ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
ホグワーツに到着する前に一度汽車が止まり、一瞬寒くなったと思ったら轟音と共にそれがなくなり、すぐにまた汽車が走り始めてホグワーツに到着した。アズカバンの看守がやって来たらしいのだけれど、ハリーさんが殴り飛ばして撤退させたらしい。
本当だったら殴り飛ばすなんて言う方法ではなくもうちょっとまともな撃退法があるそうだし、ついでにハリーさんもそれを使うことができるそうだけど、ハリーさんの場合は直接殴った方が早いし効果的だからといってあまり使うことはないらしい。
精々相手が遠くにいて動くのも面倒な時に使うそうだけれど、場所を選んで出さないとその場にいる全員があまりの眩しさに眼球を焼かれて失明しかねないらしい。
……冗談だと言っていたけれど、多分やろうとすればできるんだと思う。
私達は普通に大広間に行って、普通に椅子に座る。ルーピン先生はもう席についていて、なぜかスネイプ先生に凄く憎々しげな視線を向けられている。理由はわからないけれど、きっとスネイプ先生にも色々あるんだろう。
……ハリーさんに聞けば知ってたりするかな?
「ねえ、ハリーさん」
「秘密だ」
「まだ何も言ってないんですけど!?」
「スニークがRゲイ・スッピンを嫌っている理由は教えてやれん。本人同士の黒歴史だし、ついでにいくら俺が割と外道でも少しばかりの良心が痛むからな」
「良心があったんですか!?」
「無かったら去年にフォッグダートが辞めるときに原型を止めてるわけ無いだろ」
「フォッグ……ああ、ロックハート。それもそうですね」
去年の話を聞いて納得した。でも、一昨年はクィレルを行方不明にした事は忘れていない。やっぱりハリーさんは割と外道。その外道っぷりは年を経る毎に進化していっている気がする。
……と言うか、スニークとかRゲイとか呼び名が酷すぎるような気がする。スネイプ先生はスニークしないし、ルーピン先生だってゲイじゃあ……ない、はず。
……ないよね?
「……実はRゲイがスネイルに嫌われているのは、学校に通っていた頃にRゲイがスレイルを……」
「冗談ですよね?」
「勿論」
ハリーさんはにっこり笑って答えた。スネイプ先生のルーピン先生に向ける視線を見てしまうと、一瞬それを本当のことだと信じそうになってしまうから困る。ハリーさんの冗談はわかりやすい時と分かりにくい時の差があまりにも大きいので混乱してしまう。
……まあ、ある程度確信を持って問いかければすぐに本当のところを教えてくれるから、長い目で見れば別に構わないのだけど。
と、そこでダンブルドア先生が新学期の挨拶をしようと立ち上がり、周りが静かになった。
「新学期おめでとう!皆にいくつかお知らせがあるが……その前に、一つだけ言うておかねばならないことがある。……ハリー・オライムレイ。お願いじゃからこれ以上吸魂鬼を殴って消し飛ばすのはやめておくれ」
「殴らなければいいですか?」
「まず消し飛ばすのはやめておくれ」
「それはそうとさっき吸魂鬼から魂を抜いてみたら吸魂鬼の身体が塵になって風に吹かれて消えていったんですけど」
「やめておくれ」
「なら───」
「───やめておくれ」
ダンブルドア先生がなんだか凄く必死に見える。ハリーさんはこの短い時間でいったい何体の吸魂鬼を世界から消滅させたんだろう?
「……はぁ、了解。正当な理由がなければ殺りませんよ」
「そうか、それはよかった」
「……ところで、さっき吸魂鬼が視界に入ってきたのがイラッとしたので一体消し飛ばしたんですが」
「それはどう考えても正当な理由にはならないですよハリーさん!?」
私がツッコミを入れた瞬間に、ダンブルドア先生の眉間に刻まれていた深い皺が浅くなった。お腹に当てられた手はそのままだけど、どうやら少しだけ楽になったみたいだ。
それからはまたいつもの通りのダンブルドア先生のお話だった。吸魂鬼に関しては全く融通が効かないから絶対に勝手に学外に出ようとしないことと、それから新しい先生達が着任し、その片方がハグリッドであることを伝えてすぐに、大広間は宴の場となった。
……ふわぁ……やっぱりいつ見ても凄いなぁ……。もう何回も同じような光景は見てる筈なのに、毎回毎回こうも嬉しい。
「……お、キッシュがある」
ハリーさんは見たことの無い料理をひょいと大皿ごと持ち上げ、そのお皿の四割程を自分の前のお皿に流し込んだ。
「むぐ……んっ……く。ハリーさん、それはなんですか?」
「キッシュって言う料理だな。フランスのロレーヌ地方のが有名だが、作り方自体は至極簡単だ。タルト生地やらパイ生地やらを使うんだが……まあ、食ってみるのが一番早い」
そう言ったハリーさんは、私の口許にキッシュを差し出した。はむりと食べてみると、下の部分はパリパリで中身はふわふわ、卵とチーズの中にたっぷりの賽の目に切られたベーコンと薄切りされてほとんど感触の無い玉葱。ハリーさんがざっと取るのもわかるような、とても美味しい料理だった。
「むぐむぐ……フランスのお料理なんてよく知ってましたねハリーさん」
「まあ、俺はそうでもないが俺の周りに居た奴に美食家が居てな。料理を作るのは主に俺だったんだよ。……そんなことよりこっちはどうだ? イタリアンピッツァの一種でカルツォーネって言うんだが、感受性が高いと一瞬だけ軽く王になれるらしいぞ」
「なんですかそのつまらないシャレ」
「俺のせいじゃない。ついでに言うと俺はこれを食べて王になったことは無いが、美味いとは思ったぞ」
「そうなんですか? じゃあ頂きます」
ぱくぱくもぐもぐとテーブルに並んだ料理を食べる。やっぱりご飯を食べるって言うのは幸せな気持ちになるための一番の近道だよね。ハリーさんにすすめられたキッシュもピッツァも美味しいし、やっぱりホグワーツは良いところだ。
私が食事をしている姿を、ハーマイオニーやロンがニコニコ笑いながら眺めているのもいつものこと。私の食事風景を見ているだけでなんだか気が楽になるそうだけれど、見るだけでいいならいくらでもどうぞ。見られて減るようなものでもないしね。
……それにしても、イギリス料理は美味しいものが少ないって言うのはもしかしなくとも本当なのかもしれないと思った。フランスでは家庭料理としてキッシュが作られて愛好されているのに、イギリスでは揚げすぎて半ば炭のフィッシュ&チップスや、火を通しすぎて原型が一切わからなくなっている嘔吐……じゃない、オートミールが愛好されているものね。
……雑、って言う言葉が一番当てはまる。確かに、一般家庭でも基本的に料理の方法が雑だものね。前にもこんな話をした気がするけれど。
次回作は……?
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鬼滅の刃
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鋼の錬金術師
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金色のガッシュ
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BLEACHの続き
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