魔法? んなもんねーよ   作:社畜系ホタテ

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第十二話

目の前にはデカイ穴が奥底まで広がっていた。無限パンチをいつものように撃ったのだが、久々の晴れで元気いっぱいである気の皆さんがはしゃいだ結果、予想以上の威力を発揮した。

 

だけど一階で止まってるんじゃないかと思う。この技ってけっこうなご都合主義な感じがあるし。

 

まだ自分でもよく分かっていない気の設定は一先ず置いておいて、俺は再びなっちゃんを背負い、自分でブチ開けた穴の前に立った。

 

「じゃあ、探索といきますか」

「……一番下でヤムチャ化している黒服にはスルーなんだね」

 

黒服は犠牲になったのだ。

 

ここから二階ぐらい下に、神秘的な力を感じたので、そこから屋上までは何も感じないってこともあり、一応その階へ向かおうとなっちゃんに提案し、俺は穴へと飛び降りた。

 

重力に沿って落ちていき、お目当の階に差し掛かったときに、空気の面を蹴って方向転換。すたっと、綺麗に着地したその階には、紫、金、そして赤といったカラフルな髪型集団がいた。

 

誰もが皆、驚きの表情を見せ、だけど、いち早く正気に戻った赤髪のショタっ子が真剣な顔つきで一本の剣を俺に向けてきた。

 

「……お前は誰だ?」

「オッス、おら孫ゴックン。七個集めるとなんでも願いを叶えるちょっと湿っている玉、通称デロデロボールを探して旅してるんだ」

「そんな玉が実在していても直に触りたくないの」

「な、なのは!? どうしてここに!?」

「なのは? こいつはおらの相棒のナッ」

 

ばっこーん!

 

「最近なっちゃんの一撃に少なからずの痛みを感じてきたんですが?」

「愛の一撃なの」

 

なるほど、ゴム人間にも覇気無しの打撃でたんこぶをつくっちゃうっていう、あの愛の一撃ですか。なら、ダメージ無効の俺にも効くね。なっとくです。

 

「そんなことより、アリサちゃんにすずかちゃん、ついでに東条君、大丈夫!? わたし心配で助けに来たの!」

「東条君の扱いに全俺が泣いた」

「……いつものことだ」

 

なんか悟っちゃってる赤髪ショタっ子。どうやらこいつが例の東条君らしい。彼となっちゃんの間になにがあったのだろうか? ……まぁ、いっか。

 

「なっちゃん」

 

感動の再開中悪いんだがなっちゃんに一言掛ける。俺の言いたいことを察したなっちゃんが、なんのことかわかっていない友達を引き連れて俺達の元、もっと言えば、廊下に続く扉から離れた位置に移動させた。

 

それと同時に扉が勢い良く開く。エンディングで家に突撃するサザエさん一家の如く、雪崩のように黒服が集団でご入場してきた。

 

「デカイ音がしたと思ってきてみれば、なに? もしかして、ガキ共。あなた達がやったの? それになんか知らないけど増えてるわね」

 

五人の黒服が現れた。俺の頭の中で、そんなテロップが流れ出す。倒したらお金を落とすのだろうか。ドロップアイテムが黒い布とかだったら嫌でござる。

 

「……五人ぐらいはなんとかなるか」

 

そう呟いて一歩前に出る東条君。いつの間にか剣をもう一本出しており、二刀流で構える。なんだか宮本武蔵みたいでカッコいい。

 

「おい、天パ」

「なっちゃん呼ばれてるぞ」

「誰がどう見てもクー君のことなの」

「何をいってるんだか。よくテンパっているなっちゃんのことに決まってんだろ」

「……いや、お前のことなんだが」

「なん……だと……」

「一護乙なの」

「……あの、聞いてくれないか?」

 

はいはい、なんざんしょ?

 

「俺がこの五人と戦う。だから、隙をついてそこの三人を連れて外に逃げろ」

「悠斗君!?」「悠斗!?」

「俺は大丈夫だ。だから早く……ッ!?」

「おいおい、逃がすわきゃねーだろ」

 

黒服の一人がナイフを投合してきた。それを素早く反応して東条君が剣の一本で叩き落し、投げられたナイフは地面に突き刺さった。

 

それにしても、東条君が俺に任せてここは先に行け的な死亡フラグを発生させる前にそれを防いだ黒服さんマジカッケーッス。

 

「あなた達は人質だからこのままスムーズに取引が成立していたのなら無事帰れたのにね。あまりおイタをする悪い子にはお仕置きしないと」

 

そういって、黒服の一人が懐から黒光りを取り出した。それを、がしゃこんと俺達に見せびらかすように、前へと突き出す。

 

どっかから、悲鳴が聞こえた。取り出されたもの、それは近代兵器である銃であった。ってあれ? なんか俺に銃口向いてない、アレ?

 

「ふふん、私も本当はやりたくないのよ。日本の未来の宝である年端もいかない子供を撃ち抜くなんて非道なまね」

「……なにいってやがる。子供が泣き叫ぶ様に快感を覚える癖に」

 

呆れたように黒服の一人がそう呟くが銃をもっているやつが、どうでもいいように無視する。

 

そして、引き金に手を掛けた。銃口は依然として俺のまま。

 

「まずは足。次に手。で、体の臓器という臓器を撃ち抜いて、最後に脳。簡単には死なないで、私を楽しませるために悲鳴を上げなさい。絶望に染まった悲鳴をね」

「させるかよ! ……くっそ!」

 

銃を持った黒服の行動を止めようと、東条君は動くが、これまたさきほどの黒服に阻まれる。ちらっと見るとナイフを抜いた黒服と鍔迫り合いみたいな感じになっていた。

 

そして、ついには、何のためらいもなく黒服は引き金を引いた。

 

 

 

 

パーン。

 

 

 

 

乾いた音が部屋を包む。そして、悲鳴。

 

二つ聞こえるから多分なっちゃんの友達二人のものだろう。つーか、なっちゃん、そんな冷たい視線してないでもっと撃たれた俺の心配をしてください。

 

「心配されたかったらちゃんと撃ち抜かれないと」

「痛いのは嫌でござる」

 

はっ? と誰もが驚く中、俺は足の甲で止まっている銃弾を拾い、気の皆さんを注入。そして、親指を中で握って、コインを飛ばすような感じで、銃弾を親指の上に乗せた。

 

「返品でーす」

 

ピーンと俺の指で弾かれた銃弾はまっすぐ飛んでいき銃口からダイナミック帰宅。だが、勢いは止まらない。

 

そのまま銃ごと吹っ飛ばしてしまい、謎の爆発で大破した。どうやら、また気の皆さんがはっちゃけたらしい。

 

唖然とした空気。それを引き起こした俺が非常識みたいでなんか嫌になる。

 

「なっちゃん、俺、こんなときどうしたらいいかわからないんだ」

「クー君は存在自体が非常識だからどうすることもできないよ」

 

身も蓋もなかった。

 

「それよりも今のうちに黒服を片付けちゃったほうがいいと思うの」

「その発想はなかった。じゃあ、感謝の正拳突きもどきラッシュ」

 

打ち終わった頃にはヤムチャ状態の黒服達がそこら辺に転がっていたそうな。

 




今回で誘拐事件に終止符を打とうと思ったのですが、まさかのもうちっと続くんじゃよ状態。

やっぱり文章にノリがない。疲れているせいからか頭も回らない。

毎日更新を目標にしてたのですが、これでは難しくなりそうですね。


これからは不定期更新になりそう、とホタテは保険をかけときます。

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