森の端で、村の様子を窺うカリーヌ達。状況に変化はない。とりあえずさっきと同じ布陣を敷き、相手を迎え撃つ準備はしている。
副隊長がしびれを切らしたように、話かけてきた。
「こちらから仕掛けますか?」
「いえ、待つ。無暗に仕掛けて、なんとかなるほど容易い相手ではないでしょうから」
ついさっきまでの戦闘が思い起こされる。見た目こそ子供のようだが、恐るべき力を持った妖魔達が。
トゥルーカスの目を通し、カリーヌは厳しい目で妖魔達を注視。メイジらしい人物が三人。それに最初の妖魔と同じ、蝙蝠の羽のある妖魔が一人。しかし、とりたてて動く様子がないのが不気味だ。
さて、対する魔理沙達。動かないのは、打つ手がないのではない。というか打つ手は決まっていた。
七曜の魔女が真正面を向いたまま、策を口に出す。
「魔理沙。マスパ。薙いじゃって」
「おう!」
魔理沙は自慢の八卦炉を、懐から取り出した。思いっきり、前へ突き出す。大きな黒い帽子の下に、不敵な笑みが浮かんでいた。
「恋符、『マスタァァー、スパーク』!」
響く轟音。
辺りを眩く照らす光の奔流。
極太の光の束が、真っ直ぐ森へと向かう。
森に閃光で溢れかえる。
魔砲は、右から左へ森を光で塗りつぶすように、薙いでいった。
もしこの時、魔理沙が中心から撃っていたら、カリーヌ達は終わっていただろう。さすがのカリーヌも、突然の極太レーザーを避けるのは無理だ。しかし、右側から薙いだため、カリーヌには伏せるだけの間があった。それはほんのわずかな間であったが、長年の経験に体が反応していた。さらにカリーヌの右側にいた部下も、同じく伏せるのが間に合っていた。カリーヌ自ら選んだだけの事はある。しかし、それでも動揺は隠せない。
「な、なんだあれは……」
強張った声が、アチコチから上がって来る。色を失った視線が、茫然と閃光の発信源に向いていた。
そこに怒号が、響く。
「被害報告!」
変わらぬカリーヌの覇気が、落ち着きを失いかけていた部下の気迫を取り戻す。副隊長が、さっそく点呼を取り報告。
「左翼は壊滅。ほぼ半分が取られました」
「半分……」
息を飲むカリーヌ。あんな得体の知れない、しかも突然の攻撃だ。半分もと取るべきか、半分で済んだと取るべきか。確実なのは、残った相手も、普通ではないという事。どう対処すればいいのか。さすがのカリーヌも戸惑っていた。
一方、魔理沙達。こあが、目を細めながら森を見ている。
「半分くらいでしょうかね。後、8人は残ってますね」
「そんなもの?」
パチュリー、渋い顔。ほぼ壊滅を、予想していたのだが。こあは相変わらず、探るように見ていた。
「素早く、伏せたようです。それに、木が結構、盾になっちゃったみたいですよ」
「森ごと吹き飛ばさないと、ダメかしらね」
アリスがのんきにそんな事を言う。それにパチュリー、強めの反論。
「それは無しよ。森、吹き飛ばしたら、レミィやフランはともかく咲夜はただじゃ済まないわ」
「…………」
肩をすくめる人形遣い。
すると魔理沙がまた、八卦炉を前に差し出した。
「しゃーねぇ。一人ずつ、狙い撃つしかないな」
そう言って、暗視スコープを被る。電源を入れると、昼間のように、辺りの映像が映し出された。
だが、すぐに真っ暗になる。
「くそ!バッテリー切れやがった!」
残りわずかのバッテリーで、さっきから使っていたのが不味かったらしい。
アリスが、不満そうにスコープを外す魔理沙に尋ねる。
「予備はないの?」
「ロンディニウムとかで結構使ったからな。だいたい旅行に行くだけだったから、予備がいるなんて思わなかったぜ」
「そうよね」
言葉を返すアリス。だが魔理沙と同じく渋い顔。実は彼女も、似たような感情に駆られていたからだ。連れてきた人形が、上海と蓬莱の二体だけなのである。もちろん、魔理沙と同じ、旅行のつもりだったからなのだが。
しばらく視線を伏せるように考え込んでいたアリス。急に魔理沙の方へ首を向ける。
「ちょっと頼んでいい?」
「なんだよ」
「別の手があるんだけど」
「ん?」
彼女が口にした秘策。その策は確実だった。だが聞いていた魔理沙は、顔をしかめる。問題もあったのだ。
「いいのか?」
「なんとかなるわよ。でしょ?」
そう言って、パチュリーへ声をかける。ゆっくりと瞼を落とす紫魔女。だが、とりあえずうなずいた。
「そっか。分かったぜ」
白黒魔法使いは箒で肩をポンポンと叩くと、しようがないという顔を浮かべる。そして高く上る、双月を見上げた。
魔理沙達が何やら策練っていた頃、カリーヌの元にダルシニ、アミアスがやってきた。最後方だった彼女達も無事だった。ついでに、味方の様子も見てきたらしい。
ダルシニがカリーヌの側に寄る。ただ半分の味方がやられたというのに、不思議と悲壮感がない。
「みなさん。怪我してないみたいですよ」
「怪我してない?生きているの?」
「はい。気を失ってるだけです」
「……手加減した?」
「そうなんでしょうか?よく分からないけど」
「味方をこちらに握られてるからかしら。もしかしたら、あのメイド……人間程度の体かもしれないわね。あれ以上威力を上げると、仲間に被害が出ると……」
カリーヌは、冷静に状況を理解しようとする。
やがて、倒れた者達はダルシニ達によって、後方に下げられる。この作業、彼らの使い魔が役に立ち、そう手間でもなかった。だが、そうして残った人数は10人。全員そろった状況で、罠を張ってもなお、たった一人の妖魔に苦戦したというのに。これから四人も、相手にしないといけない。
カリーヌは陣形、再構成の命令出す。ダルシニ達も、前線に出てきた。
指示を送りながらも、彼女の視線はずっと村の方に固定されている。広がる畑の先、村の広場に、メイジらしい妖魔がいた。相変わらず、同じ場所にいる。
すると烈風の脳裏に、何かが閃いた。
「そういう事か!」
すぐに副隊長の方を向いた。
「支隊に指示、直ちに出撃。敵後方より攻撃。ただし、かく乱に徹する事」
「ハッ」
使い魔を通し、命令はすぐに支隊に伝わる。支隊は使い魔と感覚を同調させていたので、一種のトランシーバーのような使い方ができたのだ。
山の裏で待機していた支隊、四騎の竜騎士。すぐに飛び立つと、大きく迂回しながら、魔理沙達の背後へと向かった。
カリーヌは、双子の吸血鬼に尋ねる。
「ダルシニ、アミアス。村で契約してる場所は?」
「私達の家だけです」
「そこから牽制できる?」
「なんとか、ギリギリ」
「じゃぁ、お願い」
それにうなずきで答える二人。するとカリーヌは、次の命令を部下に告げた。
「二列横隊!突撃準備!」
「ハッ!」
すぐに動きだす残りの部下たち。誰もがその意味を理解していた。これは接近戦をするという事だ。
カリーヌは、相手を接近戦が苦手と読んだ。巨大閃光の魔法で半分を取られ、彼女達が混乱していたのは、相手からも分かったはず。さらに蝙蝠羽の妖魔が一人残っている。にもかかわらず、突撃してこなかったのは接近戦が不得手だからではないかと。
さらに森を背にして戦えば、強力な魔法は使えない。連中の仲間を巻き込む可能性があるからだ。人質を取ったようで少々気が引ける作戦だが。
やがて先の方に、四騎の竜騎士が見えてきた。
「支隊の攻撃直後に、突入!第一目標は、蝙蝠羽!後は各人の判断で戦え!」
「ハッ!」
横隊に歯切れのいい返答が並んだ。
一方、村の端でじっとしていたパチュリー達だが、アリスの策に従って、ようやく魔理沙が動こうと後ろを向いたとき、ふと何かが目に入った。
「なんだ?なんか来たぞ!」
そう思った時には、四つの火の玉が向かってきた。
「チッ!」
魔理沙はすぐに箒に飛び乗ると、竜騎士に向かって突撃!火球をかわす。そして、あっという間に、四騎の脇を抜けた。しかし、ただでは通り過ぎない。
「魔符『スターダストレヴァリエ』!」
箒の後ろから弾幕が溢れかえった。
竜騎士達は、空に星がいくつも生まれたかのような、錯覚を覚える。しかも、それらは竜騎士に向かって来ていた。支隊の隊長は慌てて指示。
「緊急回避!」
風竜達は大きく、旋回する。そして戻って来るであろう、星をばら撒いた相手に備える。
しかし、魔法を撒き散らした当人は、そのまま真っ直ぐ飛んでいった。視線だけで追う竜騎士達。
「なんだ?逃げたのか?」
わずかに首を傾げる支隊の隊長だった。
一方、残ったパチュリー、アリス、こあ。背後から飛んできた火の玉に対し、障壁を張る。
着弾。爆音が響く。
しかし、火の玉は外れていた。彼女達の少し前に着弾。全弾外れた事に、疑問を持つ。だが、その答えを出す暇はない。視界に影が入る。すぐ側まで、甲冑を纏ったメイジ達が近づいてきていた。
「お下がりを!」
こあが叫ぶ。盾になろうと、メイジ達とパチュリーの間に入る。真ん中にいるのは、隊長と思しき騎士の姿。
彼女に突き出される四本の剣。
全て受け止めようと、こあは構えた。
しかし剣は鼻先で止る。意表を突かれるこあ。だが全ての剣の先から、煙が噴き出した。いや雲が。『スリープクラウド』の重ね掛け。レミリア達に使った同じ手である。こあにとっては、見知らぬ攻撃。あっさりと掛かる。力が抜ける様に倒れて行った。
「こあ!」
思わず叫ぶパチュリー。その瞳に珍しく激しいものが浮かんでいた。
「!」
カリーヌの眉間に、直感が走る。危機を知らせる警報が、頭に鳴る。
大きく剣を振るった。唱えるのは『ウインド』の魔法。
しかしそれは相手ではない、自分達に向けて。相手を吹き飛ばすためではなく、逃げるために使ったのだ。
さすがは烈風と言うべき力で、吹き飛んだカリーヌ達。相手と大きく距離を取った。その直後だった。無数の光の弾が、一人のメイジから発せられていた。
「あれが光の魔法か!」
カリーヌは花火のような光景を見ながら、息を飲む。
ダルシニ達から聞いていた妖魔達の魔法。実際に見るまでは、イメージしづらかったが、確かに彼女の言う通りだ。あのまま、動かずにいたら多数の光を浴び、無事では済まなかったろう。
だがこれで、接近戦一撃で決める手は失敗だ。
対するパチュリー達。彼女の弾幕で、『スリープクラウド』の雲は散り散りに霧散した。その弾幕に守られ、アリスがこあを引き寄せる。人形達を使って。
「ん?眠ってる?」
「あの魔法は『スリープクラウド』よ」
弾幕を放ちながら、答える七曜の魔女。ただ、こあが眠ってるだけと知って安心したのか、声がいつもの響きに戻っている。アリスはこあを起そうと、彼女を揺らしながら答える。
「眠らせる魔法だったかしら?」
「ええ。けど、よく分からない魔法なの。系統魔法と学術書には載ってるけど、学院じゃコモンマジックとしても教えてるし。効果としては睡眠ガスじゃないのは確かよ。おそらくは結界の類だと思うわ。煙の形状をした結界陣。結界内の対象を、睡眠状態にするんだと思うわ」
「系統魔法には、結界魔法がないんじゃないの?」
「認識自体はないわ。でも今考えると、結界らしき魔法は他にもあるよ。例えば『サイレント』。特定の音を消す魔法だけど、一定範囲内の全音を消す事もできるそうよ。結界みたいでしょ?」
「それにしても、悪魔にも効くとはね。小悪魔だけど」
「ただのガスなら、効かなかったでしょうね。けど、結界だからそこは虚を突かれたんでしょう。それに数人かかりだったし。たぶんレミィ達も、これに引っ掛かったんじゃないかしら」
パチュリーは森の方に視線を送った。その表情はわずかに穏やか。眠りの魔法というなら、レミリア達はおそらく無事だと。
と思ったら、無残な叫びが足元から。
「ギャー!?」
「あら、やっと起きた」
アリスが笑ってこあを見る。その彼女の尻には、アリスの人形、上海と蓬莱が槍を刺していた。涙目でお尻押さえる悪魔。
「なんて事するんですか!」
「だって、起きないんだもん」
「起し方ってもんが、あるでしょ!」
相変わらずお尻を撫でている使い魔に、主が落ち着いた声がかける。
「こあ。後になさい。それより、事は始まってしまったわ」
パチュリーの声に冷静さを取り戻す。すぐに、辺りを見るこあ。彼女の顔が、気を引き締まった。
「これは……。ではパチュリー様、予定通りという事でいいんですか?」
「ええ。アリスも頼んだわよ」
「分かったわ」
アリスはうなずくと同時に、上海と蓬莱を操りだす。そして宣言した。
「白符『白亜の露西亜人形』!」
アリス、上海、蓬莱から弾幕が放出される。さらに、こあも通常弾幕を発射しだす。残ったパチュリーは、逆に弾幕を止めた。そして別のスペルを宣言。
「水符『ジェリーフィッシュプリンセス』」
三人は薄い膜のような球体に包まれた。やがて三人は宙へと上がる。弾幕をばら撒きながら。
見た事もない光景を見上げるカリーヌ達。まるで花火のような光景。冷や汗を額に浮かべ、息を飲むしかない。
次々と得体の知れない魔法を繰り出す、妖魔の仲間達。特に、光の玉の嵐は信じがたいものだ。これほど多数の魔法を放出するとは。しかもそれだけではない。止まらないのだ。まるで、長雨のようにいつまでも辺りに光の玉を撒き続ける。唯一の救いは威力がそれほど強くもない事。石つぶて程度だろうか。カリーヌ達は、甲冑に身を包んでいる。流れ弾程度なら、なんとか防げた。さらに土のメイジが、土壁を作り出し錬金で強化し。盾としていた。
カリーヌに部下から声が飛ぶ。
「『エア・シールド』程度では逸らす事もできません。現状では近づくことは難しいかと」
「相手は一か所にとどまっている。近づくまでもない。集中攻撃!一気にカタを付ける!」
「ハッ」
確かに相手は、一か所から動かずにいた。宙に浮いているだけに遮蔽物もない。恰好の的とも言える。確かに今の光景は驚くべきものだが、むしろ攻撃の好機でもあった。カリーヌは全隊に命令を伝えた。総力戦の指示を。
竜騎士が旋回し、炎を吐く準備に入る。地上では各人の得意な魔法が詠唱される。さらに森から動かず後方にいる、ダルシニ、アミアスも契約してある我が家に対し詠唱を開始。
そして放たれた。
風竜の炎が、『エア・カッター』が、『フレイム・ボール』が、先住の魔法が。
一斉に光の玉を放つ、得体の知れない相手に向かった。
そして直撃。
「やったか!」
部下達の声に歓喜が混ざる。だが、驚きに変わった。相手は傷一つ負ってなかったのだ。
「なんだ……どういう事だ……?」
思わず言葉を漏らすしかない彼ら。大きく見開いた眼で、相手を見る。まるで堅牢な城でも攻撃したかのような状況に。それはカリーヌも同じ。鋼の兜の中でわずかに開いた口からは、何も出てこない。
パチュリーが発動した水符『ジェリーフィッシュプリンセス』。このスペルは相手の攻撃を全て受け止める。まさしく無敵状態。ただネックなのは、実は耐久力に限界がある事。何度も攻撃を受けては破られる。ごまかしつつ、出来る限り連続発動するしかないのだ。
しかし、カリーヌ達がそんな弱点を知る由もない。分かっているのは、攻撃がまるで通じない点だけ。しかも、ごり押しを続ける訳にもいかない理由もあった。レミリア戦でかなり魔法を使ってしまい、今は精神力が万全という訳ではないのだ。精神力が枯渇し魔法が使えなくなれば、勝ち目がなくなる。だから一気に方を付けたかったのだが。接近戦を挑んだのも、一斉攻撃もそのためだった。やがてカリーヌ達は、一旦手を止める判断をする。
パチュリー達からの弾幕放出は、相変わらず続いていた。それを土のメイジが作りだした壁で防ぐカリーヌ達。竜騎士は距離を取って、弾幕をかわし続ける。動かない双方。奇妙な緊張と停滞だけが、流れていた。
だが、それこそ、アリス達の狙い通り。
ほどなくして、それが来た。
突如、雷が落ちる。
それが全ての竜騎士に直撃。
四騎の竜騎士は、全騎が地上へと落ちていく。羽の片方を撃たれたのか、紙ふぶきのように、ヒラヒラとゆっくり落ちていく。
「な!?」
思わず声を上げるカリーヌ。土壁から身を、乗り出してしまいそうなほどに。いきなり空中戦力が全滅。まさしく想定外。
部下達も同じく、驚愕としかいいようがない表情を浮かべ、お互いを見やる。
「か、雷だと!?雲一つないぞ!?いや、『ライトニング・クラウド』か!?」
「だが、どこから?あの妖魔達からでないぞ!」
口から出て来るものは、狼狽の声ばかり。
だがその中で、カリーヌだけは気づいた。事態の真相に。
「いかん!後退する!森まで下がれ!」
「え!?ハ、ハッ!」
一斉に踵を返す一同。森へと駆け出そうとした。
しかし、足が止まる。いや、止められた。誰かに?いや、大地に。
揺れていたのだ。地面が。そう地震。地震がこのタイミングで起こった。しかもかなり大きい。
「う、うわ!かなりでかいぞ!」
「なんで、こんな時に!?」
慌てて、四つん這いになる部下たち。しかし、そこにカリーヌの声が飛ぶ。
「『フライ』で飛べ!」
「あ、ハッ!」
揺れる大地からなんとか逃げた彼ら。そして森へと向かおうとする。
だが、爆発が連なるように起こった。火柱が何本も立ち上がる。カリーヌ達を、逃がさないと言わんばかりに、森への道を塞ぐ。
カリーヌはすでに、そして部下たちもようやく悟った。そう、援軍が来たのだ。相手の。妖魔達はここにいるだけではなかったのだ。超絶の力を持った妖魔達が、さらに増える。しかも包囲されている。この状況をどう捉えるべきか。彼らはこの窮地を、強く噛みしめるだけ。
すると、その時。彼らの背後から声がかかる。トドメの宣言ともいうべきものが。
「アルビオンの賊共!ウチの領内で、何やってんの!悪事なんて絶体許さないわ!ただじゃ、済まないから覚悟しなさいよ!」
最後通告を聞いたカリーヌ。しかし、なんか微妙な顔。眉をひそめている。異常な妖魔に、囲まれてるにもかかわらず。というのも、何やら聞き覚えのある声なのだ。彼女は、ゆっくりと振り返った。
見上げた視線の先、相手の白黒メイジが箒に乗って浮いていた。その後ろには、見覚え所か、とても良く知っているピンクブロンドの少女がいたのだった。
前回、前々回と長かったので、今回はここまでで。切りもいいですし。
ところでゼロ魔の魔法について、ちょっと思いついた事を。
今回、原作の設定が曖昧だったのをいい事に、『スリープクラウド』の中身を勝手に考えてしまいました。実は、例に出した『サイレント』の魔法もおかしな点がある事が分りました。風系統と説明されてるこの魔法ですが、土塊のフーケことマチルダも使ってるんですよね。それで思ったのですが、クラスの低い魔法はコモンマジックとして誰でも使えるのではと。そもそも1巻で、シュヴルーズの土の授業をみんな受けてましたが、土系統以外のメイジには意味がないような気がしますし。ですが、コモンマジックとして使えるなら、授業を受ける意味はあります。
まあ、魔法についての曖昧な点が多いのは、こっちにとってはありがたいんですけどね。
と思ったら、系統魔法は得意不得意はあっても、一応全系統が使えると知りました。大きな勘違いでした。ただ、使えると思っていたのが使えなかった訳でもないので、話の大筋には影響ないかと。全話多少見直さないといけませんけど。
描写わずかに修正しました。