実家にあるものより及ばない大きさだが、高町家には道場がある。
そのため、俺が居候として来てからも、俺の修練は行われ続けている。いや、実家にいたときよりも、やっているかもしれない。というか確実にやっている。
それは俺が武術家としての自覚を持ったからとか、そんな大層な理由ではなく、ただ単に体を動かしたいだけだったりする。人の運動神経は、子供の時にどれぐらい運動したかで決まるという噂もあることだし、これを続けない理由はない。
俺個人がただテキトーに技を磨いたり、士郎さんや、その息子の恭也さん、あと高町家長女の美由希さんが組み手や模擬戦の相手をしてくれることがあったりするので、修練とはいつしか、毎日欠かさず続けている日課になっていた。
それに、たまたま読んだ漫画の技を修練中に練習している。やりたい技を見つけたらすぐ練習するので、知らぬ間に修練している時だってあったりする。そして、そういう努力はいつだって実ってきた。つまりは技が完成され、確実のものとして習得するのだ。
やりたい技を習得し、組み手や模擬戦時に実現できたときの感動や興奮は半端ない。もしかしたら、それが修練を続けている一番の理由かもしれない。
実は今も、やってみたい技があったりする。そのために俺は今日も今日とて修練するのであった。
「クー君。一体それは、なんの修練なの?」
「スタイリッシュポーズによって、俺の未だ目覚めぬスタンドを呼び起こす修練」
「……矢に射ぬかれないと無理だと思うの」
実らない修練もあったりする。
☆
朝。恭也さんと美由希さん。そして俺の三人が道場で修練をしていたのだが、なっちゃんの登場により、それを中断。
どうやら朝ごはんができたらしい。なっちゃんがここにいるってことは、つまりはそういうこと。いつも朝食が出来ると俺達を呼びに来るのである。毎朝すまんね。
「これもわたしのお仕事ですから。あっ、タオルどーぞ」
「高町家特有のいい匂い付きふかふかタオルきたー。これで勝つる」
俺はスタイリッシュポーズを解き、なっちゃんから渡されたタオルで体中の汗を拭いた。そのとき、ちょっと身震い。
春の朝はまだ肌寒い。しかも、ジョジョ立ちの体勢でいたため、今まで掻いていた汗が冷え、よけに寒さを助長させている。
それもこれも、俺を置いて、二人だけの空間をつくって修練をし始めた高町家兄妹に非があると思う。
そこんとこどうですか、末妹のなのはさん。
「にゃはは、二人は仲良しさんだから。……たまにわたしも置いてけぼりにされるし」
「俺もなっちゃんもボッチ同士か。スタンド使いはそうだけど、どうやらボッチ同士も引かれ合うらしい」
「残念でしたー。わたしにはちゃんと学校に友達がいますよーだ」
「……そういえば昨日、殴り合いで友情を掴んだって言ってたっけ」
なんでも、クラスメイトが一人の女の子をいじめていたらしく、それを止めるためになっちゃんは、そのいじめっ子を一発ぶん殴ったらしい。しかも顔を。なっちゃんが男らしすぎる件。
そして、ぶん殴られたそのいじめっ子は、いじめていた子から狙いをなっちゃんに変え、反撃。
そっから取っ組み合いの喧嘩に発展したらしいのだが、最後はそのいじめられていた女の子と、いつの間にかいた赤髪の男の子に止められて、最終的になんだかんだで友達になったのだとか。
ピッカピカの一年生になってから早数週間。俺にもそれなりに友達はできたが、拳で語り合って仲良くなった相手などいるわけがなく、初めてその話を聞いたとき、「さすが戦闘民族。友達の作り方も闘いなんだな」と呟いて、なっちゃんにバチコンと叩かれたのは仕方ないと思うんだ。
「それにしても、顔を殴ったときによく相手の頭が吹っ飛ばなかったな。普通のやつならビンタしただけで吹っ飛ぶというのに。そのいじめっ子は山のフドウみたいな大男だと予想」
「ちょっ、ちょっと! わたしはラオウなんかじゃないよ、もう!」
「……えっ!?」
「本気でびっくりしないでよ! わ、わたしは普通の女の子だよ」
はっはっは、ご冗談を。
「実は昨日、寝てるときに見ちゃったんだ。なっちゃんから覇王的な覇気がシュワシュワ出てたのを」
「それ夢なの! クー君、自分で寝てるときって言ってるもん!」
「俺はなっちゃんの将来を写した予知夢だと予想」
「大丈夫。現在のわたしが全力をもって、そんな未来を回避してやるの」
頑張ってください。ムキムキのツインテール少女なんて子供のトラウマになる以外の何者でもないんで。
想像しただけでも、テラ恐ろしす。
「ところで話は変わるんだけど、なっちゃんって修練しないの?」
「わたしに修練させてラオウにならせようなんて、そうはいかないの」
いや、だから話が変わるんだって。
「恭也さんや美由紀さんは御神なんちゃら流の剣術使いだから、なっちゃんはそうじゃないのかなーって疑問」
「昔、木刀の重さの所為で転んだのはいい思い出なの」
なっちゃん、不憫な子!
「わたしはお兄ちゃんやお姉ちゃんみたいに運動が得意じゃないんだよ。人には向き不向きがあるってことなの」
苦笑いでそう語るのは高町なのは(六歳)。
小学生になったばっかなのに、なっちゃんは悟り開いちゃってるようです。なら、いっそのこと、カミソリでばっさりいけばいいのに。
思うだけで口にはださない。だって、最近のなっちゃんの一撃は出会いの当初より徐々に重くなってきたから。
あれ? やっぱり闘いの才能あるんじゃね?
「まぁ、いっか。……あれ? 恭也さん達は?」
「何を自己完結したのかわかんないけど、お兄ちゃん達はとっくにお家に向かったの。私達もそろそろ行こ? 朝ごはんが冷めちゃうよ」
「んー、了解」
冷めたご飯なんて美味しいはずもないので、ここはなっちゃんの提案に了承。
いつの間にかいなくなっていた高町兄妹を追うように俺となっちゃんは道場をあとにするのだった。
最近時間が空いたらポケモンをやるか、小説を書くかの二択。
今日は厳選に飽きてからの、執筆でした。
5Vココドラちゃんが中々生まれない件。