ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 side エリー・ポッター

 

 ドラゴン。恐らく、誰もが認める最も有名な幻獣だろう。

 ドラゴンと言えば最強種の一画であり、危険度で言えばある意味バジリスクすら凌駕する。しかも今回は産卵期の、最も狂暴になる時期のドラゴンから、ドラゴンが必死になって守ろうとする卵を取らなければならないだなんて……これはもう本当に死んだかもわからないね。

 いや、私だけなら間違いなく死んでいると断言しよう。私がドラゴンを相手にそんなことをして生きていられると本気で思うほどに自惚れてはいないし、それに私自身は実のところ大した力も持たない普通で普通な魔女の一人でしかない。

 

 けれど私がこうして今もまだ絶望の海に沈まずに立っていられるのは、ホグワーツ生徒の応援があるからだった。

 ダームストラングもボーバトンも私が何らかの方法で『炎のゴブレット』に名前を入れたのだと思っているようだったけれど、よく訓練されたホグワーツ生徒は誰もが私の仕業ではないと言うことを理解してくれていた。なにしろ、本気で選手の座を狙っていた数人でさえ、私が入れたわけではないと言うことを心底信じてくれていたようだったし、先生達も私を応援してくれたくらいなのだから。

 ……ともかく、そう言うことで私は物凄い逆風を受けつつも頑張って生きています。今は……まさにその逆風に立ち向かい、なんとか生きていけるようになるための練習中です。

 

「それにしてもドラゴンか……まあ、ドラゴンを一人で打倒するなんて言う力任せな方法でもなんとかなるような内容じゃなかった事を喜ぶべきね」

「そうだな。……おーいエリー!今度はこれを呼び寄せてみてくれ!」

 

 ロンに言われて次々に物を引き寄せていく。初めは軽い紙から始まり、クッションや靴、本、椅子、マルフォイ、棚、机、クラッブ……次々に引き寄せる。

 

「フォーイ!中々良くなってきたじゃないかポッター。これなら間違いなく箒を「フォイ!危ないぞ!」ん? なにgブフォイッ!?」

「あ、ごめん」

 

 次々に呼び寄せていたせいで、マルフォイの後に呼び寄せたクラッブが振り向いた直後のマルフォイの首にアックスボンバーを決めてしまった。

 けれど、結構な速度でクラッブの体重が首にかかった筈なのに、マルフォイはほとんどダメージもなく普通に立ち上がって見せた。流石はマルフォイ、自分が時速にして二百キロメートル以上の速度に急加速させられた直後に急減速させられるのを何十回も繰り返された時の反応が「ちょっと頭が揺れたせいかくらくらする」と倒れた状態から普通に起き上がりながら言っただけと言う頑丈さ!そこに痺れる憧れる!

 ……ドラゴンの爪とか牙に襲われかねない今は割と本気で羨ましい。

 

「ん? だったらハリーさんに頼んで『フォフォフォフォイ体操』を習えばいいじゃないか。最高で今の僕の素の防御力分のバフが永続でかかるそうだよ?」

「すぐに習いに行きましょう。恥ずかしいかもしれないけどそれは大丈夫、私達も付き合うわ」

「そうだな。恥ずかしくても大丈夫だ。僕達も一緒に行くからさ」

「おいおい、僕の持ちネタが恥ずかしいとはどう言うことだい?」

 

 マルフォイはそんなことを言ってきたけれど、普通に恥ずかしいと思うんだよね。永続でマルフォイと同じだけの防御力を得られるんだったらやる価値は十分にあるし、命と比べればこの程度の恥なんてなんでもない。だから、やらない理由はどこにも無い。

 確かに前にハリーさんは『フォフォフォフォイ体操』には防御力増強効果があると言っていたし、体系別に分けてみたとも言っていたけれど、それがまさかこんなところで役に立つだなんて思いもしなかった。

 そんな感じの事を話し合いながら、ハリーさんの居るだろうグリフィンドールの男子寮に行くと、ハリーさんはなんでもない表情でかなり旧型のビデオデッキとテレビと一本のビデオテープを渡してくれた。何でわかったのかはわからないけれど、とりあえず私達はそれを見ながら『フォフォフォフォイ体操』を練習することになった。

 

 練習はとても大変だった。何と言うか、私の知っているビデオテープは見る度に内容が少しずつ変わっていったりしないし、テレビの中から私達の動きをダメ出ししてちゃんとした動きをできるようになるまで何度でもしっかり教えてくれたりはしなかったし、画面の中で魔法を使っているのにこちら側に干渉してちゃんとした姿勢をとらせたりとかは絶対に無かった筈なのに、ハリーさんの作ったらしいフォフォフォフォイ体操教習ビデオではそんなあり得ないことが現実に起きてしまっている。

 ただ、そのお陰で私とロンとハーマイオニーは見事に三日でフォフォフォフォイ体操をマスターすることができたのだった。

 

 ちなみに、ビデオの中ではハリーさんは体操をしてはおらず、基本的にマルフォイが実際の動きをして見せてくれた。

 凄くいい笑顔を浮かべているマルフォイの両隣では、同じようにいい笑顔を浮かべたクラッブとゴイルが体操をしていた。なんでも、この笑顔を浮かべると言う行為も体操の一部であり、これを欠かすと体操の効果が三割は落ちるのだとか。

 そしてフォフォフォフォイ体操をマスターした私達の前には、もうほとんど壁は残っていなかった。

 ドラゴンの攻撃はできる限り避ける。そしてもし食らってしまったとしても耐えられるようにするために、フォフォフォフォイ体操で防御力を上昇させた。

 次は、ドラゴンが抱え込んでいる卵をどのようにして手放させるか……あるいはドラゴンをどうやって卵から気をそらさせるかのことだったけれど、これは囮として『守護霊の呪文』を使うことにした。守護霊が目の前で走り回れば、ドラゴンだって私なんかよりも光輝く雌鹿に気をとられるはず。

 ドラゴンが守護霊に気を取られ、卵から僅かにでも気を逸らした瞬間に、ネビュラスを使って高速で接近して金の卵を拐っていく。これが私達の考えた戦法だ。

 

「一番の難関はドラゴンの炎ね。どうやって防ぎましょうか……」

「避けるのが最良の選択肢ではあるけど、もしも食らっちゃった時の備えは欲しいもんね」

「だよなぁ……おいフォイ、なんかいい考えはないか?」

「残念ながら僕は物理防御は高くても魔法や炎に対する防御は普通の魔法使いと同じだからなにもできないよ」

「……まあ、できるだけ避けるって言うことで」

 

 四人で膝を付き合わせた会議はこうして終わり、後は普通にいつも通りの勉強をしながら課題の開始を待つのみとなった。

 

 ちなみに、飛行訓練としてハリーさんやマルフォイ達にドラゴン役になってもらって相手をしてもらった。ハリーさんのボールは炎のブレス(実際燃えてた)と思い、マルフォイやロンの飛行は爪や尻尾、牙としてやったその練習は、それなりに高い効果を出してくれたと思う。

 

 ……少なくとも、ハリーさんの投げるボールはそこらのドラゴンのブレスより速くて怖かった。それはきっと間違いない。

 

 

 

 

 




 
 フォフォフォフォイ体操。
 ステータスバフ。最高まで極めれば、フォイの素の防御力分の数値が現在の値に追加される。
 なお、フォイにも適用されるため、現在のフォイは常に防御性能が二倍になっている(笑)

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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