東方虚真伝   作:空海鼠

10 / 53
人妖大戦を期待していた方、すみませんでした。


五里夢中

………ここはどこだろう。

何か景色が揺らいでいて、うにょうにょしている。

そういえば『あさりちゃん』の犬にうにょっていうのがいたな。にょーんにょーん。

 

『相変わらずだね。冥利くん』

 

聞き覚えのある声だけど…誰だろうか。思い出せない。

 

『おいおい、いくら何でもそれはひどくないかい?きみが勝手に友達と思っていた仲じゃないか』

 

ああ、きみか。思い出した。で、何だよ。きみの『僕嫌悪症』が治った報告か?

 

『いやいや、これはきみの夢なんだから私が出てきたのはきみのせいだろ』

 

あ、なんだ。これ夢だったのか。なるほど納得。どうりできみが出てきたり景色がうにょうにょしてたりする訳だ。

 

『そう、これは夢。だから今の私はきみの脳が勝手に作り出した偽物。あ、いくらきみの脳が作り出したからってえっちぃコトをするのは駄目だぜ?エロ同人みたいに』

 

誰がするか。きみには欠片も欲情することはない。

ところで、これは僕の夢なんだから僕の都合のいいようにきみの『僕嫌悪症』が治っていたりはしないのか?

 

『残念ながらそれは無いようだね。最近は夢も現実に忠実に作られているのさ。何事もりありてーだよりありてー』

 

…使えない夢だ。

 

『夢なんて基本そんなものだろう?現実見ようぜ』

 

嫌だ。現実なんて見るものか。そんなもの見るくらいなら僕は自分で自分のつむじでも見る。

 

『物理的に不可能だな。というわけで現実見ろよ』

 

はあ…。仕方ないな。いいだろう。現実見てやるよ。

 

『ヒューッ!冥ちゃんかっこいー!惚れちゃいそうだぜー』

 

そう思っているならまずはその棒読みやめろよ。そして僕の目を見ろ。

 

『ほら……あれだ。見つめ合うと素直にお喋りできない系なアレだ』

 

残念ながらそのネタは曖相手に使ったからボツだ。

 

『うっせーよ。私の今のボキャブラリーはきみの脳に依存してるんだから、あれもこれもそれも全部きみが悪いんだ』

 

きみは気味が悪いけど。

 

『はっはっは。何か今のやりとり、友達っぽくなかったか?』

 

やめろ。寒気がする鳥肌が立つ吐き気がする。

 

『んー…ごめん私もだ。何で私冥利くんのこと嫌いなんだろうか…』

 

さあ。というか初対面で『私はきみのことが嫌いだから私はきみの友達にはならないけど、私はきみに興味はあるからきみは私の友達だと勝手に思え』って言った奴の台詞かよ。それが。

 

『だって私が初対面で「あ、コイツ嫌いだ」って思ったの始めてだったんだもん…』

 

似合わないキャラを演じようとするな。というか僕がツッコミにまわるのはきみを相手しているときだけだ。普段からボケすぎなんだよ。

 

『いやいや、私五秒に一回ボケないと死んじゃう病気だから』

 

お前はすでに死んでいる。

 

『いや、むしろ死んでるのは冥利くんの方だろ。トラックで一回。さらに明日も死ぬつもりなんだろ?』

 

まあね。持てる力を振り絞って襲ってくる妖怪を全員、相打ち覚悟でぬっ殺すつもり。

 

『でも、永淋ちゃん以外は守る義理はなくないか?正直永淋ちゃん逃がしたらあとは放っておけば能力でギリギリ核爆発耐えたり防いだりできるぜ?』

 

永淋以外はついでだよつ・い・で。いや、月夜見と…あと雑魚面さんも守ってもいいか。

 

『雑魚面くんもいいんだ…』

 

うん、面白いし。

 

『それなら仕方ないか。面白さは何よりも優先されるからね』

 

その通りだ。是非あの雑魚面さんには、月のお笑いの基礎を築いてもらいたい。

 

『…ところで冥利くん、曖ちゃんはどうするんだよ。始めて冥利くん見たときの表情から見ると、この世界に来てかなり不安だったんじゃないかな。彼女を放っておくつもりかい?』

 

なに、僕なんかいてもいなくても似たようなものだから、きっと大丈夫だろ。

 

『薄情だなあ。私だったらその不安につけ込んでここぞとばかりにフラグを立てるね!』

 

きみ、女だろ。さすがの僕もガチ百合はちょっとフォローしきれないぜ。

 

『可愛いは正義だ!』

 

いやいや、僕の立場になって考えてみろよ。アイツ、確かに外見は僕の好みのど真ん中ストライクバッターアウトチェンジまでいくけれどさ。中身が僕に似てるんだよ。

例えば、自分に似たような奴と恋愛したいと思うか?

 

『私は、私みたいな奴がいたら即結婚するけど』

 

ごめん、きみに聞いた僕が馬鹿だった。

 

『いや、謝られると私がおかしいみたいで少し複雑なんだが…』

 

おかしいんだよ。どこをどう切ってもおかしい。おかしさ満点の金太郎飴だ。

 

『お菓子だけにってか?』

 

うるさい黙れ。

 

『はっはっは。さて……もうすぐきみの目が覚める訳だが、死ぬ準備は出来ているか?』

 

勿論だ。出来てなきゃこんなことしようと思わねえよ。

 

『行ってこいよ。きっと今日の主人公は、きみになるぜ』

 

行ってくるよ。じゃあな、脇役。

 

『死んでこい、主人公』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めた。

 

さて、今日は一世一代の大舞台だ。

 

らしくもなく主人公をやるとしよう。

 

 

 

「さて、ちょっと死んでくるか」

 

 

 




オリキャラが出てきました。
冥利とはどう見ても仲の良い友達ですが、お互い嫌悪している仲です。
お互い嫌悪している仲です。(大切なことなので以下略)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。