ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 side エリー・ポッター

 

 金の卵を開けて、中から出てくるヒントを聞いて次の課題の準備をしなければならないらしい。

 でも、開けてみてから出てくるのは甲高い悲鳴のような、黒板を引っ掻くようなそんな音ばかり。ハリーさんがリータ・スキーターにこうやって両耳に卵を一つずつあてて嫌がらせをしていた理由がよくわかる感じの音だったけれど……だからこそ何をこれから読み取ればいいのかなんて全然わからない。

 ……ハリーさんに聞けばすぐわかるんだろうけど、ハリーさんに聞くのはできれば最後の手段にしたい。第一の課題では内容から攻略法までみんな聞いてしまったから、今回くらいは自分の手でやってみたい。

 まあ、自分の手でやるとは言っても、正確には自分じゃなくて本や他の人に聞いてみたりするんだけれど。ハリーさんは答え合わせのできる水晶玉で、答えは教えてくれるけれどそこには過程や努力と言うものがほとんどなくなってしまう。だから、今回は私が自分で調べたことを組み合わせて課題の突破を狙うことにした。

 ……人には聞くけどね?

 

 そう言うわけで、まずはこの音について考えてみる。

 この音が卵の中から聞こえてくると言うことは、まず間違いなくこの音には何か意味がある。そうじゃなかったらこの音から何かを読み解け、なんて事は言われないはずだし、こう言うのが壊れていると言うことは魔法省の失態と言うことになっちゃうだろうから全力でそう言うのが無いように取り計らってくれてるだろうしね。

 特に、私が三大魔法学校対抗試合に参加してしまうなんて言う大不祥事があったんだから、今はそう言うのに凄く敏感になっているはず。と言うか、なってくれていないと困る。私が。凄く。

 

 そう言うことで、卵が不良品だと言う事はあり得ないと仮定し、その上でこの仮定は正しいとする。となるとなんらかの方法でこの音をまともな人間の聞く音か声にしなければならないのだけれど、普通にしているだけじゃあ絶対に聞き取れないと思う。

 だとすると何か特殊な条件下でそれを聞かなくちゃわからないんじゃないかと思うけれど、その特殊な条件と言うのがわからない。

 ただ、卵そのものに魔法をかけると言うのは違うだろう。変に魔法をかけて変質してしまうようにはできていないはずだし、周りの環境によってちゃんと聞き取ることができるようになるんだと思う。

 

 そんなわけで、卵を火にかけてみた。簡単にできる周りの環境の変化と言えば、火をつけて熱くなるか氷の近くで冷たくなるか水に沈めて空気と切り離してみるか圧力を加えてみるか……まあ、そのくらいだ。

 とりあえず片っ端からやってみるために、グリフィンドールの談話室の暖炉に卵を放り込んでから学校の中を走り回って色々なものを用意してきた。

 まず、厨房から熱いものを扱うときに使う分厚い手袋を借りてきて、それから卵を冷やすために冷蔵庫を借りたいと言ったら快く貸してくれると言ってくれたのでお願いしておいた。

 さらに、とりあえず磨いてみるために布と磨き粉を用意して、準備を終わらせてからグリフィンドール寮に戻って一度卵を開けてみる。顔を近付けただけでかなり熱かったけれど、開けた時に出てくる音には全く変化はなかった。残念。

 それから一度冷ましてから磨いて、また開いてみても結果は同じ。聞こえるのは金属を擦り合わせているような、甲高くて耳障りな音ばかり。ここで厨房の屋敷しもべ妖精達に卵を預けて冷やしたまま預かっていてもらう。授業が全部終わったら返してもらう。

 

「お久しぶりでございます、エリー・ポッターさま!」

「ドビー!?」

 

 ……久し振りに見る顔との再会もあったけれど、細かい話は授業が終わってからすることにした。

 

 ……で、戻ってからドビーと話をしつつ卵の謎を解こうとしている。本当だったら私一人で解かなくちゃいけないんだろうけど……まあ、今更な話だから気にしないことにする。

 

 ドビーは、今年からこのホグワーツで働き始めたらしい。少し前にハリーさんからホグワーツの仕事を紹介されて、あまりにも仕事場が見付からなかったら行ってみるといいと言われていたのを思い出して来てみたら、ダンブルドア先生に気軽にOKを貰ったのだとか。

 ただ、ドビーはお給料を貰おうとしていなければすぐにでも職場が見付かっていただろうと思われるほど優秀な屋敷しもべ妖精だ。ダンブルドア先生はそんなドビーに週10ガリオンと週末休暇を与えると言ってきたそうだけれど、ドビーはそれを値切りに値切って週1ガリオンと月に一日の休暇をもらう……と言う所でお互いに納得したのだとか。

 ……正直な話、それが高いのか安いのかは私にはわからない。自分の財産なんて眼鏡と自分の身体と最低限の着るものと教科書くらいしか無かったところに突然お父さんとお母さんの遺産が転がり込んで来たお陰で、私の金銭感覚は全くと言っていいほど成長していないままこれまで暮らしてきた。

 お金をあまり使わないでいられたのは、あるからと言って使えば無くなってしまうことをよくわかっていたのと、それにそれまでの最悪に近い生活環境に身体が慣れてしまっていたからだ。

 だから、私はドビーにそう言うことは言わず、ただ一言だけ……

 

「良かったね、ドビー」

 

 そう言った。

 

 私はドビーとの話の合間合間に卵に色々なことをした。焼いたり、茹でたり、煮たり、揚げたり、叩いてみたり、逆さまにしてみたり、転がしたり、回したり、凍らせたりして、ついに内容を知ることができた。

 それは、水に沈めながら卵を開けばちゃんとした言葉に聞こえる……と言うこと。そしてその内容は、湖に一時間潜って奪われた大切なものを取り返すこと。

 ……卵の暗号が解けたのは嬉しいけれど、今度は湖に……つまり、水の中に一時間以上も潜っていなければならないと言うことが判明した。なんらかの方法で人間が一時間以上潜っていなければならないのだけれど、私はそんな方法は知らない。

 ……こんな時こそ、知っていそうな人に聞いてみるべきだよね。ムーディ先生とかマクゴナガル先生とかスネイプ先生とか……最終手段としてはハリーさんとか。

 勿論、打てる手は全部打っておく。ドビーやハーマイオニー、ロン、マルフォイにも聞いてみて、できれば探すのを協力してもらって……。

 ……そうしないと、私死んじゃうからね。湖の底で死ぬなんて絶対に嫌だ。絶対に嫌だ。大事なことだから二回言った。後悔はしないしする意味もないので絶対しない。

 

 ……さてと。まずは図書館かなー。

 

 

 

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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