ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 side エリー・ポッター

 

 ボーバトンとダームストラングの代表団が来た。ボーバトンの代表団はわざわざこんな寒い中を薄い絹のローブくらいしか着ず、マントの一枚も羽織ることなくやってきた。

 ホグワーツはイギリスにあり、ハリーさんの話ではボーバトンは確かフランスの学校だったはずだから、季節的には同じ北半球の冬に近いはずなんだけど……冬にあんな薄着じゃあ凍死しちゃうよ? きっと後で何かを着たりするんだろうけど。

 

 そんなボーバトンの代表団の中で最も目立つのは、間違いなくあちらの校長であろうマダム・マクシームだろう。ハグリッドと同じくらい大きくて、けれど私がハグリッドに慣れてしまっているせいかハグリッドよりもずっと大きく見える。

 そして生徒達の中で最も目立っているのは……名前は知らないけれど、ロンがみとれるほどに美しい少女だった。なんとなく、こちらを見下している空気がボーバトンの生徒全体に広がっていたけれど……まあ、見下すだけなら構わない。こちらに被害が来なければ、無視されていても全く問題は無い。ただ、必要な時に適正な判断をして、その通りに動いてくれるならば……の、話だけれど。

 勿論その辺りは信用している。多少の贔屓くらいはするかもしれないけれど、あくまでもバレないように、こっそりとやるだろう。例えば、事前に試練の内容を教え、さらにその試練をクリアするために必要な呪文を教え、習得のための協力を惜しまない……とか。

 流石に試練の本番で点数を弄るのはよくない。あからさまに贔屓をしている所を見せてしまえば、その学校の品位が落ちてしまい、名声もなくなってしまうからね。

 もちろんある程度なら見逃されるだろうし、優勝さえしてしまえば周りが何を言ったとしても負け犬の遠吠えと言えるのだろうけど、それでもしも負けてしまったら名声はなくなるだけでは済まない。

 ……まあ、私の知ったことじゃないし、そんなことになったら自業自得で全てが処理されることになるだろうけど。

 

 そしてダームストラングの代表団はと言うと、なんと水の中を進む巨大な船でやってきた。どうやったらあんな大きな船が突然湖に現れることができるのかと思ったけれど、普通に考えてみたら中に入っている物ごと小さくなって水中を進んで行けば川を逆走して湖に来ることだってできるだろうと思い直す。

 魔法の道具には色々な種類がある。沢山の物を持ち運びできるようになる鞄に、持ち運びが楽になるようにポケットに入るくらいまで小さくすることのできるトランクなんて物だってあるんだから、さっき言ったような船だってあってもおかしくはない。

 ホグワーツには特殊な状況を除いて『姿あらわし』はできないと言うことだけど、屋敷しもべ妖精の『姿あらわし』や『移動(ポート)キー』なら効果を発揮するらしいので……もしかしたら水中を進んできたのではなくて水中から水中に転移してきたのかもしれないけれど、やり方も知らないしできないし、ついでに本当にそんなことができるかどうかすら私には確証がないので考えるだけ無駄だとも言える。

 ハリーさんのように沢山の情報を持っているならそうやって考えることでなんらかの答えを得ることができるのかもしれないけれど、残念ながら私にはそんな沢山の情報を得ることはできない。やり方も知らないし、正直なところ私は見知らぬ人に話しかけるのも見知らぬ人から話しかけられるのも苦手なのだ。

 

 だから、私はダームストラングの代表団を率いてやってきたカルカロフと言う校長の姿が見えた時にはすぐさまその姿を観察し始めた。突然、何も知らない人の前に立つことになったら怖くて震えて何もできなくなってしまう。私は、きっとホグワーツの誰よりも臆病だから。

 

 観察を始めて気付いたことは、カルカロフと言う男は基本的に見栄っ張りだと思われると言うことだ。一人だけ生徒と違う服装ををしているのは校長として当然のことかもしれないけれど、自分の弱点を必死になって隠そうとしているように見える。

 それから、どんな時でも目の奥が笑っておらず、いつでも誰かの弱点を探ろうとしているように感じる。これは、私がそういうことをいつもしているから予想ができたことで、私の場合は弱点を探すと同時に相手に必要以上に嫌われないようにするための……云わば護身のための物だけれど、カルカロフはそれを攻撃のために使おうとする野心に満ちていた。

 そしてそのカルカロフが連れてきた生徒達の中でも一番目立つのは、間違いなく彼……ブルガリアのクィディッチ・ナショナルチームのシーカー、ビクトール・クラムだろう。

 前に彼の試合を見たけれど、彼は確かにいいシーカーだったように見えた。世界中にファンは多いだろうし、このホグワーツにだってたくさん居るはずだ。

 

 ……まあ、それでもクィディッチの腕でハリーさんなハリーさんによるハリーさんチームには絶対に勝てないだろうけれど、ハリーさんは別格中の別格だということで除外する。

 しかし、ハリーさんを除いたとしてもこのホグワーツではそこまで強くはないように感じる。スリザリンのマルフォイに、クラッブとゴイル。ハッフルパフのセドリック。グリフィンドールで言えば私。箒の性能差を加味すれば多分私が一番で、クラムは良いとこ三番か四番と言った所だろう。

 レイブンクローのチョウは確かに飛ぶのが上手ではあるし、箒の性能差を考えなければ間違いなく上位に食い込むことができるだろうけど……流石に圧倒的すぎる箒の性能差から私にもクラムにも勝てはしないだろう。

 

 ……ちなみに私がクラムに勝てると豪語しているのは箒の性能に頼ったものだけではなく、以前の試合で私は観客席から……つまり選手達に比べてかなり遠い場所から、クラムがスニッチを見付けるよりずっと早くにスニッチを発見していたからだ。

 クラムがスニッチを見付けるまでに、わざとチェイサーの動きに集中してスニッチを見失うようにしてから六度、私はスニッチを見付けては見逃している。私のネビュラスの性能を考えれば、アイルランドが三回得点する前には試合は終わっていただろう。

 とは言っても、別にクラムが無能だとか言う気は欠片もない。クラムはクラムで優秀だからああしてナショナルチームに参加していられるんだろうし、実際にあんなところで飛ぶことになったら緊張してスニッチを見つけることができるかどうかはわからないしね。

 

 ……まあ、そんなことはどうでもいい。私が三大魔法学校対抗試合に参加することがない以上、ダームストラングとボーバトンの生徒の誰が対抗試合に参加して、どんな結果が残ることになろうとも私の知ったことじゃない。

 そんなことよりも、ずっとずっと大切なこと。それは…………。

 

「……いただきます」

 

 この、学校の屋敷しもべ妖精達が頑張って作ってくれたものだろう料理の数々をお腹に納め、その味を楽しむことだ。

 

 

 

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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