転生した先が死後の世界で矛盾している件   作:あさうち

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 あれから一週間、何とか自分なりに納得の行く形になったので、小説情報のところに卯月と睡蓮の絵を貼り付けました。あまり絵は得意では無かったのですが、不得意なりに頑張ったので、よろしければ見ていただけると嬉しいです。


第三十五話

「ようやく総隊長のおでましか。だが、遅すぎたな。最早戦力に数えられる隊長は君一人だ」

 

 護廷十三隊側の最高戦力である元柳斎が出てきても、藍染は少しもあせることなく会話を始めた。

 藍染の言う通り、元柳斎が動くのは余りにも遅すぎた。もうこの場に居る死神でまともに戦えるのは、彼以外では卯月と一護の二人だけだ。

 

「君が倒れれば、護廷十三隊は文字通り崩壊する。機を逸したんだ。君は最早出てくるべきではなかった」

 

 もう少し彼が出てくるのが早ければ、彼が護廷十三隊や仮面の軍勢の面々と協力していれば、もう既に決着は着いていたかもしれない。元柳斎は最も勝率の高いと思われる時に戦いに参加していなかった。故に藍染は言ったのだ。機を逸したと。

 

「驕るなよ小童。貴様程度の力で、この儂を斬れると思うてか?」

 

 しかし、護廷十三隊最強の死神の名は伊達じゃない。例え機を逸していたとしても、自分が負けるわけがないという絶対の自信が元柳斎にはあった。

 

「斬れるなどとはおもってないさ。既に斬っている」

「ほざけ!!」

 

 舐めているとしか思えない藍染の発言に、元柳斎は斬魄刀を抜き、瞬時に斬りかかる。

 

 しかし、それは藍染の術中だ。

 

 卯月の鬼道による通信の妨害に成功した今、鏡花水月の能力は再び完全無欠のものとなっていた。故に藍染は自分の動きを偽ることで、元柳斎の攻撃を躱そうとしたのだが、ここで予想外のことが起きた。

 

「――見えておるぞ」

「何っ!?」

 

 どういう訳か、元柳斎は鏡花水月を発動した藍染の動きについてきていたのだ。そして、元柳斎の素の戦闘力は藍染を凌駕している。そんな彼が放つ一撃を僅かとは言え、動揺した藍染に受け止められるはずがなく、この戦いで初めて藍染は重傷と言える傷がつけられた。

 

「また君か……!」

 

 だが流石と言うべきか、藍染も今の一合で元柳斎がなにをしたのか、いや、何をされたのかを正確に見破っていた。

 

 藍染の視線の先にいたのは卯月だった。

 

 鬼道による通信は妨害された、一護の攻撃は防がれた。しかし、まだ彼には奥の手とも言うべき手が残っていたのだ。

 以前、卯月が藍染と尸魂界で対峙した時と、決定的に違うことがこの戦場にはあった。――それは、最初から戦場にいる全隊長格の力を借りられるということだ。尸魂界で戦った時は藍染がうまく暗躍していた為、卯月も秘密裏に動くしかなかった。しかし、今回は違う。今回は正々堂々藍染に対峙することができる。

 そのことに卯月が気付いた時、まず真っ先に思い付いた策が、自分たちの最高戦力である元柳斎のサポートに徹することだ。しかし、サポートをすると言ってもそう簡単なことではない。一度は狛村に鬼道で指示を飛ばすことで、鏡花水月に対抗した卯月だったが、二度も同じ手が通用する藍染ではなく、実際鬼道の強度は高めたものの、最終的には鬼道を乗っ取られ、逆に利用されてしまった。

 つまり卯月には、全くこれとは違う手を考える必要があったのだ。そうして卯月は考えついた。自分の目で見たことを仲間に伝えるのではなく――鏡花水月に翻弄されない視界を付与する鬼道を。

 

 今の元柳斎の目は、鬼道を付与された影響で青白く光っている。卯月が開発した鬼道は、言うならば新たな目。鬼道の目は藍染の鏡花水月に決して騙されず、そこから得た情報をダイレクトに対象に送り届ける。あまりに難易度の高い鬼道のため、同時展開はできないが、その分より速く、より正確に情報を渡すことができる。

 縛道に回道、この二つの鬼道を高水準で習得した卯月だからこそできる鬼道だった。

 

「機を逸したとぬかしたの。否、機は今熟した」

 

 そうして、攻撃を喰らった藍染は、未だに元柳斎の攻撃範囲から抜け出せていない。

 

 刹那、元柳斎と藍染を囲むように炎の柱が展開される。

 

「【炎熱地獄】。お主の今までの戦い、その全てがこの為の隙となったのじゃ」

「部下たちが斬られている隙にこれを仕掛けていたという訳か。老獪なことだ」

 

 戦闘への参加が遅かった元柳斎だったが、彼とて何もせずに宙に居座っていたわけではない。部下の負傷の代わりに元柳斎が得たものは、確実に藍染を殺すことのできるこの状況だった。

 

「老獪結構。お主には、儂と炎熱地獄で死んで貰う」

 

 周囲に展開された火柱を見れば分かるように、炎熱地獄はその内側に位置するものを見境無く焼き尽くす技だ。ここに立った時点で元柳斎は己の命を引き換えにしてでも、藍染を殺すことを決めていたのだ。

 

「だが、いいのかい? このままでは他の者達も、この炎熱地獄とやらの巻き添えだぞ」

 

 藍染の言うとおり、このままでは戦闘不能となっている隊士達は勿論、まだ動ける卯月や一護だって、元柳斎の技の犠牲となってしまう。

 

「皆この戦場に立った時点で、覚悟はしておる。一死以て大悪を誅す、それこそが護挺十三隊の意気と知れ。じゃが、お主程度の命を奪うのに、護挺十三隊の未来を担う者達の命を犠牲にするのは、あまりに愚かなこと。――故に犠牲は儂一人で十分じゃ」

 

 そう言った元柳斎は一度話を切り、話す相手を藍染から後ろに居る卯月と一護に切り替えた。

 

「蓮沼卯月」

「はい」

「これより空間転移の使用を許可する。直ちにこの場にいる護廷十三隊隊士と、黒崎一護を撤退させよ」

「なっ、爺さん!?」

「――承知しました」

 

 自分を犠牲に藍染を討ち取ることを決意した元柳斎に言及しようとした一護だったが、その声は卯月によって遮られる。

 

「一護君、いまから皆を一か所に集めるよ」

「おい、蓮沼さん! いいのかよそれで!!」

 

 元柳斎の指示に従い、早速動こうとした卯月に、一護が全力で抗議をする。

 

「――じゃあ今の君は藍染を倒せるの?」

「なんだとっ!?」

「できないでしょ? 僕には無理だ。だから僕は全力で総隊長をサポートする。そう決めたんだ」

「っ!?」

 

 斬魄刀を強く握り締める卯月を見て、一護は声が出なくなった。悔しいのは卯月も同じなのだ。いや、自分よりも長く護廷十三隊の一員として尽力してきた卯月の方が、この気持ちは何倍も大きいだろう。

 そして、今の自分に藍染を討てるかと訊かれた時、できると答えられなかった。きっとそれが答えなのだ。元より勝つためではなく、勝たなければならないから、その手に斬魄刀を握っている一護だ。もし、時間があれば勝算がなくとも、彼は藍染の前に立ちはだかっていたことだろう。

 だが、今は諦めずに粘ったところで、どうにかなるような状況ではないのだ。炎熱地獄の発動までもう残り僅か。刻一刻を争う状況だ。

 その証拠に卯月は一護の返答を聞くまでもなく、仲間の回収に当たっている。

 

「わかったよ。だけどチャンスだと思ったらすぐに俺はここに戻る。それでいいか?」

 

 仲間の回収を手伝いながら一護は言った。

 結局彼はどこまで行っても一護なのだ。一つのものを護る為に全力を注ぐ。この元柳斎の生存がほぼ不可能なこの状況でも、彼はまだ全員での生還を諦めていなかった。

 

「うん、その時は僕も手伝うよ」

 

 そしてそれは卯月も同じだ。元はただの優しい日本人であった彼が、そう簡単に人の命を諦められるはずがないのだ。故に卯月ももし元柳斎の生存の可能性があるのなら、全力で策を巡らす気で居た。

 

「じゃあ、行くよ」

 

 刹那、卯月が発した緑色の霊力が、彼の周りにいた仲間たちを包み込む。そしてより一層光が強まった次の瞬間、そこには誰も取り残されていなかった。

 

「――終わりじゃ、藍染惣右介!!」

 

 そしてそれをしかと確認した元柳斎が藍染に止めを刺すべく、一気に霊力を上昇させる。

 火柱は更にその火力を増し、肥大化していく。やがてもう少しで炎が元柳斎もろとも藍染を飲み込もうとその時だった。

 

「なん……じゃと……!?」

 

 ――あれだけ猛々しく燃えさかっていた炎が、突然一部消え失せた。

 

「ア~~」

 

 そして次の瞬間、元柳斎の背後には、拳西と戦っていたはずのワンダーワイスが帰刃化した状態で佇んでいた。

 四肢の接合部分を極端に肥大化させた、人型からかけ離れたそのシルエットは、先程まで戦っていた十刃達のものとは違い、どこか機械的な印象を抱かせた。

 

「ふっ!」

 

 即座にワンダーワイスに反応した元柳斎は、並大抵の実力では反応する事すら難しい一閃に、彼の斬魄刀である流刃若火の炎を乗せて放つが、その絶技とも言うべき一撃は、簡単にワンダーワイスの手に受け止められてしまう。

 そのことに驚いた元柳斎の一瞬の隙を突き、ワンダーワイスは元柳斎を地面に叩きつけた。

 

 だが、流石最強の死神というべきか、帰刃した破面の一撃を喰らったのにも関わらず、元柳斎は特に傷は負っておらず、それどころか隊長羽織を脱ぎ捨て、完全に戦闘態勢に移行していた。

 

 そして立ち上がった元柳斎は思考を巡らせた。

 

 ――何故、流刃若火の炎が消え失せた……?

 

 炎熱地獄に炎に先ほど自分が放った一閃、どちらも生半可な実力では、生き残ることすら難しいほどの威力を孕んだ一撃だったが、どういう訳かワンダーワイスが現れてから、そのどちらもが無効化されていた。今こうしている内にも、炎熱地獄の炎はワンダーワイスを中心に鎮火されている。

 

「ご苦労だったね、ギン」

「流石にあのままやと、藍染隊長に顔向けできませんでしたし、役に立てたようでよかったです」

 

 何故拳西と戦っていたはずのワンダーワイスが元柳斎の相手をできているか、その答えは市丸にあった。彼は藍染の指示で密かに拳西を倒していたのだ。

 そのお陰で、拳西との戦いでやや劣勢だったワンダーワイスが、こうして元柳斎の前に立ちはだかっていた。

 

「教えようか?」

 

 一頻り市丸を労わった藍染が、再度元柳斎に声をかける。

 

「君の流刃若火は最強の斬魄刀、それは間違いない。まともに戦えば、戦闘能力は私よりも上だろう。だが、他の能力を棄てて、ただ一点のみに特化させれば、その最強にも対抗できる」

 

 自身より戦闘能力が高い元柳斎に、鏡花水月の効かないサポート特化の卯月と天井なしの潜在能力を有する一護。これだけの要素があれば、十分に自分が倒される可能性があると考えていた藍染は、一人一人に対策を練ってきた。まだ若く、精神面が未熟な一護には戦いの序盤で話術で揺さぶりをかけ、卯月には鬼道による通信の妨害と鏡花水月による同士討ち、そして元柳斎には――、

 

「彼、ワンダーワイスは唯一の改造破面。そして彼の帰刃名は“滅火皇子(エスティンギル)”。君の流刃若火を封じる為だけに作られた破面だ」

 

 ――斬魄刀の無効化だ。

 

「見ての通り、滅火皇子の能力は流刃若火の能力を封じること。その為だけにワンダーワイスは言葉も、知識も、記憶も、理性すらも失った。全てを引き換えに手にした能力の前に、君は最早成す術を持たない」

 

 元柳斎の最たる力は流刃若火の能力だ。それさえ封じてしまえば、自ずと勝利は見えてくると藍染は考えていた。

 

「さらばだ、山本元柳斎」

 

 そして、ワンダーワイスが元柳斎に追撃すべく、響転で接近し、拳を放つ。

 

「――甘いのう」

 

 しかし、その拳が元柳斎に突き刺さることはなく、逆に元柳斎の放った拳がワンダーワイスの胴体を打ち抜いた。

 

「流刃若火を封じれば、儂を討てると思うてか? 甘いわ。何故儂が千年も、護廷十三隊の総隊長を務めてると思うとる? ――儂より強い死神が、千年生まれとらんからじゃ」

 

 認識が甘かった。藍染が斬魄刀以外の能力が一流であるように、元柳斎もまた斬拳走鬼の内全てに秀でた死神だった。それも藍染より更に上の次元でだ。

 確かに、ワンダーワイスの能力で流刃若火の能力は封じた。だが、護廷十三隊の総隊長がその程度で止まるはずがない、止まっていいはずがないのだ。

 

 ――何故なら、それが最強ということだからだ。

 

 そして、元柳斎が神速とも形容すべき速度で藍染との距離を詰める。そこから接近の際の勢いも乗せた一撃――一骨を放つのだが、その一撃は惜しくも強引に身体をねじ込んだワンダーワイスによって、不発に終わってしまう。

 

「加減したつもりはなかったんじゃがのう。活きのいい奴じゃわい。さて、一骨で倒せんかったとなると、ちょっと痛い目見ることになるが、良いかの?」

「ア~~」

 

 しかし、それでもまだワンダーワイスは死んではなかった。胴体に大穴を空けたワンダーワイスがそれでも尚立ち上がり、元柳斎の前に立ちはだかる。

 それに死覇束の上半身をはだけさせ、彼の年齢からは想像もできないほど逞しく、幾戦もの修羅場を潜り抜けてきたからこそできた大量の傷跡を露わにしながら、元柳斎はワンダーワイスに忠告したのだが、返ってきたのは当然意味を持たない音だった。

 

「そうか、言葉は削り取られてしまったんじゃったな」

「ぉロァ?」

 

 元柳斎が同情するような声で呟くも、ワンダーワイスに主だった反応は見られない。

 

 ――その代わりに返って来たのは、不意に放たれたワンダーワイスの拳だった。

 

「予備動作がないのう。改造というだけのことはある」

 

 余裕を持って攻撃を躱しながら元柳斎は言った。戦いにおいて全ての動きの初動に出てくる予備動作がないというのは、理性のないワンダーワイスならではの強みだったが、それでは埋まらない程の実力差が、ワンダーワイスと元柳斎との間に存在していた。

 

 次にワンダーワイスは肩の肥大化した部分から腕を一本生やし、それを伸ばすことで元柳斎に攻撃を仕掛けるが、その普通なら予想もつかない不規則な攻撃も元柳斎には通じず、それどころか腕を千切られてしまう。

 

 それを見たワンダーワイスは一本では足りないと感じたのか、腕の数を九本に増やし、猛攻に出る。

 だが、その圧倒的な数による攻撃も元柳斎は完全に見切っており、全ての攻撃を完璧にいなしていく。そして、元柳斎が反撃に移ろうとした時、

 

「っ!?」

「アァ~~」

 

 ――腕を掴み取られた。そして次の瞬間、ワンダーワイスの肥大化していた肩の部分が、まるで鳥の卵の孵化のようにひび割れ、そこから無数の手が現れた。

 そして、その腕が一斉に元柳斎に襲いかかる。無数の腕は元柳斎に反撃の隙すら与えず、確実にダメージを蓄積させていく。

 

「何じゃ、終いか?」

 

 ――かのように思えた。

 しかし、元柳斎は特に大きな傷は負って居らず、彼の身体についた傷は表面上だけのものだった。

 

 そして、元柳斎を拘束していた二本の腕が千切られる。

 

「せめても童の姿でなくてよかった。心後らず、討ち殺せる」

 

 相手が子供だろうが女だろうが護挺十三隊に仇なす存在ならば、一瞬にして殺してしまうであろう元柳斎も一人の死神だ。当然人としての心は持っている。

 それに加えワンダーワイスは理性がなく、藍染の命令によって無理やり動かされている存在だ。元柳斎にも少なからず憐憫の気持ちがあった。

 

「オ……オアア……アアアアア」

 

 知識がなく、理性のないワンダーワイスは、自分がこれから殺されるということを理解する事ができなかった。だが、元柳斎の雰囲気が変わったのを感じ取ったのか、これまでとは明らかに違う声音を発した。

 掠れたようなその声は、まるで元柳斎を恐れているかのようだった。

 

「【双骨】!!」

 

 そして、元柳斎の両拳がワンダーワイスに突き刺さる。格上から放たれた強力な一撃にワンダーワイスの身体は耐えられず、瞬く間に崩壊を始め、その残骸が地面落下した。

 

「哀れ、感情は削り取って貰えなんだか」

 

 その様を見て、元柳斎は先程ワンダーワイスが最後に発した声と表情を思い出していた。

 それを見て元柳斎は確信に至った。ワンダーワイスは知恵も言葉も理性も奪われた中、感情だけは奪われずに残されていたのだ。

 それはワンダーワイスに与えられた、せめてもの慈悲のようなものだったのかもしれない。しかし、今回においてはそれが完全に裏目にでていた。もし彼に感情がなければ、彼があのように苦しむことはなかったのだから。

 

「惨い事をする」

 

 ワンダーワイスの最期を見届けた元柳斎は、高みの見物をしていた藍染に向かって話しかける。

 

「惨い? 虚となった魂に意味などない。ただ徒に魂を喰い漁るだけの存在だ。そこに意味を与えてやることの何が惨いと言うんだい? その魂を粉々に打ち砕いた君の方こそ惨いと言うもの」

「貴様と愚論を交わす気はない。今の内に好きにほざけ。直に終わる」

 

 藍染の前に降り立った元柳斎は、そう言って構えをとった。

 口を開けば、ある程度の筋を通した上で、挑発やはったりなどを息をするように簡単に吐く藍染を相手に、最早言葉など不要だった。

 

 しかし、その判断は最悪の形で元柳斎の首を絞めることとなる。

 

「愚論か。そうして言葉を軽んじるから、君は私の言葉を聞き逃す」

「……どういう意味じゃ?」

「よく思い出すといい、私の言葉を。言った筈だ。滅火皇子は、流刃若火の炎を封じる為だけに創られた。封じるとは、新たな炎が生まれぬよう刀の中に封じること」

 

 その能力を用いたからこそ、ワンダーワイスは元柳斎の炎を纏った斬撃を防げたのだ。

 それだけならばよかった。

 

「だが、果たして炎はそれだけか? あった筈だ。既に刀から放たれた炎が」

「っ!?」

 

 そう言われて元柳斎は思い出した。ワンダーワイスが到着する前から出していた炎を。そして、それを吸収するワンダーワイスの姿を。

 

「さあ、その炎は何処へ封じた」

 

 ――炎熱地獄の炎はまだワンダーワイスの中だ。

 

 そのことに気づいた元柳斎は、即座にワンダーワイスの元に疾走する。双骨によって砕かれた筈のワンダーワイスの頭部は不自然な膨張を始め、そこからは熱が発せられていた。

 そして、それこそが炎熱地獄の封印元だ。

 

「聡明だ。護挺十三隊総隊長。己の発した力の全てが無差別に、一瞬で炸裂すれば、どうなるのかをよく知っている」

 

 ワンダーワイスを抱え込む元柳斎を見て、藍染も安全の確保の為に僅かに距離をとった。

 

「――てことは、万が一にもその炎をまともに喰らったら、例えあなたでも生き延びるのは難しいってことだね」

 

 やがてワンダーワイスが爆発しようとした時、元柳斎の元に二人の影が現れた。一人は卯月、そしてもう一人は一護だ。そして、彼らがここに現れたということは、それ即ちチャンスということだ。

 

「空間転移の許可ありがとうございます、総隊長。お陰様で藍染を討つことができそうです」

「なに……!?」

 

 そして、卯月の生み出した光がワンダーワイスを包み込む。そしてその移動先は、爆発に巻き込まれぬよう距離をとっていた藍染だ。

 いくら藍染でも、点と点の移動である空間転移に抗うことは不可能だった。

 

 そして爆発の瞬間、結界で閉じ込めることにより、炎熱地獄の炎は余すことなく藍染に注がれた。




 この辺りの話をアニメで見た当時から思っていたんですが、何故ワンダーワイスは元柳斎の元にやって来れたんでしょうか?
 確かワンダーワイスは拳西が相手をしていた筈なんですがね。にも関わらず、なんの描写もなしに突然ワンダーワイスが現れたのには驚きました。
 なので今作では市丸が倒したことにしました。

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