ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 side エリー・ポッター

 

 ハリーさんの作った新薬……まあ、胃薬なんだけれど、それを沢山受け取った。

 以前の薬に比べてやや薬効が強くなり、ついでに副作用は弱くなっているそうだけれど……無いわけではないらしい。

 そもそも以前の薬だって用量・用法を守って正しく使えば副作用が出るようなこともなかった筈なのだけれど、それについてはもう自業自得と言う他ない。今度はちゃんと瓶に書かれた注意書をしっかりと読んでから、その用量の範囲で使おうと思う。

 

 えっと……?

 

『世界樹の滴(5倍濃縮)~フォイのような胃袋を貴方に~』

 

 ……なんだか凄く飲みたくなくなった。凄まじい名前を見てしまった。頭が痛くなってきそうだけれど、とりあえずちゃんと何が使われているのか見ておかないと……。

 

『原材料名:賢者の石、世界樹の滴、不死鳥の涙、超万能薬、魔力、気合い』

 

 …………気合いって……他のも気にはなるけど気合いって……一番ましな材料が魔力って……いったいなんなんだろうこの薬。胃薬に胃を攻撃されるなんて、スネイプ先生でも考えないよ。

 少し迷いはしたけれど、私は更にラベルに書かれた注意事項などを読み進めて行く。

 

『薬効:全身不随、全身麻痺、昏睡、薬物中毒、毒物、四肢切断、呪詛、その他病・損傷全般の症状に効果があり、たちどころに回復させますが、飲み過ぎると開腹してから回復します』

「お腹開くの!?」

『開きます』

「会話が成立しちゃった!?」

 

 世の中の理不尽を嘆きたくなる気持ちを抑えて、私は更に読み進めて行く。

 

『服用量:大人は毎日二回、朝起きた時と起きてからきっかり十二時間後に一粒ずつ。子供は寝起きに一粒お飲みください。飲みすぎますと、開腹してから回復した後に老化が遅くなることがありますが、気合いでなんとかなりますので恐れずにGO』

「GOしないよ!? しないからね!? と言うかなんで推奨しちゃってるの!?」

『開発段階の名称が【伝説の勇者フォイの奇妙な大冒険】だったので』

「混ざりすぎ!? なんだか色々混ざっててよくわからなくなってきたよ!? それに意味わからないし!また会話が成立してるし!」

『まあまあ、胃薬でも飲んで落ち着いて』

「胃薬に言われたくないよ!?」

 

 何故かさっきから私は胃を守ったり治してくれたりする筈の胃薬から攻撃を受けている。流石はハリーさんお手製の胃薬、私には想像もつかないことを平然とやってのける。痺れないし憧れもしないけど、ハリーさんがいったいどんなことを考えているのかを知りたい。いや本当に。

 そう言うことで、何か知ることができるかもしれないのでまた読み進める。どうしても駄目そうになったら胃薬を使えばいいしね。

 

『なお、この薬の効果は体質や体格にもよりますが、大人でおよそ十二時間。子供ではおよそ二十四時間となっています。用量・用法を守って正しくお使いください』

 

 ……そこまで読んで、私は溜め息をついた。……要するに、この薬は副作用を抑えるのはそこそこに止めておいて効果を上げたと言うことだろう。副作用を完全に無くすのは、やっぱり不可能だったようだ。

 ……と言うより、正確には副作用ではないのかもしれない。基本はどれもこれも体力を回復させ、身体を健全な状態にするもの。今までに消費したテロメア等も一緒に回復させているとすれば、老化が遅くなる……正確には寿命が延びる理由もわかる。

 って事は……これさえあればある意味不老不死になれるのかもしれない。死ぬときは死ぬし、正確には自分を再生しているから不老と言うわけではないだろうけど。

 

 そこで、まだ瓶に何か書いてあるのに気づいた。

 

『なお、体質に合わない場合は回復しすぎて全身の細胞が無秩序に分裂と再生と成長を続けて癌細胞の塊のようなものになる可能性も十分にございますので、薬に直接触れた時に手の細胞が分裂を始める方は服用をご遠慮ください。エリー・ポッター様にはそんなことは起きませんので、安心して飲んでいただいて結構です』

「おまけみたいに書かれてたくせに最後の最後の情報が怖すぎる!?」

『セキュリティのようなものです』

「やっぱりまた会話が成立しちゃったよ!? なにこの胃薬!?」

『世界樹の滴(五倍濃縮)~フォイのような胃袋を貴方に~』

「名前のところをチカチカ光らせなくっていいよ!」

『確かにこうして名前の部分を光らせたのは私だ。だが私は謝らない。貴方ならばきっとこれを乗り越えてツッコミを入れつつ飲んでくれると信じていますから』

「でも謝らないんだね?」

『謝りません』

 

 なんだか凄く疲れたので、私は胃薬を一粒出して水で流し込んだ。生活が厳しくなって水道代やガス代を払うのが大変になった時のために、アグアメンティとインセンディオはすぐに使えるようになった。やっぱり人間命が掛かっていると成長が早いよね。悲しいけど。

 

 ……とまあ、こんなわけで私は毎日こうして新しい胃薬を飲むようになった。結果として『闇の魔術に対する防衛術』の授業でムーディ先生がかけてきた『服従の呪文』がムーディ先生に増幅反射されて、ムーディ先生は暫く教室中を蛙跳びで跳ね回り続けたけれど、それはそれ。ハリーさんがやったやつよりはずっとましだろうしね。

 ……胃薬効果もハリーさんのせいだけど。

 

 ちなみにハリーさんがやったのは、『服従の呪文』で操られていることにしてムーディ先生に足払いをかけて転がして全身を関節技で固めながら机をどかして作られた広い場所を転げ回った。

 ハリーさん曰く『ローリングクレイドル』とか言う技らしく、普通なら『痛い』で済むはずがハリーさんがやったせいで何度も転がった所があっという間に削れてしまった。

 当然、そんな凄まじい加速度を受けては結構な歳になっているムーディ先生が耐えられるわけもなく、ムーディ先生はしばらく救護室の住人となった。

 マルフォイだったらあれくらい三分もあれば回復しきって平然としてそうだと思うけれど、マルフォイもまたホグワーツの誇る人外の一人なので比較対象にするのは辞めることにした。

 

 ……なお、ホグワーツの人外達は割と多く、今ではロン、ハーマイオニー、マルフォイ、クラッブ、ゴイル、セドリック、フレッド、ジョージ、コリン……それとあと各寮に何人かずつ居るそうだ。

 グリフィンドール出身の人外が多いのは、ハリーさんがグリフィンドールに居るから色々と影響を受けることが多いかららしい。これからはきっともう少し増えていくことになると思う。

 

 ……ボーバトンとダームストラングの人達まで人外になっちゃったらどうしよう?

 

 

 

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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