魔法? んなもんねーよ   作:社畜系ホタテ

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第十三話

最近修練でなんとなくやっていた感謝の正拳突きをラッシュ、つまりは瞬間広範囲ブッパで黒服全員を一瞬でヤムチャ化させ、完全に無力化した後、俺はさっさと家に帰ろうと一階へ行くための階段を目指そうとした。

 

だけど、黒服達をこのままほっとくのは不味いと、呆気にとられた顔から正気に戻ったらしい東条君に引き止められた。

 

どうやら黒服たちの報復を懸念していたので、なら士郎さんにこいつら引き渡せば全部解決じゃね? という案により、なっちゃんから士郎さんに連絡を取ってもらい、それからひたすら待機することに。

 

黒服が意識を取り戻したらブッパを繰り返しながら数十分は待っていた。

 

で、ようやく士郎さん達が到着したんだ。

 

そして、そう、ここから問題が勃発。

 

「さて、空閃。なにか言う事はないか?」

「小学生一年のショタっ子に強制正座させるとは恭也さんは変な性癖があるとみた」

「反省してないみたいだな。なのは、石板を乗せろ」

「了解なの!」

 

思った以上にシスコンだった恭也さん。黒服達が入ってきた部屋から、士郎さんと恭也さんが物凄い形相で入ってくるなり、なっちゃんの無事を確認。その後、恭也さんがなっちゃんを危ない目に会わせただなんだと、因縁をつけてくる始末。で、なんだかんだで罰として俺正座。

 

士郎さんはなっちゃんに何もないってわかってから終始苦笑いだったけど、もし、傷を一つつけてしまったら、これ以上の罰が士郎さんから執行されるんだなと予感めいたものが俺の脳裏に過ぎった。

 

それにしてもなっちゃん。了解なのじゃないでしょ。何いい笑顔浮かべて俺の足の上に石板乗せてんの。つーか、その石板どっから出した。

 

ダメージはないけど、足の痺れを助長してるんだよこれ。多分俺の体質を理解しているからこその罰なんだろうけど。発案者出て来い!

 

「ねぇ、これ本当にこの子がやったの?」

 

そんな中、紫髪の高校生ぐらいの女性が疑問の声を上げた。士郎さんが連れてきた新キャラである。というか、なっちゃんの友達にちょっと似てないこともない。多分姉妹か何かだろう。

 

「見るからにそうだろうな。空閃の気がこの部屋に充満している」

「……夜の一族を……こんな子供が」

「夜の一族とか……ぷぷっ、中二乙」

「なのはちゃん、私からも石板の追加、お願いできるかしら?」

「任せて忍さん!」

「石板を早食い対決時の椀子そばを配る人の如く足に乗せてくるなっちゃんマジパネェッす」

 

というか、そろそろ真面目に足の感覚が消えてきたので勘弁してください。

 

 

 

 

 

俺への制裁が数分続いた後、ようやく話の本題である黒服達をどうするかの話し合いになった。

 

「夜の一族である一人を除いては一般の警察に引き渡すわ」

 

紫髪の女性、月村忍さんの一言で話し合いが終了。

 

あれ、話し合いってなんだっけ?

 

どうやら、突入際に、無限パンチで一階辺りでヤムチャ化していた黒服は、夜の一族という中二集団の下っ端的な存在だったらしく、自分のことを吸血気と勘違いしているほどの重度の妄想癖があるため普通の警察では手に負えられないとのこと。

 

ということなので、中二病である彼だけはそういった奴らだけを取り締まる特殊な機関に送られるとか。

 

「俺だ。どうやらとんでもない事に巻き込まれてしまったらしい。あぁ、そうだ、機関の連中だ。もし俺がやつらに葬られてしまったら高町家の冷蔵庫にあるプリンを俺の代わりに墓へと埋葬してくれ。……あぁ、お前もな。幸運を祈る。エル・プサイ・コングゥ」

「忍さん、クー君も特殊な機関に連行した方がいいと思うの」

「……なのはちゃん、彼は一体何をやっているのかな?」

「中二病ごっこ」

「……こいつはまだ勘違いをしているのか」

 

呆れた目で俺を見てくる恭也さんとその他一行。

 

なっちゃんは俺と同じで状況を良く理解していないのか、どういうこと? という視線を父である士郎さんに送っている。

 

「中二病……というのはなんのことか分からないが、いいかいなのは。月村家の人々は」

「士郎さん、……それは、私からなのはちゃんに伝えます」

 

と、士郎さんの話を遮ってまで出てきたのが、紫幼女。何かに怯えたようになっちゃんの前に立ち、口を開けては閉じ、それを何回か繰り返して、そして、ようやく決心したのかその口を開くのだった。

 

「なのはちゃん。私ね、化け物なんだ」

「確かに、すずかちゃんは運動音痴のわたしからしたら化け物なの。この前のドッジボールはニュータイプみたいに」

「違う! そうじゃないの! 見ててなのはちゃん」

「ッ!? すずかちゃん、何やってんの!?」

 

どこから拾ったのかわからないが、ナイフを自分の腕に軽く押し当てスーッと引いた。それによって引かれた部分から血が流れ出していった。

 

驚いたなっちゃんがすぐさま、紫幼女の下に駆け寄りポケットから自分のハンカチを取り出し、応急処置をしようとするのだが。

 

「……えっ? 傷が治って」

「……なのはちゃん。私達、夜の一族はね、本物の吸血鬼なんだ」

 

そう悲しげに呟く、紫幼女。

 

切られたと思われた部分は完全に傷が塞がっていた。何という治癒力。これは普通の人間では起きない事象である。それだけで、彼女が言っていた吸血鬼という信憑性が上がっていった。

 

つまり、えっ、……マジですか?

 

「えっと、……すずかちゃんや忍さんは本物の吸血鬼なの?」

「……うん。今まで黙っててごめんね。嫌だよね、友達が化け物なんて。気持ち悪いよね、吸血鬼なんて」

「何言ってんの! すごいことだよすずかちゃん!」

「……えっ?」

 

唖然としている紫幼女の両肩を手で掴んで興奮した面持ちのなっちゃんは言葉を続けた。

 

「吸血鬼ってことはあれなんだよね! ザ・ワールドとかゴールドエクスペリエンスの能力を使えるって事だよね!?」

「……ちょっと何言ってるのかわからないよ、なのはちゃん」

「まぁ、興奮する気持ちもわからんこともないが落ち着けなっちゃん。あの能力はジョースター家の血筋から受け継がれているんだ。決して吸血鬼からではない。だから、俺はアーカードさんみたいなチートの塊だと予想」

「なるほど、それは盲点なの! すずかちゃんは身体能力がすごいんだね!」

「……確かに、普通の人間より身体能力が高いかな。……こんな化け物が友達なのはやっぱりなのはちゃんは嫌だよね?」

 

その言葉にきょとんとするなっちゃん。そして、満面の笑みで。

 

「ううん。わたしはすずかちゃんみたいな凄い友達がいて嬉しいよ。それに、私の身近にも化け物がいるの」

「だってさ。士郎さん」

「ははは、空閃君。銃弾を避ける俺と傷一つ付かずに受け止める君。どっちが化け物だい?」

「なんという正論。だが、我らがラオウであるなっちゃんは銃弾をその覇気でジュッと」

 

バチーン! ドゴーン!

 

人間を叩いて壁に減り込ませる技をなっちゃんはここ数時間で身に付けたらしい。自分の行動が俺のなっちゃんラオウ説に拍車をかけていることに気づいてないのだろう。彼女は自分でどんどん首をしめている気がする。

 

「だから、すずかちゃんは人間であれ吸血鬼であれ、それこそクー君以上の化け物であってもわたしの友達なの。それは今までも、そしてこれからも変わらないことだよ」

「……なのはちゃん」

 

なっちゃんの言葉に、声音が震えている紫幼女。すすり泣いている声が微かに聞こえた。それに「私のことも仲間外れにしないでよね」とツンデレが似合いそうな声が重なって、この廃墟なのに暖かい空気が蔓延していた。

 

なんだか友達っていいねと思わせる。今のこの空気を「なのは、こんなにも成長して」と涙ぐんでいる士郎さんが台無しにしているが。

 

というか、そろそろ誰か、俺を壁から引き抜いてください。

 




なんか知らないけど一日ぶりにサイトを開いたらお気に入りが圧倒的に増えていた。なにが起こったし。

私は新手のスタンド攻撃を受けているんだと予想してるんだがどうだろうか?

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