IS〔インフィニット・ストラトス〕 〜復讐か叛逆を選択する少女〜   作:アリヤ

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なぜ、長くなったし。

話を少し追加したら、なぜかその内容が長くなってこんなことに……

なので、多分この話だけ内容が長いと思います。次回あたりはもっと短いと思いますので。

それではどうぞ!!




学園編
第一話


「IS学園に来たものの、はっきり言って暇だよね……」

 

 屋上の出入り口の上にいて、足を踏み外せば、普通の人間であれば命はないであろう場所の隅で、足を垂らしながら膝から先をぶらぶらと動かし、手に持っているタブレットパソコンを操作しながら、IS学園の制服を着ている織斑一夏は思っていた。

 画面に大きく映されているのは1年1組の教室内で、その隣には1年1組の周辺の廊下や、外などが小さく映されていた。篠ノ之束が一夏に命令した篠ノ之箒を安全を守るために箒の周辺のカメラを中心にして監視していた。

 先ほどまで入学式で体育館を映していたが、これらすべての映像はIS学園が監視カメラとして付けてあるもので、それを束がハッキングし、一夏のタブレットパソコンから見られるようにされていた。

 今現在、1年1組は副担任の山田麻耶が来て生徒の自己紹介を行っていて、担任の教師はまだ教室に来ていないようだった。これと言って問題ないと思いながら、一夏は画面を通して様子を見ていた。

 

『次は、セシリア・オルコットさん。お願いしますね』

『はい。セシリア・オルコット。イギリスの代表候補生で、入試主席で入学しましたわ。分からない点がありましたら、是非私に仰せ付けなさい』

「……生徒の中に、面倒な人がいるわね」

 

 先ほどまで問題ないと思っていたが、一夏はイギリスの代表候補生であるセシリア・オルコットに対して嫌な顔をした。

 代表候補生とはその名の通り、国家代表IS操縦者の候補生として選出された人物の事を指す。今の世界はISが女性しか使えないという事から女尊男卑という事が当たり前になっており、影響受けて男性を見下す女性が何人も現れている。もちろんそれは国家代表や代表候補生にも該当する人物はおり、セシリア・オルコットはその典型的な例の一つでだろう。

 一夏個人としてはあまり箒と関わってほしくないなと思いつつ、静観するしかなかった。箒とセシリアが何らかのことでぶつかったら、即発しそうな雰囲気になりかねないかなと想像ができて恐ろしかった。

 何事も起こらないことを密かに祈りつつ、一夏は1組の自己紹介を見続けた。

 

『あ、織斑先生。もう会議は終わられたんですか?』

『ああ、山田君。クラスへの挨拶を押し付けてすまなかったな』

『い、いえっ。副担任ですから、これくらいはしないと……』

 

 と、自己紹介をしている時に教室に一人の女性が入ってきた。その人物を見た一夏はどうしてここに居るのかと驚いていたが、とりあえず様子を見ることにした。

 織斑先生という名前からして察すると思うが、1組の教室に入ってきた女性は一夏の姉である織斑千冬だった――

 

『諸君、私が担任の織斑千冬だ。君たち新人を1年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は弱冠15歳を16歳までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな』

「……それ、千冬姉の事には逆らうなって言ってるよね」

 

 どこかの部隊長の命令には逆らうなというような言い方に対して、一夏は正直生徒たちがどうなるのかなと心配していた。

 

『今、誰かが私を噂した気がしたが、気のせいか?』

「……余り、千冬姉の事は言わないでおこう。千冬姉の事だから噂しただけで私に存在に気づきそうだし……」

 

 その千冬の言葉に身の危険を感じた一夏は、なるべく千冬が言ったことに対して反論しないようにしようと思った。自分の存在が気づかれていないはずなのに、何かを感じ取ったそぶりをみせる千冬に一夏は悪寒を感じた。

 

『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!千冬様、本物千冬様よ!!』

『ずっとファンでした!!』

『私、お姉さまに憧れてこの学園に来たんですっ!!』

 

 千冬の自己紹介が終えると、生徒たちの黄色い声が教室内に突然と響いた。

 正直一夏は千冬の本性を知っているため、どうしてここまで騒ぐのかが分からないでいた。有名人ならこのように嬉しがるという事は知っているけども、どうして千冬がこんなにも憧れたりしているのかが理解できなかった。

 

『……毎年、よくもこれだけばか者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か? 私のクラスにだけ馬鹿者を集中させているのか?』

 

 それは私も聴きたいと一夏は内心思った。もし千冬の立ち位置が自分だとしたら、正直この場に居たいとは思わなかったし、教室から逃げたいとも一夏は思ったくらいだ。

 

『きゃぁぁぁぁぁぁっ!! お姉さま!! もっと叱って!! もっと罵って!!」

『でも時には優しくして!!』

『そして付け上がらないように躾してえぇ!!』

 

 このクラスは変態しかいないのかと一夏は思わず思ってしまった。正直あのような教室に居なくてよかったなと思ってしまうほどで、千冬姉も大変なんだなと一夏は思った。

 これ以上見ていても突っ込みで疲れそうなため、一夏は画面を弄り、教室の映像からIS学園の周辺やIS学園内の映像に切り替えた。

 

「……今のところは、なんも問題ないかな? いや、一つだけ目の前に問題があるか」

「あら、もしかしてずっと気づいてた?」

 

 屋上には一人しかいないはずなのに、突然と一夏以外の声が聞こえてきた。その人物の事を一夏はずっと気づいていたが、向こうから仕掛けてこないために後回しにしていた。

 タブレットパソコンを閉じ、後ろへと顔を振り返る。そこに居たのは扇子を持ち、水色の髪をし、一夏と同じようにIS学園の制服を着ている少女が居た。制服からしてIS学園の生徒だと分かり、そもそも一夏はその人物を束から聞いており、監視を邪魔してくる要注意人物の一人として知らされていた。

 

「……それで、何の用かな? 更識楯無」

「私の名前も知っているわけね」

「対暗部用暗部『更識家』の17代目当主。更識楯無、本名――更識刀奈」

「そこまで調べられているとは……あなた一体何者なの? わざわざIS学園の制服着てまで潜入しているなんて……」

「ずっと後ろで私が放った言葉を聞いていたら分かるんじゃないの? そんな茶番に付き合うつもりはない」

「あら、クローンだという事も考えられるじゃない。それ以前に、あなたのその姿を見て信用するというのも――」

「だから、茶番に付き合うつもりはないって言ってるのよ。千冬姉なんていう親しみを込めた呼び方を、クローンがすると思っているの?」

 

 一夏にとって、楯無の回りくどい言い方が茶番としか思えないでいた。一夏の記憶を入れ込んだクローンならばあり得るが、そもそもクローンが作られているという事であれば、暗部である更識家なら把握しているはずだ。実際楯無も回りくどいように聞こうとしていたが、すべてお見通しだと分かり、諦めて本題へと入ることにした。

 

「……では織斑一夏。あなたがどういう目的でIS学園に潜入なんかして、今まで行方不明で、そして姿を現したと思ったら女性になっているのかしら?」

「質問が多い。とりあえず順番に答えるけど、一つ目については黙秘で。これと言って大したことではないけど、命令の遂行の為にここに居るからね」

「そう……」

「二つ目の質問については三つ目の質問でしたことが理由。戸籍としては男性のままだし、変えたら変えたで私が女となったというニュースになりかねないから」

「ふ~ん。それで?」

「三つ目の質問については誘拐された研究所が原因と言えばいいかな? 女にされたり、越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)とか入れられたけども、その研究所は私が誘拐されてから経った二日で崩壊したし、その時にある人によって解放された私としては、それほど研究所に居たわけではないのだし、ほんの少しか恨みは持ってないけどね」

「女にされたことに関しても?」

「既に過ぎたことでもあるし、戻ることができないと言われたら受け入れるしかないでしょ?」

 

 しかし、実際に一夏はすぐに受け入れられたわけじゃない。束のおかげによって女として生きていける様になったくらいだし、女としての事もすべて束から教えてもらった。自分が命令されている先が篠ノ之束だという事を知らされないためにも、あえて嘘ついて簡単に伝えられる方法を取った。

 楯無はどうして一夏が女になって今まで行方不明のままだったかという理由については理解したけども、肝心な質問が黙秘されてしまっている。それをどうにかして聞くためにも、楯無は力ずくでも問いただす行動に出ようとする。

 

「先ほど、黙秘された件についてだけど、目的理由を黙秘したという事はそれほどの覚悟はあるという事かしら」

「まぁ、いうなればそうよ。はっきり言うけど、私は生身でISに勝てるという自信はあるからね」

「ふ~ん。じゃあ、その自身というやらを見てみましょうかっ!!」

 

 楯無は自分のISを部分展開し、展開した螺旋状に纏ったランスを構え、一夏へと向ける。四門のガトリングガンも装備されており、いつでも一夏を狙える状態となっていた。

 しかし、一夏は全く持って動じていなかった。というよりも、楯無を無視して、手に持っていたタブレットパソコンを操作し始めたくらいだった。それを見た楯無は、タブレットパソコンを使って攻撃を阻止しようとしているのかと思い、私を舐めているのかと思わず嘲笑ってしまった。

 

「もしかして、そのタブレットパソコンで攻撃を阻止しようと思っているのかしら? 私のミステリアス・レイディを舐め無いで欲しいのだけどっ!!」

 

 楯無は一夏に向けていたランスにあった四門のガトリングガンから無数の弾丸を一夏へと放ち、一夏は背中を向いていたことや、距離も短いために避けきれるようなものではなかった。

 楯無としては生身でISを勝てるなっていうことは虚言だと考え、タブレットパソコンで何かをしようとしても多少のロスが掛かると思い、一夏がISを部分展開してくるだろうと思っていた。しかし、そのような仕草は一度もせず、弾丸が一夏に当たろうとした刹那、一瞬にして一夏の姿が消えた。

 

「なっ!?」

 

 ISも展開せず、一瞬にして姿を消したことに関して楯無は驚いていた。タブレットパソコンを操作しただけでそんなことができるというわけがないし、結局ISを使ってくるだろうと思っていたが、ISを展開した気配がまったくなかった。とにかく一夏を探そうと思うけども、楯無の左の頬から何かが触れて、視線だけでそちらを見ると、先ほどと同じように隅に足を垂らしながら、膝の上にタブレットパソコンを持って右手で操作し、空いていた左手でIS用の銃も持ちながら、楯無に向けていた。

 一夏は視線をタブレットパソコンに向けながらも、後ろにいる楯無に向けて話しかけた。

 

「言ったでしょ? 私には勝てないって」

「……どうして、素手でIS兵器を持てるわけ?」

「黙秘で。あと瞬間移動したことについても黙秘のつもりで。とにかく、私に勝てると思わないでね」

 

 一夏は持っていたIS兵器を放し、そのまま屋上の上に落ちるかと思いきや、その途中で姿を消した。

 あまりにも舐めて掛かっていた。楯無はロシア代表であるし、IS学園最強でもあるため、楯無自身は自惚れているわけではないが、余程なことがない限り不意打ちでも対処できるような人間ではある。しかし、一夏の行動を楯無には読むことができず、消えた時も一夏の気配すら感じなかった。

 しかも、一夏も本気を出しているわけではなく、タブレットパソコンで別の事を操作しながら、楯無の攻撃を避けていた。このことからして、楯無は一夏に対する脅威が大幅に上がり、本気を出したとしても一夏に勝てるという見込みは正直言えば難しかった。

 

「まぁ、そう何度もIS学園に忍び込まれたら怪しまれるから一つだけ教えておくよ。別に私はIS学園をどうにかしようという気持ちはないよ。さっきも言った通り、本当に聞いたとしてもくだらない程度な事だから」

「それを、信じろとでも?」

「信じるかどうかは任せるよ。どのみち、私の言葉に説得力なんていうものはなさそうだからねっと」

 

 一夏はそれを言うと、座っていた場所から飛び降りた。今いるところは落ちたとしても一階まで落ちることはないため、そのまま飛び降りても問題なく、屋上のドアがるところの上から飛び降りたわけだ。そしてそのまま屋上のドアへと向かい、タブレットパソコンを左手に持ちながら、一夏は屋上の出入り口であるドアを開いて屋上を後にしようとした。

 

「待ちなさい。どこに行くつもりかしら?」

「帰るだけだよ。ほぼ毎日IS学園に居る必要もないからね」

 

 と言って、一夏は屋上を後にした。念のため後をつけるかのように楯無は一夏を追いかけることにした。一夏はそのことに気付いてはいたけども、別に気にする必要もないと思い、気にせずに階段を下りているたが、一夏が今会うととてつもなく面倒な人物を見かけてしまい、思わず足を止めてしまった。

 楯無も一夏が突然足を止めたことに、一体何があったのだろうかと上から見ようとしていると、なぜか一夏はとてつもなく嫌な顔をしていた。なんか今会いたくない人物に会ったのかと思い、誰だか見えないが、声を頼りに誰だか特定しようと考えた。

 

「……一夏。なんでお前がここに居る」

「ち、千冬姉……」

 

 意外と早く誰だか特定することができ、一夏が足を止めた理由を何となく納得した。千冬が一夏の姿を見ただけで、一夏だと知っていたことに関しては気になったが、一夏からしてみれば学校に潜入していることを千冬には見つかりたくなかったのだろう。一夏の今の状態を知っているとしたら、なおさら面倒なことになりかねなかったから――

 

「何を頼まれたのか知らないが、どうせあいつの頼みで潜入でもしていたのであろう?」

「そ、そんなわけないよ。べ、別の事で用があって」

「ほう、一体それはなんだ?」

 

 動揺しすぎて逆に自分を苦しめることとなってると、楯無はちょっと笑いながらも思っていた。楯無のところからは千冬の姿が見えないけども、千冬は嫌な笑みを一夏に向けているだろう。

 一夏も自分から首を絞めたという事にすぐに気付き、どうやって千冬に話すか考えた。このまま本当のことを言ってもよかったのだけども、なぜか口に出すことが出来ず、そして耐えきれなくなったのか、一夏は千冬に何も言わずにそのまま階段を駆け下りた。

 

「あ、ちょっとまて一夏!!」

「ごめん、内容については本人に聞いて!! それじゃあ!!」

 

 かなりの速さで一夏は階段を下りて行き、楯無も追いかけようとしたが、このまま降りたら千冬に会うこととなってしまうために一夏を追うことを諦めた。

 千冬はそんな一夏の様子をみてため息を吐いていたが、とにかく一夏と遭遇してから気になっていた人物――楯無に向けて言葉を放つ。

 

「ところで、そこに隠れている生徒会長はそこで何をしている? さっさと私のところまで降りてこい」

「とっくに気づかれているのね……」

 

 気づかれているのならば仕方とないと思った楯無は、階段を降りて千冬の前まで近づいた。

 

「それで、なぜ一夏を追っていた? まぁ、一夏を追っていた理由については大体察しがつくが」

「あら、隠さないのですね」

「先ほど一夏の名前を私から言っているのでな。それで、一夏を追っていた理由は?」

「彼女がIS学園に潜入していたから、その目的を聴こうと思いまして……」

「余裕な気持ちで挑んだが、逆に返り討ちにあったと」

「……そういう事ですね」

 

 千冬が一夏の事を知っているのならば、一夏の力についても知っているのだろう。先ほど千冬が言った『あいつ』についても聞きたかったため、楯無は千冬にそのことを聞くことにする。

 

「織斑先生。先ほど織斑先生が言っていた『あいつ』というのは?」

「一夏から聞いていないのか? まぁ、一夏が隠したのならば言わない方がいいかもしれないな」

「どうしてです?」

「いろいろとややこしくなるからだ。聞いていないのならば、私としても言わない方が良いと思うのでな」

 

 束の名前を出してしまえば、IS学園で何かを企んでいると思われるかもしれない。一夏を潜入させるという事はそれほど大したことではないのだろうが、この場で一夏が束の命で動いていると言ってしまえば、何かを企んでいるのではないかと思われても仕方なかった。

 そう思った千冬は束と一夏の事をあまり知らない楯無に、束の名を出すのはあまりよろしくないと考え、楯無に束の名前を言わないことにしたのだ。楯無もこれ以上詳しくは聞けないと思い、諦めて教室に戻ろうとした。

 

「そうですか、それでは私はこれで――」

「おい、なに普通に教室へと戻ろうとしている」

「へ?」

「先ほどまで一夏と共にいたという事はホームルームの時に教室には居なかったという事だろう?」

「……あ」

 

 楯無が織斑先生と先ほど言った通り、千冬は教師である。簡単に言ってしまえば、楯無はホームルームをサボって一夏と共にいたという事を、自ら教師に教えてしまったというわけだ。

 楯無は冷や汗を掻き、ゆっくりと後ろへと振り返った。そこには笑っていた千冬の姿があり、自分の危機を感じた。

 

「ホームルームに出席しなかった罰として、反省文を書いてもらうぞ」

「……はい」

 

 逆らえるわけがないと分かっているため、楯無は渋々ながらも織斑先生の後に続いて歩くのだった――


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