転生した先が死後の世界で矛盾している件   作:あさうち

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 昨日投稿するの、うっかり忘れてました。すみません。



第七十一話

 突如として剣八の前に現れたバンビーズ。彼女達の狙いはグレミィとの戦いで大きく消耗した特記戦力、更木剣八の処分にあった。

 

 グレミィとの戦いで隕石をも砕くような圧倒的な力を発揮していた剣八である。そんな彼を倒せるのは、消耗した今しかない。そして、特記戦力である剣八を殺すことができれば、戦況は一気に傾く。そう、バンビーズの面々は考え、それぞれがまるで示し合わせたかのようにこの場所に辿り着いていた。

 

 しかし彼女達は、他隊の隊長と戦っていたはずである。

 

 では、何故彼女達はこうして剣八の前に立つことができているのか。それを知るには、少し時間を遡らなければならない――。

 

 

***

 

 

「なるほどなぁ」

「……?」

 

 虚弾によって、バンビエッタの爆撃を防いだ平子は、何かに納得したかのように声を零した。

 

 虚弾によって相殺された爆撃、外れて地面や建物を破壊した爆撃。今までの攻防で、大きく分けてこの二種類の爆発があった訳であるが、それを見ている中で平子は一つ気付いたことがあった。

 

「……その球が爆弾やなくて、球が触れたもんを爆弾にしてるいう訳か」

「へぇ、よく分かったね~」

 

 平子の言うように、バンビエッタの“爆撃”の能力は、当たった対象を爆破するのではなく、爆弾へと変化させることだ。

 僅かな時間で気づいたことに、ジゼルは素直に称賛を贈る。

 

 もし平子が“爆撃”を結界などを展開することで防ごうとしていたのなら、その時点で結界は爆弾に変えられ、下手をすればそれで勝負は決まっていただろう。

 そうならずに済んだことに、平子は内心胸を撫で下ろした。

 

「じゃあ、ボクも一つ訊きたいんだけど……今の、響転だよね?」

 

 そして、平子がバンビエッタの“爆撃”の詳細について気づけたように、ジゼルもまた、平子の情報を読み取っていた。

 

 ジゼルがそう判断した理由は、瞬歩と響転の違いにある。

 使用する種族は死神と破面。どちらも高速歩法という点に違いはないのだが、それに加えて響転には、ある特性がある。

 

 ――それは、相手の霊圧知覚をすり抜けられるという点だ。

 

 先程の攻防で、平子が仮面を装着してからの移動。ジゼルは平子が移動を終えるまで、彼の姿を捉えることができなかった。その状況から、ジゼルは自分の知識の中から、考察を導き出したのだ。

 

「正解や、よう分かったな。じゃあ、そのご褒美に良いもん見したるわ」

 

 これに平子は、ジゼルと同じように感心を示す。とは言え、響転を使用する際には、ノイズのような音が鳴ったり、霊圧を感じ取れなくなったりと、特徴的な点が多いので、平子も気付かれないとは思っていなかっただろう。

 

 褒美をあげる。そう言った平子は両手で斬魄刀を水平に持ち、刀越しにジゼルを見据えながら霊力を集中させる。構えた斬魄刀の前で凝縮させる赤い霊力を見て、ジゼルは平子が何をしようとしているのか察した。

 

 ――虚閃だ。

 

 虚化してから百年以上が経つ、仮面の軍勢の者は皆、この技を習得していた。威力と速度、その両方に優れたこの技は平子の最大火力である。

 響転は、平子がこの戦いで初めて使用したので多少驚いたが、虚閃はジゼルにとって既知の範囲だ。故に、折角のご褒美がこれかと、多少落胆があった。

 

 そんなジゼルの反応が変わったのが、凝縮された虚の霊力が突如として燃え上り始めた時である。

 

「それは――っ!?」

「【火炎虚閃(セロ・フエーゴ)】」

 

 ジゼルの驚愕を掻き消すように、火炎は一直線に放たれた。炎でありながら、虚閃と同等、あるいはそれ以上速度で突き進むそれを、ジゼルとバンビエッタは左右に分かれることで回避する。

 

「今のって……」

「虚閃と鬼道の合体技や。虚化した死神ならではって感じで良いやろ? 因みに今の虚閃に合わせた鬼道は赤火砲や」

「三十番台でこれっ!?」

 

 平子の発言から発覚した事実に、ジゼルは戦慄を禁じ得ない。

 

 虚閃と鬼道の融合。平子自身が言ったように、仮面の軍勢ならではの技だろう。そして、鬼道はその番号が増えれば増える程、威力も上がる傾向にある。

 

 つまり、平子にとって今の技はほんの序の口。引き出しは彼が覚えている鬼道の数だけあった。

 

「そんだけ驚いてくれたら、見した甲斐もあるってもんやな」

「でも、おかしいな。バズビー……ああ、一次侵攻で君と戦った滅却師は君がこんな技使って来るなんて言ってなかったんだけど?」

 

 だが、ここでジゼルは不可解な点に気づく。

 それは一次侵攻で平子が今の技を使っていなかったことだ。バズビーの話では、昨日平子は苦戦を強いられていたとのこと。そんな中で今の技を使わない理由は無いように思えたのだ。

 

 それに対し平子は、『なんや、そんなことかいな』と言わんばかりに、ごく自然体で答える。

 

「そんなもん簡単や。昨日覚えた」

「は?」

 

 平子の答えにジゼルは固まった。それもそうだろう。これだけの技を僅か一日で習得したなど、なんの冗談かと思いたくなるような事だ。

 

「破面は、今も戦ってくれとうからな。教え役には困らんかったわ」

 

 一次侵攻が終わってから、平子はネリエルに虚化の扱い方について教えを乞うていた。虚化してから随分経ったとは言え、その運用は完全に独学である。

 そんな中で虚化について見つめ直す機会を得られたのは僥倖だった。

 

 融合技だけではない。虚弾も響転も、平子が一日修行に励んだ成果だった。

 

 確かに、出来すぎな気がしないでもないが、これは平子が藍染を倒すべく、地道に努力を重ねて来た結果である。

 土台は既に出来ていたのだ。

 

「餅は餅屋。虚化は破面ってな! いやー、自分の才能が恐ろしいわ!」

 

 本当は血の滲むような努力があったのだろう。新たに習得した技こそ、そう時間を掛けていないが、虚化に慣れ、戦闘で使用できるまでにするには、相当な苦労を強いたはずだ。

 

 しかし、平子は決してそのような素振りを見せない。それどころか、茶化すような言葉を吐く。そこに、この戦いにおける平子の精神的余裕が見られた。

 

「うるさいなぁ……。バンビちゃん、黙らせて」

 

 そんなどこか飄々とした平子の態度が癇に触ったのだろう。ジゼルは苛立ちを露にしながら、バンビエッタに指示を下す。

 その命に従ったバンビエッタは、平子に向かって霊子球を放ち、それに合わせてジゼルも神聖滅矢を放つ。先程二人は左右に分かれて虚閃を躱したので、この攻撃は二方向からの同時攻撃となった。

 

 それに対し平子は両の手をそれぞれの方向に構える。

 

「【火炎虚閃】」

 

 放ったのは先程と同じ、灼熱の虚閃。双方向に進んだそれらは、ジゼルの神聖滅矢を焼き消し、バンビエッタの霊子球に大爆発を引き起こした。

 

 ジゼルは神聖滅矢焼き消してなお突き進む、虚閃を回避。それを確認した平子は両手を爆発の煙の向こうに居るであろうバンビエッタ目掛けて構える。

 

「吹っ飛べ! 【暴風虚閃(セロ・トルメンタ)】!」

「くはっ!」

 

 合わせたのは、破道の五十八“闐嵐”。融合した虚閃によって赤い嵐へと変貌した鬼道は、煙を巻き込み、バンビエッタを遥か後方へと吹き飛ばした。

 

「バンビちゃんっ!?」

「おっと、行かせへんで」

 

 この少し押され気味な状況で、一人になることの危険性を悟ったのだろう。ジゼルは即座にバンビエッタを追おうとするが、響転にて移動した平子がその前に立ちはだかる。

 

「……どいてよ」

「どかん。あの娘と合流したいんやったら、俺を倒してから行くんやな」

 

 月並みな台詞ではあるが、平子からすれば今の状況は敵の隙を突いて作り出した千載一遇のチャンス。なんとしてもここでジゼルを倒し、バンビエッタとの一対一の状況に持ち運びたかった。

 加えて、ジゼルを落とすことで芋づる式にバンビエッタも落とすことができたのなら、儲けものだろう。

 

「あの娘が帰ってくるまで、時間もそうないやろうし、ちゃっちゃと行くで」

 

 会話もそこそこに、平子はジゼルへの攻撃を開始する。

 

「【蒼の火炎虚閃(セロ・アスール)】!」

「さっきから、そればっかじゃんっ!」

 

 撃ったのは蒼火へと姿を変えた熱線。それを避けながら、ジゼルは先程から虚閃での攻撃しか行わない平子に文句を垂れる。

 

 しかし、それは仕方のないことであった。

 

 平子がジゼルの能力で知っていることは、何らかの方法でバンビエッタのような傀儡を作れるということのみ。

 それが分からない以上、慎重にならざるを得ないのだ。

 

 そしてジゼルも、そんな平子の考えが手に取るように分かっていた。だからこそ、能力のトリガーを悟られるような不用意な行動が取れない。

 

 結果、二人の戦いは遠距離から互いの攻撃を交わす硬直状態に入ろうとしていた。

 

「チッ! このままやと、時間切れやで……」

 

 何度か虚閃と矢のやり取りを交わした後、平子は悪態吐く。

 

 彼が言う時間切れ。これには二つの意味が含まれている。一つ目はバンビエッタがこの場に帰還すること。そしてもう一つが虚化の制限時間だ。

 一護、それから仮面の軍勢が用いる虚化は無限に使用できる訳ではない。生い立ちが特殊であり、破面との戦いで虚化に大きく順応した一護はともかく、藍染の実験によって無理やり虚化を施された仮面の軍勢は戦闘時、定期的に虚化を解くことで実質的な持続性を高めている。

 

 だが、この戦いにおいて平子は一度も虚化を解いていない。それは二対一という数的不利と、得体の知れないジゼルの能力が虚化解除の抑止力となっているからなのだが、いい加減一度インターバルを挟まないと不味かった。

 バンビエッタが戻って来て、強制的に虚化が解けるようでは目も当てられまい。

 

 故に平子はここで一つ勝負に出ることにした。

 

 今までの虚閃では、ジゼルに躱されてしまう。だからと言って、不用意に接近し、近距離から虚閃を放つということはできない。

 

 なら、避けきれない程の範囲を持った虚閃を放てばいい。

 

 これまでの攻防で、平子が虚閃と掛け合わせた鬼道は五十番台まで。つまり、まだまだ上の番号が残っているのだ。

 

 両の手をジゼルに向けた平子は、この戦いで一番の霊力を掌に注ぎ込む。諸手から発せられた高温の炎は、一瞬にして周囲を赤く染め上げた。

 

「【紅蓮の双虚閃(セロ・ドスフエゴ)】!!」

「ぐあはっ!?」

 

 今までは避けられていたジゼルも、両手を使い、範囲と威力を向上させた平子の虚閃をやり過ごすことはできなかった。

 

「ああああああああああ!!」

 

 猛火に全身を焼かれたジゼルは、熱さに耐えかね地面をのたうち回る。正直、身体が原形を保っていることが不思議だが、焼け焦げた全身と、所々剥がれ落ちた衣服は痛々しかった。

 

「悪いな。すぐ終らせたる」

 

 その姿を見て、平子もいたたまれなくなったのだろう。苦虫を噛んだような表情を浮かべた平子は、ジゼルに向けた斬魄刀の鋒にトドメの虚閃を作り始める。

 彼にはジゼルを見逃すつもりはないし、必要以上に痛め付ける趣味もなかった。

 

 だからこの場面で平子に落ち度があったとすれば、既に勝負に勝った気でいたことだろう。

 彼は考えもしていなかったのだ。ジゼルの“死者”の能力がゾンビを生成することだけではなく、ジゼル自身の生命力の強さにまで及んでいることを。

 

「かはっ♪」

「っ!?」

 

 平子がそのことに気付いた時、ジゼルは狂ったような笑みを浮かべ、矢を番えていた。

 その際に不可解な動作が一つあった。ジゼルは生成した矢の鏃の部分に、今も滴る自分の血を付着させたのだ。

 

 血を媒体とした攻撃。思い当たることはある。

 

 例えば、十刃が使用する王虚の閃光。あれは自らの血を媒体とすることで、虚閃の威力を底上げする技だ。

 しかし、今ジゼルが行おうとしていることは、単なる威力の増強ではないだろう。滅却師がそんな技を有しているなど聞いたことがない。であれば答えは一つ。

 

 ――それが、ゾンビ化の条件だ。

 

 憶測の域を出ないが、一度ゾンビ化してしまえば、一巻の終わりだ。用心に越したことはない。虚閃を中断した平子は、ジゼルの矢を少し大袈裟に回避する。

 気が緩み、不意を突かれてしまった上に、掠っただけでもどうなるか分からない攻撃。それも致し方のない事だったのだろう。

 

 だが、それは決定的な隙を作り出した。

 

 この瞬間、平子は忘れてしまっていたのだ。自分の敵がジゼルだけではないということを――。

 

「今だよ! バンビちゃん!!」

「しま――っ!?」

 

 振り返った時にはもう遅かった。移動速度を上げる意図もあったのだろう。完聖体へと姿を変えていたバンビエッタの霊子球の弾幕が、平子の四方八方を覆いつくしていた。

 

 こうなってしまえば縛道は勿論、虚弾でも対処しきれない。

 

 平子の抵抗をすり抜けた霊子球が一つ、また一つと爆発していく。やがて爆発は連鎖し、それらが平子を中心とした大爆発へと姿を変えた。

 

 そして爆発による砂埃が晴れた時、そこには平子が居たことを証明するものは何一つなく、あるのは爆発の形を写し取った窪みと、そこに覆いかぶさる瓦礫の山だった。

 

「あーあー、跡形もなく消し飛んじゃったか……。でも、助けてくれてありがと、バンビちゃん♪」

「……うん」

 

 平子をゾンビ化するつもりだったのか、彼の身体が無くなってしまったと判断したジゼルはそれを嘆いたものの、助けてくれたバンビエッタには感謝を告げる。この後の戦いで大駒に成り得たであろう存在を消してしまった損失は大きいが、一番大切なのは命である。割り切るしかないだろう。

 

「ねぇ、ジジ」

「ん。どうしたの、バンビちゃん?」

 

 そうジゼルが心の中で、区切りをつけていると、バンビエッタがジゼルを呼んだ。ジジというのは、ジゼルの相性である。

 

 意識をバンビエッタに向けてみると、どこか様子がおかしい。呼吸は乱れ、開きっぱなしの口からは、大量の唾液が垂れている。

 しかし、バンビエッタは自身の醜態を気にも留めず、言葉を紡ぐ。

 

「ほしい……。ジジの……、ほしいよ、ほしい。お願い、もう無理。もう無理なの。ジジ、ほしいよぉ」

 

 具体的なことは言っておらず、彼女が何を欲しているのかは分からない。だが、彼女のあり方が異常なのは、ひしひしと感じられた。生前の勝気で高飛車な印象は鳴りを潜め、今はジゼルにただただ懇願している。百八十度変わった彼女のあり方を一言で表すのなら、依存という言葉が最適だろう。

 

 そしてジゼルは、そんなバンビエッタに笑みを浮かべ――。

 

「ああんもう、汚いなあっ!!」

 

 勢い良く、平手を打った。

 

「そんなに欲しがっちゃって。新しい駒を消しちゃった癖に図々しいなぁ、バンビちゃんは」

 

 一度自分の心の中で区切りをつけたものの、平子を消し去った張本人であるバンビエッタがそれを気にも留めず、自身の欲望を満たそうとしているのには少し腹が立った。とは言え、ゾンビ化によってバンビエッタの精神を捻じ曲げたのが、ジゼルである以上、それも自業自得としか言えないのだが……。

 

 しかし、それを指摘する者はこの場には居ない。バンビエッタを支配に置いている以上、この場においてジゼルの存在は絶対だった。

 

 バンビエッタの髪を掴み、強引に起こしたジゼルは、言葉を続ける。

 

「ご褒美は、全部終わってからでしょ」

「は、はい。ごめんなさい、おこらないで。バンビおしおきいやだ。ごめんなさいごめんなさい」

 

 己にとっての絶対者であるジゼルに、いたぶられ、気を弱くしたバンビエッタはひたすら下手に出て許しを乞う。

 

 そんなバンビエッタの姿に気を良くしたのだろう。柔らかい笑みを顔に貼りつけたジゼルは、バンビエッタの髪を離し、その手で優しく頭を撫でた。

 

「よし、じゃあ次の場所行こっか♪ 途中で怪我も治さないとね」

「……うん。ありがとう、ジジ」

 

 気を取り直したジゼルは、次の戦場へと歩みを進める。追従するバンビエッタは、何に対してか分からない感謝を述べるのだった。

 

 

***

 

 

 七番隊隊長、狛村左陣と、星十字騎士団『P』ミニーニャ・マカロンの戦いは、非常に分かりやすい展開が繰り広げられていた。

 

 と言うのも、彼らの能力は共にシンプル。

 狛村の卍解、黒縄天譴明王の能力は狛村と身体の感覚が共有された、巨大な鎧武者を召喚すること。

 対するミニーニャの“(The Power)”の能力は、その名の通り、単純かつ膨大な膂力を女性であるミニーニャの身体に内包することだ。

 

 どちらも特殊な能力を持たないパワーファイターであるだけに、この戦いの優劣は誰が見ても明らかだった。

 

「ぐはっ!?」

「隊長!」

 

 鎧武者を通じて、腹部に強烈な一撃を喰らった狛村は、血反吐を吐きながら、大きく仰け反る。

 

 射場を始めとする七番隊隊士は声を上げるが、それ以上のことは何一つできないでいた。最早、彼ら程度の力では、ミニーニャの動きについていくことができないのだ。

 

 最初の内は互角だった。鎧武者の質量を生かした大打撃に、女性の肉体らしからぬ馬鹿力。幾度となくぶつかり合った攻撃は、その度に大地を震わした。小手先に頼らない真っ向勝負は、見る人が見ればその胸を熱く燃え上がらせたことだろう。

 

 風向きが変わったのは、ミニーニャが完聖体を発動した時だった。

 

 それまでは衝突していた互いの攻撃が、徐々にズレていく。狛村がミニーニャの動きについて行けなくなったのだ。

 

 共にパワー重視な二人の能力であるが、その間には大きな違いがある。それは、互いの力を留める器の大きさだ。

 狛村は巨大な鎧武者に、ミニーニャは自身の身体に、それぞれ強大な力を押し留めている。これにより、狛村は彼自身の膂力に鎧武者の質量を加えた攻撃を行えるのに対し、ミニーニャは瞬発力を生かした高速機動を可能としている。一概にどちらが正しいかは言えないのであろうが、少なくともこの戦いにおいてはミニーニャの能力の方が有利に作用していた。

 狛村の動きとリンクしている以上、鎧武者の動きが緩慢という訳ではないのだが、巨体である故、どうしても守らなければならない場所が多くなる。完聖体したミニーニャは、そこを上手く突いていた。

 

「これで、終わりですぅ」

「まだだ!」

 

 接近するミニーニャに、狛村は斬撃を合わせる。現状に抗うべく凄まじい集中力から放たれた斬撃は、ミニーニャを捉えんとしていた。

 

 しかし、その攻撃がミニーニャの身体を斬り裂くことはなかった。

 

「えい!」

「なん……だとっ!?」

 

 気の抜ける声と共にミニーニャが放った蹴りが、接触する直前で斬撃の軌道を逸らしたのだ。決して力だけではない、技術に裏打ちされた立ち回りが、そこにはあった。

 

 剣を掻い潜れば、あとは急所まで一直線。隔てるものは、何もない。

 

 そして、終わりを告げる一撃が戦場に鳴り響いた。




 狛村の描写が元々書くつもりがなかったので、オマケみたいなもんです。異様に短いのもその為ですね。

 さて、一部界隈で人気なゾンビエッタちゃんですが、作者はそんなに好きじゃありません(SMは趣味じゃない)。
 というよりジゼルが嫌いなので、ゾンビエッタちゃんもセットで受け付けなかった感じですね。

 

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