ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
闇の魔術に対する防衛術の授業で、私達はまね妖怪を退治する術を学んだ。ルーピン先生が言ったように自分にとって怖いものを思い浮かべると、それはそれは沢山あってどれになるのかわからない程だった。
例えばそれは私の話を聞かずに私を叩くダーズリー一家だったり、私用の縁の欠けた小さなお皿にほんの少し盛られたスープとそれを私に四つ這いのまま手を使わずに食べることを強制してくるペチュニアおばさんだったり、学校から離れればいつも苛めてくるダドリーとその友人達だったり……とにかく私の怖いものを沢山思い浮かべてしまった。
けれど、そこでふと思い出した。あの『禁じられた森』の中で見た、毛むくじゃらで大きな鋏を持った大蜘蛛を相手に、にっこりと笑いながら殺意を振り撒いたハリーさんの事を。
じわじわと命と精神を削ってくるのが私の今までの経験からの恐怖だとするなら、ハリーさんが見せたあの姿は明らかに全く別の……瞬きの間も無く命を刈り取る類いの恐怖。あの時にはハリーさんは私を守ろうとああいう風にしてくれたのだと言うことはわかっているのだけれど、もしもあのハリーさんが私を守る意思など全く持たないどころか私を殺そうとしてくるような状態にあったのならば……そう考えるだけで、身体が震えてくる。
しかし、私はハリーさんの事を考えたことで少しだけ考えたいことができていた。まね妖怪はその姿を見たものの恐怖を写し取ってその姿を変える。だったら……ハリーさんの怖いものって言うのはなんなんだろうか?
……と、いけない。あの時のハリーさんを怖くない姿にするには……えっと…………お、思い付かない!?
いやいや、怖くなくなる方法が何か……何かあるはず!いつも怖くないんだし、今だって怖くないんだから絶対に何かある!えっと、えっと……。
一生懸命に考えてみたけれど、どうしても思い付かない。怖くなくするんじゃなくて無力化……いやもっと無理だし…………ああもうベッドと枕でも出しちゃえばきっとそっちに行くよねたぶん!
自棄になってそう決めたところで時間切れに。それからネビルが前に出て、次々に姿を変えていくまね妖怪を退治していく。
まね妖怪は生徒が新しく前に出る度にスネイプ先生になったり、大きな蜘蛛になったり、バンシーになったりと姿を変えていく。それに対して次々に呪文を唱え、それを面白い姿に変えていく。
スネイプ先生は緑色のドレスに禿鷹のついた大きな帽子を被り、真っ赤なハンドバッグを持った姿に変わり、バンシーは喉が潰れて声が出せなくなり、大きな蜘蛛は脚がなくなってごろごろと転がっていく。そして私より先にハリーさんの番になり……そこでまね妖怪は、見たことの無い人の姿をとった。
人間の物とは思えない、白と言うよりも灰色と言った方が正しく見える肌。鼻は潰れているのか削られてしまったのか非常に低く、やや突き出た額の下にある相貌が危険な光を発している。
髪も眉も無い自分の顔を両手で撫でるように触れ、そして歓喜の表情を浮かべた。
「おお……俺様は───」
「せいっ」
「もどぶれぁっ!?」
ハリーさんはその人が何かを言う前に抉り込むような拳を脇腹に打ち込んだ。見事なレバーブローで、その見知らぬ人は苦悶の表情を浮かべて膝を折る。
しかしハリーさんはそんな相手に更に追い討ちをかけた。振り子のように勢いをつけて、今度は右で側頭部を叩く。弾け飛ぶように左に流れた相手の身体を追い越し、そして今度は左で左胸部……心臓のある位置を叩いて反対側に飛ばす。
また吹き飛ぶ相手に追い付いて顎を右で殴り飛ばし、首を抱え込んで鳩尾に拳を叩き込んで動きを止める。崩れ落ちていく相手の後ろに身体を回転させながら回り込み、後頭部を床に叩きつけるように裏拳を打ち込んだ直後、背中の真ん中辺り……丁度肋骨が無くなり始める場所を踵で踏みつけた。
それで漸く動かなくなった所に、『約束された星の破壊』が雨霰と降り注ぐ。一発一発はロックハートに撃ち込んだそれよりも遥かに小さいけれど、面積辺りの破壊力はむしろ増しているようにも見える。
「『ステューピファイ』、『ステューピファイ』、『ステューピファイ』、『ステューピファイ』、『ステューピファイ』、『ステューピファイ』、『ステューピファイ』、『ステューピファイ』、『ステューピフォイ』、『ステューピファイ』、『ステューピファイ』、『ステューピファイ』、『ステューピファイ』、『ステューピファイ』、『ステューピフォイ』、『ステューピファイ』、『ステューピファイ』、『ステューピファイ』、『ステューピファイ』、『ステューピフォイ』、『ステューピファイ』、『ステューピファイ』、『ステューピファイ』、『ステューピファイ』……」
あ、呪文が『武装解除』じゃない。もっと威力が高い呪文なのかもしれない。だったら小さいのに威力は高いって言うことにも納得できる。
しばらくしてその人が完全に動かなくなってから、ハリーさんはしっかりと杖を向けて呪文を唱えた。
「リディクラス」
パチン、と言う何かが弾けるような音と共に、ハリーさんが踏みつけているそれが人からお饅頭……と言うか、ゆっくりに変わった。今まで受けたダメージを表しているのか、その全身は包帯が巻かれていてちゃんとした肌が見えない。
……ゆっくりの表面のそれを肌と言っていいのかどうかはわからないけれど、とりあえず肌であると言うことにしておこう。わからないものをただわからないと言うだけでは前には進めないからね。
ハリーさんはぽんぽんとそれを蹴ってリフティングして、近場に居た私の方にふわりと飛ばしてきた。
一瞬、その姿が歪みそうになったところで私は呪文を唱えた。完全に変わられたらなんだか大変なことになるような気がしたので、変わり切る前にやってしまうつもりなのだ。
「リディクラス」
パチン、と音がした直後、大きなベッドにゆっくりハリーさんが丸くなって寝ているのを確認した。どうやら私の作戦は成功したようで、怖いと言うことは完全に無くなっていた。
むしろゆっくりハリーさんはちょっと可愛い。ゆっくりになってもハリーさんはハリーさんなのできっと凄いことになるんだろうけど……まあ、それはそれ。すぐにハーマイオニーを私の前に押し出して、まね妖怪と対決してもらった。
……ハーマイオニーの結果については何も言わないでおこうと思う。マクゴナガル先生に
「全科目落第です。今まで何を学んできたのですか?」
って言われて本気で泣きそうになっていたなんて、知られたいと思う人は少ないだろうしね。
……と言うか、さっきの呪文に何か変なのが混ざってたような気が……?
次回作は……?
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鬼滅の刃
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鋼の錬金術師
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金色のガッシュ
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BLEACHの続き
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