ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
ホグワーツ特急に乗って暫くしてからのこと。突然走ってきて私を見つけたマルフォイが、勢いよくコンパートメントの扉を開けて口を開いた。
「ブゥゥゥゥゥルォォォォォォォォイ!」
口を開いたその瞬間にハリーさんに殴り飛ばされたマルフォイは、妙な悲鳴をあげながら狭い廊下を何度も横に往復して反対側の壁と高速で閉じられたこちら側のドアの間でドガダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダァンッ!!という派手な音を立てつつ24回ほどバウンドしてから廊下に崩れ落ちた。
……いやまあ確かにドアを開けたときの音はかなり五月蝿かったけど、出会い頭に顔面パンチは酷いと思います。しかも吹っ飛び具合から見て、明らかにマルフォイ以外だったら死んじゃってもおかしくないを通りすぎて死んでないとおかしい威力だし。
そこで、ひょっこりとクラッブとゴイルが廊下の端から出てきて倒れ臥したマルフォイの身体を後ろから抱えあげて……いなくなるかと思ったら、まるでマルフォイが自分で動いていると見せようとするかのようにマルフォイの身体を動かしてゆっくりとコンパートメントの扉を開けた。
「……やあ愛しのグレンジャー、親友にして恋敵のウィーズリー、我らがホグワーツの良心ポッター。……あとハリーさん。探していたんだが時間はあるかい?」
「……クラッブ、あなたは何をやってるのよ?」
ハーマイオニーが溜め息をつきながらマルフォイの身体を後ろから動かしているクラッブに聞いた。しかしその問いにクラッブは答えず、かわりに隣に立っていたゴイルが答えた。
「フォイが『どうしても自分から伝えたい』って言ってたからな。ハリーさんに殴り飛ばされて半ば気絶した状態で根性で説明した事にするから、見逃しておいてくれ」
「……まあ、別にいいけど。で、なんなのかしら?」
「ああ……ちょっと待ってくれ」
クラッブはそう言うと、ぐったりとしているマルフォイの顔を持ち上げて顎をパクパクと動かしながら話し始めた。ちなみに、あれだけの勢いで殴り飛ばされていたのに、マルフォイの顔には殆ど傷がついていなかったことをはっきりと言っておく。
「実はな……今年はクィディッチの寮対抗試合がなくなるんだそうだ」
「えぶろばしゃっ!?」
クラッブの言葉に驚愕の声をあげてしまったロンがいつものごとくハリーさんに殴り飛ばされて気絶し、私とハーマイオニー、そしてジニーは気絶してしまったロンをいつものことだとスルーしておく。起こしたらまた派手に驚いてハリーさんに気絶させられてしまうのだろうから、ホグワーツに到着する寸前まで起こさないでおいてあげよう。
クラッブとゴイルもその事を理解しているようで、まるで何事もなかったかのように話を続けた。
「それで、クィディッチのかわりにダームストラング魔法学校とボーバトン・アカデミーとホグワーツの三校で、
「
「し、知っているのハーマライデン!?」
「誰がハーマライデンかは知らないけれど、三大魔法学校対抗試合については知っているわ!
遥か昔、ホグワーツだけでなくいくつもの魔法学校が衰退を続けていた頃の話よ。当時の魔法使い達は、魔法を使うことができるようになった原因……つまり、自分よりも遥かに強い存在に襲われる恐怖を忘れ始めていたことが魔法力の、ひいては魔法界全体の衰退を助長していたわ。
そこで行われることになったのが、この三大魔法学校対抗試合なの。かつては高額の賞金と、三大魔法学校対抗試合において優勝したと言うことを大きな箔付けとして利用し、魔法省が本人を望む職につけるように最大限の支援をしてくれることから、参加することとなった大きな三つの魔法学校……今回の場合はダームストラング、ボーバトン、ホグワーツの三校だけれど、それらの学校から多数の生徒たちが参加していったの。
けれど、三大魔法学校対抗試合は言った通り『死を感じさせて恐怖を煽ることで弱体化し始めた魔法力を底上げすること』を目標としたもの。その目標は成功したけれど夥しい死者が出たし、それを見学することになった多くの生徒達も魔法力を上げたかわりに恐怖からトラウマを作ってしまったり、最悪廃人になったと言う話も聞くわ。
最近は全体の魔法力が弱くなってきているなんて言う話は聞かないから狙いはそうじゃないでしょうけど、それでも昔々のやり方をそのままやるのだったら間違いなく死人が多数出ることになるわ。
なにしろ、昔はいくつもある試練のうちの一つのためだけに島を一つ作り上げて無数の魔獣を放ってその中から魔獣の赤子をつれてくる……なんて試練がごろごろしていたらしいしね。
なお、魔法使い達がその島をマグル達から隠すために海の上に三角形に張られた結界こそが、あの魔の三角海域と名高いバミューダ・トライアングルであることは言うまでもないわ!」
ハーマイオニーは全てを語り終えたと言う感じにスッキリした表情になっている。私はそんなハーマイオニーにちょっと聞いてみた。
「……ねえ、ハーマイオニー。ハーマイオニーのそういう知識はいったいどこから仕入れてくるの?」
「この本に書いてあったわ」
そう言ってハーマイオニーが鞄から取り出したのは、『古き三大魔法学校対抗試合の表と裏』と言う本で、出版社は……やっぱり『民明書房』だった。
民明書房の本には色々なことが載っている。いいことも悪いことも、本当のようなことも嘘くさいことも、予想できることもできないことも、本当に色々。
……ハーマイオニーはそう言う不確定な出来事が載っている本はあんまり好きじゃないだろうと思ってたんだけど、割と愛読書としているらしい。
「……まあ、グレンジャーが言った通りの三大魔法学校対抗試合があるから今年はクィディッチが無いんだ。試合場はホグワーツ限定らしいからそこまで危険なことはないだろうが、俺……じゃない、僕かハリーさんじゃなかったら命の危険があるから参加は辞めといた方がいい……って話だ」
「参加なんてしないわよ面倒臭い」
「なんで進んで命の危機に曝されに行くの? ひょっとして馬鹿なの? もしかして死ぬの?」
「参加したとして、ハリーさんに勝てる自信のあるやつだけでしょwww」
「俺達もそう言ったんだけどなwwwフォイの奴聞かなくてwwwwww」
「フォイwww」
「ドラコってばwww」
……そう言えば、さっき気になったんだよね。
「ねえ、ハーマイオニー?」
「ふふふ……なに? エリー」
「大したことじゃないんだけどね?
なんで『愛しのグレンジャー』って呼ばれて普通に受け答えしてたの?」
ハーマイオニーは全速力で目を逸らした。逸らした先でジニーと目が合ってそこから更に逸らした。暫く見つめ続けても冷や汗が増えるばかりで答えてはくれなかったので、しょうがないから流すことにした。
……今度マルフォイに聞いてみよう。
次回作は……?
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鬼滅の刃
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鋼の錬金術師
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金色のガッシュ
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BLEACHの続き
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