東方虚真伝 作:空海鼠
「いやっふー元気ですかー?僕は全くー」
誰に言うでもなく、無意味につぶやく。フォロワーいないのにツイッターやってる気分に浸ることが出来るためオススメだ。
ちなみに現在地は家だ。あれからお互いスペカを考えてないのを思い出してじゃあまた明日ね、ということになった。格好悪すぎる。
結構頭と霊力を振り絞ったのだが、時の流れは非情であり、決戦当日である。
できたスペルカードは三枚。ほぼ丸一日使ってコレかよ。
「ルールは非殺傷弾幕を用いた三回被弾で敗北のスペルカード戦。使えるスペカは四枚まで…」
昨日話し合ったルールのおさらいをする。一見さんにも優しい心遣いだ。
「いちまーいにまーいさんまーい……一枚足りなーい」
勝手に皿屋敷ごっこをする僕の口。きっと十秒以上黙っていたら死んでしまう病気にかかっているのだろう。それなら仕方ないなと勝手に納得する。
「森に向かうまでに自動的にできてないかな…」
今日も僕は絶不調であった。
「まさか本当にスペカが自動的にできているとは」
嘘は吐き捨てるもの。
常に僕の口から出てくるらしい。随分と頼れない相棒だ。
「はいはいつまらない嘘ついてないで。さっさと開始しちゃうわよ」
ちなみに曖はきちんと四枚作ってきたらしい。ちくせう。
「おーけーおーけー。いつでもいいよ」
「ではワタクシから行きますわね。騙符『見えない蛇』」
…。
……。
曖がスペルカードを宣言するも、何も起きない。何も飛んでこない。不発だろうか?
「…おい、何も飛んでこないzy飛んできた!?」
突如として目の前に現れた白く、ぐにゃぐにゃしていて形の定まらない弾幕を紙一重で躱す。
「危ないな!当たったらどうするんだ!」
「ふふふ、当ててんのよ」
そういう言葉は違う場面で言って欲しかった。もっとも、その言葉を発するには随分と自己主張の少ない慎ましやかで起伏が足りない胸部だけど。
「…何か失礼なことを考えられている気がするわ」
まさかそんな台詞が現実で聞けるとは思わなかった。
「…ゲームでは簡単に見える弾幕も実際動いて躱すとなれば難しいっ!ようだねっ!」
全力で躱しつつ言葉を発する。目の前で突然現れるのは弾幕ごっこ初心者には少しキツいんじゃあないでしょうか。ほら現に躱すのも超ギリギリでほぼグレイズしてるようなものだし。しかし、『見えない蛇』か…。スネークのイメージで作ったのだろうか?
「痛っ!」
一発被弾。非殺傷弾幕とはいっても当たると痛い。当たった右の脇腹を庇いつつ躱す。難易度設定間違えましたね、これ。ハードモードだよ。
やがて曖のスペルは終わり、僕のターンだ。ドロー!
「幻符『白黒烏』」
そう言い放ち発動。白と黒の弾幕が視界を覆い尽くす。
「うにゃん!?」
と、同時に曖が奇声をあげる。今後は猫キャラで行くつもりなのか。
「ちょ、ちょおっと!隙間が無い弾幕なんてのは反則じゃありませんことですわよね!?」
そう。この弾幕には隙間がない。白と黒の弾幕で埋め尽くされている。思わず曖も日本語がおかしくなってしまうレベルに隙間がない。
「反則じゃあないさ。くらってみればわかるよ」
「躱すスペースがないからくらうしか選択肢がないわよね」
直後、黒い霊力弾が曖に当たり、「ぐぇへっ」と女性にはあるまじき声を出す。そしてさらに白い霊力弾が追い打ちをかけにいく──────ように見えた。
「あれ……?」
どうやら気がついたようだ。まあ、当たればわかるよな。だって白い霊力弾はただの偽物なのだから。黒い霊力弾の隙間が白い弾幕で埋まっているように見えるように嘘をついた。
あくまで幻覚だから被弾することはない。だから反則にもならない。
「烏には黒はたくさんいるけれど、白はいない…ってことね」
白い弾幕のある場所を移動しつつ曖が言う。どうやら完全にバレたようだ。
「だけど気をつけてね。烏は──「ぐぉふっ」アルビノだったら白いんだ…って遅かったか」
白い偽物の中に、数発、
何はともあれ二発命中。あと一発で勝てる。
「つ…次は私ね。明暗『シーソーゲーム』」
カラフルな弾幕が発射された。その弾幕はチカチカと目に悪く点滅するようで、スネーク弾の応用なのか、消えたり現れたりする。see,sawでシーソーね…。
そう思ってる間に一発被弾。痛がっている暇もなくすぐに妖力弾の団体様がこっちに来る。
「予約はキャンセルとなりました。またのご来店を心よりお待ちしておりません。悪戯『風船と針つきアンブレラ』」
早口でくだらないことを嘯きつつあわててボムを使用すると、僕の目の前まで来ていた弾幕たちが一斉に集まりだして、大きな一つの妖力弾となる。大きくなってもチカチカと点滅しているのは仕様らしい。
霊力弾を一つ発射してみる。そうすると霊力弾が当たった巨大妖力弾は、僕のいる向き以外の方向に向かって破裂して妖力弾(小)をばらまいた。
「あら、ボムは使用してもよかったんですの?」
「そんなこと言ってどうせ作ってきてあるんだろう?」
「当然」
「次は僕…っていってもこれが最後のカードだけれどね」
「つまりこれに当たらなければ私の勝ちね」
「引き分けの可能性もあるけど。大嘘『嘘つきの門』」
宣言すると、曖を中心にする半径二十メートルほどの輪が現れる。そして輪の内側から霊力弾が発射され、曖へと向かっていく。
「あら、これはこの輪っこに弾幕が当たったら反射するタイプっぽいかしら」
「ご名答。ただしその輪は段々小さくなります」
そう言うやいなや、小さくなっていく輪っこ。小さくなるにつれて弾幕の反射の速度も速くなるから超キツそうだ。
「そーしーてぇー」
不意に消える輪っこ。予想外の出来事に固まる曖。直後、それなりの太さのレーザーが輪のあった場所へ向かっていく。このスペルは輪が消えたらすぐ動かないと回避はできない。
勝ったッ!第三部完!
「大嘘『嘘ノ嘘ニヨル嘘ノタメノ嘘』」
全ての弾幕が消えた。
………………………………………………………………………は?
「
…敗北フラグを立てたのがいけなかったんだろうか。いやでも最近は敗北フラグ立てても負けない場合も結構あるよな。
「さらに続けて私のターン。泡符『柔らかいシャボン玉』」
不規則な動きをするシャボン玉が出てきた……が、動きが遅い。まだこっちにこないよ。
ふわふわふよふよ。やっと来たようだ。だけどこの遅さならグレイズも余裕で──────
「!?」
シャボン玉に少し掠ってグレイズした瞬間、シャボン玉が弾け、僕の目の前がまっくらになった。手持ちのポケモンが全滅した気分だ。
「うふふ、貴方の視力を『嘘』にさせていただきましたわ」
やられた、予想できたはずなのに。曖の『嘘にする程度の能力』、『柔らかいシャボン玉』という名前………。『ソフト&ウェット』だ。おそらく、グレイズだろうと何だろうとシャボン玉に触れた瞬間、僕の視力を嘘にできたのだろう。
もちろん僕は目を閉じてでも戦えるような達人ではないので、二秒で被弾。
人妖の代理戦争にしては、ずいぶんとあっけない決着だった。
そらなまこは せんとうびょうしゃを かいた!
しかし さいのうが たりない!