ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 side エリー・ポッター

 

 第一の課題は想定よりもずっと簡単でした。

 ハリーさんが幻影と物理接触の魔法を使ってリハーサルとしてやった相手が『ヤマタノオロチ』だったので、八つの首が自在に動くことによる高速ブレス連打と噛みつきの波状攻撃に比べれば、ちょっと大きいだけのトカゲ相手なんてなんでもなかったです。

 私の相手は真っ赤なドラゴン。名前は『中国火の玉種』。その前にクラムが『スウェーデン・ショート-スナウト種』と。フラーが『ウェールズ・グリーン種』と戦い、それぞれ高得点を出したらしい。

 私がやるまでの最高点は、クラムの出した40点。五人の審査員から合計10点引かれてしまったらしい。どうやら卵を潰してしまったのが減点の対象だったようだ。

 そして私は48点。クラウチさん、ダンブルドア先生、バグマンさんの三人から最高得点をもらい、マダム・マクシームとカルカロフから互いに9点を貰った。

 まあ、卵も無事、怪我もなし、時間は最短、守護霊で目眩ましもバッチリということを考えればかなりの減点部分を無くしているのだけれど、ここまで来ると満点を取っておきたかったなと思う。

 ……マダム・マクシームとカルカロフの二人は、いったいどの部分で減点したんだろうか? それを知りたい。

 

「減点対象ってどこだと思う?」

「そうね……多分だけど、ドラゴンを無力化していないところだと思うわ。もしかしたらの危機に対する保険を掛けていなかったのと、あとはドラゴンそのものをなんとかできなかったことが減点対象……ってことにしたんじゃない?」

「なんだか含みが……ああ、なるほど。できるだけ点差は縮めたいってことか」

 

 ハーマイオニーの言葉に、ロンが少し考えてそう返す。どうやら思い当たることがあったらしい。

 つまり、自分達の学校の代表選手にあまり遅れをとって欲しくないわけだ。そのためには、今回のことでの点差はできるだけ小さい方がいい。だけど色々あってあからさまに贔屓をすることができないから、ほんの小さなミスでも何でも見付けて減点したかったんだろう。

 まあ、それでもこの点数なのだから完璧に近かったと言っていい筈だ。

 

 ……さあ、次はハリーさんの出番だ。ハリーさんがどんな風にあのドラゴン……ハンガリー・ホーンテールを攻略するのか、凄く楽しみだったりする。

 ホーンテールは名前の通りに尾に角を持つドラゴンだ。それも営巣中と言う最も気の荒い時期の、しかも今までのドラゴンのどれよりも…………嘘つきました。ハリーさんが見せてくれたヤマタノオロチの方がずっと大きいです。

 ……まあとにかく、この課題で相手をするドラゴンの中では最も大きく、最も狂暴なドラゴンを相手に、ハリーさんはいったいどんな風に出し抜いて見せるんだろうか?

 

「……『真正面から殴り飛ば(ステューピファイ(物理))して飛んでいったドラゴンを無視して卵を持っていく』に5クヌート」

「『三分で美味しいドラゴン料理を作ってくれる』に5クヌート」

「『『約束された星の破壊』でドラゴンが消し飛ぶ』に5クヌート」

「『描写したら21禁になるような鬼畜外道な事をやってクリア』に5クヌート」

「『凡人には理解できない方法で分身して袋叩きにして卵を奪う』に5クヌート」

 

 とりあえずやってみた賭けでは、誰もがハリーさんらしい解決方法を挙げてきた。正直、私も他の人の言った内容を聞いてそれかもしれないと思ってしまうほどだ。

 ……だってほら、ハリーさんだしね。何が起きたところで不思議には思わないよ私は。だってハリーさんだしね。

 逆に、ハリーさんが何をやったら不思議だと思うかを考えてみた。結果的にハリーさんが凄く優しい博愛主義者になってしまったのには笑った。

 

 そうして予想を繰り返している間に、ハリーさんの出番になった。ハリーさんが控え室から来ると、ホグワーツ生が一斉に【 ハリーさん、自重 】の文字をピカピカと光らせたけれど、ハリーさんはにっこり笑顔で自分の胸についているバッジを押し付けた。

 

【 現在自重解放中につき接触禁止 】

 

 その文字を見た途端、ホグワーツ生は自重バッジを押すのをやめた。押したところで間違いなく無駄に終わる事をいつまでも未練がましく続けるような非生産的な馬鹿は、ホグワーツでは精神的に一月も生き残れない。その事がよくわかる光景だと……本気でそう思った。

 バグマンさんが大きく響き渡る声で開始までのカウントダウンを始め、ハリーさんはいつもの通りに左手に私と一緒に買った柊の杖を取った。ハリーさんがいったいどんなことをするのか、凄く楽しみだけれど凄く心配。

 

 そして、バグマンさんが始まりを告げるホイッスルを吹き鳴らした。

 

「はいクリア」

 

 ……その二秒後に、ハリーさんは私がドラゴンの下から取るのにおよそ五分、クラムやフラーはもっともっと時間をかけて、かなり危ない橋を渡りながらなんとか取ることに成功した金の卵を右手に持っていた。

 ……私達の賭けは勝者なしで、掛け金を全部使ってハリーさんになにか買ってプレゼントすることになった。それは別にいい。どうせ当たると思っていなかったから、渡す相手が変わっただけの話だし。

 それよりも、なんでハリーさんがドラゴンをあのままにしているかの方が重要だと思う。私の……と言うか、私達の知っているハリーさんならドラゴンがああして原形を止めていると言うこと自体がおかしい。

 私達のよく知っているハリーさんなら、ドラゴンの頭が無くなってるなり首が変な方向を向いているなり全身の肉だけがなくなっているなり骨と言う骨が砕かれているなり腹部が消し飛んで胸から上と腰から下の二つに別れているなり全身消滅してるなりお金になるものを全部解体されて吊るされるなりしててもおかしくない……いや、むしろそんな風になっていないとおかしいくらいなのに、何にもなく卵だけを取るだなんて……体調でも悪いんですかね?

 

「……それ、ハリーに聞かれたら大変よ?」

「……私っていつでも『閉心術』をしてるはずなんだけど、なんでわかるの? ハーマイオニーって実はハリーさんの親戚なの? むしろ兄弟なの?」

「兄弟も親戚もみんな違うわよ。と言うか血縁があったとしても何十何百と遡らないと繋がりが見えてこないくらいに遠いと思うわよ?」

「……あるかもしれないんだ?」

「……無いと思いたいけど、絶対じゃないもの」

 

 ハーマイオニーは軽く溜息をついて言った。絶対なんて無い……って言うのには私も賛成かな。うん。

 

 

 

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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