ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
今日は大変な話を聞いてしまいました。なんと、私には兄が居たそうなのです。
その事を知ったのは『三本の箒』でのこと。ハリーさんに言われた通りに透明マントを被ってバタービールをちびちび飲んでいたら、かなり疲れた表情の魔法省大臣といつも通りのマクゴナガル先生にフリットウィック先生、そしてハグリッドがやって来て、私の座る席に程近い場所に座って話を始めた。
話の内容はシリウスおじさんの事が大半だった。シリウスおじさんが犯罪者じゃなくってよかっただとか、これで私のお父さんも喜ぶだろうとか、ピーターがシリウスおじさんを嵌めただとか、それはもう色々と。
その事についてはハリーさんの話からなんとなくわかってはいたのだけれど、酔ったハグリッドが呟いた言葉は私の全く知らなかったことで、ハグリッドは意識して私にその事を隠していたようだった。
……まあ、その『隠し事』って言うのがハグリッドが私をポッター家から連れ出した本人で、お父さんもお母さんも……今まで存在すら知らなかったお兄さんも殺されていたと言う話だったのですけど。
私は魔法世界では知らぬものが居ないほど有名で、それに合わせて私の両親も存在だけは知られていたようだったけれど、兄の事は殆どその存在すら知らない人ばかり。そして、両親がヴォルデモートに殺されているだけでも私にとってはショックな出来事だろうに、さらに兄の事を伝えるようなことはできないと……知らなければ、初めから居なかったことにしておけば、私が悲しむことも無いだろうと言う判断でそれは行われたようで。
けれど、それはあくまで隠しきれた時の話。今こうしてその事を知ってしまった私は、なんとも言えない孤独感のようなものに襲われていた。
「……ハグリッド。ポッターの兄の名は、何と言ったのですか?」
マクゴナガル先生の涙混じりの問いかけに、ハグリッドは酔いと涙に多い尽くされた声で返した。
「……あの子は、ハリーだ。ジェームズそっくりの真っ黒な髪に、リリーと同じ緑色の綺麗な目をした子供だった……エリーをあそこから連れ出したときに、リリーと同じように目を見開いて……エリーを守るように覆い被さっていた……妹思いの……」
そこで、ハグリッドの言葉が止まる。涙のせいで元々途切れがちだったのだけれど、ついに完全に詰まってしまった。
……でも、黒髪で綺麗な緑色の目をしたハリーって名前…………あれ、なんだか一人心当たりがあるよ? それも産まれて間もない頃に自分の家が襲われたのをいいことに自分の死を偽装して悠々自適に暮らしていたとしても全くおかしくないって思えるような人が約一名居るよ!?
「……オライムレイの事では?」
「いや、ダンブルドア先生はオライムレイにはちゃんとした生まれがあるとおっしゃっていた。三代遡っても魔法使いの家系に繋がることのない、生粋のマグルの家系に生まれたと」
「……オライムレイなら騙し切れるような気がするのですが」
「……俺もだ」
……あ、やっぱり騙しきれそうですか? さっすがハリーさん、ダンブルドア先生の実力をよく知っている人達からもそういう風に言われるだなんて、普通の人にはできないですよね。ハリーさんは凄いです!
……そして、そんな凄く常識外れなハリーさんと同じ血を私が引いている可能性について……。
…………落ち込むなぁ……。
両手を床についてorzってしたら、それと同時に透明マントが脱げた上に大きな音が出てしまった。先生達がこっちを向いたのがわかったけれど、正直なところ今はそんなことを気にしていられる余裕はない。
ハーマイオニーかロン、そうでなくともマルフォイ達の誰かが一緒にいれば私が崩れ落ちるのを防いでくれたり、もしくは私の身体にマントをかけ直してくれたりしたのかもしれないけれど、あいにくと今の私は一人きり。一回見つかりそうになったところからもう一度隠れるのはちょっと無理があった。
「!ポッター……いつから……」
「……ははっ……私とハリーさんは兄妹かぁ……うふふふふふ…………そっかぁ……兄妹かぁ……私もハリーさんみたいに異常識になっちゃうのかなぁ……あはははははは…………」
「エリー!戻ってこいエリー!」
「あはははは……お兄ちゃんかぁ……結婚は確かにできないよねぇ…………あはははうふふふ………………うつだしのう」
「死ぬなっ!死ぬんじゃねえエリー!」
かなりのショックを受けた私は、焦点が何にも合わなくなった目で何を見るわけでもなく俯いた。と言うかあれだね、心の折れる音がしたような気がする。
いくら頑張っても私じゃあ血縁をどうこうすることはできないし、ついでにハリーさんと血縁と言うことは私にも異常識への道が開けていると言うことでもある。
……これは折れてもしょうがないよね。頑張ってツッコミを続けてきた私が、もしかしたら異常識であるハリーさんに一番近いだなんて。
……よし、とりあえずこうしてゆらゆらとする意識をここに止めるのはもうやめよう。今は記憶を失うべく、気絶しておこうかな。先生達がいるから、気絶しても放置されることは無い……と、思いたい。
「エリー!エリー!? しっかりしろ!エリー!」
……ああもうハグリッドは声が大きいんだから。これじゃあよく眠れないじゃない。記憶を失うくらいよく寝て、それから問題を解決しに奔走しなくちゃいけないんだから寝かせてよぉ……。
あと、ハリーさんの言った話って、きっとこの事だったんだろうと思う。正確には私には兄が居たと言うことと、これは確定じゃないけれどハリーさんが私の兄かもしれないって言うことを理解させるというものの二つ。こうやって『もしかしたら兄かもしれない』って思わせておけば、私からのプロポーズ攻勢が弱まるって思ったんじゃないかな?
……狙い通りですよハリーさんめ……今度また男子寮に潜り込んで一緒の布団で寝て既成事実っぽい物を作って外堀から埋めてやるぅ……。
きっとハリーさんは私が入ろうとした瞬間に私を寝かしつけて女子寮の私の布団に放り込んだりするだろうけど。
ハリーさんは私が布団に入ってても全く驚いたり動揺したり恥ずかしがったりしないけど……私って魅力がないのかなぁ……?
確かに胸は小さいし、お尻も大きくないし、寸胴だし、身長も100センチギリギリだけど……やっぱりダメかなぁ……?
……お休みなさい。
P.S 起きたら医務室のベッドだった。スネイプ先生から栄養剤みたいなものがずらっと枕元に並んでいたのには、ちょっと驚いた。
……それと、なにか大切なことを聞いたような気がするのだけど、なにも思い出せない。何があったのだろうか?
次回作は……?
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鬼滅の刃
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鋼の錬金術師
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金色のガッシュ
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BLEACHの続き
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他の止まってるやつの続き