転生した先が死後の世界で矛盾している件   作:あさうち

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第五十六話

 一護達の加勢により、劣勢に立たされていた六番隊の面々はなんとか持ち直し、敵を打倒することに成功した。敵の猛攻に耐え続けていた隊長の白哉は、四番隊にて霊力の回復を待つことになったが、副隊長である恋次が再び戦場に戻れているので、残りの戦力を見てもまずまずと言える結果だろう。

 

 しかし、苦戦を強いられていたのは、六番隊だけではなかった。

 

「あはははははっ! どうしたのワンちゃん、さっきから全然攻撃当たってないんだけど?」

 

 勝気な笑みを浮かべ、声高々に狛村を挑発するのは星十字騎士団が一人、バンビエッタ・バスターバインである。一見は高校生程度の少女に見える彼女だが、その力は絶大で、戦いが始まってからというもの終始狛村を圧倒していた。

 狛村も最初はバンビエッタのような少女が戦いに身を投じていることを嘆くような発言をしていたものの、彼も一つの隊を率いる護廷十三隊の隊長だ。戦いが始まれば、元柳斎への忠誠のもと、目の前の敵を打倒することに集中していた。だが、戦いが始まってからというもの、狛村の刃は一度たりともバンビエッタを捉えることができていなかった。

 

 そんなバンビエッタの能力の名は“爆撃(The Explosion)”。彼女が放つ霊子は、接触したものを爆弾に変える性質を持っている。それ故に彼女の爆破を至近距離で防御することは不可能。そういう意味ではエス・ノトの“恐怖”と似ていた。先程から狛村は彼の斬魄刀である天譴の異次元から一振りの巨大な斬魄刀を召喚するという能力によって、遠距離からの攻撃を仕掛けているが、その攻撃はバンビエッタが霊子を天譴に当てることによってその都度逸らされていた。そして大振りな狛村の攻撃とは逆に、霊子を放つだけという小回りが利くバンビエッタの攻撃はよく通っていた。副隊長である射場を筆頭に鬼道を当てることによって、バンビエッタの思う通りに爆破させまいとしていたが、それでも防ぎきれない攻撃がじわじわと狛村を追い詰めていた。このままでは狛村が倒れるのも時間の問題だろう。

 

「ふーん、まだ諦めないんだ」

 

 バンビエッタの目には、こんな状況でも闘志に燃える狛村の顔が映っていた。

 

「当たり前だ。元柳斎殿だけではない。皆が、今この瞬間を戦っている」

 

 瞼の裏に浮かぶのは、彼が最大級の忠誠を誓う元柳斎の姿。それだけではない。加勢に来てくれた一護に自分の後ろをついて来てくれる大勢の部下達。この戦いに参加する皆の姿が狛村の背中を押していた。

 

「それなのに、一つの隊を預かる立場にある儂が勝利を諦める訳にはいかぬ!」

「暑苦しいねー、ワンちゃんは」

 

 小馬鹿にするようにバンビエッタは言った。

 

「正直もー飽きて来たし、これで終わらせてあげる」

 

 小さい霊子の球がバンビエッタの両手に集められる。その数は先程までを凌駕しており、今までバンビエッタが全く本気を出していなかったことが読み取れた。

 

「あいつ……まだ本気出しとらんかったんか」

 

 射場が嘗められていた事に怒りを募らすと共に、碌に狛村を支えることができなかったという事実を恥じた。だが、彼に出来ることは変わらない。狛村の被弾を最小限に抑えるべく、隊士と共に鬼道の準備を始めた。

 

「爆ぜろ!」

 

 霊子が宙へと放られる。鬼道に当たったものはその場で爆ぜ、それ以外のものは一直線に狛村へと向かっていった。

 

「隊長!」

 

 母数が多い分、取り逃がした霊子も先程より多い。先程までは射場達が取り逃がした霊子は天譴を当てることでやり過ごせていたが、この攻撃は天譴の一振りでは防ぎようがなかった。

 

「――案ずるな鉄左衛門」

 

 しかし、狛村が発した声は酷く落ち着いていた。不利な状況であるはずなのに、その出で立ちからは全くそれを悟らせない。彼の目はただ前を向いていた。

 

 そして、横一閃。

 

「なっ!?」

 

 だが、狛村の振りに合わせて出てきた天譴が捉えたのは、霊子の球でもなければバンビエッタでもない。――地面だった。

 天譴によって削られた地面は前に飛び散り、バンビエッタが放った霊子の球に接触。瞬間、狛村とバンビエッタを隔てるように大爆発が起こった。

 完全に自分とバンビエッタの視界が遮られたことを確認すると、狛村は斬魄刀を地面に突き立てた。

 

「行け【天譴】!」

 

 瞬間、爆発によって隔てられていたバンビエッタの上空から巨大な刀が召喚された。これまで狛村がバンビエッタの爆弾に対して一つ一つ天遣で迎え撃っていたのは、バンビエッタに天譴の射程を勘違いさせ、今までとは違う太刀筋で仕留める為の伏線だったのだ。

 狛村の始解はあくまで狛村の動作に従って顕現しているので、通常時ならば狛村の挙動さえ見ておけば天譴の太刀筋を予測することは可能だが、爆発によって遮られた今はそれも不可能。まさに千載一遇のチャンスと言えた。

 

 やがて、狛村は天譴を介し、手ごたえを感じた。しかし、それは先程から何度も味わってきた手ごたえ。――爆発に弾かれる手ごたえだ。

 

「なにっ!?」

「へー、ワンちゃんにしては考えたじゃない……。でも、滅却師のこと嘗めすぎ」

 

 今のようになんらかの障害物によって敵を見失った時、霊なる者は霊圧知覚を研ぎ澄ませる。視覚に頼れないなら、霊覚に頼るしかないのだ。そして、その精度は繊細な霊力の操作に優れた滅却師が一番高い。その精鋭である星十字騎士団であるバンビエッタならば、死角からの攻撃に反応し、爆撃を当てることは造作もない事だった。

 

 地面に突き刺した斬魄刀を抜いた狛村は構えをとる。この一撃で決めることができなかったのは確かに痛かったが、二人を隔てる爆発は仕切り直す時間を与えてくれた。七番隊の面々はこの機会を逃さないように、陣形を整えてそれぞれ鬼道の準備を始める。振り出しだ。

 

 しかし、振り出しは振り出しでも最初とは状況が異なっている。見た目だけを見れば、狛村は大した傷を負っていないので、特に支障もなく戦いを再開することができるが、注意深く状況を整理した時、その認識は変わって来る。

 先程の一手で、狛村は手札を一枚切った。何度も何度もバンビエッタの放つ霊子に天譴を合わせることで、意味を持たせた不意の一手をだ。その一手が通用しなかった。そこから来る精神的ダメージは思いのほか大きい。ここから狛村は一切の不意打ちも小細工も無しで戦わなければならないのだ。

 

 じわじわと、狛村は追い詰められていく。一合一合で負うダメージは大したことがなくても、やがてそれは蓄積し、一撃も攻撃を喰らっていないバンビエッタとの差はみるみる開いていった。

 

「じゃあね、ワンちゃん」

 

 そして、その時がやって来た。消耗により動きが鈍った狛村に向かって無数の霊子が放たれる。その数は今までで最大、ここで確実に決めに来ていた。

 

「うおおおおおおおお!!」

 

 状況は絶望的。だが、狛村はただで終わる気はなかった。決して諦めずに前を向き、雄叫びと共に刃を振るう。彼に続いた天譴は霊子の球――ではなく、バンビエッタへと吸い込まれた。

 防御を捨て、残った力の一切を敵を倒すことに向ける。卍解などなくとも、最後まで敵に立ち向かい続ける漢の背中は大きかった。

 

「だから嘗めるなって言ってるでしょーが!」

 

 だが、そんな捨て身の攻撃もバンビエッタには届かなかった。一度霊子を放ったバンビエッタの手は空く。狛村の闘志に滾る目を見た時からこうなることは想定に入れていたので、彼女にとってこれに爆撃を当てることはそう難しいことではなかった。

 

「隊長!!」

 

 射場の声が戦場に響く。先程は射場を安心させる言葉を発した狛村だったが、消耗した上に今は攻撃を外した直後。今の彼にバンビエッタの攻撃をやり過ごす術は残されていなかった。

 ここまでか。七番隊の誰もがそう思った。だが、次の瞬間――青い閃光が両陣営の間を遮った。閃光はバンビエッタが放った霊子を掻っ攫い、狛村に着弾する前に爆発する。青で埋め尽くされた視界が今度は赤に変わった。

 狛村達にとってその青はさながら希望の光。だが、その希望は彼らの認識とは裏腹にどこまでも禍々しかった。

 

「誰だっ!?」

 

 まさかここに来ても攻撃が不発に終わるとは思わなかったバンビエッタは、怒りを露わにして攻撃が飛んで来た方向に視線を向ける。

 一方、七番隊の面々も自分達を救ってくれた人物の正体を突き止めるべく、そちらに目を遣る。

 

「なっ!?」

 

 そして、誰とも分からない声が戦場に響いた。決して大きな声で発せられた言葉ではなかったが、今この場に居た者で、聞き逃した者は居なかっただろう。それだけ、この場に居る人物達の気持ちは統一されていた。

 その男は瓦礫の上から鋭い目つきでこちらを見下していた。逆立った青い髪に白い装束を身に纏っている。そしてなによりも目を惹きつけたのは――左頬を覆うようにつけられた歯形の仮面だった。

 

「……破面っ!? だが、何故……」

 

 本来なら、ただでさえ滅却師に負けそうな状況に破面まで加わり、絶望してもおかしくないような状況だったが、今回は違った。絶望するには一つ、不可解なことがあるのだ。先程、破面の男はバンビエッタが放った霊子の球に虚閃を放った。まるで狛村の事を護るかのようにだ。

 その一つの疑問がこの戦場に居る者を混乱させていた。

 

 すると、その破面の男――グリムジョーは一息に瓦礫から狛村の目の前に降り立った。それを見て、七番隊の面々は警戒態勢に移るのだが、グリムジョーをそれを意にも介さず口を開く。

 

「邪魔すんじゃねぇぞ。今からあいつは俺の獲物だ」

 

 死神にとって破面は敵。それは切っても切れない関係だ。故に会話は時間の無駄だと判断したグリムジョーは、これから始まる自分の戦いを邪魔しないようにだけ一方的に釘を刺した。

 

「待て!」

「ああん?」

 

 これで邪魔者は消えたので、あとは獲物を狩るだけ。そうグリムジョーを思っていたのだが、バンビエッタに向かった一歩を踏み出したところで、狛村の声がかかった。

 

「貴公は儂らの味方か、それとも敵か?」

 

 今の所、グリムジョーが七番隊に手を出す気配はないが、隊を預かる者として、これだけははっきりさせておきたかった。それに対しグリムジョーは歩みを進めたまま、一言だけ応える。

 

「……俺は黒崎の敵だ。あいつさえ殺せりゃ他はどうでもいい」

 

 グリムジョーにとっての最大の目的は一護に対するリベンジだ。しかし、それは決して護廷十三隊の敵になる訳ではなく、あくまで一護個人の敵であるということ。この場に居るのも、この戦いが終わった後、一護と戦うという約束の元の交換条件だった。

 

「そうか……」

「どうした? 黒崎の敵と知って俺と戦うつもりか? 別に俺はそれでも構わねぇぜ」

 

 何かを悟ったような狛村に対して、グリムジョーは好戦的な笑みを浮かべながら、煽るような言葉を投げかける。一護以外はどうでもいい、その言葉に嘘偽りはなく、今この場で狛村達が敵になろうとも別に構わなかった。一護との再戦を約束する際に、死神側に手を出さないことを約束していたが、死神側から手を出すとなれば話は別である。

 それにしてもグリムジョーが言葉足らずであることは否めないが……。

 

「いや、そのつもりはない」

「あ?」

「理由はどうあれ、貴公は今儂らと同じように滅却師と相対している。その事実さえあれば最早言葉は不要」

 

 狛村はグリムジョーの言葉の意図を正確に読み取っていた。確かに、一護を殺すという目的は聞き逃せるものではないが、一護ならばどうにかすると狛村は確信していたし、ここで見逃した以上、いざとなれば責任を持って一護の力となろうと決めていた。

 一番重要なのは、今をどう乗り切るか。そして、二人の利害は一致していた。

 

「助太刀するぞ、破面の客人!」

「……要らねぇよ。俺一人で十分だ」

 

 かつて藍染の乱で平子達仮面の軍勢を迎え入れたように、狛村はグリムジョーを迎え入れた。

 

「なんか凄い暑苦しいんですけど……」

 

 置いてきぼりにされたバンビエッタは熱血漢のお手本のような振る舞いをする狛村に、そう呟かずには居られなかった。

 

 

***

 

 

「味方だと……!? 破面が俺達の?」

 

 場所は変わって十番隊隊舎付近。こちらにはネリエルが加勢として加わっていた。しかし、やはり以前自分達と戦いを繰り広げた破面が味方になるというのは、そう簡単に認められるようなものではなく、冬獅郎は驚愕を露わにしつつも警戒心を強めた。そんな彼の警戒は十番隊全体に伝染し、乱菊を始めとする面々は今戦っている滅却師に意識を向けつつ、ネリエルに対しても警戒を強めた。

 

「ええ、私は一護を助ける為にここに来たの。例えあなた達が認めてくれなくても、私は一護の為に戦うわ」 

 

 そう言って、ネリエルは冬獅郎達が相対していた口元の傷が目立つ男の滅却師――蒼都(ツァントゥ)の方へと身体を向ける。死神達が破面が味方になるということを中々認められないのは、ネリエルとて分かっていたことだ。言葉で言っても分からないのなら、行動で示すだけ。特に何を思うでもなく、ネリエルは淡々と戦闘態勢を整え始めた。

 

「まさか破面が死神の味方につくとはね。まあいい。陛下の敵を滅しながら虚も滅せる。滅却師である僕達にとってはこれ以上ない一石二鳥だ。心から歓迎するよ」

「それはどうも。それはそうとあなた、とっても硬いのね。もう復帰するなんて」

「そうだ、僕は何よりも硬い。君達程度の攻撃では傷の一つもつけられないだろう」

 

 この戦場に入り込む際、ネリエルは蒼都に向かって虚閃を放っていた。完全に不意を突かれた蒼都はネリエルの虚閃を直撃で喰らってしまったのだが、あろうことかものの数十秒で復帰していた。それも無傷の状態でだ。

 それもそのはず。彼、蒼都の能力の名は“鋼鉄(The Iron)”。その名の通り身体を鋼鉄のように硬くする能力だ。彼は開戦時から冬獅郎と相対していたのだが、この能力と静血装を掛け合わせることで、一度も傷を負わずにここまで来ていた。蒼都に傷を負わせる為に果敢に攻撃を繰り出していた分、冬獅郎達十番隊の面々の方が霊力の消費が大きい。このままではジリ貧、そのような状況でネリエルはやって来たのだ。

 

「そうかしら? やってみないと分からないわよ」

「ならやってみるといい。その考えがいかに愚かであるか、教えてあげるよ」

 

 売り言葉に買い言葉。二人の会話はみるみる過激化していき、火花を散らす。攻撃の為にネリエルは構えを取り、蒼都もまたそれを迎えるべく、何時でも防御を固められるように準備しておく。二人の間に緊張の糸が張られた。

 そして、その糸を切ったのはネリエルの方だった。

 

「おい、待て!」

 

 冬獅郎の制止を聞かず、抜刀したネリエルは蒼都に接近する。それに対して蒼都は――一歩たりとも動かなかった。

 ネリエルの一閃。荒くれ者が多い破面からは想像できないほど洗練された一撃が蒼都を捉える。そこまでは良かった。だが、次の瞬間聞こえたのは金属が弾けるような音だった。

 しかし、止まっている時間はない。攻撃を能力と血装の操作だけで受け止めた蒼都は既に手の甲にとりつけられた爪での攻撃に出ていた。だが、ネリエルも今の一撃で仕留められるとは思っていない。すぐさま後ろに跳び、距離をとった。

 しかし、蒼都もそれに合わせて動きを変えた。両の爪を合わせ、その先をネリエルに向ける。

 

蛇勁爪(シェジンツァオ)!」

 

 爪を用いた徒手空拳を主体として戦う蒼都だが、滅却師である以上遠距離攻撃も有している。蒼都の背後に出現した霊子で形成された蛇が、宙をうねりながらネリエルを喰らわんとする。

 

「なるほど。なら、これはどうかしら?」

「なに……?」

 

 蒼都との距離をとったネリエルだが、何故かそこから蒼都の攻撃を回避する為の行動には移らない。怪訝に思った蒼都だったが、既に技は放っていた。今更それを取り消すことはできない。

 念のため、蒼都は何時でも防御に移れるように準備し、この攻撃は見守ることに決めた。

 

 そして次の瞬間、蛇の射線上に居たネリエルは――かあっと口を開いた。

 

「は?」

「なっ!?」

 

 場を支配したのは驚愕。これには敵も味方も関係なく、目の前の光景に目を見開いた。ネリエルが誰の想像にも浮かばないような行動を起こしたからだ。

 だって、誰も思わないだろう――破面が滅却師の攻撃を食べるなんて。

 

 “重奏虚閃(セロ・ドーブル)”。本来は飲み込んだ相手の虚閃を自分の虚閃と合わせて吐き出すカウンタータイプの技だが、今回ネリエルは蛇勁爪を飲み込むことで応用して見せた。

 元第三十刃の虚閃に星十字騎士団の動血装を用いた技。ネリエルがこの攻撃で無理をしたのは確かだが、その無理に値する攻撃が完成した。

 結果、動揺した蒼都にネリエルの反撃が突き刺さる。

 

「どうやら、無理をした甲斐はあったようね」

 

 そう言ったネリエルの視線の先。そこにはネリエルの反撃を一歩も動かず防いだ蒼都の姿が。しかし、彼が防御に用いた腕には――痣ができていた。

 

「傷、つけたわよ」

 

 不敵な笑みを浮かべ、ネリエルはそう言った。蒼都もそれに対し額に皺を寄せながらも口を開く。

 

「だが、無理をしているんだろう? なら、僕はさっきよりも強力な攻撃を放てばいいだけの話だ。まさか自分から解決の糸口を垂らすとは、とんだ道化がいたものだ。尤も、仮面を被った君には相応しい役割かもしれないけどね」

 

 滅却師の攻撃は虚を滅する。当然、それを飲み込んだネリエルにもダメージは入る。しかし、ネリエルほどの実力者ならば、それを悟らせないように振る舞えただろう。それによって蒼都の攻撃を抑制できたかもしれない。にも関わらず、自分から無理をしていると口に出したのだ、蒼都が道化と表現するのも頷ける。

 

「だって必要ないもの」

「……なに?」

 

 だが、ネリエルはそんな蒼都の言葉はまるで何のことでもないように受け止めた。

 

「さっきの一合で、あなたの硬さはだいたい把握したわ。それを貫くほどの重奏虚閃を実現するあなたの攻撃に、私が耐えられないということもね。だから今のはほんのお遊び、道化らしいでしょ? だからここからが本番よ」

 

 おどけるようにそう言いながら、ネリエルは持っていた斬魄刀を二つの目と水平になるように持ってくる。刀に視線を合わせ集中すると、ネリエルの霊圧は鋭く、大きくなっていく。そして静かに呟いた。

 

 そしてまた場所は変わって七番隊隊舎付近でも、一人の破面が霊圧を高めていた。斬魄刀を抜いたグリムジョーは刀身の根元に手をあてがい、刃先に向かって勢いよく引っ掻き、まるで獣が獲物を威嚇するように叫んだ。

 

 

「【(うた)え“羚騎士(ガミューサ)”】」

「【(きし)れ“豹王(パンテラ)”】!!」

 

 




 話が全然進まねぇ……。この感じだとこの章、破面篇より長くなりそうです。原作では破面篇の方が長かったんですけど、原作と殆ど話を変えなかった分、省ける描写も多かったので。
 対してこの章は原作と色々流れが変わって来てるので、省けるところが少ないんですよね。この章を始めた当初は、破面の戦闘描写なんて書くつもりなかったんですけどね……。この作品を通してプロット作りの大切さを痛感してます。

※蒼都とネリエルの戦闘描写を一部変更しました。

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