魔法? んなもんねーよ   作:社畜系ホタテ

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第十話

梅雨の時期。今日も今日とて、ザーザーと降っている雨に憂鬱気味になっている俺となっちゃん。

 

雨の所為で、空を翔けることもできないので、ただ今俺は傘を差しながら、なっちゃんがいつも乗っているバスが来るバス停まで、なっちゃんと一緒に向かっている最中なのである。

 

最近のお日様は仕事をサボりがちらしい。顔を出さないことから今も布団の中で爆睡していることが予想される。俺も寝ていたいでござる。

 

それにお日様は、太陽系の中心に鎮座しているお方なので、もうちょい働いてほしいものだ。

 

「というわけでクー君、太陽さんをたたき起こして、働かせてやるの!」

「ガッテン!」

 

なっちゃんの命令によって、俺は右手に溜めた、雨続きのせいかあまり元気のない気の皆さんを空に向かってブッパ。久々の無限パンチである。

 

俺の突き上げられた右手と一緒に、天に向かって野太いビームもとい無限パンチが放たれた。だけど、いつもより勢いとノリが感じられない。どうやら気の皆さんのテンションによって威力が変わる仕様らしい。

 

騒々しい音を上げながら、無限パンチは天高く昇っていき、大気圏あたりで爆散した。そして、その余波によって、無限パンチの周りにあった雨雲たちは消滅していった。太陽が顔を出すと共に綺麗な虹が掛かる。

 

どうやら今日は、久々の晴れらしい。やったね。

 

 

 

 

 

学校も終わり、今日は無限パンチのおかげで多少疲れていることから修練をする気にならなかったので、散歩に出かけることにした俺。

 

晴れっていいよね。何がいいとかよくわからんけど、なんかいいよね。

 

こうお日様パワーっていうのかな。知らぬ間に元気が出る。久々に気の皆さんにもそれが溜まっているからか結構活発な気がするし。

 

そんな俺が、最近雨続きだったから、晴れの素晴らしさに浸っていると、いきなり衝撃が。

 

衝撃の勢いに身を任せて、トリプルアクセル。そのまま地面に着地して、衝撃の原因を確かめた。

 

ああっ、なるほど。車に轢かれただけか。

 

明らかなスピード違反の黒光っている車を一瞥し、車とぶつかった時の摩擦の所為か服が少々破れていたので、一時帰宅することにした。

 

いやー、それにしてもたいした原因ではなかったからよかったよかった。

 

 

それから家に帰る道のりで、なんとなっちゃんに遭遇した。なんという偶然か。というかいつも思うけど、ホントお帰りが遅いのね。さすが私立校。

 

なっちゃんは何故か地面にペタリと座りながら俺、っていうか俺が来た道を呆然と見ていた。

 

「んー、なっちゃんどったの? 青い顔しちゃってさ」

「……く、クー君? クー君ッ! た、たいへんなのー!」

 

いや、襟掴んで揺らさないで。あんたの目の前で首絞まって大変なことになってる人物が一名いるよ。もちろん、俺です。

 

俺って、どんなダメージでも無効化にできる体質だけど、普通に息とか止められたら死ぬから。

 

そんな俺の特典設定をつゆ知らず、なっちゃんは、その双眸に涙を溜めながら。

 

「す、すずかちゃん達、わ、わたしの友達が誘拐されちゃったのー!」

「なんですと?」

 

思った以上に大事件らしい。

 

 

 

どうやら詳しい話を聞くと、なっちゃんといつ面が普通に帰宅している途中に車からスーツ姿の大人が降りてきて、なっちゃんの友人三名に襲撃。そして、すばやく車に連れ込み、立ち去ったのだとか。

 

その時丁度、いつもどおり帰り道が途中で違うなっちゃんは自分だけ分かれた道にいたから助かったのだという。

 

「わ、わたし……、何も出来なかったの。怖くて……、ただただ怖くて、……足が動かなかった」

 

当たり前である。六歳児の幼女になにができるというのだろうか。

 

俺だったら、神様ボディを貰った今でも、そんな場面に立ち会ったらあまりの衝撃的な現実に頭パッカーンしているだろうさ。

 

っと、待てよ。

 

「確かなっちゃんの友達って山のフドウさんがいたような。あれっ? 大丈夫じゃね? 寧ろ危ないのはその誘拐した人たちの件」

「アリサちゃんはあんな巨体じゃないの! こんな時までふざけてないでよ、このくるくるパー!」

「おまっ、髪か!? 髪のことを言ったのか!?」

「髪の毛と頭の中のことを言ったんだよ、ばかー!」

 

ぜぇぜぇ、はぁはぁ。

 

数分勢いよく言い合いをしていたおかげで、ずいぶん心が落ち着いた俺となっちゃん。互いにこれからどうするか真剣に話し合うことに。

 

「士郎さんや恭也さんに連絡しよう。あの二人は現地の警察より頼りになる。あと誘拐された子の親御さんたちにも」

「うん、お父さん達や知っている人にはメールを送ってるの。他の人たちはこのあと家に電話する。……ねぇ、クー君の力じゃ探せないのかな?」

 

ガラパゴスを片手になっちゃんは俺にそう聞いてきた。

 

少し考える。うーん、そうだな。俺の技って基本戦闘系だし、瞬間移動だって自分が行った上でイメージできる場所じゃないと使えないし。

 

詮索能力は、海鳴市全土まで出来るけど、それは探したい相手の気を覚えているのが前提条件。誘拐された子は俺の知らない人たちだけだから無理な話だ。

 

……あれ?

 

「なっちゃん。その誘拐犯が使っていた車ってどんなのか覚えてる?」

「えっ? ……うーんっと。確か……黒だったような」

「ビンゴ!」

 

えっ? と驚いているなっちゃんをよそに俺は詮索は開始する。探す気の種類は、一番身近の俺から溢れ出ている気。

 

「これまたビンゴ! ダブルビンゴでボーナス獲得、っと。さーて、見つけたぜ」

「ホントッ!?」

 

黒の車。それにワードにティーンときた俺はすぐさま詮索。ヒットしたのは俺の気の残りカスだった。

 

どうやら、俺を轢いた車が誘拐犯の車だったでござる。

 

さっき事故ったことによって多少は車にこびり付いているだろうと思ったが、予想通り。俺の気の残りカスが海鳴市郊外に向かって猛スピードで向かっているのを見つけた。

 

「じゃあ行くか。ほら、なっちゃん」

 

隣にいるなっちゃんに背を向けて、少し屈む。おんぶして連れてくので早く乗ってください。

 

「えっ、……連れてってくれるの?」

「当たり前」

「……わたし、足手まといだよ」

「だいじょーぶ。俺及び、気の皆さんが全力をもって守るから。傷一つつかねぇと思ってくれていいよ」

「でも……」

「でもじゃない。今、なっちゃんはその場にいたのに友達を助けるために動けなくて後悔してるよな。なら、これで救出して、んなもん綺麗さっぱり忘れちまおうぜ。ついでに、腹いせで誘拐犯に一発かますってのもアリ」

 

ここ数ヶ月の付き合いだけど、なっちゃんはいろいろ溜め込むタイプだと俺は知っている。今回の件も、無事解決されても解決されなくても、どちらにしてもなっちゃんはこのことを忘れることができないだろう。

 

シリアスが嫌いな俺は、そんなものを抱えていても、無理して笑いながら話すなっちゃんと、今までどおりのやり取りをしていても面白くないのです。

 

だから、そんなものを払拭することをする。そして、今までどおりの生活に戻る。絶対に。

 

それに、なっちゃんに危険はない、安全は確実。無駄にスペックが高い神様ボディを嘗めてもらっては困る。

 

「そう……だね……。とうっ!」

「おっと」

 

背中に飛び乗るなっちゃん。足の踏ん張りによって衝撃を耐え、しっかりと支える。

 

「覚悟は出来た?」

「うん。誘拐犯の腹いせは一発じゃ済まさない……やられたらやり返す、やられてなくてもやり返す。八つ当たり倍返しなの!」

「まだ見ぬ誘拐犯さんにフルボッコフラグが建ちました」

「犯罪者に同情は必要ないの」

「……そりゃそうだ」

 

さてさて、行くとしますか。

 

「あれっ? クー君、ここ、服が破れてるよ?」

「あー、さっき誘拐犯の車に轢かれたからなー」

「えっ、なにそれこわい」

「そんなことより飛ぶぞ。しっかり掴まっていろよ」

 

なっちゃんに負担が掛からないように気の皆さんにお願いしてもらい、なっちゃんに覆ってもらう。これで、風の抵抗とかその他諸々を防いでくれるだろう。

 

なっちゃんが、俺の服をしっかり握っているのを確認してから、俺達は風になった。




この誘拐事件、ソースが無いらしいですね。私の検索能力が低いだけかもしれないですが。

もし、誘拐事件が起こる年や日にちが決まっていたら、すいませんが、この小説では一年生の六月ってことにしてください。

なぜこの日にちなのかというのは、もう書く日常が無くなって来たなんて裏事情を到底作者の口からはいえないので、追求は無しの方向でお願いします

それにしても、ネタ成分が足りない気がするのは私だけ……まぁいっか。

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