魔法? んなもんねーよ   作:社畜系ホタテ

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第一話

オギャーと言うのに疲れていた俺にとっては喋れるというこの現状に少なからず感動している。

 

つーか、なんで赤ん坊から転生なんだよ。これもテンプレですね、わかります。何を言ってもオギャーに変換される赤ん坊クオリティはすごいと思う。

 

だってウソダドンドコドーンって言ったつもりでもオギャーである。まぁ赤ん坊だからしゃあなしだろう。今の舌足らずだがなんとか喋れる俺にとって、赤ん坊翻訳機やほんやくこんにゃくが出来る時代が待ち遠しいかった過去の俺とはおさらばなのである。

 

転生して3年が経った現在、優しそうで美人である俺の理想のお嫁さん像のママンと、数分ごとに俺の様子を見に来る俺にデレッデレの筋肉隆々のじじ様。そして、その他の胴着を着たごっつい方々に囲まれてすごしている俺はすくすくと元気に成長しています。

 

決して現実逃避なんかしていない。じじ様が、素手で地面割ってちょっとした地震を起こしたり、ドラゴンボール的ななんかの波を撃っていたりしていたけれど、現実逃避なんてしてないったらしてない。

 

どうやら家の中では、これが普通のことだったらしく、赤ん坊だった当時、誰も何の疑問の声を上げないもんだから、さすがに痺れを切らした俺が「オギャー(お前ら突っ込めよ)!」といったのはいい思い出。

 

ママンも、じじ様が「修練じゃー!」 と言っては始めた修練中の、胴着の方々が次々と吹っ飛ばされていく様を見て、「あらあらお爺ちゃんたら元気でちゅねー」の一言で済ませていた。つーか、リアル三国無双とか初めて見たわ。じじ様こそ真の三国無双だー。

 

実はなんたら流という日本どころか世界でも有名な流派である家の道場。そして、全ての武の頂点に君臨しているのがお家のじじ様なのだとか。ごっつい方々はお弟子さんだったんですね。

 

そのことを知ってから俺はもう深く考えるのはやめた。地球だって滅亡してしまいそうなのだ。そういう世界なんだろう。どういう世界だコラ。

 

セルフ突っ込みはこの辺で現状を話そう。俺は今、家のお庭でじじ様にドラゴンボール的波を習っています。だってかっこいいじゃん。波だよ波。男のロマンですたい。

 

じじ様曰く、体の中にある気を掌に集め、凝縮し、それを前に打ち出すのだそうだ。

 

「つーか、気って何ぞ?」

「気とはいわゆる生命エネルギー。すべての物質の根源であり最も基本的な構成単位であり自然界に充満しているエネルギーのことじゃ」

「なるほどわからん」

「」

 

じじ様は理論型というより本能型だと推測。長嶋さんみたいに本能型の説明じゃわからん。

 

まぁ、いっか。適当にやろう。

 

俺は目を瞑る。イメージするのは強い奴と戦うことにワックワクしている某野菜人。パクリはよくないからあの格好ではなく自然体から拳を少し引き、深呼吸。おらに元気を分けてくれー。

 

 

「な、なんじゃ!? 気が集まってきておるじゃと!?」

 

 

そりゃあ元気分けてもらっているからね。なんか体が暖かくなってきた。

 

これが気ってやつですかい? 体が少し振動した。

 

俺の思考で返事をするとか気さんマジパネェ。ひょっとこさん並にパネェっす。

 

じじ様がいうにはこれを掌、いや、今回は拳か。拳に集めてブッパ、ということなんで脳内で拳にいけーって念じる。すると拳だけが暖かくなった。おー、なんて従順な子達なんざんしょ、気ってやつは。

 

時は来た。準備オッケーと気達に確認して了承を得た俺は狙いを丁度自分達の直線状にある数あるうちの木の一本につける。そして、カッと目を見開くと共に引いていた拳を勢い良く突き出した。

 

 

 

「師範やっと見つけました! 由美子さんが探して……え?」

「あ」「あ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピチューン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう空閃ったらそんな物騒な攻撃を人に向けて撃っちゃいけません!」

「ひっぐ…ご、ごめんなさい……」

「ほ、ほら由美子や。空閃も泣いていることだし反省しておるからそこらへんで」

「お父さんは黙ってて! お弟子さんが生きてるからいいけど、下手したら大惨事だったのよ!」

「……はい」

 

 

本多 空閃(ほんだ くうせん)。元気な三歳児です。


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