魔法? んなもんねーよ   作:社畜系ホタテ

12 / 20
第十一話

海鳴市のどこだかわからない場所のとある廃墟内の薄暗い部屋に私、アリサちゃん。そして、悠斗(ゆうと)君の三人が縄で縛られて監禁されていた。周りには、私達をここまで連れてきた誘拐犯たちが三人いる。

 

ここまで車で連れて行かれているときに、少なくとも六人は視認できたので、残り三人以上の誘拐犯がこの廃墟内を徘徊しているのだろう。

 

「なんで私達を誘拐なんてするのよ!? 私の家のお金が目当てなの!?」

「……そうだな。暇つぶしに教えてやるよ」

 

アリサちゃんの疑問に対して、黒服のリーダー格の男が今回の事件の詳細を話した。

 

どうやら、この黒服たちに誘拐を依頼したのが、私の叔父に当たる人物、月村安二郎らしい。私の姉が所有する自動人形であるノエルに使われている技術。それは莫大な富を生む。その技術を欲しがっている彼は、私を使って、それを手に入れるために今回の誘拐事件を依頼したのだと、黒服達は言った。

 

そして。

 

「月村すずか。こいつは人間ではない。夜の一族という名の吸血鬼であり、化け物だ」

 

私達を誘拐した黒服の一人が、私の正体を……私の最大である秘密を私の友達に向けて言い放った。

 

突拍子も無く、楽しかった日常が崩れていく音が聞こえた。今回、なにかの奇跡が起きて無事助かっても、今までどおりのいつもの日常には戻れそうもない。

 

そう考えると、私の目から、不意に涙が零れ落ちた。

 

なにがいけなかったんだろうか。

 

人間のように暮らそうと望んだこと?

 

人間の友達をつくったこと?

 

それとも、友達に嘘をついて騙しているのも関わらず、幸せに満ちていた生活を送っていたことだろうか?

 

多分これだ。神様は嘘つきには幸せをくれない。罪には罰を。人間の法律でさえそうなっているのだ。それ以上の存在である神様だからこそ、人、ましてや友達を騙して生きている私に酷い罰がくだしたのだろう。

 

だけど、神様お願いします。私はこのまま不幸になっていい。

 

けど、どうか友達だけは助けてください。

 

 

 

 

 

 

「なぁ、なっちゃん。右足つりそう」

「えぇー!? こんなとこで止めてよ! 真下は高速道路なんだから!」

「大丈夫。さっきっちょだけ。さきっちょが痙攣してるだけだから」

「全然大丈夫じゃないの! い、いやー! クー君落ちてるから高度上げて! 気合だよ気合!」

「無理言うな」

「ちょっ」

 

 

 

 

 

 

「すずかは……すずかは化け物なんかじゃないわよ」

「え? ……あ、アリサちゃん?」

 

黒服から私の秘密を聞いたというのに、それを否定するアリサちゃんは黒服を睨みつけた。

 

「すずかは、確かにこの容姿と性格の割には運動神経が抜群なのはおかしいと思っていたけど、それが吸血鬼としての能力の一部だとしてもすずかはすずか! 私の親友!」

「そうだな。確かにアリサの言うとおりだ」

 

アリサちゃんに続いて、今まで黙っていた悠斗君も口を開く。

 

「夜の一族で吸血鬼だとしても俺達とすずかが友達だっていうのは変わらないんだ。それに、化け物かどうかはお前が決めるんじゃない。俺達が決めることだ」

 

別の意味で涙が出てくる。暖かい涙が、心から込み上げて、瞳から流れた。

 

終わりだと思ってた。もう戻れないと思ってた。

 

だけど、違うんだね。

 

私達の日常は終わってない。吸血鬼である私は確かに人間じゃないけど、それでも、そんな私を化け物じゃないって言ってくれる。……友達だって言ってくれる。

 

「うるせえな。人が黙っているからって調子に乗りやがって。おい、お前ら。必要なのは化け物のガキだけだ。あとの二人はどうなっちまっても関係ない。大人に口答えした罰として調教してやれ。こいつら、顔はそこそこいいようだから、その道のマニアに高く売れるだろうぜ」

 

黒服の一人が苛立ちを隠そうともせず仲間に命令する。その言葉を聞いた瞬間、私の背筋が凍りついた。

 

そんな私をよそに黒服たちがゲスイ顔を見せながら私の友達に近づいていった。

 

「や、止めて! 私の友達には手を出さないで!」

「うるせえ化け物。お前はこの特等席で二人がめちゃくちゃになっていく様をじっくりと見てるんだな」

「誰がめちゃくちゃになるって?」

「え?」「は?」

「ゆ、悠斗。あんた縄……」

 

私は目の前の光景に驚愕した。そこには近づいた黒服二人が倒れていて、その近くで悠斗君が神秘的で綺麗な剣を片手に笑っていた。

 

 

 

 

 

 

「ようやく着いた。気で治療しながら走らなかったら死んでたな。Anotherなら即死」

「Anotherなら例え治療しても着地の際に何かに突き刺さって死んでるの」

「ここがAnotherの世界じゃなくてよかった」

「とにかく、ここにすずかちゃん達がいるんだね。けど、なんで屋上に着陸したの?」

「そりゃ、階段を昇るより降りた方が楽だろうに」

「なるほど、把握なの。……でも、階段の入り口が崩れていて通れないよ」

「偉い人は言いました。扉がないなら床ブッパ」

 

 

 

 

 

 

悠斗君は縄をとっくに解いていたらしい。どうやら、彼が持っている剣で切ったと思われる。だけど、あんな剣、見たことがない。どこに隠し持っていたのだろう。

 

私の疑問をよそに、彼は私とアリサちゃんの縄を切った。

 

「さて、あとはお前をどうにかしたら解決だな」

「おいおい、不意打ちで倒したからって粋がってるんじゃねーよ」

 

黒服は腰にあったナイフを抜き、物凄いスピードで悠斗君に迫った。それを悠斗君は剣で受け、相手のナイフだけを弾いた。これで相手は丸腰だ。

 

悠斗君は剣を相手に向けて振り抜いた。だが、黒服は、まるで、人間ではないような動きを見せる。悠斗君の剣を紙一重で避け、空中に飛んだナイフを掴み取り、そのまま悠斗君の首目掛けて振り下ろした。その顔に、さきほどの黒服たちのようなゲスイ笑みを貼り付けて。

 

「あっ、危ない!」

 

私が言ったのか、アリサちゃんが言ったのか定かではない。けど、このままだと、空振りした剣の勢いでバランスを崩している悠斗君は確実に命を落とす。

 

だけど、今の私達にはなにもできない。吸血鬼の能力をもってしてもこの距離は間に合わない。

 

 

そして、……そして。

 

 

 

 

 

 

 

ピチューン。

 

 

 

 

 

 

 

天上から降ってきた光に黒服が飲み込まれた。

 

「え、ええー!?」

 

三人ともこんな反応だったのは仕方ないことだと思う。

 

 




今日の文章にノリが感じられないのは、疲れているせいからか。それとも、他人視点だからか。……謎だ。

もう、やらん。他人視点むずいから絶対にやらん。多分。


あっ、誘拐事件のソースについて、わざわざ感想にまで書いて教えてくれた方々、ありがとうございました。

どうやら、とらハの出来事を二次設定でごちゃまぜにした感じだとか。なら俺も、テキトーに作ってもいいよね! と開き直った結果が第十一話です。これはひどい。

第十二話はネタ成分多目でいくので許してください。いや、いかなくても許してください!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。