ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
宿題は終わった。皆がホグズミードから戻ってきてお土産も貰った。つまりこれから楽しい嬉しいハロウィーンパーティだ。去年も一昨年もハロウィーンには何か事件が起きたけれど、今年は起きないでほしいと本当にそう思う。
特に一昨年……私が一年生だった頃の事件のようにご飯が中断されるようなことになったら……私が使えるようになった呪いを片端から原因に撃ち込んでしまう自信がある。実際にそれをする機会があるかどうかは置いておくけれど。
そんな心配をしながらも、私はハロウィーンのパーティを楽しんでいる。いつものハロウィーンと同じようにご飯は美味しいし、いつものハロウィーンと同じように綺麗な飾りつけがされている。ハグリッドが育てたかぼちゃが中身をくりぬかれてランタンのように中に蝋燭を立てられているのは外から見ているとオレンジ色のランプのようでとても綺麗だ。
中身は多分、私が今食べているかぼちゃプリンやかぼちゃジュース、かぼちゃパイ等に使われているんだろう。大きくて美味しいかぼちゃだなんて、ハグリッドはいいものを育てて見せたよね。
ハリーさんはやっぱり食べることに集中しているようで、大きなボウルにかぼちゃの冷製ポタージュスープを……本当にそれ全部食べられるの? って言いたくなるくらいに取っていた。
ただ、そのボウルに流し込まれたスープの量を考えると中身の空間が私にくれたあの鞄のように歪んで広くなっているものだと思う。だって、三十秒間もスープの入った容器を逆さまにしてスープを流し込んでいたのに一滴も溢れていないだなんて、そうなっているとしか思えない。三十秒も流し込めるだけの中身があの容器にあったことも驚きだけれど、それを全部受け止められるハリーさんのボウルにもまた驚きだ。
ハロウィーンの料理にかぼちゃが使われることが多いのは、多分こうやって飾ったかぼちゃの中身をただ捨てるだけと言うのが忍びないからなんだろう。確かに凄くもったいないし、ダーズリーの家で過ごしていた頃の私がそれを見たら地面に落ちていてもそれを食べていたかもしれない。いや、間違いなく食べていた。
今は……地面だったらともかく、ゴミ袋に入れられただけだったら普通に漁って食べちゃうかも? くらい。私も随分と贅沢になったね。
まあそれはいいとして、私はいつもの通りにご飯を食べる。ハリーさんの胃薬のお陰でお腹は壊さないし沢山食べても太らないけれど、身体の成長が凄く遅くなっているから……きっと外から見た私は物凄く沢山食べる子だと思われているんだろう。
それはまあ間違いじゃない。ホグワーツではパーティで出てくる料理に限らず料理全体が非常に美味しいし、実際に体格から考えれば凄い量を食べている自覚もある。ハリーさんの作った胃薬のお陰もかなりあるんだけれど、それを人に言おうと思うほど私は馬鹿じゃない。あの胃薬の事が人に知れたら色々と不味いことになることくらいわかるから。
とにかく、私が沢山ご飯を食べるのはホグワーツで出されるご飯がとても美味しいから。それは間違いない。
それに、全体の空気も良くなり始めている。入学したばかりの頃はテーブルごとに……特にグリフィンドールとスリザリンの間には分かりやすい壁があった。
しかし、今ではハリーさんやマルフォイのお陰で寮同士での交遊があったりするのでそこまで強い反発や敵対は無い。時々一年生がぶつかり合ったりしているようだけれど、どこからともなく降ってくる盥によって粛清されたり、ハリーさんが巻き起こす多くの小規模(ハリーさん談)のイベントによってそれまでの常識を完膚無きまでに破壊し尽くされて……結局普通に寮内での縦の繋がり以外にも寮同士での横の繋がりもできてしまうと言う……実にハリーさん的な力任せな解決法ができてしまっている。
きっとこれはハリーさんが卒業したらできなくなってしまうんだろうけど、それでもきっと残った後輩達が意思だけでも紡いでいくだろう。そのまま世界が平和になってくれればいいんだけれど、流石にそんな大きな事をこの学校からの影響だけで実行するのは無理がある。
「エリー、もうすぐ時間よ」
「ぁむ……ぅむ?」
「だから、もうすぐパーティも終わっちゃうって言ったのよ」
ハーマイオニーに言われて周りを見てみれば、確かに殆どの大皿が空っぽになり始めている。考え事なんてしていたからこんな風に置いていかれてしまうんだろう。
よく見てみたら私のお皿の上には結構な量の料理が積まれていて、ハーマイオニーやロンが私を心配そうな目で見つめている。
「エリー……今日はあんまり食べてないようだけど、大丈夫なの?」
「いつもの半分くらいしか食べてないじゃないか。何か悩みごと? 腹でも痛いのか?」
「だ、大丈夫だよ? ちょっと考え事をしてただけで、調子が悪いとか具合が悪いとか、そう言うのじゃないからさ」
私は笑顔を作ってお皿の上にある山の一番てっぺんにちょこんと載っていたかぼちゃパイを食べて……目を見開いた。
このかぼちゃパイ……甘くない!? デザート用じゃないの!?
もう一口、今度は甘くないものだと理解して食べてみると、味がしっかりとわかる。どうやらこのかぼちゃパイはデザートではなく前菜として作られていたようで、匂いを嗅いでいるだけでお腹が減ってくる。
パイ生地に、潰された上で塩と胡椒を適量混ぜ合わされたかぼちゃ。それからほんの僅かに香り付けのハーブが使われているように感じる。
サクサクに焼き上げられたパイ生地はバターの香りがするし、パイ生地の厚みとかぼちゃの味の濃さが完璧な比……黄金比を作り出している。しょっぱすぎること無く、また間が抜けてもいない。本当に美味しいパイだと思う。
ホグワーツ特急に乗ってこの学校に来た日、入学式で初めてちゃんとしたご飯を食べた時の感動には及ばないけれど、このかぼちゃパイには作った人達の努力の痕が見てとれる。
これを作るために、いったいどれだけの努力を重ねてきたのかはわからないけれど……私はこれを作った人達に敬意を表したいと思う。
……美味しいなぁ……本当に、美味しいなぁ…………。
私はこうして美味しいご飯を食べることができる幸福を噛み締めながら、サクサクのパイを食べるのだった。
次回作は……?
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鬼滅の刃
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鋼の錬金術師
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金色のガッシュ
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BLEACHの続き
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