ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 ……殺害までは行けず、か。

 ……まあ、いい。どうせこれで真相は明らかになる。

 ……今はまだ、無能な魔法省大臣は校長に指示を貰っているからな。校長にこの男を引き渡せば終わる。

 ……それまで、少し待てよ。シリウス・ブラック。十二年も待ったんだ。もう少しくらい待てるだろう?

 つか、待て。吠えんな!睨むな!ステイ!ステイ!

 

 

 

 

 

 side エリー・ポッター

 

 ハロウィンのパーティから戻ってみれば、グリフィンドールの寮内に見たことのないおじさんが一人とどこかで見たことがあるような気がするおじさんが一人と、真っ黒い大きな犬が一頭居た。それを見てかなりの人数が『ざわ……ざわ……』していたけれど、ハリーさんが現れて二人と一頭を連れてどこかに行ってしまったので心配に思いながらも普通に女子寮の私のベッドに戻った。

 

「心配することなんてないわ。だって、ハリーだもの」

 

 ハーマイオニーはそう言ったけれど、私はそんな軽くは考えられない。ハリーさんだってもしかしたら失敗することがあるかもしれないし、その失敗から最悪の事態になることだって考えられなくはない。

 

「ハリーなら平気よ。あの人達とあの大きな犬が何者かはわからないけれど、私達に敵意があるようには見えなかったもの」

「そうかなぁ……」

「そうよ。ハリーを信じてあげなさいな」

 

 ハーマイオニーは私を抱き締めてそう言った。……なんだか、ハーマイオニーは優しいお姉さんみたいだ。本当はお母さんみたいだって言いたいところなんだけど、そう言うとハーマイオニーは『私はこんな大きな子供がいるような歳じゃないわよ』って拗ねちゃうからお姉さんで。

 けど、やっぱりハーマイオニーは説明の仕方……と言うか、納得させる説明の仕方が上手だ。理詰めだったり感情だったり精神論だったりするけれど、それがするりと頭に入り込んでくる。

 

「……ハーマイオニー、未来で詐欺師になれるんじゃないかな?」

「…………」

「あっ!痛い!ごめんなさい私が悪かったからグリグリするのはやめてぇぇぇっ!?」

 

 私の頭を抱き締めていたハーマイオニーが、今度はグリグリと頭を締め上げてきた。ハーマイオニーのお仕置きは地味に痛いんだよぅ……。

 

「まったく……何で突然そんなことを言ってきたわけ?」

 

 不機嫌そうな表情を浮かべながらも一応気が済んだらしいハーマイオニーが私の頭を放してから聞いてきた。

 

「だって、ハーマイオニーの言葉って凄く納得できるものばっかりなんだもん」

「…………ああ、そう言うこと。それはね……この本のお陰よ」

 

 そう言ってハーマイオニーが自分のベッドの脇から取り出して私に見せてくれたのは一冊の本だった。タイトルは……『これであなたも教祖様!簡単・心理掌握方~入門編~』。だった。

 ……ハーマイオニーはもしかしてホグワーツで新しく宗教でも作るつもりなのかな? 何のためにかは知らないけど、あんまりおすすめはしないよ? 宗教家の頭って言うのは基本的に面倒なものらしいし、ついでに旗頭にされちゃったらもう下りることもできずにひたすらに利用され尽くして自由の無いまま最期の時を迎えるかあるいは暗殺されちゃうかのどちらかの未来を歩むことになっちゃうからね。

 私の場合は旗頭にされちゃっている訳じゃないけれど、それでもヴォルデモートを倒したってことで妙な期待をされちゃうことがざらにある。私はなんにも覚えていないのに、ただ偶然そこでヴォルデモートが死んでしまっただけなのかもしれないのに、私はその時の事をなんにも覚えていないのに……。

 それに、私より優秀な人なんてどこにだっている。目の前に居るハーマイオニーだってそうだし、ハリーさんだってそうだ。私が人より優れていると胸を張って言えるところなんて、クィディッチの腕くらいなものだ。

 

「……一応言っておくけれど、私は教祖になる気は全く無いわよ?」

「そうなの?」

「そうよ。エリーの言った通りデメリットが大きすぎるし、この本自体もただ図書館で見つけたから読んでみただけだしね」

 

 どうやらハーマイオニーは新しい宗教を作る気は無いらしい。だったらなんであんな本を読んでいたのか不思議に思ったけれど……ハーマイオニーだったら『そこに本があったから』って言いそうだ。むしろついさっきそう言ってたっけ。

 私も今度本を読んでみよう。できるなら料理の本があるといいな。自分で料理が……訂正、廃棄された食材にできるものを最低限食べれる程度にする技を、調理技術に昇格させて食事に困らないようにしたい。

 

「ねえ、ハーマイオニー。ホグワーツの図書館に料理の本ってある?」

「……無いことはないけれど、おすすめできるのは少ないわね。もの凄いゲテモノだったり特殊な材料が必要だったり身体にかなり悪かったりする料理本が並んでるし、そもそも初心者用の料理本は探してみた限りでは見当たらないし、見つけたとしてもホグワーツにいる間は料理できるところなんて無いから練習できないでしょう?」

「ハリーさんの携帯調理場を貸してもらうつもり」

「エリーが意外に考えていたことに私は心の底からびっくりしたわ」

「ハリーさんの携帯調理場を初めて見た時にはびっくりしたよね」

「そうね。私としては音楽に合わせて肉を火の上で回しているだけでどうしてあんなに美味しい肉ができるかの方が不思議なんだけど」

「こんがり肉Gだっけ? あれ美味しかったねー。……何の肉だったかは教えてくれなかったけど」

「そうね。あれは反則的な美味しさだったわね。……何の肉だったかは教えてくれなかったけれど」

 

 何の肉かを聞いたら美味しく食べれなさそうだったから聞かなかっただけとも言う。味は……シンプルにして精妙な味だった。塩と胡椒で大胆に味付けされていることと、柔らかくするためにかよく叩かれて筋を細かく切られていること、ついでにすりおろした玉葱に漬け込まれていることでさらに柔らかくなっていることもわかった。

 

「……もう一度、食べたいなぁ……」

「……エリーは冒険者ね。むしろ勇者って言ってもいいかもしれないわ」

「勇者はマルフォイだと思う」

「反論の余地が欠片も無いことは産まれたばかりの赤子でもない限りはわかることね。ドラコが勇者だなんてホグワーツでは誰だって知ってるわ。今じゃシリウス・ブラックよりも有名なんじゃないかしら?」

「かもね」

 

 ハリーさんにあれだけ吹き飛ばされても何でもないことのようにしていられるなんて、まさに勇者!痺れもしないし憧れもしないけど、流石マルフォイ!勇者マルフォイ!

 

 ……さてと。それじゃあ今度ハリーさんに携帯調理場を借りるように交渉しないと。

 

 

 

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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