ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
ハリーさんと一緒のダンス。ちょっと前から一応ダンスの練習をしていたけれど、やっぱりハリーさんのダンスはとても上手だと思う。
ハリーさんは、昔知り合いの貴族令嬢に習ったと言っていたけれど……なんでもその人達の一人はかなり大きな国の公爵家の三女で、本人も自身の得た功績で小さいながらも土地と爵位を得ることができていたほどの女傑で、一人は両親が亡くなった後も一人で実家やその利権や使用人達を護り抜いて見せた人だったりしたそうで……なんと言うか、私がハリーさんの側に居てもいいのか迷いそうになるラインナップだった。
けれど、ハリーさんは私が側に居ても嫌な顔をしないでいてくれるので、私は勝手に許されていると思うことにしている。ハリーさんは嫌なことは嫌だと全身でアピールする人なので、私が近付くことを嫌がっているのだったら表情なり態度なりに出るはずだ。
その証拠に、かつてロックハートに対する態度は猟奇的とも言えるほどに酷いものだったし、今のムーディ先生も……まあ、ハリーさんに『禁じられた呪文』をかけようとした時だけだけど酷かったし。
新しいドレスを着て、ハリーさんの手を取って踊る。ハリーさんの不思議な技術で私の身体は『まとも』な18歳くらいまで大きくなっている。
ハリーさん曰く、私は私のお母さんによく似ているらしいけど……鏡を見てもよくわからない。
ただ、スネイプ先生が私を見てお母さんの名前を呟いたり、成長した私を見て殆どの人が『……え? 誰?』って言う反応だったりしたけれど……それはそれで仕方がない。私も多分自分の身体じゃなかったら『……え? 誰?』って言ってただろうしね。
……そんなことよりご飯を食べよう。ダンスパーティの主役は私達と言うことになってはいるけれど、常識的に考えて主役はやっぱりご飯だと思う。
でも、今回の食事はいつもと随分違う方法のようで、ちょっと手間取ってしまった。
そんな中でもハリーさんは手慣れた様子でメニューを開き、そしてじっくりと中身を見てからはっきりとした口調で言った。
「とりあえず、メニューの上から下まで一品ずつ順番にもらおうか」
一瞬の空白の後、ハリーさんの目の前の皿の上にメニューの一番上に書いてあった料理が現れた。これでおよそやり方はわかったので、私も同じようにして食べたい物を頼んでいった。
次々に出てくる料理を、お腹いっぱいになるまで口の中に詰め込んでいく。ハリーさんのような……まるで料理が滝壺に流れ込む大河のように吸い込まれていくほどの速度は出ないけれど、私はまず料理をしっかりと味わうことを重要視している。
ハリーさんの場合は意識を凄い加速させてしっかり味わいながら食べているだろうし、私がどうこう言うようなことはない。ハリーさんが自分のところに取った料理を残すことは無いし、問題はどこにもないだろう。
とりあえずある程度食べて落ち着いてから顔を上げて周りを見渡してみると、色々な人の顔が目に入った。
ハーマイオニーはロンと一緒なようで、いつもと違ってまっすぐになった髪を結い上げている。クラムとマルフォイは凄く悔しそうな目でロンを睨み付けているけれど、ロンはそれに気付いているのかいないのか、完全にスルーして料理を食べている。
時々ハーマイオニーに話しかけたり逆に話しかけられたり、頬についた料理の食べかすをハンカチで何度も取ってもらったりしながら話をしているその姿は……まあなんと言うか凄くラブラブなカップル的ななにかに見えた。マルフォイとクラムが真っ赤な涙を流しているように見えるけど……あれでハーマイオニーはロンのことを親友より上には見てないって言うんだからハーマイオニーは本当に悪女だよね。
……ハーマイオニーってもしかしたらそういうフェロモンかなにかでも出してるんだろうか? もしも本当にそうだって言うんなら、出し方を教えてほしい。ハリーさん相手に使いつつ結婚を申し込むから。
……万が一できるようになったと仮定して、そんなものがハリーさんに効果があるとは思えないけどね。
そしてご飯を食べ終わったら、面倒ではあるけれどダンスの時間。色々な人達の前に出て、妖女シスターズの音楽に合わせて踊るのだけれど……私はただハリーさんに身を任せて基本のステップを踏んでいる。
時々ハリーさんからちょっと違うステップを小声で教えてもらい、それを練習ついでにやってみる。ただ踊っているだけでは飽きるだろうとハリーさんが気を使ってくれている結果としてのこの場でのダンスの練習は、確かにずっと単調に続いている音楽のスパイスとしては十分なものだと感じた。
私がちょっとステップを間違っても、ハリーさんはすぐにそれに合わせてくれる。いつもこうしてさりげなく私を助けてくれるけれど……私がハリーさんにしてあげられることって、いったいなんなんだろう? むしろ、私はハリーさんになにかをしてあげることができるのか。できたとして、ハリーさんにそれが本当に必要なのか。
……私は、ハリーさんの近くに居ていいんだろうか?
「娘っ子」
自分の考えに呑まれそうだったところに、ハリーさんから声がかけられたことで意識が浮き上がる。身体はハリーさんのリードに従ってステップを踏み続けていたし、耳から入ってくる指示は正確に辿って行っていた筈だけれど……いったいなんだろうか?
「あまり考えるな。必要以上に考えたところで悪い考えしか出てこないぞ」
「……あの、ハリーさん? 私の『閉心術』って本当にちゃんとできてるんですか? なんだか凄い簡単に読まれてるような気が……」
「……ふむ」
ハリーさんが突然私の事を持ち上げた。……。
「何体重測ってるんですか怒りますよ。『軽い』って思ってたみたいだから今回は許しますけど」
「俺もそれなりに強力な『閉心術』を使ってるんだが、今まさにお前も読んでるだろう」
「……そうですね」
体重や年齢の事に関しては凄くよくわかるんですよね。
「お前達がそう言う考えに鋭いように、俺は面白いことや悩み事に鋭いんだよ。……だから何となくで相手の痛いところをつつくことも多々あるわけだが」
「そうでしたか」
つまり、私が悩んでいたり、ハリーさんにとって面白いことを考えていたからハリーさんは私の考えを読めた……と。
「まあ、俺の場合素で表面の意識と切り離された内面の意識とを同時に読むから隠してようが普通に読めるんだがな。隠し事にも鋭い方だし」
「結局ハリーさんがハリーさんだからってことじゃないですかやだー」
私はなんだか遠い目をしながら、皆が混ざってくるまで躍り続けた。
P.S ハーマイオニーは結局三人全員と時間を別にして踊っていた。ロンが若干胸に痛みを覚えたようだけれど、きっといいことだよね。
次回作は……?
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鬼滅の刃
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鋼の錬金術師
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金色のガッシュ
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BLEACHの続き
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他の止まってるやつの続き