東方虚真伝   作:空海鼠

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初めまして、空海鼠です。
初投稿なので出来がひどいかもしれませんが、完結まで頑張りたいと思いますので、
よろしければご覧下さい。


プロローグ

恥の多い生涯を送ってきました。

 

 

たしか『人間失格』だっただろうか。と言っても、僕は別に恥の多い生涯を送ってきた訳じゃあない。どちらかというと「傷の多い生涯」だろうか。

生まれた時から嫌われていて、捨てられ、迫害を受け、虐待され…。

そして最後はトラックにさえ嫌われたらしい。一体トラックは僕に何の恨みがあるって言うんだ。恨みがあるのなら直接言えばいいのに、何故暴力に訴えるのだろうか。

眼球を稼働させようとして、失敗する。目の前は血色で真っ赤に染まっているわけではないが、一寸先に広がっていそうな闇だけが見える。いや、見えないと言うべきだろうか。目が開かない。

なんとか生存の可能性を高めようと指先をピクピクと動かしてみるが、効果は見受けられない。

 

「だめだ、こりゃ死ぬな」

 

言おうとしても口が開かない。かろうじて「ぁ…ぇ……ぃ……」と言うことくらいしかできないくらいには衰弱していると見ていいだろう。鼓膜も破れているのか、自分の声の聞こえ方もおかしい。

死んだらどうなるのだろうか。根っからの善人である僕はもちろん天国行きだよね!

もちろん嘘である。

こんな嘘つきが天国になんか行けるとも思っていないし、天国があるとも思っていない。あるのはこの世の地獄というものだけだ。

もし天国があったとしてもおそらく神様にさえ嫌われて地獄行きは間違いないと思っていい。

もっとも、神も仏もいないことは僕の人生を振り返ればわかることだ。

僕は無意味に嫌われる。

母親に嫌われた。

父親に嫌われた。

叔父に嫌われた。

叔母に嫌われた。

祖父に嫌われた。

祖母には会ったことないけどあの世で会ったら多分嫌われるだろう。

孤児院のお姉さんにも嫌われた。

孤児院の院長にも嫌われた。

同じ孤児院の子供達にも嫌われた。

友達(と、僕が勝手に思っていた奴)にも嫌われた。

僕を引き取ってくれたおっさん達にも嫌われた。

道を歩く通行人にも嫌われたし、テレビのキャスターにも嫌われているような錯覚を覚えた。

さてと、おそらくこれは走馬燈じゃないんだろうな。ただの確認作業なだけで、脳裏に浮かんだり沈んだりなんか、まるでしていない。走馬燈って嘘だったのか。

いや、もしかしたら僕のこれまでの人生が全て走馬燈だったという叙述トリックがあるかもしれない。期待して待っておこう。

…………。

………………。

……………………おい、叙述トリックはまだか。まだネタバレするような時間じゃないとでも言いたいというのか。くそ、仙道め。

閑話休題。カムバック本題。

僕は、嫌われるような絶対的な理由を持っているわけではない。……いや、強いて言えば性格が最悪なことだが、初対面で嫌われるには不十分すぎる理由だ。

ルックスは悪くはないはずだ。どこも飛び抜けていなく、目が死んでいるところしか目立った欠点がない。話題に合わせることも、空気を読むことも出来る。性根の悪さを演技で隠すことだって出来る。笑顔が上手く作れないのは欠点だが、世間には中々笑わない人間なんてごろごろいるだろう。

それでも、嫌われた。

無意味に、不条理に、嫌われたのだ。

世界嫌われ選手権があったとしたら、間違いなく優勝できる自信がある。どこの誰に向けての需要があるかはわからない……というか、需要なんてないと思うけど。

もしそんなものがあったとしても、きっと僕が優勝することで、風で儲かる桶屋のごとく利益を生み出すような人が潤って、僕はカラカラに乾いて干からびて死ぬだろう。

いや、今現時点で死にかけてるけども。

閑話休題、二度目。

そんな僕だが今こうしてトラックにはねられて血まみれで横たわっている。おそらくもうすぐ死ぬだろう。というかなんで即死じゃないんだよ、そのせいで体中が超痛いんですけど。そりゃあもう僕の考えてることくらいの痛さだ。ちなみにもっと具体的に言うと、「高校生にもなってバタフライナイフ常備」レベルの痛さ。

きっと中二病(あの病)を煩っていた人なら理解してくれると思う。

いかんかん。思考が乱れてきた。

しかしこういうときってむしろ思考は遅くなっていくものじゃあないだろうか。自分がやばい状態のときに思考が高速化するってもしかして僕は主人公の才能があったんだろうか。

これも嘘だ。

みんなに無条件で嫌われる主人公って何だよ。比企谷八幡でももうちょいみんなに好かれてるぞ。いや、これが最近流行りの残念系というやつかもしれないな。嘘だけど。

まあ、嫌われるのも僕の大切な個性の一つだ。昨今の個性を伸ばす教育の一環として育まれてきたものなのだろう。みんなちがって、みんないい。

さて、もうそろそろ意識が薄くなってきた訳だが、悔いはないか?ありまくりんぐ!

幽霊にでもなって楽しく過ごせることを望むのだが、どうせ無理なんだろうなあ。

僕をひいたトラックに効果のあるかどうかわからない呪いをかけつつ。

世界嫌われ選手権が開催されるまでは生きたかったなあと思いつつ。

 

 

僕の意識は完全にフェードアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わけではなかった。まだ意識はある。

けど、もうそろそろ限界かなと自己分析をする。

次回こそ、無意味になりませんように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さよならグッバイまた明日はありません。

 

 

 

 

 

 

 




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