ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
吸魂鬼が学校からいなくなり、不思議と雨も止んだ。まるであの最悪の天気を吸魂鬼が作り出していたかのようだったけれど、居なくなった今ならそんなものは全く関係無い。
日刊予言者新聞には、十年と少し前のシリウス・ブラックの誤認逮捕と、十年以上にわたるアズカバンへの拘留についての記事が未だに沢山書かれているし、その事でシリウス・ブラックが受けた社会的・精神的・肉体的な被害をどうやって埋め合わせていくのかと言う話が新聞以外でも流れ続けていた。
そして、そのシリウス・ブラックから私に手紙が届いた。なんだか見慣れない……と言うか、間違いなく初めて見る小さなふくろうが、自分よりも少し大きいくらいの手紙を運んだことが嬉しいのかひゅんひゅんと飛び回っている。
そのふくろうを優しく捕まえてから手紙を取って広げてみれば、そこにはいつかにハリーさんから聞いたような話が並んでいた。
シリウス・ブラックは私のお父さんの親友であったこととか、私の両親を救えないで悪かったとか、そういうことがたくさん。
それと私の名付け親としてホグズミードへの外出許可証も同封されてたし、ついでに手紙を運んできてくれた小さなふくろうを、スキャバーズと言うペットが居なくなってしまったロンへと渡してやってくれと言う……なんとも気のいいおじさんと言う感じの言葉が綴られていた。
けれど、何よりも驚いたのは最後の方に書いてあった一文で、脱獄する時に自分の杖を取り戻す取引で家とその中にある財産を失ったけれど、グリンゴッツに納められている金貨の方は取引の材料に入っていなかったそうなのでそれで家を買ったら一緒に住まないか……と言うお誘いの言葉だった。
……正直なところ、今の私にとってこのお誘いは凄く魅力的な話だ。ダーズリーの家がなくなってしまっているから帰る場所は無いし、保護者もいない。保護者はともかくとして家が無いと言うのは凄く困ることだったし、今年からどうやってホグワーツの休みの間を過ごしていこうか不安に思っていたところだったし。
家については多分あの風通しのいい物置よりはいいところだろうし、ご飯だってちゃんと人間の食べるものをもらえるだろう。
……うん、受けない理由は無いね。とりあえず料理を練習して、自分でもご飯を作れるようにならないといけない。シリウスさんが料理を作れるかどうかは知らないけれど、作れなかった時のために自分で作れるようになっておくのも必要なことだしね。
……それはそれとして、もうすぐ今年最初のクィディッチの試合がある。相手はスリザリンがすることになっていて、マルフォイが私達に宣戦布告をして来た。
ただ、その宣戦布告はクィディッチ・チームにのみなされたものではなく、全く別のとある一個人にも向けられたものだった。具体的に言うと、ロンに。
朝、私達が食事をしているグリフィンドールのテーブルにマルフォイが来たところまではいいとして、問題はそこから先のこと。グリフィンドール・チームに宣戦布告した直後にマルフォイはハーマイオニーに向き直り、誰に憚ることなくこう言ったのだ。
「グレンジャー!この試合で僕がスニッチを取ったなら、僕と付き合ってくれ!」
と。
その事でロンがかなり喧嘩腰にマルフォイにつっかかり、水牛が喧嘩をするときに短い角をグリグリと突き合わせるかのように額を押し付けてメンチを切りあっている。ちなみに私はそんな現状を見ながらメンチカツを切っている。美味しい。
「フォ~~イ~~……」
「オロロ~~~ン……」
「メンチカツ美味しー♪」
「厨房にリクエストした甲斐があったよ」
「……この状況、どうしようかしら……」
ハーマイオニーは頭を抱えていた。ハリーさんは今回は一切手を出していないはずなのに、それでもホグワーツは回っていく。やっぱりハリーさんが自重するだけでは何かが変わるなんて事はないみたい。
ハリーさんは自分の前に現れた料理を適当につつき、私はハリーさんの隣でそこら中にある料理から食べたいものを選んで食べていく。
……とりあえずここで一言。
「この状況でハリーさんが何もしないとか来年が怖い」
「いやいや、自重してと言われたから自重しているだけだぞ? それに来年には中々楽しげなイベントがありそうな気がするし、今年はもうあまり大きな出来事は無い気がするから大人しくしているのも吝かではない」
「ハリーさんの『楽しげなイベント』で本当に楽しかったことなんて中々無いような気がするんですけど」
「俺が何かした結果として起こる訳じゃなく、何をしたところで起きていただろう事まで俺のせいにされちゃあ堪らないんだが。今回は……いや、今回ってか来年だが、俺のせいではないことを宣言しよう」
「フォ~~~イ~~~……」
「オロロロロ~~~ン……」
「……クラッブ、ゴイル。ドラコの事をお願いできない? ちゃんとスリザリンの選手控え室にまで連れていってあげてほしいのだけど」
「ああ。ウィーズリーの方は頼んだぞ、グレンジャー」
そう言うと、クラッブとゴイルはマルフォイの方に、ハーマイオニーはロンの方にゆっくりと歩いて近付いていった。
ごりごりと額をぷつけあっている二人の体を引き剥がし、ハーマイオニーはロンの喉に蛇のようにうねる二本抜手を突き込んだ。
「
「は!? いや待て何そのわzぐべらっ!?」
同時に、マルフォイの頭をクラッブが大きな手でアイアンクローのように掴み、ゴイルが全体重を拳に集約させるように身体を捻ってマルフォイの鳩尾を殴り飛ばした。
「クラッブ・グラップ!」
「ゴイルスクリューブロー!」
「は!? いや待てお前達何を考えでぇっ!?」
時速180キロくらいで飛ぶ箒から叩き落とされても大丈夫なマルフォイにダメージを与えられるクラッブとゴイルは中々凄いと思う。それと、真っ赤に燃える抜手を人に叩き込んで指を折ることも火傷することもなく平然としていられるハーマイオニーもかなり凄いよね。
ハーマイオニーとクラッブ・ゴイルの三人の手で吹き飛ばされたロンとマルフォイは、壁にいい感じに磔になっていた。
そんなマルフォイを運んでいく二人を呼び止めて、私は言った。
「マルフォイに、『負けないよ』って伝えておいて」
クラッブとゴイルは頷いて、気絶したマルフォイをどこかに運んでいった。
……さてと。それじゃあ色々啖呵も切っちゃったわけだし、私も頑張って勝ちに行こうかな。
皆おかしくなっていた、と言う話でした。
次回作は……?
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