ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
一人目……ダームストラングの代表選手に選ばれたのは、やはりと言うか何と言うかビクトール・クラムだった。喜んだような姿を見せずに、選手として選ばれた者の集まる部屋に消えていった。
二人目はと言うと、ボーバトンのフラー・デラクール。ロンがヴィーラだと言うシルバーブロンドの髪を翻し、そして消えていった。
ここで思ったことは、ボーバトンの代表団としてやってきていた生徒達は本当に代表選手になりたかったんだろうなと言うことだった。彼女の名前が呼ばれてから、選ばれなかった何人かの女の子達が涙を流し始めたと言うだけでどれ程の無念だったかわかる。
ただ、ホグワーツとダームストラングとの温度差が激しい理由にもなんとなく検討はついている。ダームストラングの代表となったクラムは間違いなくダームストラング生から一目置かれていた。それこそ、代表選手になるのはクラムだろうと、誰もがそれを納得できるだけの実力さとカリスマを兼ね備えてしまっていた。それが、ダームストラングの総意となるほどに。
そしてホグワーツがあまり騒ぐことをしないのは、 どうせ……と言うか間違いなくハリーさんが代表選手になると皆が考えているからだろう。それは多分間違いではないだろうし、その証拠もすぐに出てくるはずだ。
三度、炎のゴブレットから炎が溢れ、一枚の羊皮紙を吐き出した。そこに書いてある名前を見た途端にダンブルドア先生が胃の辺りを押さえた事からも、誰の名前が書いてあったのかは容易に想像できる。
そしてダンブルドア先生は苦々しい表情のまま口を開いた。
「……ハリー・オライムレイ」
ホグワーツ生ならば誰もが予想していた(ホグワーツ歴の短い一年生ですらハリーさんの存在だけは知っている)名前に拍手も溜息も出ない。あまりに順当であまりに予想通りな結果に、誰もが納得の表情を浮かべて頷くだけだった。
そんな中でハリーさんはいつも通りの両目を閉じた眠そうな表情のまま立ち上がって、普通に歩き出す……前に、私に一言囁いた。
「頑張れよ、娘っ子」
「はい?」
……どうして私『が』ハリーさんに言うんじゃなくて、私『に』ハリーさんが言うんだろう? 参加するのはハリーさんであって私じゃないのに……?
そんな私の疑問に答えることなく、ハリーさんはさっさといなくなってしまった。そしてその直後に───またしても、炎のゴブレットから火花が迸り、その舌先に端の焦げた羊皮紙を一枚乗せていた。
……ああ、ハリーさんはきっとこうなることがわかっていたんだろう。私は瞬きほどの間で、あの紙に誰の名前が書いてあるかを理解してしまった。
そして、その予想は裏切られること無く───
「エリー・ポッター」
───私の名が、ダンブルドア先生の口から告げられた。
……私は、炎のゴブレットに自分の名前を入れた覚えは無い。と言うか、ゴブレットに名前を入れている暇があるなら料理を口に入れる事に使う方が何兆倍も……ああ、0に何をかけたところで0は0か。とにかく、ずっと有益なことは間違いない。
それに、私にそんなものがクリアできるとは思えない。人より優れている所なんて、クィディッチの腕と食欲くらいしかない私が、ハーマイオニーが話していたような危険極まりない試合に参加して自力で生き残るなんて、そんなのハリーさんがマルフォイに負けることくらいありえない。
……どうしよう。
私がそんな風に現実逃避をしている間にも話は進む。ダンブルドア先生に名を呼ばれ、ハーマイオニーに背を押され、ホグワーツ中のほとんどの生徒から心配そうな目で見られて、気が付いたら私は代表生徒の集まる一室に来てしまっていた。その途端に、その部屋の中に居た全員の視線が私に集中する。
「……出たか?」
「……はい」
ハリーさんは『何が』出たかは聞かなかったが、まるで出る事はわかりきっていた事だとでも言うかのように平然としていた。いつもは閉じている両目のうち、右目だけを僅かに開いて私のことを眺めている。
「……ハリーさんが入れたんですか?」
「まさか。そんなものに娘っ子の名前を入れるだけじゃなく、わざわざ四人目として選ばれるように細工をする暇があるんだったらベッドに入って寝るっての」
「……ですよね」
ハリーさんの言葉は間違っていないし、多分嘘でもないだろう。ハリーさんはこんな風に洒落にならない悪戯をする相手は選ぶし、その相手は私ではない。
でも、私の知る限りそんなことができそうな人は限られる。まずハリーさん。それからダンブルドア先生にムーディ先生。多分スネイプ先生にマクゴナガル先生にフリットウィック先生。それからダームストラングとボーバトンの校長二人。機会があったかどうかを置いておけば、ヴォルデモートもできるだろう。やる機会があったかどうかを考えればまずできないだろうし、その他の人達もできるできないで言えば多分できるというだけの話であって本当にやったかと言う話になると首を傾げてしまう。
一番何をやるかわからないからもしかしたらやったかもしれないハリーさんは違うと言う話だし、だったら後は誰がやったのか、こんなことをした狙いはなにかと言う話になる。
私が見たところ、ダームストラングとボーバトンの校長二人はそんなことはしようとしないだろう。むしろ、できるのだったら自分達がやろうとするはずだ。
そして、ホグワーツの教師達はまずそんなことはしない。マクゴナガル先生は結構生徒思いのいい先生だし、フリットウィック先生はこう言うことでズルはしようとしない。スネイプ先生は少し怪しいけど私を大切に扱ってくれるし、ダンブルドア先生はもっての他。
……となるとムーディ先生か、あるいは外部の第三者って事になるんだけれど……外部の人は招かれない限りホグワーツには入れない。だから第三者っての線は消えて、残るのはムーディ先生のみ。
……まあ、もしかしたらクラウチさんやバグマンさんがやったのかもしれないけれど、あの二人は完全に中立であるように魔法契約に縛られている。一校だけ代表選手を増やすなんて、間違いなく個人の裁定の域を越えた事であることは間違いないだろう。
残るのは、やっぱりムーディ先生ただ一人。
……という話をハリーさんにしてみたら、よしよしと頭を撫でられた。当たっているとも間違っているとも言わなかったけど、ハリーさんの手が優しかったからなんだかどうでもよくなった。
……あと、焼おにぎりが美味しい。ハリーさんはどこででも美味しいご飯が作れて凄いなぁ……材料がどこから出てくるのかを考えなければ、練習で何とかできるだろう。
料理は化学。だったら同じことをやれば誰でも同じものが作れるはず。私もいつか……!
次回作は……?
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鬼滅の刃
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鋼の錬金術師
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金色のガッシュ
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BLEACHの続き
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