ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
授業が始まるのは学校に到着した次の日。運び込まれた荷物を全部自分の使いやすい場所に置くだけで時間の大半を使ってしまうので準備はあまりできないけれど、そもそも時間割を渡されるのが当日の朝になってからなのでそれもある意味では仕方ないと言えるかもしれない。
今日の……つまり、月曜日の授業は一時限にハッフルパフと合同の『薬草学』、二時限目にスリザリンと合同の『魔法生物飼育学』。午後には『占い学』が二時限続きであるのがちょっと……どころじゃなく嫌ではあるけれど、実際に被害を受けているハリーさんが何も言わないうちは私にできることなんて何もない。
それはそれとして、私は一時限目の『薬草学』の授業に向かう。ブボチューバーと言う植物から膿を搾り取るという授業だったのだけれど、やってみたらこれが結構楽しかった。
腫れ草の出来物をつつくと黄緑色の膿がたっぷりと溢れ出し、それをできるだけ溢さないように瓶に集めていく。なんと言うか、よくわからないけれど満足感がある。
ちなみにこの膿はとても貴重で、頑固なニキビに素晴らしい効き目があるんだとか。私は今までニキビなんてできたことはないけれど、世の中の女性の大半にとっては救いの神にも等しいと言われるほどに愛されているんだとか。
そうして『薬草学』の授業を終えてから、私達はハッフルパフ生と別れて『魔法生物飼育学』の授業に向かう。なんだか嫌な予感がするけれど、授業なんだから仕方がない。
「……嫌な予感がするんだけど」
「……エリーも? だったらこれは気のせいじゃないみたいね……」
「ハーマイオニーも? ロンやマルフォイもそう感じてたりするのかなぁ……?」
「さあ、どうかしらね? ドラコはともかく、ロンはかなり鈍いから……案外気付いてないのかも」
ハーマイオニーにまで鈍いと言われちゃうロンってなんなんだろうね? ハーマイオニーは自分に対する恋愛感情に対して、どこかの小説や漫画やアニメに出てくる鈍感系主人公にすら匹敵するほどの鈍さを誇るのに、そんなハーマイオニーにすら鈍いと言われちゃうロンって……。
本人が聞いたら全力で否定しようとするだろうけど、実際に恋愛だったらともかく普段のことではロンはかなり鈍い方に入るから……否定しようにも自分の事をちゃんと理解していれば否定することはできないはずだ。
それでも否定したいと言う人もいるけれど、そこまで否定したいのならまずは自分が変わって見せなくちゃいけない事くらいは理解してほしい。
……だからね? ハグリッド。お願いだからそんな奇妙な生物(しかも恐らく新種)の面倒を四年生に見させようとしないで? 去年にも『やりすぎだ』ってお説教を受けたんだよね? なんでまた飛ばしちゃうの? そんなことばっかりしてるから色々と危ないことになるんだよ?
そんな風なことを考えつつ、スクリュートに食事を与えていく。こんなものでも一応授業で使う魔法生物だし、もしかしたら何か特別な効果でも見つかったりするかもしれないし……まあ、一応可能性としてはけして無いとは言い切れないから……。
……確率的に一千万分の一%にすら届かないような僅かな可能性でも……『無い』って言い切ることはできないからね。
数学的には確率がある程度より小さければ無いと言い切ってもいいそうだけれど、ロンとマルフォイが自信満々に口を揃えて『魔法使いにとって確率なんて単なる数字。あとは勇気で補えばいい』って言っていたし……確率が低くても無いと言い切るにはまだまだ弱い。
「……まったくあの二人はエリーに変なこと吹き込んで……」
「? どうしたのハーマイオニー?」
「ちょっとロンとドラコにお説教をしてくるだけよ」
ハーマイオニーはそう言って、スクリュートにフタエノキワミアッ───!をしているロンと、やっぱり今年も凄い襲われているマルフォイに近付いていった。両手が朱金と蒼銀の二色の炎に被われているように見えるけれど、ハーマイオニーはどうやら何か変なものに目覚めてしまったようだ。
……昔はハーマイオニーもロンもマルフォイもクラッブもゴイルも、ただの人間らしい人間だったはずなんだけどなぁ……いったいいつからこんな超人的な人間になってしまったんだろう?
「
「「たわらばっ!?」」
スクリュートの相手をしていたロンとマルフォイの身体から、見慣れない変な核のようなものが引っこ抜かれる様を幻視した。実際にはそんなことにはなっていないんだろうけれど、それでも見えてしまったのだから仕方無い。
……でもちょっと不安だから、後で二人に話しかけて体調は大丈夫か聞いておこう。もしかしたら外見には出ていないだけで中身が色々抜かれてるかもしれないしね。
確か、そう言う技があったよね。身体の外側には全く傷をつけず、内臓や血液だけを抜き取るって言う技(?)が。名前は確か……キャトルミューティレーション? だったっけ?
……そうか、ハーマイオニーは宇宙人だったんだ。だから……。
「エリー? また何か変なことを考えてない?」
「……考えてるかも?」
「素直でよろしい。……何か言いたいことは?」
にっこりと笑顔を浮かべているハーマイオニーに、私も笑顔を浮かべ返してこう言った。
「ハーマイオニーと結婚した相手は、間違いなくハーマイオニーの尻に敷かれるね。もう既に二人敷いてるみたいだし」
「五月蝿いわよ」
ハーマイオニーは私の頭をその腕で締め上げた。確かヘッドロックって言うはずだけど、締め上げられる頭は痛いのにハーマイオニーの腕はなんだかぷにぷにして
「誰の腕に脂肪が多いですって?」
「私何も言ってな痛い痛い痛い痛い!」
「自分の体重や体脂肪率、年齢に関することには、常に強力な『開心術』効果を見せる……それが女って言う生き物の性なのよ」
「体脂肪率一桁で痩せすぎ判定を貰ってるのに太れなくて体重も増えなくて背も伸びない私にはわからないかな」
「…………」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!なんだか締め上げる力が強くなってるよハーマイオニー!?」
「強くしてるのよ」
「あと胸が鼻を塞いでて息をしづらいんだけど!」
「当ててるのよ」
「嬉しくない!」
結局、魔法生物飼育学の授業が終わるまで、私はハーマイオニーに締め上げられていた。何故かスクリュートすら近付いてこなかったから逃げることもできなかった。
……くすん。
P.S 『占い学』ではまたトレローニーがハリーさんに言い負かされていた。ハリーさんが七月生まれだったとは知らなかったけど……『オーストラリアとか南半球では七月は真冬みたいですね(笑) 俺イギリス生まれですけど(笑)』は酷い回答だと思います。
次回作は……?
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鬼滅の刃
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鋼の錬金術師
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金色のガッシュ
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BLEACHの続き
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他の止まってるやつの続き