転生した先が死後の世界で矛盾している件   作:あさうち

22 / 82
第二十二話

 それはいつものように砕蜂隊長との修行を終え、通常業務をこなしていた時の事だった。

 

「卯月、居るか?」

「……修兵?」

 

 コンコンとノックを鳴らして来たのは修兵だった。はて、何の用件だろうか?

 唯一、思考を過ったのは夜に行う修行の話だったけど、それもいつも前日の内にしっかりと話し合ってるので、正直思い当たることは何もなかった。

 

 それだけではない。霊圧感知に意識を向けてみれば、修兵の近くには二人の霊圧を感じられて。その上、その霊圧の持ち主は、両人ともここに居るはずがない人物達だった。

 

「ああ、俺だ。入っていいか?」

「うん、いいよ」

 

 とは言え、別に修兵の近くにいる二人は悪い人ではないし、特に断る理由もないので、入室を許可した。

 

 「邪魔するぞ」と言って入室してきた修兵の後ろについてきたのは二人の女性だった。

 

「こんにちは、蓮沼三席」

「こんにちは、朽木さん」

 

 一人は朽木さん。

 

「ええと……、こんにちは」

「こんにちは。君は確か井上織姫さんだったかな?」

 

 そしてもう一人は黒崎一護君の現世での学友であり、一緒に尸魂界に侵攻してきた戦友でもある井上織姫さんだった。

 

 背中まで伸ばされた鮮やかなオレンジ色の髪に均整のとれた顔立ち、そして夜一さんに勝るとも劣らない抜群のプロポーション。恐らく、瀞霊廷ですれ違った十人の内の八人以上は確実に彼女を美少女と評価することだろう。

 

 だけど、朽木さんと井上さんは本来ならここに居るはずがない。言わずもがな、井上さんは現世の人間だし、朽木さんも今は日番谷先遣隊の一員として現世に駆り出されているからだ。

 さらについ最近、現世では二度目の破面の襲来があった。結果としては限定解除をすることでなんとか危機を脱したらしいけど、それでもまだ戦いは終わったばかり。本来なら二人は現世で身体を休めておかないといけない筈だ。

 

「う、うん。よろしく」

「うん、よろしく」

 

 そんなことを考えていると、井上さんが僕の問いかけに返事をした。

 朽木さんの後ろでオドオドとしていたので、一体どう話そうかと考えていたけれど、返ってきた言葉は意外にもタメ口だった。

 それが彼女の社交性の高さによるものなのか、それとも単に僕の中性的で覇気のない容姿がそうさせているのかは定かではなかったけれど、とりあえずはコミュニケーションが取れそうで安心した。

 

「それで、用件はなんだい、修兵?」

「ああ、それなんだが。――お前、こいつらの面倒見れねぇか?」

「……は?」

 

 普段ならば考えられないようなメンツで来たので、どうせ用件も碌なものではないのだろうと予想していたけれど、僕の想定を遥かに超えるほどの依頼が修兵の口から放たれたのだった。

 

 

***

 

 

「【孤天斬盾(こてんざんしゅん) 私は拒絶する!】」

 

 井上さんの髪を止めていた雪の結晶の形をしているヘアピンの一部分が分離し、光を放ちながら一直線に僕に向かって来る。

 

 修兵は二人の面倒を見てくれと言っていたけれど、それは主に井上さんのことを示していた。今回の二度目の破面の現世への侵攻で、辛酸を舐めさせられる結果となった黒崎一護君達現世組と日番谷先遣隊は、更なるレベルアップを目指して修行を始めたそうだ。

 井上さんもその一人で、その方法を浦原喜助さんに相談しに行ったそうなのだが、戦力外通告を受けてしまったらしい。その時はショックで考えもまとまらない内にその場を離れたそうなんだけど、偶然その場に居合わせた朽木さんが話を聞き、尸魂界で修行することを提案したそうだ。

 

 そして、そんな二人の修行風景を浮竹隊長を訪れる際に見た修兵が、二人を引き連れて僕の元に来たんだそうだ。なんでも、一瞬井上さんの戦い方が僕の戦い方と重なったらしい。

 

 そこまで考えた所で僕の元に直進してくる光に意識を戻した。その速度は確かに早く、並みの死神や虚になら十分通用するだろう。

 

 ――だけど、所詮はその程度だ。彼女の真骨頂はそこじゃない。

 

「【縛道の三十七“吊星”】」

「うおっ!?」

椿鬼(つばき)くん!」

 

 僕が展開した弾力を多く含む白色の結界は、いとも簡単に椿鬼と呼ばれたヘアピンの一部から生まれた小人型の霊体を弾き飛ばした。

 

「大丈夫、椿鬼くん?」

「ああ、別に傷も負ってねぇし、どうってことねぇよ」

 

 大した傷も負っていない椿に駆け寄る井上さんを見て確信する。

 

 ――ああ、確かに彼女はよく僕に似ている。

 

 彼女、井上織姫の能力“盾舜六花(しゅんしゅんりっか)”の能力は事象の拒絶。使い方次第では過去に起こった出来事でさえ帳消しにできるというその能力は三つだ。

 

 一つ目は今放った“孤天斬盾”。この技は椿鬼を中心とする結界の内側と外側の拒絶で、椿鬼が通過した物体はその能力によって両断される。

 

 二つ目は“双天帰盾(そうてんきしゅん)”。この技は椿鬼の他に五人いる小人型の霊体の内の二人が行う技で、その能力は結界の内側の拒絶。この能力こそが井上さんの能力の真骨頂であり、この結界の内側にさえ入れば、例え部位欠損ですらも直してしまうという回復術士としては強力無比な技である。

 

 三つ目は“三天結盾(さんてんけっしゅん)”。この技は上記の三人以外の三人によって行われる、結界の外側の拒絶の力だ。そしてこの技は主に彼女を護る盾として働く。

 

 原作では近い将来、彼女はこの三つに加えて新たな技を覚えるそうだが、とりあえず現時点で井上さんが使える技はこれで全部だ。

 

「どう、でしたか……?」

 

 先程まではタメ口だった井上さんだったが、この時ばかりは緊張しているのか、改まって敬語で話しかけてきた。

 

「うん。変に気を遣っても君の為にならないから、正直に言わせてもらうよ」

 

 前置きをした僕は、朽木さんから聞いた話や今見た彼女の能力をもとに評価を下す。

 

「――井上さん。少なくとも君には戦いの最前線で戦う力は備わっていない。そしてこれは努力でどうこうできる問題でもない」

「そう……ですか……」

 

 僕の言葉を聞いた井上さんは悔しいのか、制服のスカートを強く握りしめた。

 

 本当に彼女の性質は僕に似ていた。同じ経験をしたことがある僕だからこそ分かる。――彼女は絶望的に戦いに向いていないと。

 

 彼女は僕と同じように攻撃面での能力は絶望的で、一方それ以外の能力、特に回復に関しては他に追随を許さない程の強力な力を有している。

 この弱点を、僕は半世紀もの修行でなんとか克服することができたけど、彼女は違う。戦いの時は刻々と迫っているからそんなにのんびりと修行をしている暇はないし、仮にできたとしても、修行が完成するころには井上さんは立派なおばあちゃんだ。老化でまず力なんて出せないし、そもそも生きているのかさえも分からない。

 

「蓮沼三席――っ!」

「――いいの朽木さん! 全部本当のことだから」

「しかし――!」

「――あのー、お二人さん。何か勘違いしてるんじゃないでしょうか?」

 

 互いの言葉に食い気味に反応しながら会話をする彼女らに、僕も対抗して切り出した。

 

「別に僕は井上さんが戦えないとは一言も言ってないよ」

「え……? ですが――」

「僕が言ったのは最前線では戦えないと言っただけだよ。井上さんなら回復術士(ヒーラー)として十二分に活躍できるよ」

 

 別に最前線で戦う事だけが戦いじゃない。後方で味方の支援をすることだって立派な戦いだし、それが欠けてしまえば、戦いが成り立たなくなってしまうほどの重要な役割だ。

 

 そして、恐らくそれは浦原喜助さんも分かっている。彼はあの藍染を超える程の頭脳の持ち主だ。その彼が井上さんの能力を見抜けていない筈がない。

 

 破面篇の話は大きく三つに分けられる。

 

 一つ目は破面の現世への侵攻を、現世組と日番谷先遣隊が協力して食い止める話だ。そして、この話は井上さんがウルキオラという破面によって虚圏に攫われることによって、次の話へ移行する。

 

 二つ目は攫われた井上さんを現世組と朽木さんと恋次が奪還しに行く話。

 

 そして三つ目が護廷十三隊と藍染達が現世で激突し、最終的には尸魂界で黒崎一護君が己の全ての霊力を引き換えに終結させる。

 

 つまり、浦原喜助さんは井上さんが藍染隊長に奪われることを危惧して戦線から外した可能性が高い。

 

「だから僕がまず始めに助言するのは攻撃を捨てることだ」

「攻撃を捨てる……」

「そう、この短期間に出来ないことを克服しようとしてもはっきり言って時間の無駄だよ。それなら得意分野を伸ばした方がいい。攻撃は最大の防御なんて言われてるけど、そんなの全然気にしなくていいから」

 

 その上で僕は彼女に協力することを決めた。

 修兵の頼みだったり、防御能力や回復能力を高めることで自衛をできるようになって欲しいなど様々な理由があるけれど、一番の理由は井上さんに親近感が湧いたからだ。

 

 僕は嬉しかったのだ。自分と同じようにごく普通の高校生でありながら、突然戦いに身を投じることになっても、何とか仲間の役に立とうと努力しようとする彼女の存在が。

 尸魂界にも修兵や山田君のようにあまり戦いを好まない人も居るにはいるけれど、それでも生まれ育った環境が違うため、どうしても価値観の違いが出て来る。だから僕にとっては、井上さんが初めてこの世界で心から共感できる存在なのだ。

 

 向こうはそんなこと夢にも思ってないと思うけれど、それでも何とか協力してあげたいと思えた。

 

「で、でも具体的に何をすれば……」

 

 僕の割り切った発言に驚きながらも井上さんは僕に疑問を投げかけてきた。

 

 僕も井上さんの能力を見るのは初めてだけど、幸いにも一つこうすればいいんじゃないかという案が思い浮かんだ。

 

「確か椿鬼の能力は、結界の内側と外側の拒絶だったよね?」

「うん……?」

「それってつまり、内側と外側の拒絶の両方に適性があるってことだよね? じゃあ椿鬼が回復と防御の術に加わって、強化することもできるんじゃないの?」

「あっ!」

 

 僕の発言で何かひらめいたようで、井上さんは甲高い声を出した。

 

「できる、椿鬼くん?」

「防御とか回復は俺のガラじゃねぇんだがな……。まあ、でもまた消えちまうよりはマシか。分かった、やってやんよ」

「ありがとう、椿鬼くん!!」

「それじゃあ、始めようか」

 

 既に破面は現世に二回侵攻している。原作では、三回目の侵攻の時に井上さんが虚圏へと攫われた。

 つまり、残された時間は井上さん達が思っているよりもかなり少ない。

 

「はい!」

 

 声を張り上げて返事をする彼女の表情は、先程とは比べ物にならないほどに頼もしいものとなっていた。

 

 

***

 

 

 井上さんの修行を見るようになってから一週間が経った。とは言っても、僕自身の修行や仕事もあるので、付いてあげられた時間も、休みの日以外では昼休みや、ちょっとした休憩時間だけだったので、中々満足のいく指導ができなかったんだけど、そんな中でも井上さんは、しっかりと成果を上げてくれた。

 

「【破道の三十三“蒼火墜”】」

 

 朽木さんの掌から、蒼炎が井上さんに向かって放たれる。その威力は三十番台の鬼道としては十二分に高く、僕の霊力に物を言わせただけの破道とは比べ物にならない程に洗練されていた。

 

火無菊(ひなぎく)梅厳(ばいごん)、リリィ、椿鬼。【四天抗盾(してんこうしゅん) 私は拒絶する】!!」

 

 井上さんの指示に従って小人たちが集い、盾を形成する。

 そして蒼炎が盾に激突した瞬間、盾から椿鬼が一直線に放たれる。そのスピードは一週間前に見た孤天斬盾とは見違えるほどに速くなっており、椿鬼を包んでいる光の量からしても、威力も大幅に上昇しているのが察せられた。

 

「っ!?」

 

 その速度に驚きながらも、朽木さんはギリギリのタイミングで攻撃を躱したのだが、そのまま直進した椿鬼は、朽木さんの後ろにあった岩壁を大きく陥没させた。

 

「だいぶ様になって来たな」

「そうだね」

 

 それを見ていた修兵が隣にいた僕に話しかけてくる。

 

 習得はかなり早いし、それどころか完成した術の質は僕の想像以上だった。まさか防御力を強化するだけではなく、椿鬼がカウンターを行うまでに昇華させるとはね。

 

 井上さんが今使った技――四天抗盾は敵からの攻撃を防ぎ、その威力を椿鬼のカウンターによって逃がす攻防一体の技だ。井上さんはその性格上、攻撃力が乏しかったんだけど、敵の攻撃の威力を利用するこの技なら、それをある程度克服できる。

 

 そして驚くことに、井上さんがこの一週間で編み出した技は四天抗盾だけではない。なんと井上さんはこの短期間に、四天抗盾に加えてさらに二つの術を編み出したのだ。

 

 一つ目は双天帰盾に椿鬼を加えることで、その回帰力を強化することに成功した技――【三天還盾(さんてんかんしゅん)】だ。この技は四天抗盾やもう一つの技のように目新しさこそはないが、もともとが強力だった双天帰盾がさらに強化されたのだから、侮ることはできない。

 

 そして二つ目は双天帰盾を三天結盾で覆うことによって、より安全な回復を可能とした技――【五天庇盾(ごてんひしゅん)】だ。さらにこの技は更なる可能性を秘めている。まだ習得こそはしていないが、この技は回復と防御どちらかに椿鬼を加えることによって、応用力を持った技として完成する。

 

 本当に、少しの助言でここまで成長するなんてね。これがヒロイン補正かと感心した。

 ……いや、それも無粋か。

 上記の技は間違いなく、井上さんが必死に努力を積んだ事によって習得した術だ。それをヒロイン補正という一言で片づけようとするなんてどうかしていた。

 

「おっ、完成したのか!」

「浮竹隊長」

 

 浮竹隊長は僕の隣に腰を降ろしてから再度口を開いた。

 

「血相を変えて隊舎裏の修行場を開けてくれ、と言われた時は何事かと思ったが、無事完成できたようでよかったよ。君達には礼を言わないといけないな。朽木が世話になった。ありがとう」

「いえ、僕も役に立ててよかったです」

「俺はそもそも卯月に投げただけでなんもしてないっすけどね……」

 

 修兵がそんな自虐をしていると、試し撃ちを終えた二人が帰ってきた。

 

「ありがとうございました。蓮沼君、檜佐木君!」

「ありがとうございました。卯月殿、檜佐木副隊長」

 

 この一週間で変化したのは井上さんの能力だけではなく、朽木さんからの呼び名にも変化はあった。井上さんの場合は本人がフランクだからなのか、最初から敬語なしの蓮沼君呼びだったけど(日番谷隊長も冬獅郎君呼びらしいし)、朽木さんはそうじゃなかったので、この一週間である程度の信頼関係が築けたということなんだろう。

 

「ほら、修兵だって感謝されてるじゃん」

 

 それが修兵が少なからず二人の役に立ったという何よりもの証拠である。

 

 しかし、そんな話は先程まで修行をしていた二人には理解の外だったので、訝しげな視線を僕に送ってきた。

 

「いや、こっちの話。こちらこそ役に立ててよかったよ。戦いに参加できるかどうかは分からないけど、頑張ってね」

「はい!」

 

 一応今日の時点で僕の指導は終わりということになっている。当初僕が井上さんに与えていた課題は彼女がそれを大きく上回る形でクリアしてくれたし、ここから先の指針もある程度きまっているので、もう僕が教えられるようなことはなにもないのだ。

 

 ――短かった井上さんの尸魂界での修行も今日で終わる。

 

 僕の周辺を飛んでいる地獄蝶からの通信を聞きながら、そんなことを考えた。

 

 ――三度目の破面の襲来だ。

 

「朽木! 今すぐ穿界門に向かえ!!」

「はい!」

 

 浮竹隊長の指示に従って、朽木さんは穿界門へと向かった。

 

「待って朽木さん、私も!!」

「お前は駄目だ井上」

 

 それに自分もついて行こうと制止の声を上げた井上さんだったけど、その申し出が叶うことはなかった。

 

 その理由は井上さんが人間で、地獄蝶を持ってないからである。地獄蝶を持たないものは穿界門を通るとき、自動的に断界へと送られるのだが、断界は井上さんのような人間が何も対策なしに通るにはとても危険な場所なのだ。

 

「今、断界を安全に通ることができるように界壁固定処置の指示を出しておいた。半刻ほどかかるが、君はそれから現世に向かいなさい」

 

 断界には侵入した虚などを通さないために、半液体状の物質である拘流というものが流れている。それに飲み込まれたが最後、例え死神であっても為す術なく息絶えてしまうのだ。

 そして、そうならないために一時的に拘流を止めてしまう処置のことを界壁固定処置というのだ。

 

「気は急くだろうが、こういう時こそ焦らないことが大事だよ。いいね?」

「……はい」

 

 浮竹隊長の言葉に井上さんは俯きながら答えた。無理もない。今こうしている時も現世では破面が暴れているのだから。

 

「そんな顔するな井上。先に行って待っているぞ」

「っ、うん!」

 

 朽木さんのその言葉に井上さんは強く頷く。

 

 その返事を聞いた朽木さんは満足そうな顔を浮かべた後、足早に穿界門へと向かって行った。

 

 

***

 

 

「井上織姫様、蓮沼三席、断界界壁固定終了いたしました。お通り下さい!!」

「ご苦労様です」

「ありがとうございます! 行ってきます!」

 

 界壁固定処置をしてくれた鬼道衆の人たちにお礼を言ってから僕と井上さん、それに一般隊士の二人を加えた合計四人で断界へと足を踏み入れた。

 朽木さんを見送ったあの後、既に仕事を終わらせていた僕は彼女を現世まで送ることにしたのだ。

 

 破面篇に突入してから色々考えたんだけど、井上さんが攫われる可能性が一番高いのは恐らく断界の中だ。何故そう考えたのかと言えば、現世や尸魂界に比べて断界は、左右に拘流の壁がそびえ立っているという構造上、大人数が同時に入ることが難しく、人を攫うのにはもってこいの状況ができてしまうのだ。

 

 そう思って井上さんの護衛を申し出たんだけど、正直僕が彼女を無事現世に送り届けることができるのかは微妙なところだ。というのも、原作で井上さんを攫ったウルキオラは破面の中でも特に戦闘能力に秀でた十人が選ばれる十刃(エスパーダ)で諸説はあるのだが、最強と呼び声高いキャラクターなのだ。

 その実力は並みの隊長格を越える実力を持つ、虚化した黒崎一護君を圧倒する程だと前世の友人は言っていた。一応僕にも対抗策はあるけど、最悪の場合僕が殿(しんがり)を務めることも考慮しておかないといけない。

 

 そう思って気合を入れなおした時、今までに感じたことのない霊圧を感じた。

 

「ふむ。護衛は三人ですか」

「っ!?」

 

 声が聞こえたのは背後。僕たちは一斉にそちらに視線を向けた。

 すると、そこには黒い裂け目ができた空間があり、裂け目は独特な音を鳴らしながら上下に広がる。

 

 ――黒腔だ。

 

「どうやら護廷十三隊は驕りが過ぎるようです」

 

 中から白装束を着た一人の黒人が現れる。その霊圧は黒崎一護君に酷似しており、名乗られても居ないけど、今目の前に居る男が破面だということが分かった。

 

「――だから人一人も満足に守れないのです」

 

 その男はまだ勝負も始まっていないのにも関わらず、あたかも自分が勝者であるかのように堂々と言い張った。

 

「そっちこそ僕達のことを見誤ってるんじゃない? 後で恥掻いても知らないよ」

 

 僕もそれに対抗するように、先頭に立って言葉を返した。

 

 




 

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。