保険はかけとくもの(確信)
何か知らんが真っ白な空間にいた。頭が痛く、自分のここ最近の記憶が曖昧だ。ここはどこだ、俺は誰だ。なぜここにいる。ミュウツーの逆襲面白いよね。
つーか、何ここ。なんで真っ白なん? なんか神聖さがあるような……あぁ、なるほど、把握。
「所謂テンプレという奴か」
「その通り。お前は死んだ」
俺の呟きに反応した誰かが背後から不必要な回答をよこした。振り返るとそこには和服のひょっとこ青年が。
「なぜにひょっとこ?」
「なんか素敵やん」
なるほどなっとく。そんな俺の表情を見たひょっとこさんは首を一つ頷き言葉を続けた。
「今北産業」
「真っ白なテンプレ空間
俺死んでテンプレ転生
んでなんでお前が聞く」
「おk、把握。いやー、一応今来たばっかりだからネタを現実に使えるチャンスかと思って」
ネタに反応してしまう自分の口が悔しいです。ひょっとこさんはそういうと自分のひょっとこお面をずらして苦笑いしていた。あらやだイケメン。
「つーかお前誰だ」
「私は神だ」
「お前だったのか」
「暇をもてあましry」
最近の神様はネット用語と一昔の芸人に詳しいらしい。
閑話休題。どうやら本当に俺は死んでしまったらしく、よくある二次創作みたいな予定にない死だったため神様法則的に世界がなんちゃらかんちゃらなわけで、このひょっとこイケメン兄さんこと神様が転生させてくれるんだとか。で、これまたよくある二次創作みたいに元の自分の世界だと神様法則的になんちゃらかんたらだから他の、それも神様が新たに作った世界に転生するらしい。
「ほうほう、俺のために新たな世界をつくってくれるとな。俺の中のひょっとこさんの株が急上昇」
「それはだるいからここ最近この前似たようなことがあって世界作ったからお前にはそこに行ってもらう」
「俺の中のひょっとこさんの株は大暴落」
わかってないなちみー、って感じで両手でやれやれポーズのひょっとこさん。
「世界を作り直すっていうのはそれはもう大変な作業なんだぜ。お前の世界で例えるなら菜箸で豆掴むみたいな」
それならしょうがない。箸の持ち方がなっとらんと未だばっちゃんに怒られる俺には納得するしかない。
まぁ、でも無事に転生できるみたいなので俺は安心して転生させてもらおう。
「じゃあそろそろ転生特典でも言ってもらうか」
「ちょっと待て」
全然安心できなかった。というかひょっとこさんの所為で今は不安しかない。
転生特典ってあれだろ。危ない世界でコロッと死なないようにするために与える力のことだろ。
えっ? 俺って今から行く世界はそんな危ない世界なんですか?
「何故に敬語? まぁ、危ないっちゃ危ないか。原作だと地球滅亡の危機に直面するし、キャラが何人かお陀仏してるし」
原作とかなんぞ?
「知らないなら知らない方がいいと思うぜ。そういうの意識して普通に生活できないって人間を何人かではあるけど見てきたし」
ならいいや。
それよりそんな危ない世界への転生はしたくない。元は平和で堕落な生活をしていた俺には難易度ルナティック。世界の変更を求む。
「あの世界に転生するっていうのはもう決定事項なんだ。悪いが変更は出来ない」
「異議あり」
「却下」
さすが神様。俺達人間になんて選択権はないんですね、わかります。
くそー、どうすればいいんだ。地球滅亡の危機ってことは舞台は地球だろ。なんだよ核戦争でも始めようってことなのか。地球は核の炎に包まれて世紀末になるんですね、わかりたくありません。
「そろそろ時間もなくなってきたし、転生特典を早く決めちゃおうぜ。ちなみにランプの精の如く三つまで」
「制限時間とかあったのか。もっと早めに言ってほしかったでござる……」
なんという鬼畜な神様なんざんしょ。最初のいい神様感どこいった。デンデを見習え。
「俺は神であってナメック星人ではないからな。つーか、いいのか。そんなネタに走ってるとどんどん時間が経っちまうぜ。なんなら俺が決めちまおうか」
「ならお願いしよう」
「えっ?」
なんだ、その驚いた顔は。
「い、いや、ここは普通自分の欲望を爆発させる場面だろうが」
「制限時間をつけた奴とは思えんセリフ」
こんな切羽詰った状態で自分の欲望を爆発とか無理な話だ。俺は早漏ではないのだ。決して。ホントのホントだよ!
「知らんがな。……ホントにいいんだな?」
「オッケーオッケー。もう考えるのに疲れた。カーズ様状態の俺をさっきから読心術使ってるひょっとこさんならわかっているだろうに」
「……やっとそれに触れたのな」
頭の中でつっこまんぞ! 絶対にだ! って言い続けるのにも疲れたとです。
「というわけで、俺がその危な気な世界でも無事平和に暮らせるような特典をくださいな……おろ? 体が透けてくるとはなんという不思議体験。アンビリーバボーもびっくりだな」
「転生が始まった。特典の方は俺が適当に選んでおく安心して行ってくるがいい」
「テキトーじゃなく適当とは神様のただならぬやる気が」
そこで俺は意識が消えた。