転生した先が死後の世界で矛盾している件   作:あさうち

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 今回からやっと原作に入りますが、中盤主人公のモノローグが長く続くので少しクドいかもです。




尸魂界篇
第十三話


 護廷十三隊一番隊。護廷十三隊総隊長である山本元柳斎重國(やまもとげんりゅうさいしげくに)が率いる隊であり、その影響で護廷十三隊各隊隊長によって行われる隊首会も概ね一番隊隊舎で行われる。

 そして、今日も一人の隊長が隊首会議室の門の前で立ち尽くしていた。

 

 

 彼の名前は市丸ギン。銀髪に糸目で蛇やキツネに比喩されることもある彼は三番隊の隊長である。

 

「……来たか。さあ! 今回の行動についての弁明を貰おうか! 三番隊隊長、市丸ギン」

 

 霊圧を感知したのだろう。元柳斎が話すのに合わせて隊首室の扉が開かれた。

 

「何ですの? いきなり呼び出されたと思うたらこない大袈裟な……。尸魂界を取り仕切る隊長さん方がボクなんかのためにそろいもそろってまぁ……でもないか。十三番隊隊長がいらっしゃいませんなぁ。どないかされはったんですか?」

 

 開口一番緊張感の欠片もない京都弁で質問したのは今回隊首会を開くことになった原因を作った人物である市丸だ。

 

「彼は病欠だよ」

 

 そう答えた盲目でドレッドヘアーの男は九番隊隊長である東仙要(とうせんかなめ)だ。

 そして彼らが指した病欠の隊長とは十三番隊隊長である浮竹十四郎(うきたけじゅうしろう)のことである。彼は隊長の中でも古株であり、その実力もさることながら人望も厚いのだが、如何せん昔から身体が弱く、こうして欠席をすることも多かった。

 

「またですか。そらお大事に」

「ふざけんなよ。そんな話でここに呼ばれたと思ってんのか?」

 

 棒読みに近いイントネーションで相槌を打った市丸を問いただしたのは、顔には眼帯をつけ、髪には幾つもの鈴をつけている男。十一番隊隊長の更木剣八(ざらきけんぱち)だ。護廷十三隊で一番の戦闘部隊である十一番隊の長である彼は気性が荒く、それは着崩されたボロボロの死覇装などが如実に物語っていた。

 

 なおも剣八は話し続ける。

 

「しかも殺し損ねたってのはどういう訳だ? てめぇ程の奴が旅禍の四、五人殺せねぇ訳ねぇだろう?」

 

 そう、そこである。先ほど元柳斎も言っていたが、今回の市丸の行動にはいくつかの問題があった。

 それは侵入してきた旅禍に偶然居合わせて指示も仰がずに迎撃したことと、その旅禍を取り逃がしたことだ。前者はまだいい。緊急時では連絡する暇もなく個人の判断によって戦わねばならないことなどザラにあるからだ。

 問題は後者である。本来なら市丸はその場で旅禍全員を殺す、あるいは捕えなければいけなかったのだ。それが護廷十三隊隊長としてのあるべき姿だった。

 

 だが、市丸は取り逃がした。故に今回の隊首会が開かれたのである。

 

「あら? 死んでへんかったんねや、アレ?」

「何!?」

「いやぁ、てっきり死んだおもうたんけどなぁ。ボクの勘も鈍ったんかな?」

 

 反省する素振りもなく、あっけらんと言う市丸に剣八は驚きあきれるが、そこに「……クク」という不気味な笑い声が聞こえてくる。

 

「猿芝居は止めたまえヨ。我々隊長クラスが相手の魄動が消えたかどうか察知できないわけないだろ。それともそれができないほど君は油断していたとでも言うのかネ?」

 

 そう特徴的な語尾で問いただしたのは十二番隊隊長の(くろつち)マユリだ。アルファベットのCのような形をした帽子をかぶり、顔は黒と白の独創的なメイクで彩り、両耳と顎にはなにやら円筒状の物体が取り付けられている。

 そんな不気味な出で立ちをした彼は技術開発局という護廷十三隊唯一の研究施設の局長もつとめており、所謂マッドサイエンティストだ。

 

「いややなぁ。まるでボクがわざと逃がしたみたいな言い方やんか」

「そう言っているんだヨ」

「うるせぇぞ涅! 今は俺がコイツと喋ってんだ! すっこんでろ! 俺に斬られてぇなら話は別だがな!」

「ぺいっ!! やめんかいみっともない! 更木も涅も下がらっしゃい!!」

「「っ!?」」

 

 惚ける市丸に気を害したマユリや利己的な物言いの剣八に周りの隊長が呆れていたところを元柳斎が一喝した。

 

 静まったのを確認して総隊長は本題に入る。

 

「……じゃがまあ、今のでお主がここへ呼ばれた理由は概ね伝わったかの? 今回のお主の命令なしの単独行動。そして標的を取り逃がすという隊長としてあるまじき失態! それについてお主からの説明を貰おうと思っての。そのための隊首会じゃ。――どうじゃい。何ぞ弁明でもあるかの? 市丸や」

 

 瞬間、室内の空気が変わった。もしこの場に一般隊士が紛れ込んでいたら、圧迫感に押しつぶされていただろう。霊圧はさほど放出していない。しかし、それだけの凄みが彼にはあった。

 

「ありません」

「……何じゃと?」

「弁明なんてありませんよ。ボクの凡ミス。言い訳のしようもないですわ」

 

 だが、それでも市丸が態度を改めることはなかった。

 

「さあ、どんな罰でも――」

「――ちょっと待て市丸」

 

 そして大したことでもないように罰を受けようとする市丸に藍染が何かを言おうとしたのだが、その言葉が紡がれることはなかった。

 

『ガンガンガンガン!!』

 

 幾つもの警鐘の音が瀞霊廷中に響き渡ったからだ。

 

『緊急警報! 緊急警報! 瀞霊廷内に侵入者あり! 各隊守護配置について下さい!!』

 

「何だと!? 侵入者……!?」

「まさか、例の旅禍か?」

 

『繰り返します! 緊急警報! 瀞霊廷に侵入者あり! 各隊守護配置について下さい!!』

 

「やはり、旅禍か……!?」

「おい待て剣八!!」

 

 動揺を隠せない他隊長をよそに更木が制止も聞かずに隊首室から退出した。

 

「……致し方ないの。隊首会はひとまず解散じゃ! 市丸の処置については追って通達する。各隊即時、廷内守護配置についてくれい!」

 

 しかし、状況が状況であり、己の戦闘意欲を満たすためとは言え、便宜上は旅禍を捕えるためにいち早く外に出た更木を一概にも悪と断じることはできず、総隊長は解散を告げた。

 

 その瞬間、各隊の隊長は一糸乱れぬ動きで退出していく。――ただ三人を除いて。

 

 藍染は市丸の隣で立ち止まって口を開いた。

 

「随分と都合よく警鐘が鳴るものだな」

「……ようわかりませんな。言わはってる意味が」

「それで通ると思っているのか? 僕をあまり甘く見ないことだ」

 

 そういい捨てて藍染は退出した。

 

 そして最後の一人、冬獅郎は偶然にも二人のこの僅かな会話に耳を傾けていた。だがこの時、彼は知らなかった。 

 

 

 ――これが彼らの演技であり、彼らの次なる行動の布石であるということを……。

 

 

***

 

 

「……どうしてこうなった!?」

 

 黒崎一護君一行が瀞霊廷に侵入してから一夜が明けたお昼時、僕は現在の状況に嘆息していた。

 

 彼らは快進撃を続けており、その証拠に侵入から一日が経ったのにも関わらず、旅禍は八番隊隊長である京楽春水(きょうらくしゅんすい)隊長が対峙した一人しか捕らえられていない。

 それに引き換え、僕たち護廷十三隊側の被害はかなりのものとなっていた。現在報告されているだけでも十一番隊の斑目一角(まだらめいっかく)三席と綾瀬川弓親(あやせがわゆみちか)五席、七番隊の一貫坂慈楼坊(いっかんざかじろうぼう)四席、八番隊の円乗寺辰房(えんじょうじたつふさ)三席そして恋次も打倒されている。一般隊士に至っては数えきれないほどだ。

 

 だけどそんなことは僅かとは言え原作を知っている僕からしたら想定の範囲内だ。寧ろ予想していたよりも被害が少なくて拍子抜けしているくらいだ。僕が嘆きたいのはそこじゃない。

 

 今日の朝、藍染隊長が何者かに暗殺されたということが知らされた。その際に何やら余計なことを口走った市丸隊長に怒った桃とイヅルが対峙。幸いすんでのところで桃が気持ちを落ち着けたので大事にはならなかったみたいだけど、頭を冷やせという日番谷隊長の指示により二人は牢に入れられた。ついでに言えば旅禍に単独で対峙して敗れた恋次も朽木隊長の命により牢に入れられた。

 

 ――そして僕は後輩である三人の事情聴取と藍染隊長を殺害した犯人の捜索への協力が言い渡された。勿論、朽木ルキアさんの件に加えてだ。

 

 ハード過ぎるだろ!! ……ここはブラック企業か何かかな?

 

 とは言え、僕にこのことを命令する際、砕蜂隊長も流石に不憫に思ったのか、救済措置として楠木さんと仕事を分担することを許してくれた。

 

 なので僕は今、楠木さんにひとまず朽木さんの件を任せて桃の居る五番隊隊舎に向かっている最中だ。なぜこちらを先にしたのかと言えば、その理由は今僕の手に握られている一枚の手紙にある。

 先ほど日番谷隊長と松本副隊長から預かったこの手紙は藍染隊長から桃宛に遺されたものだ。本来なら証拠品として提出するべきものなんだけど、十年前ぐらいから友好を築いていた甲斐あってか、事情聴取のついでに桃に渡すという約束で一時的に預かることに成功したのだ。

 

 だけど、この手紙を桃に渡すつもりは今のところ毛頭ない。僕を信頼して渡してくれた二人には悪いけど、藍染隊長のことだ。碌でもないことを書いている可能性が高い。

 とは言え、今まで尊敬していた隊長を失った桃の心の傷は大きいだろう。なので、桃に渡すかは内容を見てから決めようと思う。

 

 そうなれば善は急げだ。僕は周りに誰もいないのを確認して藍染隊長の遺書を広げた。

 

「これはっ!!」

 

 案の定、そこには根も葉もない大嘘が書かれていた。

 

 内容はこうだ。

 

『雛森君、きみがこの手紙を読んでいるのなら僕はきっと帰ることができなかったのだろうね。きみには色々と心配をかけたね。そのことはどんなに労いの言葉を重ねても足りることはないと思っているよ。

 今まで僕はきみに僕の感じる不安について語ったことはなかった。だけどきみを巻き込みたくなかったからだということをわかってほしい。そしてどうか許してほしい。ここまで君を巻き込んでしまう僕のことを。

 僕は恐らく既に生きてはいないだろう。だから僕の暴いた真実のすべてをここに記す。

 なぜ朽木ルキアは処刑されなければならないのか。なぜその期日は早まり続けるのか。それを調べるうち僕はひとつの事実にたどり着いた。この処刑の真の目的は朽木ルキアを殺すことではない。この処刑はそれ自体があるものを奪うために仕組まれたものだったのだ。

 

 そのあるものとは――双極だ。

 

 処刑の時のみその封印を解かれる双極は矛の方には斬魄刀百万本に値する破壊能力が、磔架(たっか)の方には同等の斬魄刀を防ぎきる防御能力が備わっているとされ、更には処刑により死神の体をはりつけ、貫くことによってその力は瞬間的にその数十倍まで膨れ上がるとされている。

 この処刑を仕組んだ何者かはその力を使い、瀞霊廷のみならず、尸魂界そのものを破滅させようと企んでいるのだ。

 

 その忌まわしき者の名は――日番谷冬獅郎。

 

 今夜僕は東大聖壁の前に彼を呼び出しておいた。彼の企みを何としても阻まなければならない。彼が退かぬのなら刃も交える覚悟だ。だけどもし、僕が死んだのなら雛森くん、どうか僕の遺志を継ぎ、彼を討ってはくれないか? それが僕の最後の願いだ。五番隊隊長としてではなく、一人の男として君に願う』

 

 よくもまあ抜け抜けとこんな大嘘書けたもんだ。僕が原作を知っているというのもあるけれど、例え僕が原作を知らなくても疑問を持つ程のガバガバ理論だ。

 

 まず、普段の仮面を被っている藍染隊長なら絶対に桃に日番谷隊長と対峙させない。

 

 次に日番谷隊長が尸魂界を破壊するメリットについて書かれていないので、説得力に欠ける。この世界は尸魂界と現世と虚圏、この三つの均衡によって成り立っている。この内どれか一つでも壊してしまうと、この世界全てが破壊されてしまうのだ。当然、その中で日番谷隊長は生きていけないので、そもそもそんなことをする意味がないというわけである。

 

 そしてこれは手紙の内容とは関係ないけど、この手紙は日番谷隊長から預かったものだ。もし犯人が日番谷隊長ならこの手紙をわざわざ桃に渡すようなことはしないだろう。少なくとも、僕が犯人ならこの手紙は見なかったことにして燃やすね。

 

 正直、こんなおおぼら誰が信じるんだ? こんなの信じるの何て相当の馬鹿か藍染隊長狂信者ぐらいである。確かに原作の桃は信じちゃって悲惨な目に遭ったらしいけど、今の桃は狂信というまでは藍染隊長のことを想ってないし、大丈夫だと思う。

 

 とは言え、この手紙を桃に見せたところで間違いなく悪影響にしかならないので、この手紙はこのまま僕が預かっておこう。

 

 でも、この手紙を見たことで得たものはあった。――それは藍染隊長の居場所についてだ。 

 

 藍染隊長の言う通り、現在朽木さんの処刑日時は徐々に早まり続けている。本来なら死神の力の譲渡で死刑になることが稀であるのにも関わらずだ。加えて朽木さんには人間を守るためという大義名分があった。これについて僕も頑張って中央四十六室に情状酌量の余地があると申請したんだけど、曰く四大貴族としての責任があるとかで、それが通ることはなかった。

 そしてこれが僕の持つある原作知識につながった。

 

 このBLEACHの第二章におけるタイミングで藍染隊長が謀反を起こす理由は朽木さんの体の中に封印されたとある物質に起因する。名前は忘れたけどその物質は身近にいる人の願いをある程度までなら叶えてしまうとかいうまるでドラゴンボールのようなトンデモ物質で、その危険性を考慮した開発者でもある浦原喜助さんが封印してしまおうと思える程のだ。

 しかし、そのトンデモ物質に藍染隊長は目を付けた。そして、そのトンデモ物質は現在朽木さんに封印されている。故に藍染隊長は朽木さんを殺すことによってそのトンデモ物質を手に入れようとしているのだ。

 

 前世の友達は非常にBLEACH好きで、僕に布教をしようとBLEACHの話をするときも非常に詳しく話してくれたんだけど、如何せんBLEACHには専門用語が多くて詳しい話は殆ど馬耳東風で大まかなことしか覚えていなかった。だから僕はてっきり藍染隊長がなんらかの形で直接朽木さんを殺そうとしているというにわか知識に囚われていたんだ。

 

 だけど、それは違ったのかもしれない。

 早まり続ける朽木さんの処刑日時、そして朽木さんを殺したい藍染隊長。なんか繋がらないだろうか?

 

 もし朽木さんを殺したい藍染隊長が姿を操るために己が殺されたと偽り、何らかの形で中央四十六室を操り、処刑日時を早めたとしたら、辻褄が合わないだろうか? 他の人だったら無理がある。だけど、解放の瞬間を見せるだけで相手の五感を操る能力を有する斬魄刀である鏡花水月を持つ藍染隊長ならならこれらすべてが可能になる。

 

 ――つまり、現在藍染隊長は中央四十六室に身を隠している可能性が高い。

 

「ま、何にせよ仕事を終わらせてからだな」

 

 藍染隊長と対峙するにせよそれには万全の準備が必要だ。それでいたって僕が藍染隊長に戦って勝てる可能性なんて万に一つもないのだから。

 

 手紙を懐に仕舞い込んだ僕は再度五番隊隊舎への道を歩き出した。

 

 

***

 

 

「ごめん雛森君っ! 僕はやむを得なかったとはいえ、仲間に刃を向けてしまった……」

「ううん。寧ろ謝るのは私の方だよ。あの時は冷静じゃなかったし、吉良君は間違ってないよ」

 

 イヅルと桃は互いの姿を確認した途端、頭を下げあった。

 

「蓮沼さんもお忙しいのに無理を言って申し訳ありませんでした」

「ありがとうございました。卯月さん」

「いいよ別に。僕としても後輩同士の仲に亀裂が入ったままなのは嫌だったからね。まあ、何にせよ二人が仲直りできてよかったよ」

 

 どうしてこうなっているのかと言えば、あれから僕は桃とイヅルのところを訪れたんだけど、最初は二人とも一瞬とはいえ互いに刃を向けてしまったことを酷く悔いていた。それに加え桃は尊敬していた上司である藍染隊長を失ったせいか涙で目を腫らしていた。

 そんな二人を見かねた僕は互いに謝罪することを提案したんだけど、二人はそれに見事に食いついて今に至るというわけだ。

 

 とりあえずこれで一件落着かな。二人とも一つは肩の荷を下ろせたようでよかったよ。

 

「じゃあ、僕はこれからイヅルを三番隊に送った後、恋次のところに行ってくるから。二人ともさっきと比べてだいぶ顔つきがマシになったし、明日には出してもらえるように日番谷隊長に掛け合ってみるよ」

 

 事情聴取は先ほど二人を引き合わせる前に十分やっておいたし、今日は早く家に帰って藍染隊長と対峙する準備を進めておかないといけないからね。

 

「え? もう行っちゃうんですか?」

「……雛森君」

「あ、いえっ、すみません!」

 

 やはり藍染隊長を亡くしてしまってだいぶ心が弱っているのか、桃がふと本音を漏らした。

 

「……絶対、犯人を見つけ出すから」

「「っ!?」」

 

 僕がそう言った瞬間、二人は硬直した。

 

 あれ、なんでだろう? 安心させてあげようと思って言ったんだけど、かえって怖がらせてしまった。

 

「あっ、こんなところにいた!」

 

 そんな気まずい空気が場を包み込んでいた中、聞きなれた声が詰め所の中で響いた。

 

「あ、ほたるさん」

「……蟹沢三席」

「どうしたのほたる?」

 

 内心でかしたとほたるに感謝しながら、僕は用件が何かを聞いた。

 

「どうしたって、かれこれ一時間以上この面会に時間を使ってるけど、時間は大丈夫?」

 

 本当なら三十分ぐらいで終わらす予定だったんだけど、日番谷隊長が二人の牢にかけていた外側からの衝撃に強い結界――鏡門を張っていたので、看守の人がそれをそれを解くのに時間が掛かってしまったのだ。まあ、結局は応接室で待ちぼうけを食らっていた僕が一瞬で解いたんだけど。

 

「そろそろ切り上げようとしてたから大丈夫だよ。わざわざありがとう」

「どういたしまして」

「それじゃあ二人には、もう一度牢に戻ってもらう訳だけど、なにか言い残したことはない?」

 

 僕がそう聞くと二人共返事をするなり頷くなりして了承したので、僕は桃を牢に入れなおした後、ほたるに桃を気にかけてあげるように頼んでからイヅルを三番隊隊舎に送り返した。

 その際、一応結界を内外両方からの衝撃に耐えられるように強化しておいたけど大丈夫だよね?

 

 

***

 

 

 桃とイヅルの次は恋次だ。ということで僕は六番隊隊舎へと赴いていた。

 

 だけど、正直恋次に関しては尋問もするだけ無駄になるであろうことが察せられた。僕が六番隊隊舎に着いて彼の顔を見たとき、彼はもう下を向いていなかった。寧ろ何かを決心したような顔をしていたのだ。

 

「朽木さんを助けに行くのかい?」

「っ!?」

 

 回りくどく話しても無駄だということを悟った僕は単刀直入に訊いた。恋次はどうしてそれを、と言わんばかりに驚いた様子だけど、僕からすればそう苦労せずに気付けることだった。原作知識というものもあるけれど、思えば恋次は朽木さんが尸魂界に連行されてからというもの酷く思いつめた表情をしていた。聞けば恋次は朽木さんと流魂街の頃からの付き合いだというではないか。

 そしてそれは朽木さんの死刑が決まったり、処刑日時が早まる度により顕著に表れていた。

 

 しかし、それが今やまるで憑き物がとれたかのように晴れ晴れと、どこか吹っ切れたような表情をしていたのだ。

 

「ああ、勘違いしないでね。別に僕には恋次を止めるつもりはないよ。ここだけの話僕だって今回の処刑には疑問を持っているんだ。寧ろ応援してるよ」

「……本気ですか?」

「失礼だな。僕だって朽木さんとは僅かとはいえ、尋問だったとはいえ話した仲だからね。あまり死んでほしくはないよ」

「……卯月さんは助けないんですか?」

「僕はこれから藍染隊長を殺害した犯人を捜さないといけないんだ。だから朽木さんの救出には参加できないんだ。ごめんね」

「……いえ」

 

 とはいえこれから恋次は護廷十三隊の大半を相手にすることになる。その過酷さはこれから僕が藍染隊長を相手するのと比べても何ら遜色ないほどのものだろう。

 

 ならせめて餞別の一つでも送るのが先輩としての務めではないだろうか。

 

 そう思った僕は牢内に居る恋次に回道をかけた。

 

「これは……」

「多分これで全快するはずだよ。さっきも言った通り僕は朽木さんの救出に参加できないからね。これはせめてものお詫びだよ」

「ありがとうございます」

「じゃあね、恋次。健闘を祈っているよ」

「卯月さんこそ」

 

 互いに目を合わせ頷き合うと、僕はもう話すことはないと言わんばかりに恋次の元から去り、十番隊隊舎へと向かった。

 




 どこまで話をカットすればいいのかが分からない。書きすぎると話数が伸びてエタるのに繋がりかねないし、だからと言って省き過ぎると内容が薄まる。

 誰か丁度いい匙加減を教えてくれ!

 それとスレなどで拝見したんですが、ノベライズにて平子と修兵の卍解が御披露目されたようですね。
 確か平子が敵と味方の認識を強制的に入れ替える卍解で修兵の卍解が鎖で繋いだ相手と自分を互いの霊力が尽きるまで不死身にする能力でしたっけ?

 スレではハズレなどと言われていましたけど、僕はどちらも中々強力な卍解だと思いました。

 平子の卍解は一対多なら敵が勝手につぶし合ってくれそうです。もし、平子が破面篇に時に単独で虚圏に向かっていればそれだけで片づきそうです。

 そして修兵の卍解はできるか分かりませんが、二人以上繋ぐことができれば、修兵一人を犠牲にすることで大勢を制圧できそうですし、これもできるか分かりませんが、味方と繋げば不死身特攻ができそうです。回道で使える今作の主人公と共闘すればまず負けないですね。

 これをきっかけにまだ原作で登場していない卍解を見ていけたらいいですね。

 はい! 余談はここまで。それでは皆さん良いお年を。
 そして、来年も拙作をよろしくお願いします。

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