ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
『闇の魔術に対する防衛術』のクラスは面白かった。色々な魔法生物を実際に見せてくれたし、どうやってこちらに危害を加えようとするかやその対処法を学んだ。
『占い学』ではトレローニー先生が何度もハリーさんの死を予言し、ハリーさんがさらりとそれを受け流していくと言う状態が続いている。ハーマイオニーはあまりいい気分ではなさそうだったけれど、ハリーさんが何も言わないので文句などを飲み込んでいるようだ。きっと、ハリーさんがその予言で悩んでいる姿を少しでも見せていたらもう少し違う反応をしたのかもしれないけれど、まあ、言うだけ無駄な話だ。ハリーさんがそんなことを気にするわけもないのだから。
『魔法生物飼育学』では、ハグリッドは最初の授業にヒッポグリフをやったことを少し怒られてしまったようで、レタス食い虫から少しずつ難しいものに変わっていっている。
流石に初回からヒッポグリフ、そしてその次にもっと危ない魔法生物と言うのは珍しいを通り越して無謀だと言う話をされたそうだ。正直、レタス食い虫より先にヒッポグリフをやった生徒は私達くらいだろうと心底思う。
ちなみに、レタス食い虫から再開した授業はどんどん進み、ハリネズミとナールの見分け方やボウトラックル等……まあ、比較的危なくはない魔法生物について習っている。
けれどマルフォイはどうやら一度は間違いなく動物達から軽く見られてかじられたり針で突かれたりしている。それらが全て効果がないと言うことを魔法生物側が理解してからはそれなり以上にいい関係になるのだけれど、そこまでのことでよくマントや制服の袖がボロボロになると嘆いていた。
「どうしてマルフォイはこんなに魔法生物に襲われるのかな?」
「僕に聞かれたってわかるわけ無いだろう? なんだか初めはむこうが僕のことを下に見ているのと、しばらくじゃれさせてると少しずつ僕に向ける視線が上から来るものから下から来るものに変わってくることくらいしかわからないよ」
そう言ってマルフォイは『魔法生物飼育学』の授業中は脱ぐことにしているらしいマントを持って城に歩き始める。クラッブとゴイルもそれに続き、とある場所で別れてそれぞれの寮に戻っていった。
……けれど、私は知っている。実はマルフォイは『魔法生物飼育学』の授業中に破れたマントや制服の一部を、ハーマイオニーに頼んで綺麗に直してもらっていることを。
ハーマイオニーが針と糸を使って手ずから繕っている訳ではないけれどハーマイオニーも手を抜くことはないようだし、マルフォイはハーマイオニーへのお礼に図書館からハーマイオニーの興味を引けそうな本をいくつか見繕っているのを知っている。
「だから、あんまり意地を張ってると後悔することになるよ? ロン」
「何の話だよ?」
「わからないならわからないでいいし、わからないふりをしているだけならそれでもいいけど、私は後々どうなっても知らないからね?」
……ロンは本当に自覚がないのか、それとも自覚はあるけど認めたくないから何もわかっていないふりをしているのか……多分前者だと思うけれど、面倒と言うか厄介と言うか、なんとも損をしそうな性格をしていると思う。
とは言っても、ロンの人生はロンだけの物なんだから私が無理に矯正しようとは思わないけどね。私も強制されるのは嫌いだし、できればマルフォイにもロンにもハーマイオニーにも幸せになって欲しいとは思うけど。
……三人さえ良ければハーマイオニーが一妻多夫方式で結婚しちゃえば簡単なんだけど、それを言っちゃったら色々と今の状況が壊れちゃうかもしれないので何も言わないでおこうと思う。現状の空気が好きだしね。
こうして普通な学校生活を送っていれば当然のことながら時間は過ぎていく。そして10月になれば、私は今年もクィディッチの練習でグラウンドに出て金色の光を追い回すお仕事が待っている。今年もネビュラスは好調で、去年よりもむしろ私の癖をしっかりと理解して性能を伸ばそうとしてくれているのがわかる。
私はそんなネビュラスからの期待に応えるために、今日もまた高く空を飛ぶ。スニッチを捕まえては離し、しばらく逃げさせてから探し出してまた捕まえる。
今年でキャプテンのウッドは卒業してしまう。だから今年は……今年はどうしても優勝したい。例え、全試合開幕十数秒でスニッチを捕まえて場を白けさせようと、人間にはやらなくちゃいけない時がある。私にとっては今がそうだ。
もうすぐスリザリンとの試合がある。天気は酷い大雨になりそうだけれど、絶対に負けないように頑張ろう。私とネビュラスなら、きっと誰にも負けない。
「……ふぁ……眠い」
訂正。ハリーさん以外には誰にも負けない。ハリーさんにはまず勝てない。ハリーさんがやる気じゃない間にさっさと終わらせないと絶対無理。
そしてハリーさんはやる気がなければ参加しないで、参加した場合はやる気があるって事だから参加が確定した時点でアウト。諦めましょう。VSハリーさんチームとか、どう頑張っても勝てるイメージすらわかないんですが。
「……ハリーと言えば、なんか最近大人しいよな」
練習を終えてすぐ、フレッドの方が私に近付いてきて言った。大人しいと言うけれど、正確にはクィレルやロックハートへの態度が最悪に近かったせいでそう言う相手の居ない今が大人しくしているように見えるだけ。ハリーさん自身は今まで通りにスネイプ先生をからかって遊んだり、マルフォイをフォイフォイしたり、ダンブルドア先生の胃のライフを削ったり、ホグワーツ内に秘密の罠を仕掛けたり、抜け道を自作したり、クヌート銅貨を高速で飛ばしたり、ハグリッドが移動する度にBGMにジョーズのテーマが流れるようにしたり……まあ、けして大人しいとは言えないようなことを繰り返してきている。
それでもフレッドがハリーさんを大人しいと評価すると言うことは……フレッドはハリーさんの言うところの『普通』に多少なりとも染まってしまっているんだろう。
一度『普通』に染まってしまったものは、二度と普通の感覚には戻れない。今のところフレッドの『普通』の感覚はハリーさんに関する事に限定されているようだからまだ大丈夫だろうけれど、それがいつの間にかハリーさん以外の事にも適用され始めたらそれは危険信号。普通の感覚はどんどんと『普通』の感覚に染められて行き、気が付いた頃にはマルフォイと同じような状態になってしまうのだろう。
とりあえず、私は信じてもいない神様にフレッドの無事をお祈りしておいた。
次回作は……?
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鬼滅の刃
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鋼の錬金術師
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金色のガッシュ
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BLEACHの続き
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他の止まってるやつの続き