楽しんでいただければ何よりです。
闇夜に響く犬の遠吠え
いつの世も負け犬になるのは正直者ばかりで、笑うのは外道ばかり
今も昔もおんなじ嫌になる弱肉強食の理
それはこの湘南では当たり前のこと
ほら
今夜も負け犬になっちまった哀れな奴の悲鳴が聞こえてくる。
≪人気のない路地裏≫
時間は0時になったばかりで、表の繁華街はネオンが輝いている。
しかし、そのネオンの光もここまでは届かず、あたりは非常ドアの緑の光や、表の通りからかすかに差し込む光が照らしているだけで、2~3m先は殆ど見えない。薄暗闇のなかで、何人かの人影が動いている。
よくみると、サラリーマン風の中年男が4人の若い男に囲まれている。
中年男は壁際に追い込められ四方を囲まれている。
そして、中年男を取り囲んでいる若い男たちは、ピアスをしていたり、派手な色の髪をしていたりするいでたちのものばかりで、全員が口を三日月を横にしたような笑い顔をしたいる。
対して中年男は顔を真っ青に染め、絶望に満ちた顔をしている。
「おい、おっさん人にぶつかっといてシカトとはいい度胸してるじゃねえか」
「ホントだぜ、俺らはこうやって話しあいしてっけど、他の奴だったらおっさん間違いなくリンチのうえ身ぐるみはがされてポイだぜ」
中年男は運悪く、ここにる若い男達の一人とぶつかり因縁をつけられていた。
「悪かった、なんだったら土下座でもする。だからお願いだ!乱暴なことはしないでくれ」
「おいおい俺達は話しあいをしてるだけだ、別におっさんをどうにかしようなんて多分思ってねー よ」
若い男はそう言ってゲラゲラと笑う。周りの取り囲んでいる男たちも一緒になって笑い出す。
「たださ、俺達今ちょっとばかし金がなくてさ、このままだと明日のメシも食えるかわかんねーんだよな。だからおっさん、ここで知り合ったのも何かの縁、少し金貸してくれよ」
「わかった。金だな」
急いで胸のポケットに手をいれて財布を取り出す。
「これでいいだろ」
震える手で差し出されたのは万札が2枚であった。
「なんだよ、たったそれぽっちか?もっと持ってんだろ」
「何をする!やめろ!」
財布を中年男から取り上げ、中身を全て取り出そうとする目の前の若者に抵抗を試みる。しかし、仲間の男達に取り押さえられてしまう。
「ヒュー!何だよやっぱりもっと持ってんじゃねえか」
男はそう言いながら、奪った財布の中身を全て取り出して行く。
「オイオイ見てみろ7~8万はあるぜ。おっさん隠しちゃだめじゃない」
「止めてくれ!全部持っていかれたら・・・・・」
「ウッせぇ!」
「ぐはっ!」
止めるように懇願する中年男の鳩尾を若い男は思い切り殴った。
「おい!このままポリに通報(チク)られても面倒だ、だから・・・・・」
中年男の肩を掴んでいた男達は、中年男を床にたたきつける。
「がっ!な、何をする!金は渡したろ!乱暴はしないって!・・・・・・」
「うるせぇよ!そんなもん忘れちまったよ」
「さっさとくたばれ!クソ親父!」
床に倒した中年男に対して男達は容赦なく蹴りを入れていく。しばらくは叫び声を出していた中年男だったが、次第にその声も消えていく。
中年男の声が聞こえなくなると、若い男達は夜闇に消えっていった。その場には体中に痣と傷をつけ、血を流して倒れている中年男の体が横たわったままであった。
ここ湘南で最近頻発している傷害窃盗事件、本日で17件目と神奈川県警は発表、内2名が未だ昏睡状態、1名が死亡した。
なお、今だ犯人逮捕に繋がるモノは一切見つかっていない。
≪稲村学園≫
長谷大は今日も学園に通う。
何のこともない彼の日常である。
今日もいつもの通学路を歩き学園に足を進める。
教室に入ると、友人のヴァンこと板東太郎やグルグル眼鏡が特徴のクラス委員長北条歩をはじめに仲の良いクラスメート達と挨拶を交わす。
「おはよう」
「おはよう、ひろ」
「おはようございます長谷君」
クラスメート達も同様に大に挨拶する。そのまま雑談に参加しようとする大に、クラス委員長の歩が眉をつりあげて大に話しかけてきた。
「長谷君ききましたよ!今月の風紀委員の定例会サボったそうじゃないですか」
「あら、委員長のほうにもその話もう言ってたんだ。いや~、申し訳ない」
「申し訳ないと思うのなら、なんでいかなかったんですか!」
「実はその日お昼から空模様が若干悪くなってきたでしょう。朝に干した洗濯物が出しっぱなしだったことに気づいて、慌てて帰っちゃったんだよね~。いや、ホント申し訳ない」
「まったくもう、今学期で4回目ですよ。クラスの風紀委員がそんなんだと私もお叱りをうけるだけでなく、長谷君のお姉さんである長谷先生にもご迷惑がかかるんですよ!」
「いやはや、ホントにすみませんね~。いつもご心配とご迷惑ばかりおかけして」
「まったくです。反省してくださいね」
「はいはい、次からは気おつけます」
「は~、そのセリフも何度聞いたことか・・・・・」
溜息をはく委員長の歩。いれかわって太郎が話しかけてくる。
「まったく、ひろは大概のことはそつなくこなすが、風紀委員の活動だけは全くダメだ。まあ家庭にご両親がいないから仕方がないと言えば仕方がないのかな」
やれやれといったふうに肩をすくめる太郎に大は苦笑いを浮かべ、頭をかく
「でも長谷君て家庭が忙しいのになんで委員会活動なんてしてるんだ?」
「あっ!それ俺も気になってんんだ」
太郎と歩の隣で、次の合コンがどうとか話していた3人組の内2人がこちらの話に入りきく
「いや~、ま、なんといいますか、身内が教師として働いていますと色々周りの視線であったり世間体というものがあったりと、めんどくさい事情があるんだよね」
先ほどと同じ苦笑いのまま大は答える
「けど結局サボりまくってるんだから、意味がないタイ」
3人組のなかで一番体格が大きなクラスメイトがそういうと「違わないと」笑い出す。
大もつられて笑うが、歩に「もう、笑い事じゃありません」と一括されてまたも「すみません」と謝る大であった。
そんないつものように朝のHR前の雑談をしていた時のことである。外から「全員整列!」という大きな声が聞こえてきた。
「ン・・・・・」
大が窓の外を見ると、グラウンドには爽やかな快晴の朝には似つかわない緊張が漂っていた。
よく見れば、校門にはコワモテ生徒の集団が整列していた。
「ああ・・・彼女か・・」
大と同じく窓の外をみていた太郎はつぶやいた。
校門の両方に規律良く並び、人間道を作っているコワモテ生徒達の間を堂々と歩く1人の女生徒。
袖が切られ完全に両でが飛び出しているその制服は、下のスカートは逆に足元が完全に隠れるぐらい長い。そしてその腰には鎖が巻かれており、彼女の纏う迫力に拍車をかけていた。
その姿、と纏う迫力はまさしく番長そのものである。
「辻堂愛」
太郎が続けて口に出したのは彼女の名前。
本来規則というものを順守しない不良たちをこれほどまでに規律正しくまとめる存在
「おはようございます愛さん!」
「「「おはようございます」」」
辻堂愛の隣に付き従っていた青髪のコワモテの女生徒が挨拶をすると、周りのコワモテの生徒達も一斉に頭を下げて彼女を迎える。
「・・・・・」
当の本人は全く反応せず、ただ気だるそうな表情で歩いている。
彼女、辻堂愛はこの稲村学園の不良達のトップに君臨し「喧嘩狼」の異名を持つ稲村学園最強の”不良”である。
辻堂愛は隣をつき従って歩く女性と何か話しているが、ここからでは聞こえない。
「まったく、朝から派手な連中だ」
不良嫌いな太郎は、すぐに窓から視線をそらした。
「いやはや、いやはや、相変わらず壮観だね」
「そんな感想をいだくのはひろぐらいだ」
「ははっ。けど、アレのおかげで校門前の変な勧誘やキャッチが減ってコッチ(風紀委員)は皮肉にも助かってるんだよね」
「そう考えているのもひろだけだ。大体の生徒は怯えている。何とかしろ風紀委員」
「あいたた、イタイとこ付かれた」
そう言いながら大はグラウンドの方に目をやる。そして偶然にも辻堂愛と目があう。
「あン?」
向こうから思い切りガンを飛ばされる、対して大はヘラッとした笑顔で軽く手を挙げて挨拶する。けれどその態度は完全に下手にでた人間の態度であった。
「ハァー、風紀委員がそんなだから辻堂のような不良[よからず]がのさばっているんんだ」
「これは、どうも申し訳ありません」
大は先ほどの挨拶の時と同じようなヘラッとした顔のまま謝る。
「まあ、でも長谷君がそんな態度になるのもわかるよ、稲村最凶、不敗の「喧嘩狼」にして辻堂軍団の総番長辻堂愛にメンチ切られたら、誰でも下手にでちゃうって。むしろ笑って挨拶返せる長谷君のが凄いよ」
校門に集まっていたコワモテ生徒が解散していったため、下手な緊張がなくなりまたクラスメートが話しかけてくる。
「確かに。大ってヘラヘラしてるけど意外と肝座ってるよな」
「僕なんか辻堂さんに睨まれたら。絶対にその場で漏らすタイ」
「いやいや、そんなことないよ。俺も結構ビビってますよ」
「嘘だー!全然そうわ思えないって!」
「確かにひろは情けない態度をとることが多いが、度胸はある。加えて言えばその懐も広くてさっきのような不良[よからず]のような奴らでも平気で挨拶をする」
「言われてみればそうだな、大なんでそんなにヤンキーや不良みたいな奴が平気なんだ」
「ん~?意識したことないからわかんないや」
「なんだよ、自分でもわかんねーのかよ!」
「せっかくヤンキー相手でも怖がらずに接する方法が掴めて、男らしさをあげれるともったのに残念タイ」
「まあ、でも自分のことなんていざ聞かれてもわからないからな」
クラスメートの男子生徒がそう言うと「そりゃ、そうだ」と言う空気が流れる。
そんな雑談をHRが始まるまえ続ける大達であった。
昼休み、大は飲み物を買うべく校舎裏の自動販売機へ向かっていた。購買にもあるが、お昼の時間帯は混んでいるのでわざわざ人気のない校舎裏まで来たのである。
大が小銭をだして自動販売機に近づくと。
「チッ小銭ねぇし」
「ここの自販機、札は使えませんしね」
「どーします?愛はんからのお遣い」
今朝校門前で並んでいた、コワモテの方々、要はヤンキー達がいた。そして1人は辻堂愛に付き従うように歩いていた女生徒である。
「ん?」
女生徒は大の存在に気づく。すると悩んでいた顔を笑顔に変えて大に近づいてきた。
「おー!お前、いい所にきたな」
そういいながら、その女生徒と2人のヤンキーが大を取り囲む。
「あー、何かご用でしょうか3人様。見るに3人様全員私の友人・知人というわけではなさそうなんですが・・・・・」
「嫌ぁ~さ!確かにお前とは初対面だ。けど初対面の私達に募金してくれるなんて、お前いい奴だな」
「はい?」
「だ・か・ら、貧乏なオレらにお前が募金してくれるんだろ」
「あ~・・・なるほど・・」
大を取り囲んでニヤニヤする3人。
「・・・・・」
混雑を避けて、校舎裏に来たことを大は激しく後悔した。そしてすこし考えてひろしはポケットからあるものをだして3人に見せた。
「何だコレ?」
大がポケットから出したのは腕章であった。
予想の斜め上のものがでてきて首をかしげる3人
「おい、オレが欲しいのはこんなモンじゃなくて、お前がさっき出してた100円玉だ。なぁー、あんまり手間取らせないでくれよ、こっちも急いでんだから」
顔は笑っているが、目の方は少し苛立ちをみせる女生徒。他の2人もそれに同調するようにプレッシャーをかける。
対して大は、いつものヘラッとした笑顔で答える。
「いや、申し訳ありません。私一様風紀委員なんですよ」
「はぁ~?風紀委員だ~?だからどうしたんよ!」
語尾が荒くなり始める女生徒。対して大調子を崩すことなく言う。
「貧乏な人ににお金を融通したいのは山々なんですが、それをやると校則違反になるんですよね~」
「校則違反だと?」
「はい。校則では学内で生徒同士がお金の貸し借りをすることを禁止しているんですよ。風紀委員の私がそれを破るわかえにはいかないんですよね」
「ンだと~・・・」
「いや、大変申し訳ございません。なので、これで失礼します」
急いでその場を去ろうとする、しかし、そうは問屋が許さなかった。
「おい!何勝手なこと言って去ろうとしてんだよ!お前、あんまり舐めた態度してるとどうなるかわかんねぇーぞ」
「・・・・・」
「・・・・・」
その場を去ろうとした大の腕を掴み、先程まで見せていた作り笑いを完全に崩し怒鳴る女生徒。大の両隣にいるコワモテの生徒2人も大を睨みつける。
(さてどうしよう・・・・あっ)
この場をどうやって切り抜ける思案する大、そんな時で会った校舎の方から誰かが近づいてきたことに大は気づいた。
「おいクミ、飲み物買いに行くだけでどんだけかかってんだよ・・・・・」
近づいてきた人影は、稲村学園の総番長辻堂愛であった。
辻堂愛は現在の状況を見る。
自分が遣いを頼んだ知り合いが、クラスメイトを取り囲んでいる。そして、クラスメイトの手に百円玉が握られており、またその手を握っているのは自分にいつも付きまとう後輩であった。
「おいクミ・・・・・何してる・・・」
「あっ!愛さん・・・えと、これは、その・・・」
カツアゲをしている現場を辻堂愛に目撃され、動揺するクミと呼ばれた女生徒。傍らにいたコワモテの生徒二人も辻堂愛と目線をあわせないようにするためか、顔をうつ向けさせている。
「お前、私の遣いを人様から奪った金で済ますつもりなのか?」
女子高生とは思えない怒気のこもった静かな声で、クミに尋ねる辻堂愛。
「いえ!これはっ!その・・・・・」
「・・・・・」
自分に向けられる辻堂愛の怒りに慌てて弁解をしようとするクミであったが、動揺のあまりしっかりと話すことができないクミ。そのまま幾分かの沈黙が続くと、辻堂愛は「はぁ」とため息をつき自販機に近づいていった。
「あっ、あの、愛・・さん?」
「もういい自分で買うから。テメェらもう二度とこんな真似すんな!それとボケーッとしてねぇではやくそいつの腕離せ!」
「はっ、はい!すみません」
掴んでいた腕を離して、慌てて大から離れるクミ。
「・・・・・」
一連の流れをただ傍観していた大であったが、辻堂愛が自販機から缶ジュースを買い去ろうとして、はっと割れの帰る。
そして、いつものヘラッとしたニヤニヤとした笑い顔で、辻堂愛達に近づいていく。
「ちょっと、待ってもらえませんかね」
「あん、何だよ」
近づいてきた大にだるそうに答える辻堂愛。
「あ、御用があるのは辻堂さんではなく、そちらの三人様なんですよ」
「んだよ!金取ってねぇんだから、もう文句ねぇだろ!」
先ほどのカツアゲがうまくいかなかったので大にたいしてかなり苛立った感を隠しきれないクミ。しかし大はそんなことはおかまいなしにと言う。
「いやね、さっきも言いましたように俺風紀委員なんですよ。校内でこんなからまれかたされて、黙っておくなんてことはちょっとできないんですよね」
「おい!お前あんまり調子こいてんじゃねぇぞ!!」
そう言いながらクミは大の首元を掴む。
「愛さんの手前、さっきは引いたけどな!あんまり図に上ってっと少々痛い目見てもらうぞ!」
「おいクミ!止めろ!」
「おっと!今のは完全に暴行行為ですな、これはいよいよ見逃せなくなりましたね」
「こんの!てめぇ!!」
大のネチネチとした言い回しに、辻堂愛の制止をも振り切るぐらいに頭に血が上ったクミは拳を振り上げた。
「止めろって言ってんのが聞こえねぇのかーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
周囲の空気が振動する。現に偶然なのか、周囲の木々の葉が揺れている。それぐらいの怒鳴り声が響いた。
辻堂愛は大達のほうに近づく。
「おい、風紀委員。なにが望みだ?」
辻堂愛は静に、それで先ほどの比ではないぐらいの怒気を含めて大を睨みながら尋ねた。対する大はまったく態度をかえずヘラッとした顔のまま答える。
「いやはや、いやはや、望みというほどのもんは・・・ただ、世の中魚心あれば水心、そう言ますでしょ」
大は片手を横に伸ばし、もう片方の手を横に伸ばした腕の下のあたりをなでるよなしぐさをする。まるで袖のごみをはたくように。
「・・・チッ」
舌打ちをする辻堂愛、そしてポケットからお札一枚取り出し大のポケットにねじ込んだ。
「そんな、愛さん!なんで・・・」
辻堂愛の行動に驚くクミ達。
「これで満足だろ、とっと失せろ!そして二度と私の前に現れるな」
「はいはい、これはどうも」
大は目的通りのもを手に入れてのか、急にヘコヘコしだす。
「それじゃ、俺はこれで。あっ!勿論俺は何もされてないし、見ていませんので大丈夫ですよ」
大はそう言いながら、その場から去る。
残された辻堂愛達。
先ほどの辻堂愛らしかぬ行動に今だ驚きを隠せないでいるクミ達は辻堂愛に詰め寄った。
「愛さん!なんであんな野郎の言ううとおりにしたんだよ!」
「ホンマやで、いつもの愛はんやったらあんないけ好かんヤツ、すぐに絞めはるのに・・・」
「愛さん、どうなされたのですか?何か事情でもおありなんですか」
「今、なにか問題起こすわけにはいかねぇんだよ」
「だからなんで何すか!?俺達は別に停学食らおうがどうなろうが・・・・・」
「今問題起こせば、停学どころか!警察沙汰になるかもしれねぇんだよ!」
「「「え!」」」
驚く3人。確かにカツアゲは付きつめれば暴行と窃盗だが、今回の場合は額は百円である。そして絡んでいったことは確かだが、結局は何も取らずに終わった。これぐらいのことで警察沙汰になるのであれば、自分達などとっくの昔に逮捕されてている。
「愛はん、そら~いくらなんでも考えすぎとちゃいますか?たかが百円のカツアゲで警察て・・・」
「そうですよ愛さん!ちょっと考えすぎですよ」
「・・・・・」
黙る辻堂愛。
あきらかに様子のおかしい辻堂愛に、一人が何かを思い至ったのか、ハッとなる。
「もしや、このところ立て続けに起こっている連続窃盗暴行事件のことと何か関係があるのですか?」
「「!」」
他の二人も気づく、最近湘南で立て続けに起こっている事件だ。
「でも、その事件があるからといって何もそこまで神経質になることもないと思いますが」
「・・・・・いま湘南じゃこの事件のせいで警察の睨みが厳しい、そして噂だが、この状況を機械に湘南中のヤンキーを摘発しようとしてやがらる」
「愛さん、それじゃもしかして・・・」
「さっきの風紀委員はそれを完全にわかってて金を要求しやがった。仮にあそこでなにかしら起こればあいつは絶対に事を大きくする。そうなれば絶対にこの学校に警察は嬉々として乗り込んでくる。事件の関係者がいるかもしれないってな。学校側も形式上拒否はしても、心中は厄介者を抑え込めるかもしれないと協力するだろうしな」
「ほな、さっきの風紀委員はそこら辺を全部わかってて・・・・・」
「クソッ!!」
壁を思い切り殴りつける辻堂愛。
「ここまでなめられた態度取られて、なにもできねぇ!畜生!畜生!チクショッーーーーー!!」
人になめられないように生きてきた、自分を曲げることなく生きた。そんな辻堂愛にとってこの現状はとても耐えがたい屈辱的なものであった。
やりかえそうにもその相手もわからず、あげくさっきのような状況でも自分が引かなければならない。まさに舐められぱなっしである。
かべを殴るのをやめた辻堂愛は、怒りに体を震わし唇を噛みしめる。
「ッ、ダサいとこ見せたな、さぁもういくぞ・・・・・お前らしばらくあんまり派手なことはすんな、わかったな」
「「「・・・」」」
自分達が慕う人の悔しさを垣間見るも、何もできない無力感を感じずにはいられない三人は無言で辻堂愛の後を歩いていく。
「・・・・・負け犬になりきれない狼ってか」
そんな様子を、長谷大は校舎の陰から見ていた。
長谷大の纏う空気はいつものボケーッとしたものではなく、研ぎ澄まされた刃様であった。
≪放課後 稲村学園保健室≫
稲村学園の保険医である城宮楓は校内の保健室でタバコをふかしていた。保健室にもかかわらずタバコを吸っている彼女は校内においてもある意味恐れられている、怪我をして運ばれたきた生徒をわけのわからない薬品の実験体にするなど、本当かどうかわからない噂がある。
現在は学園の生徒も概ね全員帰宅し、楓も今日の仕事は殆ど終わらせ帰る前の一服をしていた。
「普通保険医が、保健室でタバコを吸うか?」
「おや、だれかとおもえばヒロポンではないかどうした?」
保健室に訪れてきたのは大であった。
一様生徒である大が保健室に来室したのにもかかわらず楓はタバコを消そうとせずにる。なぜならこの場に来た長谷大は、生徒として来たからではないからだ。
「保険医の仕事は17時のチャイムで終わりだ・・・・・それ以降の仕事で気をつかう必要もないだろう」
「確かにその通りだ、それで、例のことは何かわかってんのか?」
2人の間に流れる空気は生徒と保険医という関係が織りなすものではない、何処か他者をよりつけさせず、またそれでいて存在を気付かせないようにもしていた。
完全に吸いきったタバコを灰皿に押し付けた楓は、開けっ放しにしていた窓を見る。
「どうやら、氷屋はなにか収穫ありみたいだね」
保健室の窓の外のすぐ側には、先ほどまでだれもいなかったはずが、いつのまにか黒いエプロンをつけた一人の男が立っていた。
「まったく人を便利屋あつかいしやがって、こちとら学生や事務職みたいに暇なわけじゃないんでね」
「おい、今のは全国の事務職の人を敵に回したぞ。ついでに言うが、私は保険医であって事務職とは・・・」
「保険医よお前のつまらん口上はどうでもいい本題にまったく入らん。氷屋もだ、余計なことをいちいちいうな」
「電気屋か」
先ほどに続いて、誰もいなかったはずの保健室のベッドに大柄の作業着姿の男が座っていた。
2人とも全くもって気配を感じさせず現れたにもかかわらず、大と楓は全く驚いたそぶりはみせず、落ち着いた態度で話を続ける。
「氷屋ここ最近のカツアゲの主犯がわかったのか」
「ああ、やってんのは全員高校生、ちなみにヤンキーじゃねぇ」
「ヤンキーじゃない?しかし、襲われた被害者達の証言では全員がヤンキー風の格好をていたと言っていたはずだぞ」
「変装だ、そいつら普段はヤンキーとは対極にいるがり勉や、いかにも真面目そうなやつらだ」
「その情報は間違いないのか?」
大は念を押すように聞く。
「確かな情報だ、しっかり確認してきた」
「しかし、そんなものどうやって確認したんだ?」
楓は首を傾げてたずねた。
確かにその疑問ももっともである。警察ですら何の手がかりを見つけ出すことができず、いまだに尻尾をつかませないカツアゲの犯人グループをどのように特定したのか。
すると、今まで黙っていた電気屋が答えた。
「最近やたらと羽振りが良くなった高校生のグループが店に来るようになったと、氷屋から連絡を受けた俺は、氷屋が見た高校生たちの来ていた制服の特徴から彼らの学校を特定した。その学校をネットで調べていると、ある掲示板のようなサイトを見つけたんだ」
「掲示板・・・学校の裏サイトみたいなやつか?」
「その通りだ保険医。最近はあまり使われていないみたいだが、それでもまだ幾人か利用者はいたみたいでな、その中にある書き込みを見つけてな。「ヤンキー共に復習したい」という書き込みだった」
「なるほど、そういうことか」
「その書き込みのされたIDから特定した人物を氷屋に見張らせたんだ」
「そしたらドンぴしゃ、暗くなってからあらかじめ空けておいた校舎の裏側にある倉庫で変装して出てきたよそんで繁華街のほうに向かって仲間と合流して、後は懐が暖かそうな中年男を見つけて金をふんだくる」
「そして、疑いの目はヤンキーに向けて昼は遊びまくってるってことか、単純なこった」
聞いてみれば、あまりにも単純。しかし単純がゆえに見つかりにくい。まったくもって嫌になる。そうは思わずにはいられない大は苦虫を噛んだ気分であった。
「今日皆を集めたのは、元締めから依頼が来たからだ。どうやら死亡した被害者の親族の物が持ってきたものだ」
引き出しから4つの封筒を取り出した楓は机の上に並べた。
最初に大が封筒に手を伸ばした。中身を確認して、ズボンのポケットに入れてそのまま保険室から退室していった。
次に電気屋が封筒を手にすると足元に置いていた工具などが入った大きめのカバンの中にしまうと大に続くように退室していく。
氷屋は封筒を手にするとそのままくしゃっと握り、付けている黒のエプロンの内ポケットに入れると軽業師のように窓から飛び出して行った。
最後に楓が封筒をを自分の白衣のポケットにしまう、そして吸い続けていた煙草を灰皿に押し付け部屋の明かりをけした。
大は繁華街を歩く。人混みに身を隠すように、存在感を消すようにして歩く。
氷屋は走る。夜の町を走り、駆け抜けいて行く。
どこかの工場。とっくに就業時間は終わり人気がない工場で電気屋は作業をする。手の形をした機械の整備を行っている。
電圧の調整をしているのか、調整している手の形をした機械の手のひらと思わしき場所から青白い光とバチバチという音がする。
タバコをふかす楓。深く息を吸い込み、肺に煙を入れ吐き出す。携帯灰皿にタバコの吸い殻を処理し繁華街を歩きだす。
≪深夜 人気のない道≫
街灯の明かりだけが道を照らし、右側には繁華街の明かりが遠くのように見え、道を挟んで左側は疎水になって微かな水の流れを感じさせる音が聞こえる。
静かな夜の道を、騒がしい声で話す集団が歩いている。
「しかし、今日もうまくいったな。これで、明日も遊べるぜ」
「おいおい、気おつけろよ、あんまり派手に使いすぎたら、またヤンキー[クズ]共にたかられるぞ」
「まあ、その分あいつらには罪を、かぶってもらうまでだよ」
そうやって笑い出す、少年。一見すると大人しそうっであったり、真面そうな風貌をしている高校生の少年達であるが、ここにいる集団こそ、一連のカツアゲ事件を超している連中である。
「ココ[湘南]でカツアゲしても、誰も僕らのことなんか疑いやしない、警察も親も学校も誰もかも全員あのクズがやったと思ってる。僕らがやったなんて誰も思いやしない」
「ほんとだよな、そして今校内でカツアゲしたヤンキーはすぐに停学、やら退学の処分になる。そういえば、またうちの学校から何人かヤンキーが処分されるみたいだぜ、中には留置所に入れられたやつもいるみたいだ」
「いい気味だ。あんな奴らが消えても誰も迷惑しないよ、むしろあんな奴らがいた方が迷惑だよ。消えちまったらいいんだ」
「ある意味では俺達のしてることであいつらが消えて、結果的には皆良かったと思ってるんじゃないの」
笑い出す少年たち。
そんな少年たちの後ろの電柱の陰から夜の暗闇に紛れ、音もなく氷屋が姿を表す。氷屋は手にしていたアイスピックのニードルを口にくわえるとそのまま高く飛び、疎水の下に降りた。
そしてそのまま足音を立てずに少年たちの後をつける。
「それじゃ今日は解散するか」
十字路に差し掛かかった少年たちは一人の発した解散の言葉に別れる。
解散した少年の一人は疎水沿いを歩く。その少年の後を気配消してつける氷屋。
しばらく歩き続ける少年と氷屋。そして風が吹き月に雲がかかった時、氷屋はまたも高く飛び上がり少年のすぐ後ろに着地、そして少年が気配に気づき振り返るその前に、少年の口を手で塞ぎ引き寄せる。
いきなりのことに頭が混乱して状況を把握できない少年。氷屋は慌てる少年のことなど気にせず、流れ作業のように行動し、口にくわえていたアイスピックを手にに握りななすと、ニードル部分を容赦なく首に突き刺した。
グサリと差し込んだアイスピックを首から抜き取り、周囲に人がいないことを確認した氷屋は少年の死体を離しその場を立ち去った。
同じ時、別の道では2人の少年が帰り道が同じためか一緒に歩いていた。すると前から白衣を来た女、楓が歩いてきて少年の一人に近づいて行く。楓は普段の学校で保険医をしている時とは違い、髪をおろして、眼鏡を外しいる。それだけでまるで昼の姿とは別人のようである。
風が吹き月にかかっていた雲が動いて月明かりが楓を照らす。いつもの楓からは考えられない女の色気を漂わせ、楓を目にした少年たちも年上の女性が出すなんとも言えない雰囲気に見惚れてボーっとなるが、すぐに我に返る。
「あの、何か?」
少年の一人が楓は声を掛けると楓はフッと笑い答える。
「何、教育に携わる者の一人として悪さをした奴を指導しに来たのさ」
「えっ」
その刹那、楓は目にも止まらぬ速さで少年に近づき白衣の裾に仕込んでいたメスを手に握り、少年の首の頸動脈がある部分を寸分の狂いなくメスで斬りつけた。
「・・・」
「なっ、な!・・・」
冷たい目でもう一人の少年を見る楓、少年は突然目の前で起きた出来事に目を見開いて愕然とする。そんな少年の背後に手にスタンガンアームを装備した電気屋が、音もなく表れたと思うと少年の頭を掴んだ。
その瞬間強力な電撃が少年を襲う。
ビリビリという音と青白い光が発し、少年の体は小刻みに震える。
時間にして数秒、電気屋は少年の頭を離すと髪の毛が所々焦げた状態となった少年はそのままどさりと倒れた。
楓と電気屋は二人の少年が息絶えたことを確認するると、その場を立ち去った。
七里学園があるほうへと歩いてきた少年。この少年は一年前ここ江ノ島の不良グーループに金銭を脅し取られていた。
嫌がると殴られ、蹴られ、服を脱がされ晒しものにされることもあった。それが少年を一連の凶行を起こさせた。彼にとってこれまで起こした事件は金銭を巻き上げることが一番の目的ではない、憎い不良[ヤンキー]へ復讐するということが最大の目的だ。
(このままいけばいい具合に金も溜まるしゴミ掃除もできる。本当に一石二鳥だ)
周囲に誰もいないためか、少年は卑しいにやけた顔を隠そうともせずにいる。
そんなことを考えていたせいか、少年は前から来た人影に気付かずぶつかってしまう。
「あっ!これはすみませんよそ見していまして、申し訳ないです」
「いえ、こちらこそ」
少年がぶつかった相手は、長谷大であった。大はしまりのない顔で少年に話しだす。
「いや~。ぶつかったのがあなたみたいな人でよかった。これがもしヤンキーとかだったらえらいことになってましたよ」
「あはは・・・」
「最近は本当に物騒で、何でも凶悪なカツアゲグループもいるみたいですから気おつけないと」
「まったくです。お互いに気おつけましょう」
大の話を聞いて少年は笑いがこみあげそうになるが、先ほどのように表情に出さないよう顔を引き締める。
目の前の奴も、自分がその凶悪なカツアゲグループのメンバーだとは万に一つも思っていない。そう思うと風紀委員と書かれた腕章をつけヘラヘラした表情を浮かべた、自分と同い年ぐらいの目前の高校生がひどく滑稽に見え、内心嘲笑わずにいられなかった。
「それじゃ、すみません僕はもう帰ります。本当に質の悪いのに遭遇してしまうかもしれませんし・・・」
「これは失礼しました。それでは僕もいきます」
そして大と少年がすれ違った瞬間、大は振り返り隠し持っていた短刀[ドス]を握りしめ少年を刺した。
「ぐはっ!」
少年は突然背中を襲った痛みに驚き首を回して後ろを見る、すると先ほどまで冴えない顔とはまるで違う修羅の如く鋭い目つきをした大が、自分に刃物を刺していた。
「なぁ・なん・・で?・・」
「若気の至りにしちゃ、やりすぎなんだよ」
「ふわっ!」
かすれた声で問いかけた少年に大は答えると同時に、短刀[ドス]をもっと深く刺しこみ、少年の目から生気がなくなるのを感じ短刀[ドス]を振りぬいた。
「・・・」
大はそのまま振り返り短刀[ドス]を鞘に納める。その時にカチンという音共に少年は倒れた。
そのまま無言で立ち去ろうとした大は、あることを思い出し少年の死体に近づいた。
「三途の川のわたり代だ、受け取りな」
そう言って死体に向かってお札をばらまいた。そしてその額は昼間大が稲村の喧嘩狼から受け取った額と同額であった。
≪翌朝 長谷家≫
長谷大の朝は早い。いまこの家に暮らすのは大と姉であり大の通う学園の教師でもある長谷冴子の二人だけである。両親は共に関西で仕事をしておりここにはいない。
パンと卵を焼き、簡単なサラダも作り朝食の準備は殆どできている後はコーヒーを注げば完成である。
できたてのコーヒーをカップに注ぐ、コーヒーの良い香りに思わず笑みを浮かべる大。
「相変わらずひろはそのドヤ顔だけはうっとうしいはね」
「あ、姉ちゃんおはようそれと朝から人の顔みてうっとうしいは酷いと思うんだけど」
「うるさい、昨日遅くまで連絡も入れずに帰ってきた姉不孝者な弟が悪い」
昨夜の帰りが遅かったことに不満を漏らす姉に大はやれやれと首を振る。この姉は弟である自分に少々過保護すぎるとろがあるが、大も今現在はその姉に生活を扶養しもらってるうえ、学園生活においてもなにかと自分の不真面目な部分で迷惑をかけているので強く文句を言えない。
「ごめんよ、姉ちゃん。昨日は風紀委員の用事やらなんやらで遅くなったんだって」
「本当でしょうね、普段真面目に委員会活動してないひろが言っても信用できないんだけど・・・」
「だからサボってた分に溜まってたものを終わらせてたの」
「ふーん・・・」
ジト目でにらむ冴子。どうやらまだ完全には信用していない。
(仕方ない)
年頃の男子高校生である弟に、かなり過保護な姉に大は最後の手段である殺し文句をいう。
「遅くまで残ってたのも、溜まった仕事を終わらせて週末は愛しい姉ちゃんとゆっくりすごしたいと思ったからこそだよ」
大がそう言った瞬間、不機嫌だった顔が輝くほどの笑顔に変わる冴子。
「そうよね~!お姉ちゃん大好きなシスコンのひろはいっもお姉ちゃんのことだけかんがえてるんだもんね。いや~シスコンの弟をもつのはホントつらいわ~」
言っていること表情がここまで一致しない人間もまれである。
「さあさあ、姉ちゃん。そろそろ仕事に行く時間だよ。俺は外でカッコよく働く姉ちゃんも好きなんだ」
あまり今の状態の姉と一緒に居続けると、碌なことにならないのが経験から理解している大は早々に姉と離れようとする。
「なんか誤魔化されたような気がするけど・・・まぁいっか!」
完全に浮かれている姉は、嬉々して廊下に向かっていく。その後ろすがを眺めながら大は笑顔で見送る。内心では本当に単純な人でよかったと安堵する。
「あっ!そうだ」
出ようとしかけた冴子は急に立ち止り大に背を向けたまま話す。
「ねぇ、大。昨日の昼間なんだけどさあ・・・」
「うん?」
大は笑顔のまま返事する。
「あんた・・・辻堂さんと辻堂さんの知りあいの生徒と話してわよね、それで、なんかもめた後、辻堂さんからなんかもらってたわよね」
「ぅっ!」
ギクリとなる大。まさかあの賄賂を受け取る瞬間を姉に見られていたのだ。
「さぁ長谷君、何をもらったのか、先生に教えてもらえるかしら?」
「えーっと・・・」
「は・せ・ひ・ろ・し・く・ん」
言動と気持ちが一致しない姉であると改めて思い知る長谷大であった。
≪江ノ島≫
七里学園に近い通りから離れた人気のない道普段であれば昼間であっても殆ど人が通ることはないこの道も今は警察車両が何台もとまり黄色いテープが張られていた。
テープの向こう側にわシートをかぶせられた遺体がおかれていた。死体の周りでは捜査活動をしている警察が何人も動いていた。そして今現場に到着した、一人の中年の刑事が遺体に近づいてきた。
その刑事の存在に気付いた一人の若い刑事が中年の刑事に近づき敬礼する。
「これは安浜さん、ご苦労様です」
「おう、さっそくだが仏さんを見せてくれるか?」
「はい」
安浜という刑事は若い刑事についていき、遺体に近づくと一度手を合わせてからシートをめくる。
「見たところ高校生みたいだが、死因は」
「はい、御覧のとおり被害者は七里学園の生徒で、死因は傷口の形状と深さから短刀のようなもので刺されたものと思われます」
「短刀か・・・」
短刀という言葉を聞いた瞬間安浜の表情が険しくなる。
「安浜さん、やっぱりこれ・・・」
「間違いない、仕事人だ」
様々な人間の思惑と欲望がうごめき合う中、湘南の夏は始まる。
このお話を読んでいただいた方、ありがとうございます。
このサイトでの投稿は初めてです、未熟な文章ですがどうぞよろしくお願いします。
一様連載していくつもりですが、いきあたりばったりで書いているのでかなりの亀更新です。ただ一話完結しきで書いてくつもりですので、続きがきになってイライラさせるということはできるだけないようにしたいと思います。感想や批判はどんどん書いてください。勉強させていただきます。
それでは今後ともお付き合いお願いします。