変化からして謎の少女について何か知っているのかもしれないと考え、鈴が千冬と二人きりで話したい理由であった。

 謎の少女について気になりすぎているように思えるかもしれない。そう思うかもしれないけども、鈴がそこまで謎の少女に気にする理由としては行方不明となった一夏が関係していた。鈴にとって一夏は親友であり、そして初恋の相手でもある。思いを告げられずに姿を消してしまった一夏のためであれば、たとえどんな手を使ってでも情報を手に入れたいと思い、何としてでも一夏を見つけ出したいという気持ちがずっとあった。そして、その相手が千冬であろうとも、何か知っているかもしれないのであれば、知るまでは諦めないつもりだった。

 

「言っておくけど、千冬さんが謎の少女について何を知っているのかを知るまでは、あたしは何度でも問いただすつもりだから」

「なるほど、そこまで覚悟は出来ているわけか。だが、私から話すことは何一つもない」

「なっ!?」

 

 千冬からなら何か一つでも教えてくれるだろう――そう考えていためか、千冬が放った言葉に思わず声を出して驚いていた。千冬が謎の少女について隠す理由があるのかは解らないが、このまま引き下がるつもりなんてあるわけもなかった。

 

「どういうつもりよ!! もしかして、一夏に関係する事なの!?」

「言っただろ。何一つ話すことはないと。解ったなら大人しく寮に帰れ」

「……そう、千冬さんがそういう行動をとるというのならば、こっちで勝手に調べるわ。たとえ、どんな手を使ってでもね」

「そうか、ならじっくり見させてもらうぞ」

「くっ」

「あぁ、これだけは保障しておこうか。私の表情の変化を見抜いたことのお礼だと思え」

「ふん、どうせどうでもいい内容なんでしょ? 結局は自分の手で探し出せと言うことなら、あたしは失礼するわ」

「ほう、私は『一夏が生きている』という事だけを話しておこうと思っていたのだがな」

 

 鈴は千冬の言葉を最後まで聞かずに席を立ちあがり、会議室のドアに手を掛けようとするが、その手はすぐにドアを開けることはなかった。その理由は、千冬から放たれた言葉が原因であり、思わず後ろを振り返ってしまうほどであった。

 

「……今、なんて言った?」

「別に聞く必要はないのではなかったか?」

「今なんて言ったのかと聴いているのよ!! いいから言いなさい!!」

「教師に向かってとんでもない言い草だな。まぁ、それ以前から呼び方について咎めていなかったから別にかまわないが。とにかくもう一度だけ言うぞ。一夏は生きている。そのことだけは私が保障する」

「ど、どうして、一夏が生きているということを千冬さんが知っているの!?」

「ノーコメントだ。自分でたどり着くことだな」

 

 鈴は一夏が生きているという事を知っているのか問いただしたいところだったが、これ以上一夏の事について千冬から聞くことが出来ないとすぐに思い、腑に落ちないまま会議室を後にすることにした。

 会議室の中には千冬一人が残されることとなり、鈴の足音が遠くなったのを確認してから一息ため息を吐いた。

 

「ふぅ、本当の事ならば話したいところであるのだが、問題は一夏の姿だ。そのことを誰にも話すわけにはいかないからな……たとえ、親友だった相手でもな」

 

 千冬が鈴に話さなかった理由は女性の姿になってしまった一夏が原因だった。隠し事というものは、妙なところから漏れることがある。一夏の事がばれてしまえばかなりの問題に発展しかねないため、親友だった鈴でも話すことはなるべく避けたかったのだ。だからこそ、一夏の事を知っているのは束と自分の二人だけで良いと千冬は考えていた。

 

「さて、そろそろ私も職員室に戻るとしよう。山田先生に業務を任せていたからな」

 

 鈴が居なくなってから数分すると、千冬も椅子から立ち上がり、会議室のカギを閉めてから職員室へと向かうのであった――


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